【旧】チート能力を持った高校生の生き残りをかけた長く短い七日間

北きつね

幕間 ヴェスタ街2

「・・・・え”?」「どうしたの?」「ううん。何でもない、なんか呼ばれた気がしただけ・・・。」「・・・。」「本当になんでもないよ。それよりも採取しよう。兄さんや父さんも沢山食べられるようにしないとね。」
こうして改めて見ると、ジェシカって美少女だよな。男装しているけど、見れば解ってしまう。胸は・・・残念だけど・・・・。「ん?どうした?」「なんでもないよ。どうしたの本当に?」「ううん。なんか、悪口をいわれた気がしただけ・・・。」「そんな、ジェシカのことを悪く言うなんて・・・たしかに、おっぱいは小さいけど・・・・。」「お・ま・え・か!!!!いいんだよ。僕は、おっぱいなんてなくても、慎ましくあればいいんだよ。ロベールみたいに、こんなに大きいと肩凝るだろう?」「ジェシカ、知っている?そういうのを負け惜しみって言うんだよ?」「ちっ違う。僕は、本当に・・・。」「はい、はい、男になるんだよね。」「そ、だから、おっぱいなんてなくてもいいんだよ」
ジェシカとじゃれ合いながら採取を行っている。誰かに呼ばれるような事もなく過ごしている、男装しているとはいえ、ジェシカは女の子。気兼ねなく振る舞えるのも大きいし、一緒に水浴びも出来るのがいい。
ジェシカの予定では、後二泊してから帰る事になっている。「ねぇジェシカ?」「なに?」「もし、ジェシカが本当に街を出ていくのなら、私も一緒に行くからね。」「え”?」「なに驚いているの?」「だって、ロベール・・・。」「ううん。もう決めたんだよ。それに、ジェシカと一緒なら楽しいだろうからね。」「いいの?本当に?」「うん。もちろん。」「やったぁぁぁぁ!!」「え?」「本当言うとね。どうやって、ロベールを誘おうか迷っていたんだよ。一人で行くって決めていたけど、出来たらロベールと一緒なら・・・・。ね。」「可愛いなぁジェシカは、いいよ、本当に一緒に行ってあげる。まずは、今回帰ったら、エドワーズさんに話をして許可をもらわないとね」「うんうん。本当の本当に本当だよ。約束したからね。」「はいはい。ジェシカを一人で行かせたらそれこそ半年で誰かに騙されたりしてそうだからね。」「そんな事ない!」
本当は、私もジェシカみたいにしたいと思っていた。今しか出来ない事だって事は解っている。あと数年したら、結婚して子供産んで・・・。その前に、好きな子と好きな事をする。そう、私はジェシカが好き。女なのに、女の子のジェシカが好き。ラップさんを好きだって言ったのは、ラップさんと結婚すれば、大好きなジェシカと姉妹になれる。そうおもったからだ。ラップさんが婚約したと聞かされた時にホッとしたのは本当だ。やっぱり、ジェシカ以外の人と一緒に居たくない。ジェシカが、街を出るのなら、私も一緒に行く。それに、ジェシカが得た英雄的なスキルは、大器晩成型。私のスキルは即実践型、赤魔法と黒魔法が両方共顕現した。そして、超実践型といわれた”詠唱破棄”が付いた。ジェシカを守る事が出来ると思って喜んだ。そして、この魔法のおかげで即結婚にならずに済んだ。守備隊に入れと命令されたが、なんとなく引き伸ばしている。街を出るのなら、早いほうがいいだろう。
「ねぇロベール。」「なに?」「ううん。何でもない。これからも一緒だよ。よろしくね。」「もちろんだよ。こんな、お胸が残念な子は、私以外に貰い手がいないだろうから、ずぅ~と一緒に居てあげるよ。」「残念ってなんだよ。でも、約束だよ。」「うん。約束したよ。」
◆◇◆◇◆◇◆◇
「なに?それは本当なのか?」「はいはい。そうですね。」「っおまえ巫山戯ているのか?」「巫山戯てなんか居ませんよ。でも、貴方におまえなんて呼ばれる筋合いはありませんよ。私の雇い主はあくまで伯爵であって、貴方ではありませんからね。ネグロ殿。」「っく。それで、お前たちは、アイランズが塵蟲達に殺されるのを黙って見過ごしてきたのか?」「そりゃぁ当然ですよ。まだ、私は死にたくはないですからね」「なっ・・・。それで、アイランズは、死んだのか?」「さて、私は最後まで見ていませんからね。」「それでおまえ。護衛の役目が務まると思っているのか?」
「は?何か勘違いされていませんか?」「勘違いだと?」「えぇ、さっきもいいましたが、私の雇い主は貴方ではありませんよ。ネグロ殿。それに、私が伯爵からいわれているのは、アイランズが横領したレインの回収ですからね。」「・・・なっ父上がそんな事を・・・。」「えぇその回収すべきレインには、貴方が懐に入れたレインも入っているんですよ。ネグロ殿。」
「なっ俺はしらん。アイランズが全部していた事だ。俺は、知らんからな」
この領も駄目かもしれないな。伯爵はまぁまともかもしれないけど、息子がクズすぎる。ましなほうでこれだからな。さて、貰った分の仕事はしたから、逃げ出すとするか、次は北方連合国ノーザン・コンドミニアムにでも逃げますかな。トリーア王家は、居心地が悪くなりそうだからな。パーティアック辺りがいいだろう。相棒も向かうって言っていたからな。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「誰か居ないのか?」「はっ。ネグロ様。何か?」「”何か”ではない。」「すぐに、守備隊を集めろ。」「は?」
こいつら解っていないのか?「わからないのか?」「はい。」「貴族が。俺の兄が殺されたんだぞ。報復しないでどうする?」「首謀者を捕らえるのですね。」「馬鹿かおまえ。平民が貴族を殺したのだぞ、選ばれた我々を殺したのだ。首謀者だけではなく、全員殺さないでどうする。」「え”?ネグロ様。すこしお待ち下さい。」「いい。おまえはここで解任する。」「・・・。」
平民が何万人いようと貴族の俺が率いる守備隊が負けるわけがない。街ごと滅ぼしてしまえばいい。「おい。守備隊の体調を呼べ。俺が自ら、貴族が何たるものか教えにいく。」
◆◇◆◇◆◇◆◇
「ラップ殿。どうしましたか?」「いや・・・。」
ジェシカに現状を知らせる方法はないか?
「どうした?」街の中が騒がしい、何か有ったのかもしれない。火の手が上がり始めた。
「何があった!?」「誰かが、門を閉めて、火を放ったようです。」「なに?消化を急げ!門がなぜ!」
「ラップ。門の周りを守備隊が外に出た者が殺されている。」「なに!」
次からつぎえと・・・。門まで急いだ。もんの上から見ると、ネグロが居るのがわかった。その前には、街から逃げ出したであろう領民が横たわっている。明らかに男は殺されて、女は連れ攫われている。「ネグロ。どういう事だ!」「おやおや平民のラップ殿ではないですか?」「おまえ!」「平民風情が偉そうに、貴族である兄を殺して、いい気になったか!!」「もとはといえば、伯爵がしっかり、アイランズを押さえつけなかったからだろうが!」「見解の相違だな。だが、もう遅い。お前たちは、貴族である兄を、選ばれた高貴な人間を殺したのだ、ここで死ね!」
矢が降り注ぐのが解った・・・。あぁぁジェシカ!!!!おまえは逃げろ!!!!
◆◇◆◇◆◇◆◇
「ネグロ様。ヴェスタ街の守備隊は全て捕らえるか、殺すかいたしました。今後どういたしましょうか?」「まだ、街の中には平民が居るだろう?全員捕らえるか殺してしまえ。こんな街滅ぼしてしまえ!」「なっ」「いいからやれ!」「しかし・・・。」
火の勢いが強くなってきた。「ネグロ様。北門に配備していた守備隊の一部が街の中に入って、街の中に火を放っている模様です」
◆◇◆◇◆◇◆◇
「はぁはぁはぁ」なんで、伯爵の守備隊が攻めてくるんだ?それも、父さん。母さん。姉ちゃん。あいつら絶対に許さない。
逃してくれた、姉ちゃんを連れて行った守備隊の顔は覚えた。絶対に、絶対に殺してやる。でも、俺には力がない。力が欲しい。あいつらに負けない、誰にも負けない力が欲しい。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「姉ちゃん。」「しっ黙って、いい。一気に走るわよ。」「うん。父ちゃんは?母ちゃんは?」「いい。私と貴方と二人だけでも逃げなきゃだめ。いい。逃げて、生きるんだからね」「ねぇ」「お母さんもお父さんも、私達・・・・。いい。次に音がしたら一気に抜け穴から森に入るわよ」「うん。」
◆◇◆◇◆◇◆◇
「ねぇジェシカ。なにかおかしくない?」「うん。」
1週間経って、街に戻ろうと思ったが、街の周りを守備隊が囲んでいる。なんか悪い予感がして、森の奥に戻った。
「だれ?」
茂みがすこし動いたように見えた。そこには、姉弟だろうか?二人の子供がいた。
「ジェシカ姉ちゃん?」「あっホアロ?ルイも一緒なの?ねぇ、ヴェスタ街で何があったの?」
ルイとホアロの姉弟だ。二人とも軽いやけどと全身が傷だらけになっている。私の顔を見て、気を失ってしまった。ここに居ると、守備隊に見つかるかもしれないので、二人を抱えて、森の奥の洞窟の中に避難する事にした。
身体を休ませるようにして、火を起こして、二人が目をさますのを待っていた。先に目を醒ましたのは、ルイだった。
「ルイ。解る?」「うん。ジェシカさん」「街は、ヴェスタ街はどうなったの?」「・・・・解らない。急に、伯爵様の守備隊が街を囲んで、何か叫んでいて、火を放って・・・・。お父さんとお母さんが・・・。」「ルイ。ゴメン。知っているのはそれだけ?」
横に大きく首を振るルイ。そして、いいにくそうにしている「ルイ。教えて・・・何があったの?」「うん。エドワーズ様がいつものように領主様の事で、伯爵様の所に行って、帰ってきたら・・・。」「お父さんがどうかしたの?兄さんは?」「・・・・。エドワーズ様とジョアンさんの、首が・・・。」「・・・・お父さんとジョアンさんの首?」「うん。殺されちゃった・・・・って皆が話していた、街の中央広場で首だけが・・・。ジェシカさん?」「うん。大丈夫。聞こえているよ。それで?」「・・・うん。ラップさんが、領主の所に話しに行って・・・。」「うん」「街の大人たちも一緒に行ったらしいんだけど、そこで領主と家族を殺しちゃったみたいなんで・・・ひっ」「ゴメン。怒ってないよ。それで何があったの?」「ゴメンなさい。わからないのです。大人たちが街の中央に集まって・・・。」
あぁ兄さんは、父さんとジョアンさんの仇を討ちに行ったんだな。
「ぁぁああぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」「ジェシカ!」「ジェシカさん」「ジェシカ姉。」
三人が私の事を見ている。ロベールは、私の両手を握ってくれている。
(殺したい。殺したい。殺したい。)
「大丈夫だよ。ロベール。ありがとう。それで、ルイ。街の大人たちは?」「ゴメン。わからない。僕達は、父さんと母さんからいわれて逃げ出したから・・・。でも、街の周りを守備隊が囲んでいて、門から出たら、殺されちゃうから、うまく逃げなさいっていわれた。」「どうやって?あぁあの穴を使ったのね。」
そう、ヴェスタ街には、森につながる抜け穴がある。子供しか使えない穴で街に住むものなら知っている。
「うん。でも、僕達が穴に入った後で、何か大きな物音がしたから、もしかしたら、穴が塞がっちゃっているかも・・・・。」「そっか・・・。父さん。兄さん。」「ジェシカさん?」「ロベール。」「うん。ジェシカ。」
逃げよう。街には戻れそうもない。それに、父さんも兄さんも母さんも・・・ううん。今は考えない。ルイとホアロとロベールと生き残る事を考える。
「姉ちゃん。父さんと母さんを助けに行かなきゃ」「ホアロ。」「何、ジェシカ姉」「いい。ホアロの父さんと母さんが、最後に言った言葉覚えている?」
多分、”逃げろ”か”生きろ”だろうと思う。あの二人なら、そのどちらかを言っていると思って居る。
「うん。”逃げて、生きろ”っていわれた。」「それなら、まずは約束を守らないと、僕とロベールとルイとホアロの4人しか今はいないけど、生きよう!生きて、力を付けて戻ってこよう。」「うん。そうしたら、父さんと母さんをたすけられる。」「解らない、でも、今戻っても、約束を守れないから、まずはホアロがした約束を守ろう。」
「ジェシカさん。それでどうします?」「ヴェスタ街には戻れない。全員が犠牲になったとは思えない。何処かに向かうにしろ、向かう先は・・・・。」「どこですか?」「ジェシカ?」
ロベールはわかったようだ。
「マノーラ侯爵領!」
生き残りが居るとしたら、向かうのはマノーラ侯爵の所しか考えられない。私達も、ここで身を隠して、マノーラ侯爵領に向けて出発する事にする。幸いな事に、狩りと採取で食料は困らない。野営する道具も揃っている。すこしの路銀も手元になる。どのくらいかかるか解らないが、決めた。マノーラ侯爵の所で強くなる。強くなって、父さんと兄さんと街の皆の仇を取る!

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