【旧】チート能力を持った高校生の生き残りをかけた長く短い七日間

北きつね

アドゥナ街攻略開始

「リン。ホレイズ伯爵をアドゥナ街に引き渡してきたよ。」「あぁありがとう。なんか言っていた?」「あぁ眷属に言ってもらったから・・・私が行こうとしたんだけど、全力で止められちゃった。」「そりゃぁそうだよ。それで、眷属は無事帰ってきたんだよね?」「そりゃそうだよ。尾行が着いたらしいけど、捕縛して、イスラ街に送ったよ。」「そうか・・・・(また、エベンス辺りから文句が来なきゃいいな)」
イリメリ達を迎えて、アドゥナ街の包囲網は完成した。包囲網といっても、街のすぐ近くを包囲するのではなく、街道を半日程度の距離の場所で陣を張っているだけだ。そこから、数千単位で街に強襲をかけては撤収するという事を1週間昼夜問わず繰り返している
わざと、大きめの魔法で音や光が派手な物を連発して、守備隊が駆けつけたら、ひと当たりして撤退する事を繰り返している。半日位間をもつ事もあれば、1時間後にまた急襲するといった具合に不定期に行っている。これは、エミール達にも同じ事をやらせている。その為に、アドゥナ街の守備隊は心休まる時間がなくなっている。
なんどか、守備隊がすぐに撤退するだろうと思っているのがわかったので、わざと一旦逃げてからすぐに後を追って門に肉薄し、一つの門を破壊した。3つある門のうち一つはすでに壊しているので、その門に守備隊を集中させて修繕を行っている。いやらしく長距離からの魔法で門の修繕を邪魔していた。
そろそろかな・・・・。「リン。持ってきたよ。」
タシアナが、魔道具を持ってきた。「何それ?」「あぁミルは見ていなかったんだっけ?拡声器だよ。」「・・・そう言えば、そんな事も言っていたね。」「うん。あっタシアナありがとう。どうする見ていく?」「勿論、何か不具合があると困るだろうからね。」「うん。後、設置もお願いしていい?」「了解。」
タシアナが眷属と職人を連れて出ていた。「ねぇリン。拡声器の設置って街壁の近くに行くんだよね?危なくないの?」「ん。普段なら危ないけど、タシアナには音を出さないようにって伝えてあるんだよ。」「ん?」「今まで、ミルにはわざと門の近くまで行って魔法で目立つようにしてから攻めてもらっていたよね?」「うん。僕はいわれた通りに、光と音で派手に攻めたよ?あぁそういう事か・・・。」「そ」
程なくして、タシアナが戻ってきた。「リンが言っていた通りに、静かに作業をしていたら、本当に誰にも気が付かれなかったよ。馬鹿なの?」「まぁ1週間程度だけど、毎日毎日不定期に攻められていれば、そろそろなれてしまって、敵が攻めてきたら、音がするものって思ってしまうだろうからね。」「へぇ確かに、見張りは居るには居たけど、もうボォーとしているだけだったからね。」「だろ?」「うん。びっくりだよね。たかだか1週間だよ。根性が足りないよね。」「まぁ僕なら、こうなる前に敵を潰すけどね。」「だよね。」「あ、それでタシアナ。魔道具の使い方は?」「あぁこれに、魔力を注ぎながら喋ればいいだけだよ。注いだ魔力の量が音量だから、リンならほんのすこしの感覚でやってくれたら大丈夫だよ。一応、リミッタは付けてあるから、壊れる事はないけど、無駄になっちゃうからね。」「了解。ありがとう。」
さて、これでアドゥナ街を攻める準備は出来た。後数回いつもの様に攻めてから勧告を行う事にするか・・・。
「次は、ミルの番だっけ?」「うん。僕が出撃する順番だよ。」「そうか、反対側はエミール?」「そうだよ。」「そうか、二人なら大丈夫かな・・・。ミル。エミールを呼んできて貰えるかな?」「わかった。」
30分ほどして、エミールが僕達が拠点にしているカプセルハウスにやってきた。「リン様。どういたしました?」「うん。次の出撃なんだけどね。ミルとエミールにやってほしい事が有るんだよ」「うん。」「はい。」「簡単なことなんだけどね。残っている門を破壊ないしは通れる様にしておいて欲しい。」「なんだ。そんな事?解った。」「リン様。魔法で飛ばすでもいいのですか?」「やり方は任せる。でも、通れるようにはしておいてね。」「了解」「かしこまりました」「それじゃ1時間後に出撃して!」「「はい」」
「ねぇリン。なんで門を破壊するの?必要ないよね?」「ん?僕たちはね。でも、アドゥナ街の住民が逃げられないでしょ。」「あっそういうことね。」
イリメリは気がついたようだ。僕が気にしたのは、領民に被害が出る事だ。その為に、まずは包囲されている事がわからないようにしておいて、守備隊に負荷を与える。その上で、門を破壊しておけば、領民がこっそり逃げ出す事が出来るようになるだろう。もう一つは、拡声器を設置したと言っても、未知の魔道具から出る声では信頼性が低いので、壊された門の近くで僕達が姿を見せながら、喋る事で魔法の効果ではないのかと錯覚させる事が出来るのではないかと思ったのだ。
そんな話をしてから2時間後にミルが戻ってきた。門の破壊は無事終了したという事だ。エミールからも同じ報告が届いた。これで、アドゥナ街を守る物は壁だけになった。この時間では遅くなってしまうので、明日の朝に拡声器を使う事に決めた。その為の配置を今から皆に説明する。
街の周りを取り囲む壁の一部を壊す事も同時に行う事にした。なん箇所か壁を壊せば逃げやすくなるだろう。壁を壊すのを、イリメリとサリーカにやってもらう事にした。ミルとタシアナが僕と一緒に、中央の門の前に姿を現す事にした。フェムとエミール達でその他の二つの門の前に陣取る事にした。
結構は、明日の日の出の時間に設定した。明日決戦になる事はないと思うが、万が一があるので、今日はゆっくり寝てもらう事にした。眷属たちも今日はゆっくり休む様に指示を出した。明日以降は、壁に開いた穴から、領民が逃げ出してくるかもしれないが、僕なら領民にまぎれて間者を紛れ込ませる。それを考えると、複数の場所に陣を張って戦力分散するのは愚行だとおもう。それなら、監視の人員だけ残して、一箇所に集まったほうがいい。エミール達が陣を張っている場所は開けた場所になっているので、そこに陣を作る事にした。決戦の為に待ち構えているという体裁を整える事にした。乗ってきたら、叩き潰せばいいし、乗ってこなかったら臆病者と喧伝してあげればいい。それに、彼らはもう攻めるしか手がないのも事実なのだ。ホレイズ伯爵が死んで食料も手に入らなかった。僕達の試算では、持って1ヶ月だろと思っている。守備隊の人数が減っているとは言っても、その程度しか流入していないと思われる。
今晩は久しぶりにゆっくり食事と風呂を堪能する事にしよう。「今日の料理当番は・・・・。フェム?」「そうだよ!」「よかった・・・イリメリじゃないんだね。」「うん。安心して!イリメリは、料理当番から外したからね。」「そうそれを聞いて安心した。後、ミルは?」「もちろん、ミルもだよ。」「うん。」
そう、二人の料理はひどかった。食べられないわけではない。美味しいかといわれればすこし疑問符が付く。両極端なのだ。イリメリは、スキルのおかげで食べられる料理を作る事は出来るが、それでやめておけばいいのに、一手間加えるのがいいと思っていて、余計な事をして全体的に微妙な味になってしまう。やっと出来て美味しく懐かしい味噌汁が飲める喜んでいたのに、どこで考えたのか解らないが、味噌汁にオリーブオイルを入れて、白飯に合わせようとしたりする。オリーブオイルを入れるのは確かに目先が変わって美味しく感じるし単体なら別の物として美味しく感じるが、それに再現した和食を合わせると、全体的になんじゃこりゃ?という味になってしまう。本人は、それでやりきった感を出すので、なんとも微妙な空気が流れる。フェムに相談して、イリメリの食事当番の順番を外した。他にやることがあるというのが大きな理由だ。
ミルは、イリメリとは逆で、料理は素材のままと言う感じで肉を焼いただけ。パンと肉料理という感じだ。それはそれで不満はない。美味しく食べられるが・・・。野菜も食べたいと伝えると、切って塩を振りかけたシンプルな物が出てきた。
「リン。僕の料理。イリメリよりもひどかった?」
急に後ろから声をかけられてびっくりして振り向くと、ミルが立っていた。
「ミル。そんな事ないよ。でも、ミルは料理よりも、僕の側に居て欲しい。」「本当に?」「うん。本当だよ。」「それならいい。解った。」
ミルが腕を組んできた。それを見ていた、フェムが笑いながら、キッチンに入っていった。料理に関しては、スキル云々ではなく、元々の考えな勘所の様な物が影響するのだろう。ルナもサリーカも一通りの事は出来るし問題はない。問題が有るのは、元々料理をしてこなかったアデレードとなぜか一手間加えるイリメリと下準備をしないミルの3名だ。僕は、皆ほど出来るわけではないが、そこそこの物が出来る。これも、一人暮らしで培った”スキル”だ。
今日の食事は、久しぶりに全員揃う事になった。カエサルに今日は何も起こさない事を伝えたら、それならば今日は僕達はマノーラ神殿の屋敷に戻ってはどうかと進言された。何か有ったらすぐに連絡に行きますといわれたので、有難くその進言は受け入れる事にした。
ルナやアデレード。マルティンも合わせて、マノーラ神殿の屋敷に戻ってくる事になった。本当なら、料理長のシャイド辺りに料理を作らせる事も出来るが、今日は、僕達だけという事もあって、フェムとウナルで料理を担当する事になったのだ。
久しぶりに全員揃っての食事を終えて、ビリヤードをしたり、ダーツをしたりして過ごしていた。陣を張っているカエサル達にも通達を出して、見張り以外は今日は休養に当てるように伝えてある。
食事も終わって、腹ごなしもできなので、風呂に入りながら近況報告の話をする事にした。カプセルハウスの風呂も気持ちはいいが、やはり、屋敷の風呂は格別だ。
身体も気分もリフレッシュしてから、皆に揃ってもらった。そこで、アッシュから報告があった事と三塚マニュエル森中フィリッチ川島マルビンから聞いた話を皆に説明した。
立花ウォルシャタは、北方連合国ノーザン・コンドミニアムのパーティアック国に移動している事。今、あの国でクーデタが発生して、立花ウォルシャタ達が実権を握った事を伝えた。そして、ここからは僕の予測だという事を付け足しながら、奴らが次に行うのは、北方連合国ノーザン・コンドミニアムの国々の併呑ではないかと思うと伝えた。
「なっそんなことが・・・」「多分出来ると思うよ。西沢ゴーチエ細田イアンが絵を書いただろうけど・・・。資金と兵力を得たからね。」「やっぱり、僕があの時に殺しておけば良かった。」「ミル。大丈夫だよ。僕達は負けない。それに、北方連合国ノーザン・コンドミニアムの全部の国を併呑してもすぐに全兵力をこっちに向ける事なんて出来ないし、やらないと思うよ。」「何故じゃ?おぬし達の話を聞く限り、ウォルシャタという男は獰猛で貪欲な男なんじゃろ?」「うんそうだね。でも、それ以上に”馬鹿”なんだよ。」「リン。それは酷いと思うけど、そうだね。僕もそうおもう。」「リンもミルも平気なの?」「ん?何が?」
「だって・・・。」「あぁ大丈夫。割り切っているというとウソになるけど、平気だよ。それに、彼にはきっちり清算してもらう予定だからね。こっちでも向こうでもね。」「え?」「まぁその話は、また今度だね。まずは、北方連合国ノーザン・コンドミニアムをどうするのかって事だけど・・・。」
「放置でいいんじゃないの?」サリーカが珍しくこの手の話の時に発言した。
「うん。そのつもりだよ。」「何故じゃサリーカ?」「アデレードは、すぐに攻めるべきだと思うの?」「それは難しい。トリーア王国としては、対応出来ないからな。ただ、北方連合国ノーザン・コンドミニアムの国々には伝達しておかなくていいのか?」「アデレードが、北方連合国ノーザン・コンドミニアムの国の人間だとして、パーティアック国でクーデタがあって、そこで実権を握った連中は、トリーア王国の元貴族で逃げた奴らで、獰猛なスキルを持って危険ですから注意して下さい。っていわれたらどうおもう?」「あっそうじゃな。注意と言っても無理だな。」「うん。それに、奴らもしたたかで、噂話しとして、立花ウォルシャタがトリーア王家の御落胤だと思わせるようは噂を流しているからね。」「・・・そうじゃな。」「うん。それを利用して、トリーア王家に攻め込もうとしている輩もいるかも知れないからね。」「・・・そうじゃな」「だったら、面倒だから、今回の内戦で僕達が勝った後で逃げ出す奴らは間違いなく居るでしょ?」「・・・どうかな。」「そうだね。言葉を変えよう。逃げ出す事も出来ないで燻っている奴らは出てくるでしょ?」「あぁそれなら間違いなく居るな。自分では何も出来なくても文句だけは言う輩が出てくるだろうな」「うん。そういう奴らの受け皿になってもらおうと思ってね。そうしたら、トリーア王国は綺麗な状態にならない?」「あっ」
当初の予定とは違ってしまったが、やっと立花ウォルシャタ達も国を持った事になる。我が世の春を横臥してもらわないと叩き潰すのが面白くない。本当は、辺境伯にでもなって貰って、そこで有名になってと考えたが、思った以上に内政が出来ない連中だったようだ。スキルが有るし知識という武器も有るのに、うまく使えないで居たようだ。次に考えたのが、貴族連合のトップになってもらって叩き潰そうかと思ったけど、思った以上に政治力がなかったようだ。使い走りで終わってしまった。
そこで、パーティアックからの接触を有効にならないかと思ったが、それはうまく作動したようだ。奴らの事だから、これで自分たちの名前が有名になると思っているだろう。まだまだこのゲームは始まったばかりだって事を考えていない。最終決戦を焦る必要はない。残りの期間を含めて、どうするのかを考える時期になったのかもしれない。殺してしまうのは簡単な状況になった。ただ殺すだけでは面白くない。まだまだ楽しんでもらわないとな。それじゃなければ、僕が楽しくならない。

「【旧】チート能力を持った高校生の生き残りをかけた長く短い七日間」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く