【旧】チート能力を持った高校生の生き残りをかけた長く短い七日間

北きつね

勝利宣言

さて、両伯爵は捕らえる事が出来た。面会なんて面倒な事をするつもりは一切ない。さっさと、ハーレイとローザスに面倒な処理をお願いしてしまおう。僕達は、アドゥナ街の復興に力を注ぐことにした。
まずは、皆に被害報告をさせた。あがってくる報告を聞いて一安心した。かすり傷や武具の破損は出ているが、戦線離脱するような怪我を追ったり死亡した眷属はいないと報告された。かすり傷の殆ども、捕縛した貴族が暴れた時に付けられた傷ですぐに癒やされるような物だ。被害なしで終わったのが一番うれしい。
イリメリからは、領民の被害報告が来ている。眷属の攻撃での被害報告はないとの話だが絶対ではない事は解っている。直接的な攻撃では無く間接的に被害を与えてしまっている事も考えられる。アドゥナ街には、すぐに白魔法が使える眷属と神官を派遣して、けが人が居ないかを調査して治療に当たらせている。
アドゥナ街には、イリメリとフェムに残ってもらって、ニグラに移動する事にした。街道の陣は撤去して、眷属は、マノーラ神殿に帰る事になる。
ここで終わりにはならない。次は政治的な取引が行われる。
でも、さすがに今日はつかれたし、マシュホムとアドゥナ両伯爵にも頭を冷やす時間が必要だろう。面談は、1週間後になった。
”勝利宣言”をしなければならないという事だ。王城で、捕縛された貴族の前で、僕が勝利宣言をして幕引きとなる。
その後、和平交渉と戦後処理と祝賀会となる。
面倒だけど、そこまでは付き合わなくてはならない。宰相達と約束した6ヶ月を2週間残しての制圧となった。
1週間の休暇を貰った事になる。学生なら短い休みだが、この世界に来てから、なんか走り抜けてきた感じがしているので、1週間でも何もしないでいいと言われても困ってしまう。それは、皆同じなようで普段通りに過ごしている。
僕も一日目はダラダラと屋敷で過ごしていたが、すぐに飽きてしまって、二日目はタシアナの工房に行って拡声器の改良と爆弾の試作を行った。爆弾は以前から作ろうと思っていたが、危険な物である事や相手に真似されても困ると思っていた。アデレードに相談した所、真似しようにも作るまでは出来るかも知れないが、爆破させるために魔法使いが危険に晒されれうような物では意味がないといわれた。僕達は、結界で自分を守りながら爆破させるので、危険はさほどない。完全ではないので、そこを改良しようと思っている。拡声器は、概ね良かったが、音量の調整などができないので、小声で喋るとかあまり有効でない方法しか存在していない。増幅魔法にパラメータを与える事で出来ないかと思っている。
三日目は、ミルと一緒に探索に出た。カルーネにお願いして幾つかの武器を作ってもらって、調整を兼ねて迷宮ダンジョンに潜った。
4~7日目は、イリメリとフェムも帰って来て、皆でラーロさんの所に遊びに行く事にした。三泊四日だが久しぶりに何も考えないで遊ぶ事にした。というのも、ラーロさんの所の神殿の遊園地がまだ手付かずで作っていないからだ。オイゲン達やアルマールとフレットとカルーネにも来て貰って、皆の意見を聴きながら、作る事になった。仕事じゃないのか?とアデレードには笑われたが、僕の息抜きの為に必要な事である。仕事なのではない事は解っている。それに、遊園地が出来たら楽しいは間違いない。魔法的な事を含めてタシアナとミーシャが僕と一緒に作りながら、細かい調整を皆でやっていく。アイディア出しは、その都度やっていく事にした。
まずは、某ゾンビを撃っていくアトラクションだ。最初ゾンビは魔物で代用と考えていたが、それだと数の問題や当たり判定が難しくなるので、操霊魔法でゴーレムを作って操る事になった。この世界の最先端を遊びに使うのかとアデレードが頭を抱えていたが、戦争につかうよりも遊びや豊かになる事に使ったほうがいいに決まっている。ゴーレムは結界で守られていて、結界に魔法が着弾したら倒れる仕組みにした。そして、ゴーレムは一つのコントロールセンターで集中管理する事が出来る。これは映像珠の応用で全てのゴーレムの映像を一度に見る事が出来るようになっている。基本的に、ゴーレムは一定の動きをする事になるが、その動きの基礎は人が教える事になる。プログラムすると考えればいい。パターン化したゴーレムが入場者に襲いかかるのを、支給される銃で撃っていく事になる。出口で、個々の得点が渡されて、優秀者には景品が渡される事になる。景品も縁日っぽく、フードコートの引換券や温泉の利用券などだ。コースも幾つか用意する事にした。市街地や草原。森林。ダンジョンなどだ。全部が混ざった複合コースも用意して、飽きる事はないだろう。これにドハマリしたのが、オイゲンの所の獣人3人娘だ。入り浸っている状態が続いている。正式オープンまでに、全部のルートを覚えるつもりだろう。3人が上位優秀者を独占する事になってしまいそうだ。
次に乗り物系を作る事にした。本当は、絶叫系を作りたかったが、安全面やいろいろな事情で取りやめる事になった。比較的再現が出来そうな物から作っていく事になった。まずは、ゴーカートはこれもゴーレムを使って作る事が出来た。一人乗りの馬車をゴーレムが引っ張って、乗っている人が方向を指示するハンドルを切る事で曲がる簡単な仕組みがアクセルとブレーキも付けた。フットペダルにしようとしたが、ハンドル部分を押し込んで加速でひいて減速という感じにする事になった。コースも何通りか作ってみた。市街地コースは、マカオグランプリとモナコグランプリのコースを再現した。サーキット場は、世界一と表される鈴鹿とシルバーストーンと富士サーキットだ。ラリーコースも何通りか用意した。レースの開催も出来るような環境になってくれば面白そうだと思う。どのコースも一周2分程度で回ってこられる。後は技量や一人乗り馬車の改良でもっと早くなるだろう。
次はすでにあるがプール施設を絶大に大きくする。今は半径1km程度の敷地内に作ってあるがそれを広げて、中に転移門トランスポートや馬車運行させて、限界ギリギリまで広げた施設にした。これも、拡声器の魔道具が出来たので、作る事ができた。一番心配だったのが、迷子だからだ。1km範囲を見守るボックスを作って、そこで迷子の保護や親御さんへの呼びかけが出来るようにした。中のプールはガチ勢向きに400mのガチ水泳向けのプールを用意した。泳ぐという文化がトリーア王国にはあまりないが、南方連合国サウスワード・コンドミニアムでは湖を利用して泳いだりする文化が有るらしいので、プールもある程度は需要があるだろう。後、外周をゆったりボートで廻る事も出来る上に、食べられる魚が泳いでいるので、釣りを楽しむことが出来る。外周は泳ぐのは禁止にしている。危ないからという事もあるが、シーサーペントの根城にしているからだ。襲わないが、万が一魔物が沸いてしまったときの対処が出来るようにしている。あとは、数カ所で釣った魚を食べられる場所も作ってある。所謂BBQだ。持ち込みもOKにしているので、街で買った物をここで焼いて食べる事が出来る。
そして最後に作ったのが、巨大な迷路施設だ。まるまる1階層を使った迷路だ。途中途中に脱出ポッドを用意している。魔物も罠もないが、時折宝物がポップする様なしくみにしている。あくまで遊びなので、タイムを競う事になるが、脱出ゲームとしての意味合いが強くなっていて、ランダムでスタート位置が決められて、そこから何分で抜け出せるのかを競う事になる。これも宝箱の中身とは別に景品が用意されている。何度か、皆で試しながら最速タイムの基準を作る事にした。駆け出しの冒険者として、イリメリがジェシカとロベールを連れてきて、挑戦させてた。挑戦が終わって疲れ切った二人に、イリメリからラーロ温泉ホテルの宿泊券が渡された。
ここまで作ったら休暇の終わりが見えてきてしまった。最後の一日は遊び尽くそうという事になってその日までに作った施設をラーロさんに説明しに行った。微妙な顔をされたが、気にしないで全部使って下さいとお願いしておいた。施設の利用料は、そんなに高くする必要はないけど、タダだと真剣に遊ばない可能性があるから、一日券みたいな物で全部の施設を遊べるようする事が決定した。ホテルに宿泊している人なら安く買える事にすればいいだろう。
休暇が終わって、マノーラの屋敷に戻ったら、ローザスからの呼び出しがかかった事が報告された。
形式的な呼び出しだが、御前会議ではなく、ローザスの名の下にトリーア王国の貴族は全員集まるようになっている。勿論、立花ウォルシャタの所にも召集の書簡は出されているが、届かない事は解っている。領地を放棄している事も判明しているので、形式的に書簡を持った者が訪れて、領地が放棄されている事を視認するのが大事なのだ。この内戦でアドゥナ・マシュホム・ホレイズの領内は、僕が代官を任命している。これに関しても、随時貴族がおさめるか、そのまま代官が指示に従っていくのかが決定される事になる。
当日は、ニグラ支部で待っている事になる。本来なら、ニグラにマノーラ侯爵の館を立てなければならないのだが、面倒になってギルドのニグラ支部をそのまま僕の館だと登録してしまっている。アデレードにはホレイズやマシュホムやアドゥナの跡地に作ればよかろうというが、ほぼすまない場所に作ってもなって思いがある。でも作る事で廻るレインもあるので、貴族の義務として作るべきと言われてしまった。落ち着いたら作る事にしたが、僕が手をだすのは良くないと言われたので、現地で人を募集しながら作る事になった。
ニグラ支部の執務室で、お茶を飲みながら積み上げられた書類を読んでいる。決済しなければならない事は少なくなってきているが、そのかわり嘆願書が多くなってきている。代官からの嘆願が多くなっている。殆どが、処理済みになっているが、全体的に何が発生しているのかを把握するためにも全部を集めさせたのが失敗だった。多くは、資材が足りないという物だが、人探しも全体の3割がこれにあたる。内乱で散り散りになってしまった家族がギルドを頼ってきたりしているのだ。僕への嘆願にもつながっている。
「レマー。シュトライトを呼んできて欲しい。」「かしこまりました」
しばらくして、シュトライトが現れた「リン様。」「あぁ悪いな。すこしお願いがある。」「なんでしょうか?」「簡単な事なんだけど、ギルド内部に、人探しの専門の受付を作って欲しい。」「はい?」「僕の所の嘆願書の3割位が、人探しなんだよ。それを効率よく、ギルドの仕事として出して欲しい。」「あっかしこまりました。」「うん。元々、ギルドカードを持っていれば、神殿の機能を使えば、どこの転移門トランスポートを使ったのかは解るから、ギルドカードの有無を聞いてから特徴とかを記載して探せるようにして欲しい。本人たちからの報奨金以外にもギルドから年齢に応じた報奨金を出すようにして欲しい。」「解りました、どのくらいの報奨金にいたしましょうか?」
一律では意味がなさそうだな。「そうだな・・・。パシリカの15歳を基準にして、探す申込みをした人間の16-年齢の銀貨で出すようにして欲しい。」「それですと、14歳の子供が探すために訪れたら、ギルドからの特別報奨は銀貨2枚となりますがよろしいですか?」「あぁそれでいい。もし、何度も何度も、その報奨金を得るパーティが居たらアッシュに言って調べさせればいい。」「あっかしこまりました。」「うん。頼むね。」
こんな処理をしていたら、王城から迎えが来る時間になった。風呂に入って身奇麗にしてから、正装に着替えて待っている。今日は、ミルとエミールと3名だけで行く事になる。
僕が待っていると、ミルとエミールも護衛と従者の格好になってきた。
程なくして、MOTEGI商会で販売している馬車がニグラ支部の前に止まって、行者が降りてきて、朗々とマノーラ侯爵を迎えに来たと歌い上げた。救国の英雄だとかクソ恥ずかしい事を言われて出にくい事間違いない。ニグラ支部の前には人だかりが出来ていた。マノーラ侯爵バンザイとか寒気がするような事を喚いている。多分、これはローザスの嫌がらせに違いない。馬車に乗り込んで、人垣をかき分けるようにゆっくりと馬車は進む。正直対応にこまる。そんな状態が、ニグラ支部から第一壁ファーストウォールまで続いていた。仕込みだろうと思えてくる。
宗教都市ドムフライホーフについてからは比較的に順調に進む事が出来た。比較的というのも、教会関係者が挨拶がしたいと言ってなんどか馬車が止められた。その都度、挨拶を受ける事になった。
王城についてからはそんな事はなく、ほぼ顔パス状態で控室に通された。ローザスがニヤニヤしながら待っていた。それをみて確信した。
「ローザス。おまえの仕込みだな。」「何のことか解らないが、おまえがさっさと、アデレードのいうことを聞いて、屋敷を作らないのが悪いんだろう?」「あぁそうだな。そうするよ。そうだな。ホレイズとアドゥナとマシュホムの屋敷跡地をまとめて、大きな大きな屋敷を一晩で作る事にするよ。」「なっ。リン君。それは・・・。」「あぁ気にしないでくれ、中もエレベータの設置をして移動も楽に出来るようにするし、そうだな。高さは王城をすこし超えるくらいでいいかな?」「・・・わかった、わかった、悪かった。悪ふざけが過ぎた。でも、屋敷を作って欲しいのは本当だからな。」「解っているよ。適当な場所に作ってもらうよ。」「あぁ頼むな。」
「それで、ハーレイは?」「あぁミヤナック家として別の控室に居てもらっている。今日は、僕とリン君が主役だからね。」「そうなのか?」「うん。君が、陛下から勅命を受けたんだから当然でしょ?」「あっそうか・・・。」「陛下に、戦況についてと、捕縛した逆賊の名前を全部列挙するんだからね。」「え”?面倒だよ。」「あぁ代理でもいいから、それはこちらで何人か用意するよ。君は、『勅命の義恙無く執行いたしました。』と宣言すればいいだけだよ」「なんだよ。脅かすなよ。」
ドアをノックされる音がした。「マノーラ侯爵。準備が出来ましたらお願いいたします。」
「リン君。行こうか!」「そうだな。」
ローザスが立ち上がった。僕もそれに従うように立ち上がった。ミルとエミールもそれに従った。先にローザスが部屋から出て、僕はその後に従う様に歩いて行く。
謁見の間に通された。ローザスが先に歩いた。右手側には、捕縛された貴族たちが恨めしそうな顔で僕を睨んでいる。左手側には、ミヤナック家をウォード家に組みして、末席に僕の寄り子の貴族になった連中が並んでいる。静寂の中僕達は歩いている。ミルとエミールも脇に避けるのかと思ったら、そのまま僕の後ろに従って歩いている。ミルに至っては、帯剣したままでエミールも杖を持ったままだ。陛下の前に着くと、ローザスが「陛下。マノーラ侯爵他二名。勅命の義のご報告に参りました」
「マノーラ侯爵。ご苦労であった。」「はっ陛下から承りました、勅命の義恙無く執行いたしました。」「そうか、ローザス。マノーラ侯爵。成果を報告せよ」
ローザスが、内乱の原因を説明している。その後で、ローザスがエミールに問いかけるように、時系列で何が発生したのかを説明していく。これは、僕達サイドの言い分だが、これがトリーア王家の歴史となる。負けた方は、それを受け入れる事しか許されない。勝利宣言がここに達成される。
そして、長かった、内戦が幕を下ろした。

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