【旧】チート能力を持った高校生の生き残りをかけた長く短い七日間

北きつね

マシュホム侵攻計画

国境の街シャルム攻略はあっけないほど簡単に終了した。そもそも、襲撃されると思っていなかったようだ。男爵位を持つ者を捕えたと連絡が入ったが、会うのも面倒なので、解放する事にした。手ぶらでは可哀想なので、おもいっきり馬鹿にした書簡を持たせた。それとは別に、自然な感じで情報が渡るようにして、僕達の行動を示す様な書簡を拾わせて手柄として持って帰らせる事にした。どうせ、奴らは密偵を放っては居ても、僕の所までは入り込めていないのは解っている。あまりにもそれじゃ情報が少ないだろうから、情報を持たしてやる事にした。
まずは書簡には『不当にも占拠していた国境の街シャルムは解放させてもらった。税も元の水準に戻した。逆賊が何の権限が有って税を徴収したのか?申し開きがあるのなら、話を聞いてやるから出てこい。単身で来られないのなら、全員でお手々繋いで震えながら来い。怖くて外を歩けないのなら、お前たちの所まで兵を連れて迎えに行ってやる。』
拾う書簡の方は、僕が各守備隊に命令を出す為の書簡になっている。まずは、マシュホム街の解放を狙った指示だ。マシュホム街は、草原の中に街が存在する。その為に、魔物被害が比較的少ない。攻め落とすには、大兵力で攻めるしか無く、攻略は難しい。っと、相手は考えるだろうから、闇夜にまぎれて、少人数で街に潜入して、攻めてきた僕の兵を攻めるふりをして中に招き入れると言う作成を行う。マシュホム街さえ落としてしまえば、後は烏合の衆。子爵家や男爵家を攻め落とす必要はない。ホレイズ領は、自領だけで領内の消費を賄う事が出来ないので、物資の流入を防ぐ事で瓦解するだろう。それから攻め込んでも問題はなく、流入する商隊を全て拿捕する様に指示が書かれている。
こんな見え透いた手に引っかかるとは思えないが、この書類を本物と見るか偽物と見るか、ブラフと見るか、情報が錯綜する事で、相手が混乱してくれたら嬉しい程度の嫌がらせだ。
それに、実際に今、マシュホムの街を攻め落とす準備をしている。今回も眷属だけで攻め落とす事にしている。
マシュホム領内の全ての街に同時に攻め込む。村も対象にしている。全ての配置が終わるのが、2日位だと言われている。
捕えた男爵がアドゥナに到着するのが、早くても、4日後だと仮定して、そこからもし領内に戻るのだとしても、2日はかかる。準備をするとしたら、もう一日必要になる。それまでに攻略を終えればいい。攻略自体はそれほど難しくなないだろうと思っている。難しいのは攻略後の統治をどうするのかだ。僕としては、民主主義的な手法でもよいかと思ったのだが、アデレードからまだ早いと言われてしまった。確かに、意識が追いついていない時にやっても、何もしなかった人間が貴族のように振る舞ってしまうだけだ。ローザスとハーレイに相談したら、攻略した”逆賊”の街は、逆賊が不法占拠していた物をマノーラ家が奪還したのだから、マノーラ家の領地として問題はないという事だ。問題は、そこではなくて、統治する人間が居ないという事だと説明すると。多分、現地で”代官”を務めている人間は居るだろうから、とりあえずは”マノーラ家の領地”になった事を認識させた上で、代理で任せればいいだろうという事になった。その後、早急に、街に転移門トランスポートを設置する。ギルドの出張所を作成する所まで1セットで考えておけばいいだろう。守備隊は、眷属を100も配置しておけば大丈夫だろう。
これらの決定事項を皆に伝えた。マシュホムの次はホレイズ街だが、こちらも準備を行っている。ホレイズ街は特殊な街で街全体はそれほど大きくないが、街には守備隊しか住んでいない。土地が狭いせいなのか、すこし離れた場所に村々が点在している形になっている。”ワロン街道”と呼ばれているが、川と山に挟まれた狭い場所に街が作られている。ワロン街道沿いに村々が点在している。村々には商隊を派遣する事が決定している。その上で、難民化する前に入植希望者を募る事にしている。村に入った物資は、村人によって街に運び込まれるだろうけど、その程度はしょうがないと割り切る事にする。ホレイズ街に直接入る事だけを阻止していればいい。
タシアナに頼んでいた物を受け取りに行く事にした。
「タシアナ。出来た?」「あぁリン。出来ているよ。でも、そんな物どうするの?」「ん?呼びかけに使おうかと思ってね。」
僕が、タシアナに頼んでいたのは、拡声器だ。城攻めをしている時に、降伏を呼びかける事も出来るし、馬鹿にする事も出来る。これで戦局が大きく変わる事はないかもしれないけど必要な道具である事は間違いない。こんな軍事利用する物ではなく、遊びで豊かになるような魔道具だけを作って暮らせるようになりたい。
個別に話していると埒が明きそうにない。皆に話す必要はないので、今晩にでも皆と話す事にした。移動時間が圧倒的に早いからしっかり時間をかけて考えて準備出来るのが、一番大きなアドバンテージだと思っている。
さて、ニグラの執務室に戻ると、アッシュが島から来ていた。なんでも、島に戻ってきて欲しいそうだ。
ニグラ支部での用事もないので、そのまま、島の王城に戻った。眷属たちには準備を行わせている。明日には第一陣が出立する様にしておくように命じてある。
王城の執務室に入ると、ガルドバが戻ってきていた。「ガルドバさん。ありがとうございます。」「リン。本当に、占領しなくてよかったのか?あの兵力なら問題なく占領出来たぞ?」「うん。だろうとは思うけど、あそこまで蓋しちゃうと逃げられなくなって、やけっぱちになって攻められたら嫌だからね。逃げるのなら、逃げてもらった方がいいからね。」「おぉ・・・そうか?」「それで、何か問題でも有ったのですか?」「あぁ違う違う。戦況報告と、リンに頼みがあってな」「なんでしょうか?」「・・・あぁ・・・一緒に戦った奴らに何か褒美を与えて欲しいんだよ。ダメか?」「え?」「あぁやっぱりダメか?何日か一緒に居て気がいい奴らで....な。負け戦になるって判っていても必死で準備して、しっかりやってくれたからな。何か褒美を出してやりてぇんだけどな」
「いやいや。褒美は出すつもりで居ましたよ。今回の攻略戦で一番むずかしい役どころをやってくれのが、ガルドバさん達の部隊ですからね。」「そうか?本当か?」「あっはい。何がいいですか?報酬としては、金貨1枚を全員に振り込んであると思います。ですので、褒美は、レイン以外で考えてもらえるとうれしいです。」「・・・えぇぇぇ金貨一枚。100万レイン?だと。」「えぇ少なかったですか?アデレードに聞いた相場だと思うのですが....。」「おまえ馬鹿だろう?」「それは酷いな。少ないのなら、別の褒美で調整しますよ」「違う。違う。多いんだよ。アデレードって殿下だろう?王宮の守備隊の給与と一緒にするなよ。それも、あっちは月だぞ。俺たちは、正味5日程度だぞ。おまえ解っているのか?」「へぇそうなんですね。今回の戦いはそれだけ重要だったって事で納得してくださいよ」「あぁ解った。解った。それじゃ、褒美は要らないかな。」「えぇぇそんな・・・今回は特に、精神的にも負担だっただろうから....な」「そうだな。そういや、リン。おまえの国の守備隊はまだ決まっていないんだよな?」「うん。国として出来たばかりだからね。」「それならどうだ?俺たちをそのまま守備隊にしないか?」「それは、僕としてもうれしいですね。でも、守備隊ではなくて、”軍”として編成しますけどね。」「”軍”?」「そうですね。守備隊と変わらないのですが、呼び名が変わってもう少しわかりやすくするつもりです。」「そうなのか?」「まぁいい。それで、その”軍”に編成してくれるのか?」「勿論です。条件は3つですね。」「なんだ?」「簡単な事です。”軍”に希望する人は全員ゴットケープ島に移住してもらいます。」「それは当然だな。ほかは?」「そして、全員が契約を結んでもらいます。」「それも当然だな。役職を決めて契約するのだろう?」「はい。そのつもりです。それでもう一つは?」「これがもっとも大事な事です。」「なんだ?」「はい。ガルドバさんがその”軍”の責任者になる事です。」「・・・・なにぃぃぃぃ?!それは、俺に守備隊の隊長をやれって事か?」「そうですね。表の軍隊の隊長ですね。呼び名は、”将軍”か”大将”ですけどね。個人的には、ガルドバ大将の方がいいかなって思うのですけどね。」「・・・おまえなぁ・・・でも、それが条件なんだな。」「そうですね。信頼できる人に王国の暴力機関を任せたいと思っていますからね。」「・・・・。」「どうでしょうか?」「解ったよ。リン。おまえに使われてやるよ。」「ありがとうございます。軍の内部の人事は、ガルドバさんに一任します。あまり無理じゃなければ、それで通します。」「わかった。」「そうですね。さしあたって、副官を誰にするのかを決めて下さい。そして、次の御前会議の時には、ガルドバさんと副官で出席して下さいね。」「わぁーた。」「お願いします。編成が決まったら教えて下さいね。」「あぁおまえが居ない時には、どうしたらいいんだ?」「そうですね。シュトライトか、イリメリかアデレードに話を通しておきます。」「了解。それじゃリン。これからもよろしくな。」
ガルドバさんの隊を中心に軍隊を編成出来るのが大きい。人数はまだまだ少ないけど、これから増やしていけばいい。
裏の軍隊は、眷属で構成するが、表に出せるわけではない。集まり次第だが、ガルドバさんだけに権力が集中するのは良くないし、勘違いする輩が出てきても困る。エルフを中心とした遊撃部隊と獣人を中心とした突撃部隊も合わせて作る事にしよう。軍編成は、追々やっていくことにしよう。暫くは、眷属をうまく使って対処していけば大丈夫だろう。それに、いきなり島が攻められるような事もないだろう。
ガルドバさんが執務室から出ていってから、溜まっていた書類に目を通す。しばらくしたら、シュトライトが面会を求めてきた。
「おじさん。今日の面会の理由は?」「まず、リン様。おじさんは辞めて下さい。私は、貴方の部下なのですから・・・。」「はいはい。それで?」「あっはい。各国の大使がリン様にお会いしたいと面会を申し込まれていまして、どういたしましょうか?」「ん?モルトにではなく、おじさんの方に話が言っているの?」「・・・(はぁ)そうです。ギルドの事でのお願いがあるのだとか言っていました。」「それで実際には?」「多分ですが、モルト殿に申し込んでも色好い返事がもらえないので、こちらに来たのだと思います。」「そうか。おじさんはどう思う?」「別に無視してよろしいかと、問題なければ、私が対応しておきます。」「そうだね。それでお願いするよ。ただ、ゼロ回答ではいい気分にならないだろうから、1年後を目処にパーティを開くからその時に話が出来ればと伝えておいてくれ。」「かしこまりました。優先的に、個別面談すると答えてよろしいですか?」「うん。問題ないよ。」「ありがとうございます。それで今後はどうしましょうか?」「う~ん。婚姻とか妾とかの話じゃなければ聞いておいて欲しい。婚姻や妾では、僕の興味を引くことが出来ないとだけ伝えておいてくれると嬉しい。交易の話なら喜んでするって伝えておいて」「かしこまりました。それとギルド支部の作成に関してはどうしたしましょうか?」「人員の確保ができそうならOKだよ。」「わかりました。それならば、暫くは保留としておきます。」「やはり人手不足化?」「はい。徐々に増えては居ますが、ギルドを任せられるような人材は稀有です。」「そうか、学校の卒業生が増えてくるまでは人材不足は続きそうだな。」「そうですね。その辺りの事を含めて、ナッセ殿が後ほど来られます。」「そうか、解った。ありがとう。」
シュトライトが退出した。やはり面談にかこつけて、縁談を持ち込んできているのだろう。エミールにモルトを呼びに行ってもらった。
モルトが来る前に、書類に目を通し終わった。島の開発は順調のようだ。陳情も上がってきていない事から、各部署で処理しきれているのだろう。問題は、人材不足だけだと認識していいようだ。
「リン様。お呼びと伺ったのですが?」「あぁモルト。悪いな。また暫く留守にするから、その間の事をよろしく頼むな。」「はい。かしこまりました」「それから、シュトライトには言ったんだけどな。他国の王族や貴族や商人からの婚姻話が来ているんだろう?」「・・・はい。」「そうか、僕本人でなければダメって物以外は、建国時に僕の部下や貴族になる連中とのお見合いを催すからそこに参加して欲しいと伝えてくれ。」「かしこまりました。」「あと何か問題はあるか?」「人手不足以外の問題はありません。」「そうか、こっちでも人手不足か....。」「はい。王家として最低現の体制は作れましたが、体制維持にはもう少し人数が必要です。」「そうか解った、なんともならないけど、内乱が集結してから考える事にしよう。」「かしこまりました。リン様。暫くの間、眷属の方々を使っても良いでしょうか?」「ん?いいよ。サラナとウーレンに言って眷属を派遣してもらって、どんな事をさせるかで変わってくるとは思うけどね。」「ありがとうございます。」「解っていると思うけど、国家の中枢や責任がある立場には添えないようにしてね。」「はい。心得ています?」
ミルが不思議そうな顔をしている。「ねぇリン。どうしてなの?眷属でもカエサルやヒューマとかは、十分政治的な判断も出来ると思うけど・・・。」「うん。それは解っているよ。でも、眷属は、僕と一緒なんだよ。」「あぁそうか、悠久の時を生きる物が国家に入ったら、結局、僕達と眷属たちだけで全部決めていっちゃうね」「そ。それはいいとは思えないからね。最終的には、民主主義見たいな国家を目指しているとしたら、僕達や眷属は弊害にしかならないからね。」「そうだね。いつまでも僕達が忙しいのは嫌だからね。」「そ。早く楽が出来る状態にしないとね。」
それから、現状の資産状況や今後必要になるであろう物をモルトから聞いた。レイン的には余裕がある。多分、5年位は無税でもやっていけるくらいの資本が溜まっている。国家的な事だから無税にする事は出来ないけど、建国から2年間は無税とかにしてもいいのかも知れない。どうせ、眷属が採取してきた素材を売りに出せば十分な利益になる。それに鉱石が取れるようになったのは大きい。金や銀などの通貨に使われるような物は採取は抑え気味にしている。ミスリルや鉄鉱石や石炭を主に採取している。武具や魔道具を作るのに、鉱石は必要になっている。その為に、これらの物は際限なく採掘を行っている。
「エミール。今日は、島の屋敷で休むから、皆に来れそうな人間は、夕飯後に足湯で話をしようと伝えておいて・・・ね。」「はい。解りました。」「ミルはどうする?」「猫のしっぽキャットテイルに顔出してから、屋敷に行くよ。」「了解。僕も時間があるから、久しぶりに行こうかな。」「うん。一緒に行こう。みんな喜ぶよ。」「そうだね。それじゃお邪魔しようかな。」「うん」
ミルと二人で、ミルの店に転移した。リザーブされている席に座ると、足下に贔屓に茶トラとクロネコが擦り寄ってくる。食事は屋敷で取るので、ここでは飲み物だけにする。セルフサービスになっている飲み物からミルが、南方連合国サウスワード・コンドミニアムの小国で食べられていた”メロン”をジュースにした物を持ってきてくれた。実験的に導入している氷の魔道具で軽くジュース全体を冷やせばシャーベット状になって美味しくなる。密かなブームだ。ただ、まだ大量に仕入れていない為に、数が限られているのが残念だ。僕達は気にならないが、アデレードに言わせると、この緑色の飲み物は不気味に見えるようだ。ミルは最近お気に入りの白猫を膝の上に乗せて、戯れている。「そういえば、リン。この周りの土地をタシアナとイリメリとフェムとオイゲンが購入したの知ってる?」「そうなのか?」「うん。この店の成功を見て、ニンフにせがまれたようなんだよ。」「へぇ・・・そうなんだぁ。ん?でも、オイゲンはどんな店を?」「・・・・あの馬鹿は・・・・。コスプレ喫茶をやるんだって・・・。」「あぁエルフリーデに怒られなきゃいいんだけどな。」「まぁ大丈夫なんじゃない。なんだかんだ言って、ラブラブだよ。」「それならいいんだけどね。オイゲンの奴が本気だしたらヤバそうな店になりそうだな」「うん。アルマールの所に衣装を依頼しに行っていたよ。」「あぁぁスク水とかつくらな・・・きゃ・・・。え”?マジ?」「うん。メイド服から、チャイナ服、セーラ服や某A○Bの衣装の様な物とかね。」「マジ?」「大マジ!ブルマとかも頼んでいたけど、アルマールがスク水とブルマは却下していたよ。」「そうか、それなら・・・よかった?」「ううん。服飾関係の店を訪ねて作れそうな店を探しているって話だよ。」「その情熱を違う所にぶつけてほしいな」「全くだね。でも、エルフリーデが黙認しているから、僕達も黙っている事にしたよ。」「そうか・・・解った、それとなく、オイゲンに話をしておくよ。」「うん。でも、僕もリンが着て欲しいって言ったら着てあげるからね。言ってね!」「おっおぉおお」
「リャノ。居る?」「あっオーナ。それに、リン様。」「うん。お邪魔してます。」「いえ。いつでもお待ちしております。」「オーナそれで何か?」「うん。また暫く来られそうにないんだけど、レインは足りている?」「オーナ。何度もいいますが、こんなに必要ないですよ。それに、帳簿をお渡しいたしましたが、すでにこの店は黒字なんですよ。減るような事はないです。」「そうか、それならいいよ。娘さんは学校?」「はい。」「うん。良かったよ。」「冒険者も問題ない?」「はい。明日、最後の一部屋も埋まります。」「へぇそうなんだ。」「はい。それでギルドの方から、登録パーティ分の支払いをまとめて払いたいと言ってきたので、OKしておきました。」「うん。ありがとう。」
「ねぇミル?ギルドからの支払いって?」「リン。知らないの?」「うん。最近、そっちの事をフォローしていなかったから、イリメリとフェムとサリーカに任せっきりにしていたからね」「あぁこの店の様に、パーティホームを貸し出している場合に、支払いの方法は、パーティが別々に渡してくる場合と、ギルドがGRから天引きして建物のオーナに渡す場合が有るんだよ。」「へぇ家賃の引き落としみたいな感じ?」「そそ。足りなかったら、ギルドが建て替えてくれたりするから、オーナにはいい制度だよ。それに、数ヶ月とか護衛で旅に出るのも珍しく無いでしょ。その時でも引き落とされるから双方にとって便利なんだよ。」「あぁたしかにね。段々冒険者が増えてきたって事なんだね。」「そ、今までは護衛や守備隊への編入だったけど、この街なら冒険だけで食べられるからね。すごい勢いで増えているよ。」「そうなの?」「うん。僕の所も15部屋が埋まってしまったからね。」「猫のしっぽキャットテイルは、寝泊まりも出来るの?」「うん。部屋は全部日本風で言うと、ワンルームだけど20畳位はあるからね。区切って使っているパーティも居るよ。」「へぇ~」
偶然、素材収集に出ていた冒険者パーティが帰ってきたので、時間が有るようなら食事をおごるからって条件で話を聞くことにした。必要な物や問題点がないかを聞いてみたが、今の所は良さそうだ。唯一あったのが、将来の事だった
「将来?」「あぁこんな事を考えているとって思われるかも知れないけど、いつまで冒険者を続けられるかな・・・とかね。」「そう?」「体力的な事はテクニックでなんとかなるにしても、なんとなく不安なんだよ。わかんないだろうな。」「そうなんだね。例えば、だけど、ナナとかガルドバさんも前は護衛や探求者をやっていて、引退してから宿屋をやったりしていたし、ラーロさんも同じだよね。そんな感じの事?」「そう。そう。今はいいかもしれないけど、今後は若いいきがいい生意気な奴らが出てくるだろうし...な。」「そうなんだね」「あぁ。田舎に戻って畑作業っていうのもなんか違うんだよな。」「へぇ~それなら、国に使えたり、ギルドの職員になったりは?」「ギルドの職員?」「うん。これから、ギルドも大きくなるし、それこそ、ギルドで新人の教育係とか、学校で教えてもいいだろうね。」「あぁそういうのもいいかもな。」「うん。国にもいろいろ有るからね。衛兵とかね?」「衛兵?」「簡単にいうと、城を守る兵だね。攻めるべき兵じゃなく、式典や要人の護衛とかが主な任務になってくるんじゃないかな?」「そんな仕事があるんだ。詳しいな。」「うんうん・・・。」「ありがとう。参考にするよ。」「こちらこそ、いろいろ聞いてゴメンなさい。なんとかく解ったよ」「いいよ。あっごちそうさま。」「うん。また話を聞かせてくださいね。」
冒険者が上の階に上がっている(オーナと一緒に居た。若い奴って誰?やけに詳しかったけど?)(え”?リーダ知らないで話していたの?)(あぁオーナの知り合いだろう?どっかの貴族か豪商の息子か?もしかして、オーナのいい人なのか?)(・・・・。リーダ。あの方は、リン=フリークス。侯爵閣下で、この国の国王になられる人ですよ。オーナのいい人って言うのは合っているけど・・・。)(え”?ウソだぁ・・・。え”マジ?)(大マジ?知らなかったの?堂々と話しているから、リーダすごいなって思っていたんだけど・・・。)(ヤバ。どうしよう。)(オーナにこっそり聞いたら、笑って、大丈夫だって言っていたよ。)(そっかぁ・・・。お前たちも知っていたのなら教えてくれよ。)(いやいや、リーダこそ。なんで知らないんだよ。)
「なかなか、愉快なパーティみたいだね」「うん。僕の所に初めて入ってくれたパーティなんだよ。暇な時には、タレントのブラッシングとか手伝ってくれるんだよ。」「へぇそうなんだ。」「あっリン。そろそろ、屋敷に戻ろう。」「そうだな。」「リャノ。いつものようにお願い。」「はい。かしこまりました」
ミルがチェックをして、膝に寝ていた、白猫をリャノに渡して、店を出る。店の出口を出た所で、魔道具が発動して、消臭効果がある風が身体を覆うようになっている。
屋敷に戻って、寝室から足湯に向かった。皆揃っている。「あぁゴメン。ちょっと汗だけ流してきていい?」「あっと僕も。」「なんじゃ、二人して、そういう事なら、妾も風呂に入ってくるとするか。」
結局、みんな風呂に入っていなかったようで、久しぶりに皆で風呂に入る事になった。「エミール達も給仕はいいから、一緒に入ろう。」「はっはい。ご一緒します。」
久しぶりにゆっくり風呂に入る事になりそうだ。マシュホム領に侵攻する事には不安はない。準備もしっかりしてきた。情報も僕達の方が多く持っているだろうし、相手を誘導する事も出来ていると思う。今日、それらを話しして、穴が無いかを皆で確認すればいい。明日には、眷属の編成も終わるだろう。また暫くはニグラか前線で指揮を取る必要があるだろう。

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