【旧】チート能力を持った高校生の生き残りをかけた長く短い七日間

北きつね

ホレイズ降伏勧告

陛下から勅命を受ける事になった。
想定しては居なかったが、問題になるような事ではない。法的な裏付けが出来るのが大きい。
ただ、陛下から一度アデレードと一緒に王城に行かなければならない。さすがに、アデレードだけではダメだという事だ。まぁ当然だろうけど・・・。
日程調整をして貰っているが、すでに勅命は下っていて、後は儀式的な事をするだけだ。だから、アドゥナ領内を攻める事はもう問題はない。今までみたいに小細工する必要がなくなったのは楽だ。
「アデレード。僕は、ホレイズに降伏勧告を出すよ。」「ホレイズの街を落としたのだから、当然だな。」「うん。領主とかは、今は置かなくていいんだよね?」「そうだな。ワロン街だったか?そこに全部任せれば良いと思うぞ。」「了解。そう言っておくよ。」
イリメリとフェムが保護した4人からの証言も取れた。子供だからとか言わせないように、エミール達に言って、ヴェスタ街の現状も合わせて報告にまとめてある。それと、数々の証言とともに、ホレイズ伯爵宛に書簡を送る。
ついでに、僕が勅命を受けて、ホレイズ伯爵の捕縛に向かう事になった旨をあわせてしたためる。
どうせ、降伏勧告なんて無視されるか、無視されないまでも従う事はないだろう。それでも最低限の手順として必要な事をやっておく。
ニグラ支部で、何日か過ごしている間に、アドゥナ領の状況は逐一連絡が入ってきている。
すでに、ほぼ全ての街道の封鎖を行う工作は終わった。宣戦布告にも取れる文章が届けば、一斉に眷属に指示を飛ばして、街道を封鎖する。
「アデレード。ローザスとハーレイとは話はついているんだよね?」「リン。どれの事じゃ?」
「あぁゴメン。3馬鹿伯爵に出頭命令を出す書簡だよ。」「・・・3馬鹿って・・・。まぁそうだけどな。あぁもう出しているぞ。問題がなければ、明日には届くと思うぞ」「了解。その後、僕の書簡が届いた時点で攻め始めるね。」
そう、アドゥナ領内にも、多くの貴族や村が存在している。それらの全てを攻めていたのでは、時間もかかってしまう。
内戦が始まってから、アッシュに眷属たちをフルに使って、アドゥナ領内の貴族の動向を調べてもらっている。領内に領主が居る街には、書簡を送る事になっている。
ホレイズ街の守備隊による、ヴェスタ街虐殺事件やヴァズレ領主の事を簡潔にまとめてもし、貴族連合に与するのなら、マノーラ侯爵が全力を持って潰すと明記してある。反対に、領地に引きこもって、今後領内から出ないと約束出来るのなら、内戦終結後に恩赦をローザスやハーレイにお願いしてやるとも書いてある。その場合は、今後街の中にギルドと転移門トランスポートを設置する事を約束させるとしてある。一種の植民地支配になるかも知れないが、そのくらいのペナルティは必要だろう。ここまで日和見したのだから、そのくらいの事は甘受してもらおう。
アッシュからの報告では、領内に残っている領主は、殆どが僕達の提案脅迫を受け入れると返答をよこしている。一部まだの貴族も居るが、理由がある場合を除いて、アッシュには”僕が陛下から勅命を受けた事を知らせる”ようにいってある。これで一定の成果が出るだろう。これでも、まだの貴族から平定していく事になる。期限は、1週間としたので、後3日後には結果が出るだろう。
「イリメリ。」「ん?」「あぁ後3日位余裕が出来たから、ヴェスタ街の生き残りの子達に逢うのなら時間作れそうだよ?」「う~ん。もういいかな。マノーラ神殿の玄武街道の近くに、ホームを持つって頑張っているよ。」「そうなんだ。プレゼント・・・・は、しない方がいいみたいだね。」「そうだね。二人とも、面白い感じにスキルが顕現しているよ。」「そうなんだ。今度、イリメリが行く時に、二人だけであの辺りの神殿の踏破は難しいだろうから、眷属でも貸し出してね。」「了解。」「あぁそうだ、アデレード。」「なんじゃ?」「イリメリが言っていたけど、一人の子は、ヴェスタ街の旧領主の娘だって事だけど、今回の場合。ホレイズが大逆罪になるんだから、ホレイズが領主時代にやったことは元に戻されるんだよね?」「そうなるな」「それじゃ、領主は今は、誰って事になるの?」「その娘が一人生き残ったのなら、その娘だけど、男児じゃないからな。」「ねぇこういう事出来ない?」
僕が考えたのは、ヴェスタ街の領主は生前に遡って、領主になる。その時に遡って、ホレイズ領は僕の領地となるのだから、僕が、領主になる事も出来る。その子の父親に、代官としての役目を依頼して、罷免されてから今日までの代官の給与を支払う。もちろん、遺産として、その子にレインを渡るようにする。
「どうかな?」「なんか、強引じゃが、今のリンならできそうだな。」「悪いんだけど、アデレード。この筋が出来るのなら、やってほしい。そして、給与を計算して、後僕からの見舞だとしてレインを上乗せして渡して欲しい。」「いいが、渡すのなら、リンとイリメリが行ったほうがいいぞ。」「そう?了解。いいよね。イリメリ?」「そうだね。あって困る物でもないし、いいと思うよ。それに、多分受け取らないと思うよ。」「だろうね。だから・・・。そうしたら、僕のメンツが潰れるとか言ってレインじゃなくて、武器防具を渡して、後は、安全に迷宮ダンジョンを潜れるようになるまでの眷属の護衛料って事でいいんじゃないかな?」「あぁそれなら、いいと思う。ホームのレインもそこから支払えばいいよね。」「うん。アデレード。イリメリ。その筋でお願い。」「「了解」」
さて、次は、マルティンの所に行こう。マルティンは、ニグラのウォード家の屋敷に行っていると言う事だから、ミルを連れて行く事にした。屋敷の前は厳重に警護されていた。何名か眷属が混じっているようだったので、僕が門に近づいたら、すぐに屋敷にマルティンを呼びに戻ってくれた。
「リン様。ミル姉様。」「マルティン。伯爵と奥方は?」「あっ無事です。」「すこし、話が出来る?」「はい。父も母もリン様が来られるのを待っていました。」「そうなの?」「はい。」
そう言われてしまうと、これ以上待たせるのも悪いので、すこし急ぎ足で屋敷に向かった。すぐに部屋に通された。そこには、すこし疲れている様子の伯爵と奥方はまっていた。
「侯爵。この度は・・・」「伯爵。そんな事言わないで下さい。それで被害の方は大丈夫だったのでしょうか?」「領民に犠牲が出てしまいました。見舞いは行いましたが・・・。」「そうですか・・・。何か出来る事があったら・・・。」
奥方が「侯爵様。いえ、リン=フリークス様。迅速な対応ありがとうございます。でも、私達は大丈夫です。それよりも、こんな愚かな事を行うものたちに相応の讐いをお願いいたします。」「はい。約束いたします。後、1ヶ月程度でご報告出来る様に致します。」「ありがとうございます。領民もそれを一番に望んでおります。」「はい。必ず!」
「父様。母様。私も、リン様やミル姉様と一緒に行きます。いいですよね?」「・・・。」「マルティン。ここに居て欲しいとは思いますが、貴女は、リン=フリーク様の妻になるのです。ここに居るよりは、リン=フリークス様の横に居なさい。」「ありがとうございます。母様。」
「リン=フリークス様。マルティンを改めてお願いいたします。」「はい。必ず、貴族連合を打ち破って、マルティンと一緒にご報告に上がります。」「約束しましたよ。必ず。領民の無念を・・・。」「はい。」
眷属たちに集まってもらって、ミルが持ってきた新しい武器防具を渡した。これで護衛をするときにも多少やりやすくなるだろう。すでに誰が来てもオーバーキル状態には違いはないが、今の装備では威圧が出来ないから、いい武器といい防具で強そうに見せる事も護衛には必要な事だ。
時間が出来ると思っていたが、あまり時間的な余裕がなくなってきた。翌日、ローザスとハーレイに呼び出されて、ミヤナック家に行った。ルナと一緒だったが、僕が併呑してきた領地の話になった。僕としては、まがら渓谷の両側の街とそれから国境の街シャルムまでの旧アゾレム領と今はまだ立花ウォルシャタ達がいるヴァズレ街までで十分だ。それ以外の領地に関しては、今回ローザス派になっている貴族に褒美として出してもらって問題ない。僕が勝手に決めてしまった。ワロン街の領主とかはそのままにしてくれると嬉しい位だ。
ローザスとハーレイとの話は、戦後処理の話になっている。まだ終わっては居ないが、終わってからの事を話し始めないとならない位には余裕ができ始めているのも事実だ。
そんな話をしている時に、陛下からの勅命を受ける事が出来るようになった。当日のそれも1時間前に言わないでほしかったが、丁度、ローザスとハーレイも居たので、そのまま王城に行って、受けてきた。陛下と宰相と僕とローザスとハーレイだけの式典だった。形式が整った事になる。
陛下と雑談をしている時に、アッシュから連絡が入った。”ホレイズ伯爵から正式に降伏勧告を拒絶する”と連絡が入ったという。そして、その報告のさなかにローザスの所に、3伯爵から出頭を拒否する旨の連絡が入った。そこには、ローザス殿下の近くで心を乱して王国を私物化している、”リン=フリークス/ハーコムレイの両名こそ、王国の秩序を乱す者で許すことが出来ない。”と書かれた書簡が届けられる事になった。
奴らは、これで死刑執行書にサインをした事になる。

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