【旧】チート能力を持った高校生の生き残りをかけた長く短い七日間

北きつね

アドゥナ街偵察

マシュホム街は周囲を取り囲んでいる。マシュホム領内の街に関しては、全て配下におさめている。村々に関しては、今サリーカが中心になって商隊を派遣している。それも明日には終わると報告があがってきている。村々には、村長と話をして問題がなければ、そのままで問題がありそうな場合には、廃村にする事が決定している。廃村の場合でも、一度村長一家を追放した上で新たに入植を行う事になっている。その時には、眷属を派遣して村を囲う様に塀は堀を作成する事にしている。
マシュホム街に関しては、暫く様子見する事にした。攻めれば攻め落とすのは容易だろうとは思うが、領民を盾にされたら対応が難しくなってくる。壁越しに対話を行う準備を進めている。ただ、領主の関係者としては受け入れがたい要求を出しているのは解る。その為に、不満が街の中から出るように締め付けを行っている。
マシュホム街を眷属に任せて、僕はすこし確認したい事があるので、アドゥナ街に行く事にした。その事を、ミルとイリメリに告げたら烈火の如く怒られた。「リン。解っているの?敵の本部に乗り込むって何考えているの?」「だって、イリメリ。街の様子を自分で見ておきたいんだよ。」「リン君!!あのね。貴方は、私達は勿論、いろんな人に責任を持つ立場なんだよ?」
あっイリメリが本気で怒っている。日本に居た時を思い出してしまう。「リン君。解っているの?」「うん。ゴメン。それは理解しているんだけどね。どうしても・・・ダメ?」「・・・・。ミル。貴女もリンを止めてよね。」
「ねぇリン。どうして自分で行きたがるの?僕やイリメリやエミールじゃダメ?」「そうだよ。リン君。私達が行ってくるよ。」「それは、僕がイヤ。ミルやイリメリやエミールには行かせられないし、できるだけ僕の側にいて欲しい。」
「「なっ」」「リン。その言い方はズルいよ。それじゃ僕も同じだよ。リンには僕の側に居て欲しいからね。」
多分、これは平行線をたどる状況になってしまうだろう。妥協案を提示しないとダメなんだろうな「ねぇそれじゃ、ミルとイリメリと3人で偵察に行かない?エミールとオカムとウィンザーには、アドゥナ街の周辺をグリフォンで廻って地形を確認してほしいんだよね。」
「・・・・。ミル。どうする?」「う~ん。僕としては、それなら納得できる。イリメリもいいよね?」「そうだね。それなら・・・。」「よし、それじゃまずは、アドゥナ領に移動しよう。」
皆を連れて、アドゥナ領に転移した。街には行った事がなかったので、一番近いであろう場所まで移動してからグリフォンで移動する事にした。そのまま僕とミルとイリメリは、街に入る人の影に潜り込んで街に潜入した。エミールとオカムとウィンザーには、近くを流れる川や山の様子を調べてくるように言い聞かせた。周りを調べ終わったら、そのままニグラ支部に帰って、地図を書き出すように指示をだした。それが、これからの戦略上必要な事を認識させた。
無事、街の中に入れた。「ねぇリン。それで見たい物って何?」「うん。まずは、街の様子かな。」「街の様子?」
街の商店はどうなっているのかとか、領民はどうしているのかとか、食堂は料理を出せていのかとか、自分で見てみたくなった。
「それじゃデート気分で散策しようか?」「うん。それもいいけど、街中がやっぱり人が少ないな。」
屋台はまだやっているようだ。「おっちゃん。串を3本。」「あいよ。見ない顔だけど、なんでこんな時に来たんだ?」「え?」
おっちゃんに串の代金の600レインを払いながら、世間話をしてみる事にした。「おっちゃん。なんでこんなに人が少ないの?」「なんだ、お前ら。どこから来たんだ?」「あぁホレイズ領からいろんな街を廻ってやっとアドゥナ街に着いたんですよ。暫く、街を渡り歩いていたから、何が有ったのか知らなくてね。守備隊の人に聞いても、知らんっていわれるだけでね。」「まぁそうだな。なんだ・・・お前らよく見たら、最近パシリカを受けたばかりか?」「去年ニグラで受けて、そのままいろんな所を3人で渡り歩いてきたんですよ。」「そうなんだな。それなら、ニグラに居れば良かったのにな。こんな時期に来ても・・・。」「おっちゃん。何があったの?なんか、この辺りの村や街が入るのにも時間かかるし、いろいろ調べられて気持ち悪いんだよね。」
おちゃんはすこし困った顔をして居る。話せないのか、知らないのか・・・。「あのな。ここの領主様は知っているだろう?」「たしか、アドゥナ伯爵様だよね?」「あぁそうだ。伯爵様が、ミヤナック伯爵と喧嘩してな。今、それで入場が厳しくなっているんだよ」「へぇそうだったんだ。」「喧嘩って何があったの?」「それは、俺も知らないけど、領主様の所に、いろんな貴族が集まってきているから、俺のような商売の人間には嬉しい悲鳴だったんだけどな」「だった?」
「ねぇおじさん。串をもう一本頂戴。その一番高いやつ・・・。あっ3本頂戴。」
イリメリが横から串の追加を言い出した。「おぉおお。いいのか?」「うん。お願い。」「そうか、ちょっと待ってろよ。」
屋台ではちょっと高めな一本800レインになっている。奥から、おっちゃんは串を3本持ってきて、焼き始める。辺りになんとも言えない。匂いが立ち上ってくる。何の肉かは調べれば解るけど、あえて調べない。焼き方は、単純に塩を振っただけのようだ。肉の値段だけって感じなんだろうな。
「おぉ。それでな。この肉も残り少なくなってしまっているんだよな。お前たちで最後かもしれないな」
おっちゃんに、3,000レインを渡した。「おっちゃん。いろいろ教えてよ。お釣りはいらないからさぁ」「いいのか?」「うん」「あんまり俺も知らないぞ」「いいよ。お肉が焼けるまでに聞かせてよ。」「あぁいいぞ」
おっちゃんは手慣れた手つきで、肉を焼いている。「その肉が最後って仕入れられないの?」「・・・あぁ普通の肉や野菜はまだ仕入れられるんだけどな。高級品になるような物は、入ってくる数が少なくなって、伯爵様達の所に納品されて終わりだって話でな。」「へぇそうなんですね。そんなに、伯爵様の所に人が居るの?」「ん?そうだな。かなりの数だって話だけど、俺は知らないな。」「それじゃ食べ物も大変だね。」「あぁそうだな。それに、商人が来るのが減っていてね。伯爵様からの伝達では、近くに大規模な魔物の集団が出て商隊が襲われてしまったって事で、この前、守備隊が集められて、討伐に向かったから、しばらくしたら元に戻るんじゃないか?」「それってどのくらい前?」「そうだな。かれこれ一ヶ月位になるんじゃないか。」
『ねぇリン。魔物の討伐って・・・。』『あぁ多分、ヴァズレだね。』『魔物扱いされているよ』『丁度いいと思うよ。戦っているのが、マノーラ侯爵って言われているよりはいいよ。』『たしかに!!』
「へぇそれじゃ守備隊が戻ってきたら、魔物の素材とかでまた美味しい物が食べられるんだね。」「どうだろうな?」「市場には出てこないの?」「あぁ前からな。伯爵様が高値になりそうなものを搾取して、その後で守備隊で分配するからな。大抵クズ肉の様な物しか市場には出てこないからな。」「へぇそれじゃ大変だね。」「おぉそうだな。でも、まぁ守備隊が帰ってくりゃぁ魔物の討伐も終わったって事だから、そうしたら商隊も来るだろうからな。」「そうしたら、また来ますよ。」「おいおい。そんな事言わないでまた来いよ。」「そうだね。暫くは、街に居ると思うから、また来るよ。」「おぉほら焼きあがった。」「ありがとう。」
おっちゃんから串を受け取って、その場を離れた。串を食べながら、「イリメリ。どう思う?」「ん。美味しいけど、臭みを消す為の工夫が欲しいね。」「うん。そうだね。塩だけって言うのなら、もう少し工夫が欲しいかな。」「二人ともわざとだよね?」
「串の話は置いておくとして、守備隊は戻ってこないとなると、街の人たちはどう思うんだろうね。」「今回は、戻ってくるんじゃない?ほぼ手ぶらだけどね。」「あぁそうかミヤナックに赴いた方はほぼ全滅で、ヴァズレ領は、男爵が裏切り者って事になったんだよね」「そ。そろそろ着いてもいいことだと思っていたんだけどね。」「リンは、それを待っていたの?」「うん。でも、それは多分、伯爵の館での話だから、眷属に調べてもらう必要があるんだよね。多分ね。」
串を食べながら、街を歩いてみるが、活気があるとは言えない。店はまだ開いてはいるが商品が少なくなっているのか、陳列されている物が少ない印象を受ける。
食堂も宿屋もまら開いては居るが。客があまり入っている印象がない。守備隊はどこに居るのだろう?
『リン様。』『エミールどうした?』『はい。街からすこし離れた街道沿いに、守備隊と思われる人たちが駐屯していますが、どうしましょうか?』『どうするって?』『あっはい。殲滅しますか?』『いや。いい。規模だけ調べておいて欲しい』『解りました。』
「ねぇミル。エミールが殲滅するって言っているけど、何か教えた?」「なんで僕に聞くの?」「なんとなくね。」「・・まぁいい。多分、リンの敵は全部殺すって事が身についているんだと思うよ。」「そうか・・・。」
「ねぇリン。それで、エミールはなんだって?」「あぁ守備隊は、街には入らないで、街道沿い駐屯しているみたいだよ。」「へぇまぁ確かに、この街だと全部の守備隊は入らないね。」「うん。それにしても、食料とかどうしているんだろう?」「街から持ち出していれば解るだろうからな。」
食料を近隣の村や街から徴収しているのだとしたら、崩壊は案外早いかもしれない。
『エミール。守備隊が駐屯しているのは一箇所だけか?』『いえ、あれから高度を上げて探してみた所、5箇所ほどに分かれています』『そうか、近くに街や村はあるのか?』『あっはい。駐屯している場所は村や街の近くです。』『そうか、ありがとう。近くの地形をあわせて書いておいてくれ』『解りました』
「ミル。イリメリ。多分守備隊は、近くの村や街から食料や物資を徴収している」「なっ・・・。」「え”それじゃ養えでしょ?」「そうだね。でも、養えなくなったら、守備隊は場所を移動するんじゃないのかな?」「あっ!!」「・・・。それって・・・。」「あぁそのうち破滅するだろうね。」「どうする?」「う~ん。どうしようかね。」
助けられそうなら助けるけど、今回は難しいかな。守備隊が近くに居る事もだけど、物資を搬送しても、守備隊に徴収されて終わりだろうな。それに、物資を搬送する方法がないんだよな。
「まぁなるようにしかならないかぁ」「そうだね。」
それから、3人で宿屋に部屋を取って、一泊する事にした。「ねぇリン。なんで一泊したの?」「ん?僕が、ミルとイリメリと泊まりたかったって言うのじゃダメ?」「・・・」「リン。それはそれで嬉しいけど、本当は?」「もしかしたら、夜に守備隊が戻ってきているのかなとか思ったんだよ。それに、娼館とかもあるだろうから、夜の方がわかりやすい情報もあるからね」「あぁそうかぁそれで外には行くの?」「ううん。行かないよ。必要なさそうだからね。それに、外に出てトラブルに巻き込まれたら嫌だからね。」
本当は、伯爵の屋敷に忍び込もうかと思ったんだけど、ここまでこれれば十分だろうな。後の調査はアッシュに頼むとしよう。
3人だけで寝るのは初めての事だし、敵の只中。市井の者は、僕の事がわからないかもしれないと思っても、伯爵や男爵には僕の事が解る人間も居るだろう。夜の街を歩いていて、ばったり会うのも面白くないから、おとなしくしている事にしたけど、ミルとイリメリに関しては、バレる事もないだろうから、昼間やっていなかった、飲み屋を見に行ってきてもらっている。場所は、宿屋のオヤジに聞いたらおすすめを何店舗か教えてもらえた。
ミルとイリメリには、見せの雰囲気よりも、客層を見に行ってもらった。店には入らないで見てきてもらうだけにした。僕が言うのもおかしいけど、超絶かわいい二人が夜のそんな店に入った。絡まれる以外の未来が思いつかない。
ミルとイリメリが帰ってきたようだ。「どうだった?」「あぁガラガラだったぞ」「え”そうなの?」「うん。リン。僕とイリメリで店に入っても問題無いくらいガラガラだったよ。」「・・・。入ったの?」「・・うん。ゴメン。女性しか居なかったから・・・。」「それならいいよ。それで何か解ったの?」「あぁ」
ミルとイリメリが見てきた所だと、飲み屋としては、以前は守備隊が主な客だったが、最近は守備隊が来なくなってしまったという。やはり、飲み屋としても守備隊に食料を提供していないと言う事だ。ただ、徐々に食料品や飲み物の仕入れ値段が高くなってきているのだということだ。影響がこんな所まで出始めている。やはり、守備隊は魔物討伐に出かけた事になっている。そして、一つ大事な事が解った。市井の水は、街の中心にある井戸でまかなっているのだという。必要になったら、水を汲みに行く事も出来るし、商売している人なら、水を汲みに行くだけの商売をしている人がいるので、その人に依頼するのだという。飲み屋のママさんと話をしてきた情報だということだった。
他にも伯爵の人となりとかを聞いてきてくれていた。特権階級の考えに凝り固まった人間だと言う事だ。選民意識の塊だと言っても良さそうだ。
そのまま、ミルとイリメリから夜の様子を聞きながら、就寝する事にした。ベッドも固いし、布団も柔らかくないが、しょうがない。ミルとイリメリに抱きつかれながら寝る事にした。
次の日に、宿屋を出て、朝市がやっているって事だったので、朝市を見てから、ニグラに帰る事にした。殆どが近場で取れる物や街の城壁の中で栽培出来る物だけになっていた。朝市まで残っていてよかった。アドゥナ街は城壁の中で栽培している作物があると言う事で、まだまだ売れる物が残っていると言う事だ。
籠城戦をやるのなら、作物を先に叩く必要が出てきそうだな。この辺りのこともアッシュに調査させる事にしよう。

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