【旧】チート能力を持った高校生の生き残りをかけた長く短い七日間
ミヤナック領防衛戦
ポルタの村に久しぶりに来た。そこには、村だった後が残されているだけだ。野盗が使っていた建物も有ったらしいが今では壊されている。
何かを確認するように、村の中を歩きながら、外れにある生まれ育った僕達の家に向かった。壊された状態で放置してあった家を修繕して、それから、ニノサとサビニの墓を作ろう。
そして、復讐をしない事を、二人と皆に誓おう。ニノサとサビニの復讐はしない。二人がそれを望んでいない事は解っている。僕とマヤがしっかり暮らせる事だけを祈っているはずだ。
この丘を登りきれば、見えてくるはずだ、そう思って丘を上る。元々、結界が張ってあった場所は、破壊された状態になっている。かなり強引に結界を突破したのが解る。オブジェクトを破壊したんだというのが解る。もう少しスマートな方法もあるだろうに、結界を破壊するとか剣が何本有っても足りなくなったりしなかったのか?チート能力の持ち主がやったのだろう。この位の事は出来ないとダメだろうな。
少し歩くと異常な事に気がつく。家に至る道が整備されてる。前は、石畳ではなかったが、今は石畳になっている上に、まっすぐに道の前方には、僕達の家が”再現”されているようだ。
小走りで家まで行くが、以前と同じだとは言えないが、修復されている。家のドアを開けて中に入ると、マヤが出迎えてくれた。
「リン。お帰り。驚いた?」「あぁすごくびっくりした。」「サラナ。ウーレン。大丈夫だよ。」
サラナとウーレンが奥の部屋からおずおずと出てきた。「二人が直してくれたのか?」「うん。リン君やマヤにした事を考えると、こんな事で許してもらえるとは思っていないけど・・・・。カエサルやヒューマに相談したら、是非直そうって言ってくれて、村の人たちに相談しながら直したんだよ。部屋の中までは解らない部分が多かったけど・・・。ゴメン。勝手な事して・・・。」「・・・。ううん。少し驚いただけだよ。ありがとう。すごく嬉しいよ。」「本当?」「あぁ本当だよ。」「よかった。それでね。出来たらでいいんだけど、お父さんとお母さん達を、村で暮らせるようにして欲しいんだけど、ダメ?私とウーレンは、マノーラ神殿での裏ギルドの仕事がすごく楽しいから出来たら続けたいんだけど・・・・。」
「マヤ。知っていたね?」「もちろん。カエサルやヒューマには僕から口止めしていたから、彼らを攻めないでね。」「それはいいよ。」「リン。もういいよね二人はよくやってくれていると思うよ」
恐縮している二人に目線を移して「そうだね。村に戻りたいっていうのは、ご両親の考え?それとも、二人がいい出した事?」「はい。両親ともに、マガラ神殿での生活も気に入っているのですが・・・。」「そうか、ウノテさんは?」「兄は、マガラ神殿というよりも、アッシュさんの頼まれごとが好き見たいです」「そうか・・・・・。二人の家族には、この村の跡地ではなく、アゾレム街を頼もうと思っていたんだけどな。領主は別に連れてくるけど、信頼できる人が補佐に廻ってくれると嬉しい。その点では、サラナとウーレンの両親なら僕も知っているし、安心できるんだけどな。アゾレムの街がある程度の規模に戻ったら、その時に改めて、村の再建をお願いしたいのだけどな」
「・・・・」「・・・・」「サラナ。ウーちゃん。」「あっゴメンなさい。リン君。その話、家族にしていい?」「あぁいいよ。なんで?」「アゾレムの街ってあの領主が・・・。」「あぁそうだったね。それは大丈夫だよ。もう僕の領地になっているし、元領主は居ないから安心していいよ。」「・・・そうなんだ。それなら・・・。」「うん。サラナ。私の両親は喜ぶと思うよ。リン君の役に立ちたいって言っていたからね。」「そうだよね。ねぇリン君。マヤ。本当にいいの?」「僕は、リンの提案がいいと思うよ。領主は流石にダメだろうけど、代官を二人のお父さんがやってくれるのなら、村の再建もできるだろうし、安心できるよ」「あぁそうだね。多分、近いうちに、イリメリが難民を連れてくるから、その時に、二人の家族には受け入れとかをやってほしいんだよ。」「わかった。両親には、リン君からのお願いだって伝えていいんだよね?」「もちろんだよ。なんなら僕が直接言ってもいいよ」「それは・・・・」「リン。辞めてあげて、二人もだけど、ポルタ村の人たちは、まだリンに対して申し訳がないって気持ちが強いからね」「そうなの?」「僕も、何度か話をしているけど、以前の様には・・・・ねぇそれに、ニノサとサビニが見つかったから余計に・・・・だと思うよ」「そうか、了解。それなら、シュトライトかイリメリから言ってもらうよ」「そうだね。それがいいだろうね。」
「それで、二人は今日は?」「あっ」「うん。マヤから、ニノサさんとサビニさんが見つかったって聞いてね。許されないとは思うけど、会って謝りたいって思ったんだけど、いいかな?」「ダメ!」「やっぱり・・・。」「うん。ダメだよ。謝る必要はないからね。普通に話をするだけなら、いいけど、謝るのはダメ。二人やポルタ村の人に謝って貰う必要はないし、ニノサとサビニもそれを望んでいないからね。」「あっ・・・でも、」「サラナ。私は、リン君に従うよ。昔話ができるほど、会って話をした事はなかったけど、マヤと一緒に食べたお菓子の話とかはできるからね。」「そうだね。」「僕も、二人には謝ってなんて欲しくない。」
「リン。」「あぁみんな来てくれたんだね。」
ミルが先頭になって、イリメリ。ルナ。フェム。タシアナ。サリーカ。アデレード。だけじゃなくて、アルマール。フレット。カルーネ。オイゲン。ナナ。ナッセ。ハーレイ。ローザス。それに、モルトやセルケル達まで来ている。本当に、僕に関わってくれた人が全員と言っていいほどだ。
「タシアナ。」「うん。話は、ミルに聞いたよ。安心して、私の父さんは、ナッセだよ。パパとママの事は大事だし、すごくすごく好きだけど、だけど、だけど、ナッセや皆が私の家族だよ。」「あぁ。タシアナ。僕達は家族だよ。でも、しっかりご両親をお送りしないとな。」「うん。ありがとう。リン。」「ナッセ。少し、タシアナをご両親に返すからな。」「勿論です。リン様。タシアナ。今日はいいんだよ。泣いても。お前は、本当に強い子だね。でも、強いばかりでは疲れてしまうよ。」「お父さん・・・。」「久しぶりだね。タシアナからそう呼ばれるのは・・・。」「・・・・・」「タシアナには、リン様も居る。そして、沢山家族が妹や弟も居る。頼っていいんだよ。」「ねぇリン。少しだけ、少しだけ、パパとママと3人だけにしてくれる。そうしたら、もう大丈夫だから・・・」「あぁ奥は僕の部屋だった場所だから、そこなら誰も入らないよ」「ありがとう。」
タシアナが両親の入った箱を持ち上げて、僕の部屋に入っていく。部屋の前まで、ミーシャが付き従ったが、部屋の前で何か言葉を交わして、部屋の中にはタシアナだけが入っていった。(パパ。ママ。お帰り・・・・あぁぁぁぁぁ)
「モルト。」「リン。モルトやセルケル達は・・」「イリメリ。いいよ。知っているよ。サビニの館で働いていたんだろう?テルメン家を支えてくれていたんだろう?」「なんでそれを・・・。解らないって思ったの?」「リン様。」「モルト。サビニ。母さんの昔事をこれで話してくれるね。僕が思い出さないように話さないで居てくれたんだろう?ありがとう。もう大丈夫だよ。でも、これからも僕達を支えてくれるんだろう?」「はい。勿論でございます。私は、マノーラ家の家令です。」「うん。ありがとう。でも、今日、今この瞬間に解雇して、3時間後に再雇用するからな。3時間だけは、母さんと父さんの為に尽くしてほしい。」
「・・・ありがとうございます。リン様。僭越ながら、略式の葬儀を執り行いたいと思いますがよろしいですか?」「あぁお願いします。」
それから、早かった。モルトが、サラナとウーレンに事情を説明して、眷属を使って、家の土地に略式だが祭壇が作られた。そこに、4人を祀る形の合同祭になる。
僕の部屋からの鳴き声がなくなり、ミーシャが中に呼ばれた。タシアナが箱と戻ってきた。そして、モルトに箱を渡して、”何か”をお願いしていて、モルトも承知したようだ。これで、準備が整った事になる。
眷属が忙しくモルトに話を聞いて、準備をしている。僕とマヤは、何もしないで、ただただ皆が準備をしてくれているのを見ているだけだった。
いつの間にか、家の近くに、簡素だけど、休憩所の様な物が立てられていて、ミルやイリメリ達はそこに移動しているようだ。祭壇の横には、僕とマヤとタシアナだけが座っている感じになっている。僕の右側にマヤが左側にタシアナが座って、両手をしっかり握っている。そこから伝わってくるぬくもりを感じていた。言葉は必要ない。ニノサとサビニには発した言葉は届かない。でも、心からの声なら届くかもしれない。僕は間違っていないよね。僕は、ニノサとサビニの敵討ちはしない。僕達が僕達の為に必要と思った戦いをしていく。その過程で、ニノサとサビニの仇にも合うかもしれない。でも、憎しみだけで殺したりしない。危害を加えようとは思わない。僕は、僕の為に、戦う。ニノサ。それでいいよな。
準備が整ったのか、モルトから呼ばれた。祭壇の横に立っていてほしいとだけ言われた。参列者が来るから、挨拶をしていて欲しいという事だ。タシアナに関しては、僕の婚約者の立場で合同葬のもう一人の主役だと説明しているが、あくまでサビニのニノサの葬儀になっている事をわびていた。「モルト。それはいいよ。私は、もうお別れをした。それに、パパもママも、ニノサさんとサビニさんと一緒に送られるのなら文句はないと思う。」「ありがとうございます。」「ううん。あっそれから、リン。これを渡しておく。」
タシアナから鍵の様な物を預かった。「これは?」「知らない。パパとママの箱の中に入っていた。もしかしたら、何か隠していたのかもしれない。」「そうか・・・・でも、これは、タシアナがお守りで持っていてよ。必要になった時に借りるからね」「・・・・うん。わかった。」
タシアナに鍵を返した。
参列者が徐々に増えてきている。急な事だから、身内だけのつもりで居たが、結構な人が来てくれている。ミルやイリメリ達は、祭壇に挨拶をした後で、僕達の後ろに並ぶようだ。
それから、生前のニノサやサビニに関係した人たちが参列してくれている。驚いた事に、宰相、ウルコス殿までも来てくれている。「マノーラ侯。なんと言って良いのか・・・。」「ウルコス殿。ありがとうございます。使い古された言葉ですが、ニノサもサビニも喜んでいると思います。本当に、ありがとうございます。そして、二人には謝罪をしないで下さい。二人は、二人の信じる事をまっとうしただけなのですから・・・。」「わかりました。」
一礼して、ウルコス殿が出て行く。ミヤナック伯やウォード伯も来てくれている。ガルドバさんやラーロさんも来て祈りを捧げてくれている。
そして、フレットに連れられて、リンザー卿が陛下と一緒に来てくれている。モルトと何か話をしてから、こちらに向かってくる。
「侯爵。」「リンザー卿。ありがとうございます。」「いえ」「陛下もありがとうございます。」「マノーラ侯。今、する話ではないが、モルト殿が出来れば、早急に進めて欲しいということなのでな。」「何でしょうか?」「あぁリンザー卿とも話をしたのだが、サビナーニ=テルメン・フォン・トリーアがこういう結果になってしまった事もあり、事実を公表したいのだがいいか?」「えぇ問題ありません。」
「侯爵。私からも一つございまして」「はい。何でしょうか?」「出来ましたら、この地に教会を立てたく思うのですがよろしいですか?」「構いませんが・・・。誰もこの辺りは居ませんよ?」「えぇ解っています。でも、ニノサ殿やサビナーニ様がいらっしゃいます。それに、タシアナ殿のご両親もいらっしゃいます。」「えぇそうですが・・・。」「解っています。侯爵が危惧されている事は・・・・しかい、教会とは元々そういう施設なのです。白魔法の提供やポーションの販売は副次的な物で、本来は神と現世を繋ぐ役割なのです。ですので、この地で各方を祀るのは間違っていないと思っています。ご許可いただけないでしょうか?」「僕一人の意見ではなんとも言えません。後日お答えでもよろしいですか?」「はい。かまいません。お返事お待ちしております。」「リン。私は、賛成だよ」「僕も、賛成だよ」「タシアナ。マヤ。いいのか?」「うん」「うん」「そうか、それなら僕が反対する理由はないね。」
「リンザー卿。お聞きした通りです。教会の建築をお願いしてよろしいですか?」「はい。おまかせ下さい。心安らかに眠って頂ける場所に致します。」「お願いいたします。」
「マノーラ侯。余からは、一つ連絡事項じゃ」「はい。何でしょう。」「今更だとは思うが、本日を持って、マノーラ侯爵の当主はそちになる。代理業務ご苦労じゃった。これからは、当主としてトリーア王国の為に頑張ってくれ」「あっ・・・。はい。かしこまりました。リン=フリークスはマノーラ侯爵家当主として、トリーア王国の為に力と知恵を尽くします。」「あぁ」
事務的な事は、葬儀が終了してからモルトとやってもらう事になった。
泣き疲れて、その後に緊張で疲れてしまった、タシアナが僕の肩に頭をあずける形で寝始めてしまった。ナッセにタシアナを預けようとしたら・・・マヤが「リン。タシアナを抱いて、屋敷に戻っていいよ。ここは、僕とナナが居ればいいと思うからね」「あぁぁ・・・でも、」「リン様。そうして下さい。私も残ります。」「マヤ様。マヤ様もリン様とお戻り下さい。ここは、私が居れば大丈夫です」「あぁシュトライト。おじさんが?」「解っています。でも、いいのです。このくらいはさせて下さい。お願いします。」「うん。マヤ。一緒に戻ろう。」「うん。解った。おじさん。ナッセ。ナナ。後をお願い。」「かしこまりました。」
年長者に後を任せて、僕がタシアナをお姫様抱っこする形で、祭壇の前から下がっていく。外には、まだまだ人が来ている。それこそ、マガラ神殿で仕事をしてくれている人やニグラでお世話になった人たちまで来てくれている。
屋敷に帰って、タシアナを寝かせて、僕は一人風呂に向かった。そこで汗を流すために、サウナに入っている。涙は出てこない。悲しくないわけではない。ただ、悲しんでいるわけには行かない。僕にはやるべきことがある。それが終わったら、ゆっくり、ニノサと話をしよう。教会を作ってくれるらしい。あの家も維持してくれるという。
サビニは兎も角、ニノサが神の御使いになるとは思えない。どうせ、その辺りをプラプラ楽しい事を求めてさまよっているのだろう。ニノサ。サビ。一度だけなら許してやる。世界の摂理を覆して生き返ってこいよ。マヤを僕を皆を・・・・見てくれよ。お前たちの物語を聞かせてくれよ。なぁニノサ。僕が、転生者だと気がついていたのか?サビニ。マヤがニンフだって知っていたんだろう?お前たちが居なくなってしまったから、僕達にあんな置き土産を頼むから、僕は王になり、マヤがニンフの力が顕現したんだぞ。全部お前たちが悪いんだからな。自分たちの始めた事を、僕達に押し付けて、そっちでタシアナの両親と酒盛りか?さぞ美味い酒を飲んでいるんだろうな。もっともっと美味い酒や肴を用意してやるから、全員連れて戻ってこいよ。
なぁニノサ。なぁニノサ。
なさニノサ。僕は、頑張っているよ。
◆◇◆◇◆◇◆◇
ん?いつの間にか寝てしまったようだ。サウナに入った所までは覚えているが、出た記憶もない。
「リン。良かった・・・・。」「ん?ミルどうしたの?」「どうしたのじゃないよ。サウナで倒れている所を見つけた時には、心臓が止まるかと思ったよ」「そうだったの・・・ゴメン。心配かけちゃったね。」「僕は良いから、皆にも謝ってね。」
ズラッと周りを取り囲まれていた。「みんなゴメン。少し無理していたみたい。本当に心配かけてゴメン」「・・・・ふぅいいよ。リン」「リンよ。もう少し、妾達を頼って欲しいのもじゃな」「アデレードのいう通りだね。一人で抱え過ぎだよ。」「だから、ゴメン。」
「うん。わかった。リン。暫くは、お風呂一人で入るの禁止。サウナもだよ。いいね」「・・・・ん。解った。」「よし、これでいいわよね?」「はぁ~い。委員長がそういうならそれでいいです!」「フェム。貴女ね。」「ふふふ。」「どうしたのエミール?」「いえ、なんかいいなって思って・・・。」「そうね。でも、リン。」「なに?」「3日は寝過ぎだよ。本当に死んだかと思ったんだからね。ロルフやカエサルがリンとの接続が切れていないから寝ているだけって言ってくれたから良かったんだけどね。」「え”3日?」「そうだよ。あれから、3日経っているんだよ。」
「・・・・いろいろ大丈夫だったの?」「うん。報告ごとは溜まっているけど、問題はなかったよ。」「そうか、それなら、後で報告だけお願いね。」
「・・・了解。」「さて、何か食べないと、お腹減っちゃっているよ。」
食堂に移動して、簡単に話を聞いていると、ルナが何やら眷属から報告を受けている。「リン。ミヤナック家がまた襲撃を受けた。今度は、この前みたいな感じじゃなくて、貴族連合。逆賊が大挙して押し寄せてきたみたい。」「そうか、早かったね。それじゃみんな悪いけど、打ち合わせ通りにお願い。」
「「了解!!」」「リン。僕は、ヴァズレ領に移動するね。うん。距離的には、明日か明後日位になると思うけど、僕もそっちに行くから、準備だけお願いね」「了解。」
「それじゃ、リン。私はタシアナとアデレードで、ハー兄様の所に行くね。」「うん。眷属も連れて行ってね。」「あっリン。そのこと何だけどね」「何?イリメリ。」「あぁサリーカの方が詳しいか・・・サリーカお願い。」「ん。あのね。リン。私の家の商隊が、監獄街に行っているんだけどね。」「うん。今回の貴族連合との内戦の話をしった彼らが、リンの役に立ちたいって言っているんだよ」「・・・そうか、十分役に立っているんだけどな。」「うん。そうは言ったんだけどね。ほら、彼らは、今紙を作ったりしかしていなくて、それも、最近では新しく入ってきた人たちに譲って自分たちは、監視や検品しか子弟無くてね。」「うんうん」「元々、脳筋な連中も多いから、戦いたいって話なんだよ」「そうなんだ・・・アデレードどう思う?」「サリーカ。人数は?」「全部で2,000名位だよ。」「そんなに居るのか?」「うん。イスラ街として定着してからは、商人も紙やゴムを求めて行っていて、その過程で人も増えたみたいなんだよね」「そうか、リンよ。装備品さえ揃えば、いいと思うぞ。混成部隊にはなるけど、どうせ、防御に徹するんじゃろ?」「うん。ハーレイとファンには戦うなって言ってあるよ。ファンは戦いたがっていたけどね」「それならば、いいと思うぞ」「イリメリ。確かに、アゾレムで武具が見つかっているんだよね?」「うん。2,000名位なら賄えると思うよ」「それじゃイリメリとサリーカで、イスラ街やエスト街で義勇兵を募って、ミヤナック家に向かって、眷属は隠密が得意な者を60名程度連れていけばいいでしょ?」「60名もいらないと思うけどね。」「そう?それでも、安全を見て、その位は連れて行ってほしいな。」「了解。サラナとウーレンに依頼を出しておくよ。」「うん。お願い。あっあぁあと、ヒト型に慣れる者で、武具が揃っている者をそうだね5,000位と普段着の者を8,000位ヴァズレのミルの所に向かわせて・・・ね。」「うん。いいけど、13,000も?」「うん。撤退戦を行うからね。全員、眷属で賄おうと思って居るからね。そうしたら、万が一にも捕まっても逃げ出せるだろうし、弓矢位じゃ死なないでしょ?」「あぁ・・・そうか、負けるんだった。忘れていたよ。」「うん。そう。」
「・・・・。」「でも。まずは、ミヤナックだね。防衛戦の構築が間に合っていれば、被害なく乗り越えられると思うけどね。」「リン。ハー兄様から言語が届いたよ。」「なんだって?」「リンの読み通りだって。」「そう・・・それなら少し安心だね。イリメリ。サリーカ。編成を急いで、ミヤナック家じゃなくて、領堺に近い村々に守備隊を分散して送って!」「了解。リンの読みって?」
奴らが、よほどの馬鹿じゃなければ、この前の様にミヤナック街にいきなり攻め込むような事はしないと思っていた。前線基地を作る意味でも、領堺に近い村を襲って、そこを基地化するのではないかと思っていた。ミヤナック家の村にはすでにギルドが配置されているので、転移門が設置されている。そして、ハーレイに断りを入れて、村を要塞化してある。外周のさらに外回りに、木で柵を作成して、柵の周りに堀を作成している。本来の村の外周には、石壁を設置してある。監視塔も作っていて、上から弓矢や魔法での攻撃もできるようにしてある。村に入る場所は橋になっているので、橋を上げてしまえば、堀を飛び越えるかしないと村に肉薄できない。攻城兵器でもあれば違うだろうが、そんな物はまだないだろう。立花達が開発していないとも限らないので、もし、攻城兵器の様な物が出てきたら、真っ先にそれを叩くように眷属には言ってある。
そして、今上がってきた報告からは、領堺近くの村5箇所を同時に攻めているらしい。攻めていると言っても、堀の外側から弓矢や魔法での攻撃が主体で柵や塀が破られた形跡はまだないという。周りを取り囲むように陣を作って、補給路を断つ作戦に出たらしいが、それこそ、こちらの思う壺だ。転移門があるので、物資はマガラ神殿から輸送できる上に、傷病者や精神的に辛くなった者は、神殿を経由して安全な場所に搬送する事ができる。でも、安全だと解っていても、攻められている状態が長く続くと精神的に辛くなってくるので、なるべく転移門でマガラ神殿に来てもらう事にしてもらっている。相手は、3つの間違いを犯した1.戦力を分散した。連絡もままならない状況で戦力が分断されれば、それは各個撃破の餌食になるのは目に見えている2.補給路を断ったつもりだけど、補給も人員の移動も転移門で自由にできる。3.攻め込んだ事で、どう言い訳しても、非は彼らにある事になる。
「それでリン。どうするの?」「どうするって?」「このまま攻められ続けるの?」「うん。そのつもりだよ。相手が食料が尽きて撤退始めるまでね。」「・・・・補給が来るかもしれないよ」「そうだね。補給部隊は来るだろうね。でも、送り出した物が前線に行き渡らないと意味ないからね」「あっ眷属に襲わせるの?」「そんな、襲わせるなんてしないよ。道に迷ったり、魔物に襲われたり、野盗に襲われてしまうだけだからね。」「・・・まぁ証拠が残らなければいいんじゃないの?」「うん。大丈夫だよ。そんなヘマはしないからね」「それで撤退してくれるかな?」「多分、しないと思うよ。」「・・・どうなるの?」「う~ん。こうならないといいなって事だけどね。」「うん。腹が減った貴族連合の奴らは、村々を簡単に攻め滅ぼせると思ってきているんだろうね。それがうまく出来なくて、苛つき始めるだろうね」「そうだね」「自分たちが正義だって思っている連中ほど残虐な事を平気でやるからね。」「あっまさか・・・・。」「そうならないと良いんだけどね。なりそうだったら、眷属にやめさせる事も考えないとね。バレる事を覚悟でね。」「・・・わかった、なるべくそうならないようにコントロールするよ。」「うん。お願い。蛮行だけは阻止してね。」
ルナとアデレードとタシアナが、イブンとマルティンとミーシャと、それぞれの眷属を引き連れて、ミヤナック領に向かった。サリーカは、イスラ街に言って、オルトに会って隊の編成を頼む事になった。イリメリは、神殿の地下一階に赴いて、サラナとウーレンに眷属の取りまとめを頼む事になった。
僕は、シュトライトにあって、ギルドはミヤナック家の村々のギルドに対して物資の手配をお願いした。同時に、救護が必要な者は敵味方関係なくあたるようにしてもらう。僕としては、殺し合いたいわけじゃない。死ぬ人間は少ないほうがいいに決まっている。
ミルが待っているヴァズレ街に行くことにした。
何かを確認するように、村の中を歩きながら、外れにある生まれ育った僕達の家に向かった。壊された状態で放置してあった家を修繕して、それから、ニノサとサビニの墓を作ろう。
そして、復讐をしない事を、二人と皆に誓おう。ニノサとサビニの復讐はしない。二人がそれを望んでいない事は解っている。僕とマヤがしっかり暮らせる事だけを祈っているはずだ。
この丘を登りきれば、見えてくるはずだ、そう思って丘を上る。元々、結界が張ってあった場所は、破壊された状態になっている。かなり強引に結界を突破したのが解る。オブジェクトを破壊したんだというのが解る。もう少しスマートな方法もあるだろうに、結界を破壊するとか剣が何本有っても足りなくなったりしなかったのか?チート能力の持ち主がやったのだろう。この位の事は出来ないとダメだろうな。
少し歩くと異常な事に気がつく。家に至る道が整備されてる。前は、石畳ではなかったが、今は石畳になっている上に、まっすぐに道の前方には、僕達の家が”再現”されているようだ。
小走りで家まで行くが、以前と同じだとは言えないが、修復されている。家のドアを開けて中に入ると、マヤが出迎えてくれた。
「リン。お帰り。驚いた?」「あぁすごくびっくりした。」「サラナ。ウーレン。大丈夫だよ。」
サラナとウーレンが奥の部屋からおずおずと出てきた。「二人が直してくれたのか?」「うん。リン君やマヤにした事を考えると、こんな事で許してもらえるとは思っていないけど・・・・。カエサルやヒューマに相談したら、是非直そうって言ってくれて、村の人たちに相談しながら直したんだよ。部屋の中までは解らない部分が多かったけど・・・。ゴメン。勝手な事して・・・。」「・・・。ううん。少し驚いただけだよ。ありがとう。すごく嬉しいよ。」「本当?」「あぁ本当だよ。」「よかった。それでね。出来たらでいいんだけど、お父さんとお母さん達を、村で暮らせるようにして欲しいんだけど、ダメ?私とウーレンは、マノーラ神殿での裏ギルドの仕事がすごく楽しいから出来たら続けたいんだけど・・・・。」
「マヤ。知っていたね?」「もちろん。カエサルやヒューマには僕から口止めしていたから、彼らを攻めないでね。」「それはいいよ。」「リン。もういいよね二人はよくやってくれていると思うよ」
恐縮している二人に目線を移して「そうだね。村に戻りたいっていうのは、ご両親の考え?それとも、二人がいい出した事?」「はい。両親ともに、マガラ神殿での生活も気に入っているのですが・・・。」「そうか、ウノテさんは?」「兄は、マガラ神殿というよりも、アッシュさんの頼まれごとが好き見たいです」「そうか・・・・・。二人の家族には、この村の跡地ではなく、アゾレム街を頼もうと思っていたんだけどな。領主は別に連れてくるけど、信頼できる人が補佐に廻ってくれると嬉しい。その点では、サラナとウーレンの両親なら僕も知っているし、安心できるんだけどな。アゾレムの街がある程度の規模に戻ったら、その時に改めて、村の再建をお願いしたいのだけどな」
「・・・・」「・・・・」「サラナ。ウーちゃん。」「あっゴメンなさい。リン君。その話、家族にしていい?」「あぁいいよ。なんで?」「アゾレムの街ってあの領主が・・・。」「あぁそうだったね。それは大丈夫だよ。もう僕の領地になっているし、元領主は居ないから安心していいよ。」「・・・そうなんだ。それなら・・・。」「うん。サラナ。私の両親は喜ぶと思うよ。リン君の役に立ちたいって言っていたからね。」「そうだよね。ねぇリン君。マヤ。本当にいいの?」「僕は、リンの提案がいいと思うよ。領主は流石にダメだろうけど、代官を二人のお父さんがやってくれるのなら、村の再建もできるだろうし、安心できるよ」「あぁそうだね。多分、近いうちに、イリメリが難民を連れてくるから、その時に、二人の家族には受け入れとかをやってほしいんだよ。」「わかった。両親には、リン君からのお願いだって伝えていいんだよね?」「もちろんだよ。なんなら僕が直接言ってもいいよ」「それは・・・・」「リン。辞めてあげて、二人もだけど、ポルタ村の人たちは、まだリンに対して申し訳がないって気持ちが強いからね」「そうなの?」「僕も、何度か話をしているけど、以前の様には・・・・ねぇそれに、ニノサとサビニが見つかったから余計に・・・・だと思うよ」「そうか、了解。それなら、シュトライトかイリメリから言ってもらうよ」「そうだね。それがいいだろうね。」
「それで、二人は今日は?」「あっ」「うん。マヤから、ニノサさんとサビニさんが見つかったって聞いてね。許されないとは思うけど、会って謝りたいって思ったんだけど、いいかな?」「ダメ!」「やっぱり・・・。」「うん。ダメだよ。謝る必要はないからね。普通に話をするだけなら、いいけど、謝るのはダメ。二人やポルタ村の人に謝って貰う必要はないし、ニノサとサビニもそれを望んでいないからね。」「あっ・・・でも、」「サラナ。私は、リン君に従うよ。昔話ができるほど、会って話をした事はなかったけど、マヤと一緒に食べたお菓子の話とかはできるからね。」「そうだね。」「僕も、二人には謝ってなんて欲しくない。」
「リン。」「あぁみんな来てくれたんだね。」
ミルが先頭になって、イリメリ。ルナ。フェム。タシアナ。サリーカ。アデレード。だけじゃなくて、アルマール。フレット。カルーネ。オイゲン。ナナ。ナッセ。ハーレイ。ローザス。それに、モルトやセルケル達まで来ている。本当に、僕に関わってくれた人が全員と言っていいほどだ。
「タシアナ。」「うん。話は、ミルに聞いたよ。安心して、私の父さんは、ナッセだよ。パパとママの事は大事だし、すごくすごく好きだけど、だけど、だけど、ナッセや皆が私の家族だよ。」「あぁ。タシアナ。僕達は家族だよ。でも、しっかりご両親をお送りしないとな。」「うん。ありがとう。リン。」「ナッセ。少し、タシアナをご両親に返すからな。」「勿論です。リン様。タシアナ。今日はいいんだよ。泣いても。お前は、本当に強い子だね。でも、強いばかりでは疲れてしまうよ。」「お父さん・・・。」「久しぶりだね。タシアナからそう呼ばれるのは・・・。」「・・・・・」「タシアナには、リン様も居る。そして、沢山家族が妹や弟も居る。頼っていいんだよ。」「ねぇリン。少しだけ、少しだけ、パパとママと3人だけにしてくれる。そうしたら、もう大丈夫だから・・・」「あぁ奥は僕の部屋だった場所だから、そこなら誰も入らないよ」「ありがとう。」
タシアナが両親の入った箱を持ち上げて、僕の部屋に入っていく。部屋の前まで、ミーシャが付き従ったが、部屋の前で何か言葉を交わして、部屋の中にはタシアナだけが入っていった。(パパ。ママ。お帰り・・・・あぁぁぁぁぁ)
「モルト。」「リン。モルトやセルケル達は・・」「イリメリ。いいよ。知っているよ。サビニの館で働いていたんだろう?テルメン家を支えてくれていたんだろう?」「なんでそれを・・・。解らないって思ったの?」「リン様。」「モルト。サビニ。母さんの昔事をこれで話してくれるね。僕が思い出さないように話さないで居てくれたんだろう?ありがとう。もう大丈夫だよ。でも、これからも僕達を支えてくれるんだろう?」「はい。勿論でございます。私は、マノーラ家の家令です。」「うん。ありがとう。でも、今日、今この瞬間に解雇して、3時間後に再雇用するからな。3時間だけは、母さんと父さんの為に尽くしてほしい。」
「・・・ありがとうございます。リン様。僭越ながら、略式の葬儀を執り行いたいと思いますがよろしいですか?」「あぁお願いします。」
それから、早かった。モルトが、サラナとウーレンに事情を説明して、眷属を使って、家の土地に略式だが祭壇が作られた。そこに、4人を祀る形の合同祭になる。
僕の部屋からの鳴き声がなくなり、ミーシャが中に呼ばれた。タシアナが箱と戻ってきた。そして、モルトに箱を渡して、”何か”をお願いしていて、モルトも承知したようだ。これで、準備が整った事になる。
眷属が忙しくモルトに話を聞いて、準備をしている。僕とマヤは、何もしないで、ただただ皆が準備をしてくれているのを見ているだけだった。
いつの間にか、家の近くに、簡素だけど、休憩所の様な物が立てられていて、ミルやイリメリ達はそこに移動しているようだ。祭壇の横には、僕とマヤとタシアナだけが座っている感じになっている。僕の右側にマヤが左側にタシアナが座って、両手をしっかり握っている。そこから伝わってくるぬくもりを感じていた。言葉は必要ない。ニノサとサビニには発した言葉は届かない。でも、心からの声なら届くかもしれない。僕は間違っていないよね。僕は、ニノサとサビニの敵討ちはしない。僕達が僕達の為に必要と思った戦いをしていく。その過程で、ニノサとサビニの仇にも合うかもしれない。でも、憎しみだけで殺したりしない。危害を加えようとは思わない。僕は、僕の為に、戦う。ニノサ。それでいいよな。
準備が整ったのか、モルトから呼ばれた。祭壇の横に立っていてほしいとだけ言われた。参列者が来るから、挨拶をしていて欲しいという事だ。タシアナに関しては、僕の婚約者の立場で合同葬のもう一人の主役だと説明しているが、あくまでサビニのニノサの葬儀になっている事をわびていた。「モルト。それはいいよ。私は、もうお別れをした。それに、パパもママも、ニノサさんとサビニさんと一緒に送られるのなら文句はないと思う。」「ありがとうございます。」「ううん。あっそれから、リン。これを渡しておく。」
タシアナから鍵の様な物を預かった。「これは?」「知らない。パパとママの箱の中に入っていた。もしかしたら、何か隠していたのかもしれない。」「そうか・・・・でも、これは、タシアナがお守りで持っていてよ。必要になった時に借りるからね」「・・・・うん。わかった。」
タシアナに鍵を返した。
参列者が徐々に増えてきている。急な事だから、身内だけのつもりで居たが、結構な人が来てくれている。ミルやイリメリ達は、祭壇に挨拶をした後で、僕達の後ろに並ぶようだ。
それから、生前のニノサやサビニに関係した人たちが参列してくれている。驚いた事に、宰相、ウルコス殿までも来てくれている。「マノーラ侯。なんと言って良いのか・・・。」「ウルコス殿。ありがとうございます。使い古された言葉ですが、ニノサもサビニも喜んでいると思います。本当に、ありがとうございます。そして、二人には謝罪をしないで下さい。二人は、二人の信じる事をまっとうしただけなのですから・・・。」「わかりました。」
一礼して、ウルコス殿が出て行く。ミヤナック伯やウォード伯も来てくれている。ガルドバさんやラーロさんも来て祈りを捧げてくれている。
そして、フレットに連れられて、リンザー卿が陛下と一緒に来てくれている。モルトと何か話をしてから、こちらに向かってくる。
「侯爵。」「リンザー卿。ありがとうございます。」「いえ」「陛下もありがとうございます。」「マノーラ侯。今、する話ではないが、モルト殿が出来れば、早急に進めて欲しいということなのでな。」「何でしょうか?」「あぁリンザー卿とも話をしたのだが、サビナーニ=テルメン・フォン・トリーアがこういう結果になってしまった事もあり、事実を公表したいのだがいいか?」「えぇ問題ありません。」
「侯爵。私からも一つございまして」「はい。何でしょうか?」「出来ましたら、この地に教会を立てたく思うのですがよろしいですか?」「構いませんが・・・。誰もこの辺りは居ませんよ?」「えぇ解っています。でも、ニノサ殿やサビナーニ様がいらっしゃいます。それに、タシアナ殿のご両親もいらっしゃいます。」「えぇそうですが・・・。」「解っています。侯爵が危惧されている事は・・・・しかい、教会とは元々そういう施設なのです。白魔法の提供やポーションの販売は副次的な物で、本来は神と現世を繋ぐ役割なのです。ですので、この地で各方を祀るのは間違っていないと思っています。ご許可いただけないでしょうか?」「僕一人の意見ではなんとも言えません。後日お答えでもよろしいですか?」「はい。かまいません。お返事お待ちしております。」「リン。私は、賛成だよ」「僕も、賛成だよ」「タシアナ。マヤ。いいのか?」「うん」「うん」「そうか、それなら僕が反対する理由はないね。」
「リンザー卿。お聞きした通りです。教会の建築をお願いしてよろしいですか?」「はい。おまかせ下さい。心安らかに眠って頂ける場所に致します。」「お願いいたします。」
「マノーラ侯。余からは、一つ連絡事項じゃ」「はい。何でしょう。」「今更だとは思うが、本日を持って、マノーラ侯爵の当主はそちになる。代理業務ご苦労じゃった。これからは、当主としてトリーア王国の為に頑張ってくれ」「あっ・・・。はい。かしこまりました。リン=フリークスはマノーラ侯爵家当主として、トリーア王国の為に力と知恵を尽くします。」「あぁ」
事務的な事は、葬儀が終了してからモルトとやってもらう事になった。
泣き疲れて、その後に緊張で疲れてしまった、タシアナが僕の肩に頭をあずける形で寝始めてしまった。ナッセにタシアナを預けようとしたら・・・マヤが「リン。タシアナを抱いて、屋敷に戻っていいよ。ここは、僕とナナが居ればいいと思うからね」「あぁぁ・・・でも、」「リン様。そうして下さい。私も残ります。」「マヤ様。マヤ様もリン様とお戻り下さい。ここは、私が居れば大丈夫です」「あぁシュトライト。おじさんが?」「解っています。でも、いいのです。このくらいはさせて下さい。お願いします。」「うん。マヤ。一緒に戻ろう。」「うん。解った。おじさん。ナッセ。ナナ。後をお願い。」「かしこまりました。」
年長者に後を任せて、僕がタシアナをお姫様抱っこする形で、祭壇の前から下がっていく。外には、まだまだ人が来ている。それこそ、マガラ神殿で仕事をしてくれている人やニグラでお世話になった人たちまで来てくれている。
屋敷に帰って、タシアナを寝かせて、僕は一人風呂に向かった。そこで汗を流すために、サウナに入っている。涙は出てこない。悲しくないわけではない。ただ、悲しんでいるわけには行かない。僕にはやるべきことがある。それが終わったら、ゆっくり、ニノサと話をしよう。教会を作ってくれるらしい。あの家も維持してくれるという。
サビニは兎も角、ニノサが神の御使いになるとは思えない。どうせ、その辺りをプラプラ楽しい事を求めてさまよっているのだろう。ニノサ。サビ。一度だけなら許してやる。世界の摂理を覆して生き返ってこいよ。マヤを僕を皆を・・・・見てくれよ。お前たちの物語を聞かせてくれよ。なぁニノサ。僕が、転生者だと気がついていたのか?サビニ。マヤがニンフだって知っていたんだろう?お前たちが居なくなってしまったから、僕達にあんな置き土産を頼むから、僕は王になり、マヤがニンフの力が顕現したんだぞ。全部お前たちが悪いんだからな。自分たちの始めた事を、僕達に押し付けて、そっちでタシアナの両親と酒盛りか?さぞ美味い酒を飲んでいるんだろうな。もっともっと美味い酒や肴を用意してやるから、全員連れて戻ってこいよ。
なぁニノサ。なぁニノサ。
なさニノサ。僕は、頑張っているよ。
◆◇◆◇◆◇◆◇
ん?いつの間にか寝てしまったようだ。サウナに入った所までは覚えているが、出た記憶もない。
「リン。良かった・・・・。」「ん?ミルどうしたの?」「どうしたのじゃないよ。サウナで倒れている所を見つけた時には、心臓が止まるかと思ったよ」「そうだったの・・・ゴメン。心配かけちゃったね。」「僕は良いから、皆にも謝ってね。」
ズラッと周りを取り囲まれていた。「みんなゴメン。少し無理していたみたい。本当に心配かけてゴメン」「・・・・ふぅいいよ。リン」「リンよ。もう少し、妾達を頼って欲しいのもじゃな」「アデレードのいう通りだね。一人で抱え過ぎだよ。」「だから、ゴメン。」
「うん。わかった。リン。暫くは、お風呂一人で入るの禁止。サウナもだよ。いいね」「・・・・ん。解った。」「よし、これでいいわよね?」「はぁ~い。委員長がそういうならそれでいいです!」「フェム。貴女ね。」「ふふふ。」「どうしたのエミール?」「いえ、なんかいいなって思って・・・。」「そうね。でも、リン。」「なに?」「3日は寝過ぎだよ。本当に死んだかと思ったんだからね。ロルフやカエサルがリンとの接続が切れていないから寝ているだけって言ってくれたから良かったんだけどね。」「え”3日?」「そうだよ。あれから、3日経っているんだよ。」
「・・・・いろいろ大丈夫だったの?」「うん。報告ごとは溜まっているけど、問題はなかったよ。」「そうか、それなら、後で報告だけお願いね。」
「・・・了解。」「さて、何か食べないと、お腹減っちゃっているよ。」
食堂に移動して、簡単に話を聞いていると、ルナが何やら眷属から報告を受けている。「リン。ミヤナック家がまた襲撃を受けた。今度は、この前みたいな感じじゃなくて、貴族連合。逆賊が大挙して押し寄せてきたみたい。」「そうか、早かったね。それじゃみんな悪いけど、打ち合わせ通りにお願い。」
「「了解!!」」「リン。僕は、ヴァズレ領に移動するね。うん。距離的には、明日か明後日位になると思うけど、僕もそっちに行くから、準備だけお願いね」「了解。」
「それじゃ、リン。私はタシアナとアデレードで、ハー兄様の所に行くね。」「うん。眷属も連れて行ってね。」「あっリン。そのこと何だけどね」「何?イリメリ。」「あぁサリーカの方が詳しいか・・・サリーカお願い。」「ん。あのね。リン。私の家の商隊が、監獄街に行っているんだけどね。」「うん。今回の貴族連合との内戦の話をしった彼らが、リンの役に立ちたいって言っているんだよ」「・・・そうか、十分役に立っているんだけどな。」「うん。そうは言ったんだけどね。ほら、彼らは、今紙を作ったりしかしていなくて、それも、最近では新しく入ってきた人たちに譲って自分たちは、監視や検品しか子弟無くてね。」「うんうん」「元々、脳筋な連中も多いから、戦いたいって話なんだよ」「そうなんだ・・・アデレードどう思う?」「サリーカ。人数は?」「全部で2,000名位だよ。」「そんなに居るのか?」「うん。イスラ街として定着してからは、商人も紙やゴムを求めて行っていて、その過程で人も増えたみたいなんだよね」「そうか、リンよ。装備品さえ揃えば、いいと思うぞ。混成部隊にはなるけど、どうせ、防御に徹するんじゃろ?」「うん。ハーレイとファンには戦うなって言ってあるよ。ファンは戦いたがっていたけどね」「それならば、いいと思うぞ」「イリメリ。確かに、アゾレムで武具が見つかっているんだよね?」「うん。2,000名位なら賄えると思うよ」「それじゃイリメリとサリーカで、イスラ街やエスト街で義勇兵を募って、ミヤナック家に向かって、眷属は隠密が得意な者を60名程度連れていけばいいでしょ?」「60名もいらないと思うけどね。」「そう?それでも、安全を見て、その位は連れて行ってほしいな。」「了解。サラナとウーレンに依頼を出しておくよ。」「うん。お願い。あっあぁあと、ヒト型に慣れる者で、武具が揃っている者をそうだね5,000位と普段着の者を8,000位ヴァズレのミルの所に向かわせて・・・ね。」「うん。いいけど、13,000も?」「うん。撤退戦を行うからね。全員、眷属で賄おうと思って居るからね。そうしたら、万が一にも捕まっても逃げ出せるだろうし、弓矢位じゃ死なないでしょ?」「あぁ・・・そうか、負けるんだった。忘れていたよ。」「うん。そう。」
「・・・・。」「でも。まずは、ミヤナックだね。防衛戦の構築が間に合っていれば、被害なく乗り越えられると思うけどね。」「リン。ハー兄様から言語が届いたよ。」「なんだって?」「リンの読み通りだって。」「そう・・・それなら少し安心だね。イリメリ。サリーカ。編成を急いで、ミヤナック家じゃなくて、領堺に近い村々に守備隊を分散して送って!」「了解。リンの読みって?」
奴らが、よほどの馬鹿じゃなければ、この前の様にミヤナック街にいきなり攻め込むような事はしないと思っていた。前線基地を作る意味でも、領堺に近い村を襲って、そこを基地化するのではないかと思っていた。ミヤナック家の村にはすでにギルドが配置されているので、転移門が設置されている。そして、ハーレイに断りを入れて、村を要塞化してある。外周のさらに外回りに、木で柵を作成して、柵の周りに堀を作成している。本来の村の外周には、石壁を設置してある。監視塔も作っていて、上から弓矢や魔法での攻撃もできるようにしてある。村に入る場所は橋になっているので、橋を上げてしまえば、堀を飛び越えるかしないと村に肉薄できない。攻城兵器でもあれば違うだろうが、そんな物はまだないだろう。立花達が開発していないとも限らないので、もし、攻城兵器の様な物が出てきたら、真っ先にそれを叩くように眷属には言ってある。
そして、今上がってきた報告からは、領堺近くの村5箇所を同時に攻めているらしい。攻めていると言っても、堀の外側から弓矢や魔法での攻撃が主体で柵や塀が破られた形跡はまだないという。周りを取り囲むように陣を作って、補給路を断つ作戦に出たらしいが、それこそ、こちらの思う壺だ。転移門があるので、物資はマガラ神殿から輸送できる上に、傷病者や精神的に辛くなった者は、神殿を経由して安全な場所に搬送する事ができる。でも、安全だと解っていても、攻められている状態が長く続くと精神的に辛くなってくるので、なるべく転移門でマガラ神殿に来てもらう事にしてもらっている。相手は、3つの間違いを犯した1.戦力を分散した。連絡もままならない状況で戦力が分断されれば、それは各個撃破の餌食になるのは目に見えている2.補給路を断ったつもりだけど、補給も人員の移動も転移門で自由にできる。3.攻め込んだ事で、どう言い訳しても、非は彼らにある事になる。
「それでリン。どうするの?」「どうするって?」「このまま攻められ続けるの?」「うん。そのつもりだよ。相手が食料が尽きて撤退始めるまでね。」「・・・・補給が来るかもしれないよ」「そうだね。補給部隊は来るだろうね。でも、送り出した物が前線に行き渡らないと意味ないからね」「あっ眷属に襲わせるの?」「そんな、襲わせるなんてしないよ。道に迷ったり、魔物に襲われたり、野盗に襲われてしまうだけだからね。」「・・・まぁ証拠が残らなければいいんじゃないの?」「うん。大丈夫だよ。そんなヘマはしないからね」「それで撤退してくれるかな?」「多分、しないと思うよ。」「・・・どうなるの?」「う~ん。こうならないといいなって事だけどね。」「うん。腹が減った貴族連合の奴らは、村々を簡単に攻め滅ぼせると思ってきているんだろうね。それがうまく出来なくて、苛つき始めるだろうね」「そうだね」「自分たちが正義だって思っている連中ほど残虐な事を平気でやるからね。」「あっまさか・・・・。」「そうならないと良いんだけどね。なりそうだったら、眷属にやめさせる事も考えないとね。バレる事を覚悟でね。」「・・・わかった、なるべくそうならないようにコントロールするよ。」「うん。お願い。蛮行だけは阻止してね。」
ルナとアデレードとタシアナが、イブンとマルティンとミーシャと、それぞれの眷属を引き連れて、ミヤナック領に向かった。サリーカは、イスラ街に言って、オルトに会って隊の編成を頼む事になった。イリメリは、神殿の地下一階に赴いて、サラナとウーレンに眷属の取りまとめを頼む事になった。
僕は、シュトライトにあって、ギルドはミヤナック家の村々のギルドに対して物資の手配をお願いした。同時に、救護が必要な者は敵味方関係なくあたるようにしてもらう。僕としては、殺し合いたいわけじゃない。死ぬ人間は少ないほうがいいに決まっている。
ミルが待っているヴァズレ街に行くことにした。
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