【旧】チート能力を持った高校生の生き残りをかけた長く短い七日間

北きつね

ミヤナック家襲撃

「アッシュ。状況はどうだ?」「はい。予想通りです。」「そうか・・・・。あぁアッシュ。ウォルシャタ達は?」
「はい。ボルダボとゴーチエが残って、園遊会に参加しております。」「他のものは?」「領地に帰るようです。」「そうか、アゾレム領には戻っていないのだな?」「・・・・。まだわかりません。」「あぁそうだよな。方向から、どちらとでも取れるだろうからな。」「はい。申し訳ありません」「いいよ。引き続き監視を頼む」「はい。」
「それにしても、アッシュ。王国237家と言っても、大したことないな?」「??」「アッシュからの報告書にある237家の現状を読んだが・・」「もうお読みになったのですか?」「あぁそれが?」
「(もしかしたら、リン様の本当にすごい所は、そういう所なのかもしれない。ステータスばかりに目を奪われていると本質を見逃してしまう。)」「アッシュどうした?」「あっいえ。なんでもありません。」「そうか...あぁそれでな、237家の中で独立してやっていけそうな家が殆どないみたいだからな」「え”そんな事は無いと思いますよ」「いや、そうだな。貴族としては独立しているだろうけど、ホレイズの家を見ると、塩が殆ど取れていない。他家から買わなければならない。山を探れば、岩塩も見つかるだろうにそれをやろうともしない。」「・・・・」「それに、どこから入手したのかは聞かないが、納めた税よりも歳費として国から貰う方が多い貴族がほとんどだからな。ローザスに言って、歳費を止めたら面白いことになると思わないか?」「歳費を止めてどうされるのですか?」「公共事業に突っ込む。」「公共事業?」「あぁ例えば、道の整備とかな。今までは、貴族任せになっていた物を王国主体で行うようにする。」「・・・・はぁ」「なに?言ってみてよ?」「そんな事言っても労働力とかは現地の・・・あぁぁそう言う事ですか?」「そ、歳費の代わりに国が主体で地方の村々に対して金を使う。地方の村はそれで安全や利便性を得る。レインが落とされて、貴族の税収もあがる。って感じだね」「・・・・。そんな事できるのですか?」「どうだろうね。でも少なくても、今みたいに、歳費として貴族にばらまくよりはいいと思わない?無能な貴族に無駄な費用を渡すよりは、より必要としている場所に使ったほうがいいからね。」「そうですね。」「うん。オイゲンにも歳費はなくなると思って行動しろって言ってあるし、フレーゲル家やエベンスにも同じ事を言ってある。まぁ僕の配下の街や村々では特色を分けてあるから大丈夫だとは思うけどね」
アッシュが一旦下がった。逐次上がってくる情報を整理するためだ。そろそろ、アッシュの下に情報を整理する者を付けないとパンクするだろうなどうしようかな。監獄街から適当な人間を引っ張ってこようかな。
「リンよ。少しいいか?」「ん。アデレードどうしたの?いいよ。」
アデレードが部屋に入ってきた。
「法律の方は落ち着いたの?」「それは、今イリメリ達が最終的な調整をしておる。」「そうなんだね。それで、アデレードはどうしたの?」「あぁ兄様やハーレイが気になってな。」「うん。大丈夫だよ。今はまだ決起集会が発生しただけだからね」「そうなのか?そこから暴徒になることはないのか?」
「ん?暴徒になるよ。」「なに?リン。どういうことだ?」「アデレード落ち着いてね。暴徒って言っても、アドゥナ伯爵家から出る前に鎮圧されるからね。」「??」「今、ミルやトリスタン達にお願いして、アドゥナ伯爵の庭園の周りを結界で覆ってもらっている。その中で精神魔法を使って興奮状態にしてもらっているんだよ。」「??何が目的なんじゃ?」「あぁそうだね。”君側の奸を討つ”って感じかな。」「リンよ。もう少し説明してくれ、わからん。」「あぁ今彼らの中では、不満が溜まっているんだと思う。僕やミヤナック家ばかりが優遇されていると思っているだろうからね」「そうだな。妾もそれは感じた。御前会議でおぬしの事を敵視しているようだったからな」「うん。それで、ミルが殺しそうになったのを押さえるのに必死だったのは別の話として・・・。」「あぁミルならやりそうだな。」「でしょなだめるのに大変だったよ。」「すまん。リン。話の続きを」「あぁゴメン。彼らは、僕やハーレイの事を憎いと思っても、僕達に失策がないから不満ばかりが溜まっているんだよ。陛下に取り入ってうまくやっていると思っているんだよ」「・・・・そう見えるのか?愚かな。」「あっ彼らが特別愚かって事はないと思うよ。彼らは至って善良な人物だと思うよ。ただ、群集心理ってそういう物だと思うよ。彼”ら”と言って居るときに、集団を一つの意思と考えるからぼやけて見えなくなってしまっているんだとおもうよ。彼らにも個々の考えがあって、大切な守りたい者が居て、維持したい事があるんだろうからね。それを脅かされていると感じているからな。同じように感じているであろう者達と集まると、あたかもそれが一つの方向に向かっているのだと勘違いしてしまうんだよ」「・・・リン。それでは、おぬしは、237家は勘違いしていると言うのか?」「そうだね。アデレード。少し簡単な例をだすね。」「あぁ」
僕は、アデレードに昔父さんが言っていた事を聞かせた。多数決の曖昧さと群衆の怖さだ。10万人が一緒にいられるような広い空間に100人の人が居て、その中の1%は数としては小さな物で大した脅威にはならない。だが、1,000人の1%では?10,000人の1%では?100,000人の1%では?同じ1%でも持っている数の違いが大きくなる。それが一箇所に集まったときの暴力は大きな意味を持つ。100,000人の1%はたかが1,000人だ。だが、この1,000人が一箇所に集まって、一斉に他の9,000人とは違う行動をすると、個々の意思を持ち意見の統一がされていない。他の9,000人は徐々にその1,000人の意見に同調し始める。後はいかにこの1,000人の意見や考え方が一般的なのかを喧伝する事ができるのかだろう。
「リンよ。妾はおぬしが怖い。」「怖い?こんなに可愛いのに?」「だからじゃ。」「ん?」「リン。一つだけ教えて欲しい。おぬしの様な考え方や知識は、ミルやイリメリ達。ウォルシャタ達も持っているのか?」「どうなんだろう。知らない。一応学校では習っていると思うけど、ミルは多分知っていると思う。イリメリやフェムも知識としては持っていると思うよ。ウォルシャタ達は正直わからないけど、持ってたとしたらこの状況にはなっていないと思うんだよね」「そうか・・・。なぜ、ミルは知っていると思うのじゃ?」「あぁそうだね。ミルは、学校の図書館・・・こっちで言う書庫だよ、に、いつも居たからね。そこで、いろんな本を読んでいたとおもう。本当にいろんな本をね。」「そうなのか・・・。いいな。おぬし達の世界に、妾も行ってみたい。」「息苦しいよ。観光したりするにはいいのかも知れないけどね。」「おぬし達はみなそう言うよな」「そう?」「あぁ前にイリメリにもフェムにもタシアナにも、カルーネ達にも聞いたんだが、息苦しいって皆が言うからな」「そうだね。確かに、こっちの世界みたいに命の危険を感じたり、移動に不便だったりは少ないけど、それだけだからね。『なんでも”ある”』と『なんにも”ない”』は同じなんだよ」「よくわからんが、おぬしが言うのならそうなんだろうな。」「・・・うん。そうだね。多分・・・ううん、なんでもない。」
「あぁすまん。横道に誘導してしまったな」「ううん。それでね。彼らに一つの方向性を示してあげようかと思っているんだよ。」「なんだそれは?」「今、彼らは、怯えているのかもしれない、考えようによっては、”ローザスに弓引く”事になるかもしれないんだからね」「あぁ確かに、兄様に対する反逆とも取られてしまうからね。」「全員がそこまでできるとは思えないし、多分出来ないだろう。」「そうじゃな。でも、それでいいのではないのか?」「う~ん。それでもいいんだけど、それだと、多分237家の半分位は参加しない事になってしまうんだよね。不満を燻ったまま動かれると、今後のローザスの執政が面倒になってしまうからね」「・・・・。反対されるって事なのか?」「表立っての反対はしないだろうね。実際問題。反対する事ができなくなるからね。」「あぁそうじゃない。それじゃいいのではないか?」「ううん。僕なら、サボタージュや許されるギリギリの遅延なんかで嫌がらせをするかな。そこまでやらないまでも、全ての唯々諾々として従う様な事はないだろうね。少しのミスでも鬼の首を取ったかのように騒いでやっぱり、ローザスではダメだって思わせるだろうね。」「・・・・。なぁリン。時々お前の言いようがわからない事が多いが、”鬼の首を取った”ってどういう事だ?」「・・・あぁそうか、諺系は言葉としては伝わるけど意味がわからないんだね。”鬼の首を取った”はそうだね。”ドラゴンを倒した”って感じかな?」「(少しのミスでも、"ドラゴンを倒した”かの様な騒ぎ)あぁそういう事か、本当に些細な事で大騒ぎをするってことだな。」「そそ。」
「でも、たしかにな、兄様のやること全部に反対されるよりは、そういうやり方の方が面倒だな」「でしょ。だから、この際。この状況を利用して、ローザスに敵対しそうな輩を全部あぶり出して始末しようと思っている。」
「それでその方法は?」
「種明かしは、もう少し待ってね。後数時間もすれば、ミル達が帰ってくると思うからね。」「解った。それまで待っていることにしよう。」
二人でレマーとヨフムから最近のギルドに上がってくる陳情や報告の話を聞く事にした。興味深い事は、レマーとヨフムがたしかに進化の過程でオーガには見えなくなっている事もあるが、ギルドの職員だからという事で、ニグラの人々や他の職員からの偏見が少なくなっているという事だ。二人から報告を聞きつつミル達を待っている。
「あるじさま!!」
トリスタンが帰ってきた。「おかえり、トリスタン。」「ただいま。あるじさま。疲れたよ」「トリスタンは段々幼くなっていくように思えるが、今が素なのか?」「アデレードの言っている事はわからないけど、トリスタンはトリスタンだよ。」
「それで、ミル。首尾はどうなの?」「あぁリンに言われた通りにやったら、予想通りの結果になったよ。」「それはそれは重畳。」「??」「それで、リンよ。”種明かし”とやらをしてくれんか?」「うん。いいけど、まずは、やることがありそうだからね....。」
執務室のドアが開いた。アッシュが勢い良く飛び込んできた。
「アッシュ。ミヤナックの屋敷が襲われたか?」「!!!なぜそれを!」「幾つかの可能性の内の一つだよ。」
「ミル。トリスタン。もうひと仕事お願いできるかな?」「いいよ。」「りょうかい。」「アデレードも一緒に行く?」「何をピクニックに行くような感じで....」「だって、着く頃にはもう終わっているよ多分ね。」
今回は、僕の護衛と言う事で、ケルベロスのシャラト。ケットシーのカウラ。フェニックスのリアン。そして、竜族の女王のトリスタンが従う。久しぶりに全員揃っての護衛となる。「リンよ。改めてそろうと恐ろしいな」「どうしたの?急に?」「おぬしの護衛のことじゃよ。」「ああみんなかわいいよね。」「そうじゃなくてな。まぁいいけどな。(なぁエミール。リンは判っておるのか?この4体だけで、国の10や20は滅ぶぞ?)」「(いえ、ご存じないかと・・・。)」「ねぇアデレードもエミールも聞こえているよ。大丈夫。僕はそんな事を望んでいないよ。」「!!」「リン。妾は、ここに残る。アッシュから他の報告が入った時に、おぬしに伝える役目がいないと困るじゃろ。」「うん。無いとは思うけど、そうだね。お願い。」
「それじゃミヤナック家に行きますか!」「「「おぉぉ!!」」」
皆を連れて、ミヤナック家に転移した。思った以上に派手にやったようだ。屋敷や周辺には戦闘の様子は無いが、ミヤナック家の庭には昏睡させられた人間や縛られて身動きが出来ないひとが転がされている。
「ぉぉリン様。」「ミヤナック伯爵。ご無事でしたか?」「えぇ我家の誰ひとりとして怪我もしておりません。」「アナタ。それは嘘でしょう。」「奥方。誰か怪我したのでしょか?それなら、リアンに治癒魔法を使わせます。」「いえいえ大丈夫ですよ。怪我は....ほら、来ました。」「リン。遅かったな。あらかた片付いたぞ」「ハーレイ。怪我したのか?大丈夫なのか?」「母上。リンに何を言ったのですか?」「侯爵が誰か怪我をしなかったのかとお聞きになったので、答えただけです。」「それでハーレイは大丈夫なのか?」「・・・・・リン。母上なりのジョークだ気にするな。少し指を切っただけだ。」「そうか、大丈夫ならいいんだけど....。」「あぁ大丈夫だ。」
どうやら、奥方から聞いた話では、帰って来て食事をしているときに、襲撃があって慌てたハーレイが食器で指を切ったらしい。
「それでハーレイ。首尾はどうなの?」「あぁ今、ボノスが捕らえて戻ってくる」「そうか、どのくらいの規模だった?」「あぁお前の予想通りで悔しいが、守備隊で言うと200名前後だな。ただ、貴族の子弟が混じっているようだぞ。」「そうなんだね。強硬手段に出たものだね。」「あぁこいつらは解っているのか知らんが、襲撃の前に名乗りを上げていたからな。」「・・・ダメなパターンだったんだね」「あぁそれで、ボノスとボリスが対応がしやすかった。」「それは、よかった。眷属の数も足りていたようだね。」「あぁ少しだけ過剰戦力だったかもしれないが、な。」「まぁ犠牲者を出さないようにするにはこの位で丁度いいと思うよ。」「そうだな。」
「ハーレイ様。首謀者と思しき人物を捕えてきました。リン様。ご無沙汰しております。」「うん。ボノスもお疲れ様。」「ボノス。それで、そいつはどこに置いてきた?」「はい。他の者と同じで転がしてあります。」「案内して」「はい」
あぁダメだな。100人までは数えたが...。
「ハーレイ様。コヤツです。一番偉そうにしていました」「あぁありがとう。ほぉこれはこれは、”アンバード=ロートン・フォン・ラカイヤ”では無いですか?」「へぇラカイヤ家って言えば、男爵家で、確か、シュターデンが出入りしていたよね?」「あぁルキウス子爵の寄子だぞ。」「ルキウス子爵って確か、ヴァズレ家の寄親でもあるよね?」「そうだったと思うぞ」「ふぅ~ん。」
「ミヤナック。この縄を解け!俺を誰だと思っているんだ!」「ハーレイ。彼は面白い事を言うね。”アンバード=ロートン・フォン・ラカイヤ”だって肯定しているのにね」「なんだ、小僧。お前とは話をしていない。ハーコムレイと話をしているんだ。下賤者は黙ってろ」「ほぉ。リン。こいつここで殺していい?」「ミル。剣を抜かない。ほら、エミールも魔法の展開をやめる。トリスタンも辞めて、こんなクズ食べても美味しくないよ。」「リン?リン=フリークスか?」「そうだけど?今、君を拘束して生殺与奪を握っている者だよ」「・・・・リン=フリークス。お前が出てこなければ、お前がローザス殿下を狂わせたのだろう。探求者だかなんだか知らないが、下賤な者は何もわからずに国益を壟断しおって、お前さえしなければ、お前の母親も母親だ。ニノサとか言う愚か者に騙されて、貴族の何たるかも知らずに、下女もいいところだな。”白髪の小僧”お前が侯爵だと笑わせるな。下女から産まれたお前などが侯爵になっているから、この国はおかしくなってきたんだ。お前とハーコムレイが居なくなれば、ローザス様も気が付かれるはずだ。貴族が大事だとは。我等門閥貴族がどれほど王家に取って必要な者なのかとな」
「いい加減にして。」ミルが、ラカイヤの首筋に剣を突き立てる。良く研がれた剣が少し触れただけで、首筋から赤い血が流れ出す。
「ミル。いいよ。それに、ニノサが馬鹿だったのは間違いない事実だしね。下賤かどうかはわからないけど、僕もマヤも村で育っているからね。でも、サビニの事を下女と呼んだ事だけは許さない。」「リン。おまえな....」
「あぁそうだね。話を進めよう。アンバード=ロートン・フォン・ラカイヤ殿。今のアナタの状況を説明しましょう。」
アンバードは、私兵を伴って、ミヤナック家を急襲した。そして、それは予見されていた事で、全てを読まれた上に、何の作戦もなく突っ込んできた事で、全員が拿捕された。完全なる敗北だ。
「ねぇハーレイ。この場合は、どういう事になるの?」「そうだな。このまま捕えて裁きをした場合でも、今の情勢では、死罪はまずがれないだろうな。」「へぇそうなんだって、良かったね。アンバード=ロートン・フォン・ラカイヤ。もう貴殿の身体は、馬鹿な空っぽの頭を支える必要はなくなるみたいだよ。その場合には、男爵家はどうなるの?」「今までの例だと男爵家は取り壊しで、家族は死罪か自殺だろうな。」「家の者は?」「そうだな。よくて奴隷行きだな」「へぇそうなんだ。決まっているんだね。よかったね。アンバード=ロートン・フォン・ラカイヤ。君が居なくても、誰も困らないようになるようだよ。」「あぁそうだな」「あぁぁそうだ、そうだ、君が自分の街の中に囲っている、商人の娘に産ませた子供安心して、男児が君と同じ所に送ってあげるし、娘はそうだね。娼館に売るって言うのはどう?楽しい未来が見えてくるね。あぁ商人の娘もまだ若い見たいだから、娼館や奴隷商が喜ぶだろうね。良かったね。みんなの役に立つ仕事ができるよ。」
「・・・」「どうしたの?喜びで言葉を忘れてしまったの?僕は、慈悲深いからね。君が苦しまないように、自分の家族に未練が残らないように、君の目の前で家族を殺してから、娘達が今後の生活に困らないことが解るように、娼館に引き取られて客を取る所まで見せてから、殺してあげるよ。だから安心していいよ」「悪魔。」「何?それは僕の事?」「おまえは、悪魔だ、それとも魔王なのか?」「あるじさまは、魔物の王だから、魔王だよね。なに言っているのこのひと?」「あぁトリスタン。馬鹿はしょうがないよ。相手にしても疲れるだけだよ」「・・・。頼む・・・・家族だけは・・・娘だけは・・・・。」「ん?何か蛆虫が言っているけど、ハーレイ何か聞こえる?」「いや、全く。」「リン=フリークス。ハーコムレイ。許してくれ。俺はどうかしていたんだ。命だけは・・・。家族の命は・・・。」「最近、耳が遠くなってね。ハーレイ。いい医者を紹介してくれないかな?」「リンのそれは、医者じゃ治らないぞ」「そうなの?それじゃルナに優しくしてもらおう!」「おまえなぁ....」
「二人ともいい加減にして上げて下さい」「そうだね。」「あぁ。そうだな。」
「アンバード=ロートン・フォン・ラカイヤ。おまえに選ばさせてあげるよ」「・・・・何を?」「そうだな。この場で死ぬか、家族達の今後を見届けてから死ぬか、僕の頼みを聞いて生き延びるか。」「・・・・。」「どれでもいいよ。好きな物を選んでくれていいよ。」「・・・頼みは何を?」「そんな事言うわけないよね?もしかしたら、君の娘を目の前で、君に殺させる事が望みかも知れないからね。あぁそう言えば、古代の王が言っていたな。生娘の肉を美味しく食べるのは、その娘の父親の目の前で捌いてから食べる事だとね。それを実行してもいいんだよ。君は、今、何をされても文句を言えないだろうからね。どうする?」
「・・・・悪魔。おまえには、ひとの心がないのか?そんな事誰も許さないぞ」「うんうん。大丈夫。僕は、お前たちが信じる神に許されようとは思っていない。そもそも、攻め込んできて自分の立場が悪くなったらそれか?おかしいと思わないか?勝っていれば、君達は同じ事を言っていたか?」「・・・」「自分の愚かさに気がついたかい?君は、今、何を叫んでも無駄な立場になっているんだよ。それこそ、権力も何も通用しない場所に居るんだよ。単純な力でもね。今まで、君が自分の領民にしてきた事だよ。」
「ハーレイ?どうする?」「どうするとは?」「面倒だから、こいつの家族を奴隷商に引き渡して、娘を娼館のそれもアドゥナ辺りの場末の娼館に売り渡そうよ。こいつの吐く言葉がもう耐えられないんだよ。」「そうだな。娘は捕えているのか?」「あぁ大丈夫。頭の悪いこいつは、二人の娘と嫁と愛人を別々にニグラの宿屋に泊めているからな。」「そりゃぁいい。」「うん。いつでも捕えられるよ。丁寧にアドゥナの庭園に行く前に、二人と会ってきたようだからな」
「アンバード=ロートン・フォン・ラカイヤ。これが最後の問だ、どうする?」「・・・侯爵様。許してください。娘や嫁や家族には関係ないことです。私はなんでもします。侯爵の靴をなめろと言われたら喜んで舐めます。だから、だから、お願いします。」「そうか、なんでもするのだな?」「はい。娘と嫁や家族が助かるのなら・・・。」「よし、僕の頼みを聞いて、それが僕の希望する結果になったら、娘や嫁に合わせてやる。」「失敗したら・・・。」「大丈夫だ、その場合でも、娘と嫁の生活は保証してやる。まぁ生きているってだけかも知れないけどな」「・・・・。」
「覚悟が足りないようだな。ハーレイ。あれを持ってきてくれ」「あぁ解った。」
アンバード=ロートン・フォン・ラカイヤの足下にやつの足下に娘が着ていた服を投げた。
「あぁぁぁ!!!」
アンバード=ロートン・フォン・ラカイヤの髪の毛を掴んで、「わかったか?おまえには選択肢はないんだよ。これでわかっただろう?」服を拾い上げて、近くに有った火の中に放る。火の中で燃えていく服を見ているようだ。
「侯爵。侯爵。お願いです。本当になんでもします。娘だけは娘だけは....」「あぁ分かっている。おまえにやってほしい事は簡単だよ。僕の言葉をお仲間に伝えてほしい。ただそれだけだ。そして、ミヤナック家襲撃が失敗した事。自分以外の人間はもう帰ってこない事を伝えるだけでいい。」
「本当にそれだけでいいのですか?」「あぁいい。伝える言葉は『お前たちは、トリーア王家に弓引く逆賊だ。』って伝えるだけでいい。後は、襲撃したときに、僕が現れて、背後からおまえを脅してきたと言えばいい。」「わかりました。解りました。わかりました。」
「急いで言っても、すぐには駆けつけられないだろうな。レイア。レウス。わるいけど、この愚か者をアドゥナの屋敷に届けてよ。届けて、うまく事を運んだら、そのまま、監獄街に運んで上げて」「かしこまりました」「かしこまりました。リン様。今度は我等も戦いに参加させて下さい」「うん。いいけど、レウスが居たら戦闘にならないと思うからな。」「大丈夫です。手加減を覚えましたから殺さないようにできると思います。」「そうか、それなら、いいね。でも、今日はつまらない搬送だけどしっかりやってね。あぁこいつが逃げようとしたら殺していいからね。首だけ持って帰ってきてくれればいいよ」「かしこまりました」
レイア。レウスに連れられて、アンバードが出ていった。
「どうかな?僕、悪役ぽかった?」「あぁそうだな。セリフは悪役だったけど、ミトナル嬢が笑いそうだったのが減点だな。」「だって、リン。娘さんや奥さんは監獄街で保護しているんでしょ?理由も説明してあるんだよね?」「こっちに向かうって解ったときに、すぐに向かわせている。」「それを娼館に売り渡すとか、殺すだとか...笑わないほうがおかしいよ。よくハーコムレイは平気だったね。」「俺か?俺も必死だったからな。絶対に、お前たち、ルナに言うんだろう?」「僕は言わないよ。」「私も言わない。」「わたしも。言ったりはしません。しませんが・・・。」「エミール嬢。その隠した物を渡してほしいかな?」「駄目です。これは、ルナ姉に頼まれた物で、これを持っていかないと、私はルナ姉からおもちゃにされてしまいます。お許し下さい。」「リン。お前たちは集まって何をしているんだ?」「僕に知らないよ。ただ、ルナがタシアナから映像珠を入手して、それをエミールに渡して、ハー兄様の大根演技を撮影してきてくれたら許すって言っていたのは聞いたけどね。」「ルナ・・・。あんなに純粋で可愛かったのに、全部そこのリンが悪いんだな。」
「ほら、アナタ。そんな事言っていないで、館の周りの状態を確認して、伯爵に報告しなくていいのですか?」「これはこれは、お姉さま。」「侯爵様。本日はありがとうございます。」「いえいえ。」「これからどうなりますでしょうか?」「そうですね。少し騒がしい日が続くかもしれませんが、その後は晴れやかな日が訪れる事になるでしょう」「そうなのですか?それはどのくらいなのでしょうか?」「そうですね。ニグラ周辺は1ヶ月もかからないと思います。お耳汚しな情報も4ヶ月位でなくなって、半年かからないで晴天になると思いますよ」「そうですか、大掃除とは大変なものなのですね。」「そうですね。小さな小さな埃でも溜まっていけば、重く固くなっていきますからね。」「わかりました、わたくしとしては、あまり壊さないで埃だけを取り除いてほしいのですけどね」「私もそう思っていますが、どうしても固まった埃を取り払うときに、傷を付けてしまう事はあろうかと思いますが、修繕してよりよいものにしたいとは思っています。」「そうですね。前と同じでは意味がありませんからね。埃にも申し訳ないですよね」「えぇそうですね。だから、私は今回の件で徹底的に埃を叩いてしまいたいと思っています。」「そうなんですね・・・・。侯爵。ハーコムレイは頭が固い所がありますが、根は真面目で優しいひとです。お見捨てなきようにお願いいたします。」「勿論です。奥方にも安心してもらえるような結果を持ってきます。多分、今日でこの屋敷は襲われる事はないかと思いますが、数日は外出には注意して頂けると助かります。」「判っております。それでは、わたくしは、ハーコムレイの下に戻ろうかと思います。本当に、本当に、ありがとうございます。これからもよろしくお願いいたします。」
本当にアデレードのお姉さんだな。
「ねぇリン。今の会話って・・・。」「うん。ミヤナック家だけではなく、トリーア王家の事だね。また負けられない理由が出来たね。」「うん。大丈夫。リンは負けないよ。」「ありがとう。その期待が一番僕を奮い立たせるよ。」
「よし、それじゃニグラ支部に帰ろう。」「うん。島じゃなくていいの?」「今日は、元ラーロ宿屋に部屋を取っているからね。そこで休むよ。イリメリとかにも伝えてあって、みんな集まるよ。たまには外泊もいいでしょ!」「うん。」
みんなでニグラ支部に戻る前に、捕えた者達を監獄街に送った。その後、ニグラ支部に移動して、久しぶりにギルドの裏にある銭湯に入る事にした。ミル達は女湯に入っている。久しぶりに1人での風呂になった。屋上で軽く食事をして、宿屋に移動した。ほぼ貸し切り状態になっている。部屋は1人づつにしてある。トリスタンが僕と一緒に寝ようとしたが、ミルに連れて行かれた。
今日は、本当に僕は1人で寝る事になって目を閉じた。

「リン。久しぶりに一緒に寝よ。」「うん。いいよ。マヤ。おいで!」

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