【旧】チート能力を持った高校生の生き残りをかけた長く短い七日間

北きつね

王都の異変の予感

ローザスとハーレイの説得と言うか、なんというかわからない会談も終わって、風呂に入った。サウナでじっくりと汗を流して、水風呂で身体を冷やしてから、ミストサウナで少しだけ身体を温めてから、ユニットで身体を洗った。その後、寝湯に入った所までははっきりとおぼえている。
そこで、寝てしまった様だ。今、目を開けたら、右側にアデレードが居て左側にルナが居た。珍しい組み合わせだなと思ったが、今日は精神的にも疲れてしまったのだろう。そっと起きて風呂を出ようとしたら、アデレードが起きてしまった「アデレード疲れているだろうからいいよ寝ていて。僕は先に寝室に戻って寝るよ」「リン。妾も一緒に寝室に行くぞ。ルナ。ルナ。リンが起きて、寝ると言っておるぞ」「ん。あぁアデレードありがとう。それじゃリン。行きましょう。」「はい。」
どうやら、二人は僕が寝ていたから横で寝ていただけのようだ。3人で身体を拭いて寝室に向かった。「ねぇ他のみんなは?」「ミルはまだ迷宮ダンジョンだよ。」「タシアナは、ミーシャと職人街に行くって言っていたよ。なんか、多分大量に映像珠が必要になるだろうから、作っておくって言っていたぞ」「そうなんだ。」「紛争が発生したら、映像珠の作成ピッチを上げるとは言っておったぞ」「そうなんだムリしないように言っておかないとね。最悪は、眷属に影移動や転移を使ってもらえば済む話だからね。」「あぁそうだな」「そ言えば、イリメリとフェムがモルトと憲法を作るとは言っていたよ。」「あぁ草案はモルトに渡したんだけどね。イリメリに説明をお願いした。選挙とか地方自治みたいな事を取り込みたいんだよね。」「ん?リンは民主主義にするの?」「ううん。最終的にはそれを目指すけど、議院内閣制にはしないよ。どちらかと言うと大統領制+議会かな。大統領は直接臣民が選挙で選ぶ。その上に僕が執政官となる。議会は3つ。一つが全ての街からの代表者による議会。もう一つは技術顧問などの技術官僚テクノクラート達による議会。そして、最後が直接選挙で選ばれた人たちの議会。」「街の代表は、リンが指名するんだよね?」「そうだね。」「技術官僚テクノクラートは?」「どうしようか、考えているけど、大学の教授選とかみたいな感じかなって思っているけど、ドラマとかでしか見たこと無いからな・・・。まぁ各部門の代表が集まる形でいいと思っている。」「へぇそうなんだぁ。議会事の意見の集約はしないの?」「あぁするよ。議会の中から1人の代表者を決めて、大統領と合わせて4人と王家の代表で最終決定をするって感じで考えているよ」「王家の代表なんだね。」「そ、代表だよ。何か言いたいみたいだね」「ううん。リンじゃ無いんだねって思っただけだよ。」「そこは、代表でお願いします。僕は、楽をしたくてやっているのに、仕事が増えていくのはおかしいと思わない?」「まぁよい。それで、サリーカは、各国からの商人や商隊が来はじめているから、それらの対応をしているぞ」「へぇそうなんだ。」「あぁ変わった食材があれば試しているみたいだからな。」「そうか、サリーカがしてくれているのなら安心だな。」「あぁそうだな。」「それで、ルールはマガラ神殿と同じにするの?」「イリメリもフェムもサリーカもそこを考えておるみたいだぞ」「ねぇアデレード。商隊や商人って基本的には、一つの国に属するんだよね?」「あぁそうじゃな。そうしないと、税が払えないからな。」「そうか、明日にでも、サリーカとイリメリとフェムに話をするよ。」「あぁそうじゃな。」「ゴメン。もう無理。今日は寝る。おやすみ・・・・。」
◆◇◆◇◆◇◆◇
ルナとアデレードの体温で目が醒めた。腕に柔らかい感触と肩口に擽ったい吐息を感じる事が出来る。そっと起き出す事は出来ない。近くを見ると、ミルがお預けを喰らった犬のような雰囲気でこちらを見ていた。「ミル。二人を起こして」「ん。いいよ。アデレード。ルナ。いい加減に起きたら?起きているんだよね?」「・・・ちぇっ!ミル。いつも邪魔して...」「邪魔してないよ。今まで黙っていただけいいでしょ?」「それは、貴女がリンを見ていただけでしょ?」「そうだけど、いいよね。結果、横に居たんだから・・・ね。」「そうだけど、なんか納得できない。」「まぁまぁ二人共」「リンは黙ってね」「リンはいいの!」「・・・はい。アデレード。食堂に行こう。」「そうじゃな。二人を置いてさっさと食事を取りに行くか、今日も忙しいのだろう?」「う~ん。僕は、予定は無いから、サリーカとイリメリとフェムと話をするよ。」「そうじゃな」「あぁぁリン。サリーカとイリメリとフェムは先に食堂で待っているって言っていたよ。」「わかった。ミル。ありがとう。」「ううん。いいよ。」
4人で食堂に行くと、朝食を終えた3人が待っていた。モルトは職務で出ていると言う事で、メイド長のニメラが食堂に居た。ニメラにサンドウィッチと果実を絞ったジュースをお願いした。
「それで、リン。何か話があるんだよね?」「あぁサリーカにお願いというか、やってほしい事があるんだよ。」「何?」「うん。今諸外国の商人の事をまとめているんだよね?」「うん。」「それでね。出来たらでいいんだけどね。商人が小売店を出したいって言う事なら、オイゲン達の街のビッグスロープにお願い出来ないかな?」「なんで?」「ん?大阪って言ったら商人の街でしょ?」「って理由はそれ?」「もう一個あるのは、ビッグスロープに行けばなんでも揃う位にしておきたいんだよね。雑多な感じになっていくと思うけど、それが楽しい街って感じにね。」「あぁぁ解る。それ、リンが作る街って合理的だけど、余計な物を買うって事が殆ど無いんだよね。」「・・・・そうだね。どうしても、SLGのときの癖だね。属性が同じ物をまとめちゃうんだよね。」「了解。それだけ?」「ううん。それで、マノーラ神殿の朱雀門の辺りに、各国の物産展が出来るような建物を作ろうかと思っているんだよ。そこに誘導して欲しい。」「ん。別にいいけど、そこはどう使ってもらうの?」「一階は、商店が入るような感じにするよ。二階は商談スペース。三階は会議室と領事館室みたいな感じにして、そこは免税店って感じかな。」「ん。領事館?大使館は別に作るの?」「うん。そのつもりだよ。大使が居る所に買い物客とかが入っていったりしたらおかしいでしょ?」「まぁそうだね。解った、ありがとう。そうするよ。」
そこで、サリーカは今日はモルトと一緒に各国の人や商隊と話をする事になっているとの事だ。今の話をモルトにもして、方向性を決めるんだと言う。イリメリとフェムは、昨日モルトと作った物をもう一度読み直して調整をするんだと言う。アデレードとルナがそれに付き合う事になる。僕は、ミルとタシアナとでニグラ支部に詰める事になっている。アッシュから少し動きがありそうだと言う事だ。
ミルとタシアナとミーシャとウィンザーとエミールといつもの様にトリスタンが一緒に行く事になる。ニグラ支部に着くと、受付がすごいことになっていた。僕が侵入不可能な島ヴァル・デ・ハラを攻略したと発表されてから、新天地での仕事を求める者が来たり、商人が殺到しているのだと言う。
僕の執務室だけは残される事になっている。執務室に入ってから、エミールにアッシュを呼びに行かせた。
「リン様。」「あぁアッシュ。いろいろ頼んで悪いな。」「いえ、大丈夫です。それで、どうなんだ何か動きが有ったんだろう?」
「リン。私とウィンザーとトリスタンで少し買い物してきていい?」「いいよ。」「後、迷宮ダンジョンで調整しているから、何かあったら呼んでね。」「了解。タシアナとミーシャも一緒?」「どうする?タシアナ。」「そうだね。リン。ちょっと行ってくるね。」「了解。今日は、何も無ければ、僕はここにいるよ。」「「はぁい」」
「すまん。アッシュそれで?」「あっはい。今日、ホレイズ・マシュホム・アドゥナの3伯爵が郊外にあるアドゥナ伯爵の庭園を使って、園遊会を開催すると言う連絡が廻っています。」「園遊会なんだな?」「はい。3伯爵が別々に寄子に声をかけ集まるようです。」「そうか、時間は?」「18時位だと言われています。」「・・・。規模は?」「今の所の情報だと、丁度御前会議が行われていて、それに合わせての開催ですので、237家全部が集まるようです。」「守備隊は?」「どうでしょう。アドゥナ伯爵の庭園ですので、必要最小限の人数しか赴かないと思います。」「そうか、他には?」「はい。気になったのは、伯爵達が大量の羊皮紙を買い求めている事です。」「それは、いつからだ?」「・・・御前会議の日からです。」「・・・・そうか、ギルドに言って、在庫があるようなら全部放出するつもりで売って。僕らには、必要ないだろうからね。」「かしこまりました。商人に連絡しておきます。」
うん。アッシュが、眷属に伝言を頼んでいる。伝令として、何体か常にアッシュに居るが、すでに手足の様に使っているようだ。
「アッシュ。眷属たちは大丈夫か?」「はい。何の問題もありません。」「そうか、何かあったら教えてね。」
「リン様。もう少し、情報を整理致します。アゾレムの監視とウォルシャタの監視に関しての報告書をまとめてあります。」「あぁありがとう。今日は、一日執務室に居るから何か動きがあったら教えてね。」「かしこまりました」
アッシュが出ていって、入れ替わるように、レマーとヨフムが入ってきた。「あれ?お前たちは、島のギルドでシュトライトの手伝いをしているんじゃなかったのか?」「いえ、シュトライト殿か、リン様が暫くはニグラで指示を出すだろうから、ニグラの執務室に行ったほうがいいとおっしゃって居まして...。」「あぁいいよ。手伝ってくれるのは嬉しいからね。」「ありがとうございます。後、何体かオーガからも手伝いを連れてきています。伝令などにお使いいただければと思います。」「そうか、早速で悪いけど、島に居る。ヒト型になれて影移動と転移が出来る眷属を、マガラ神殿の地下二階に来るように言っておいて欲しい。できれば、ある程度の武装が完了している者で頼む」「かしこまりました・・・。ただ・・・。」「どうした?」「いえ、それですと7~8千程度ですがよろしいのですか?」「そうか、そんなに多いのか?」「え?あぁ少ないとおっしゃられるのかと....」「あぁそうだな237家に3体貼り付けるつもりで考えていたからな。1,000も居れば大丈夫だ。」「そうなのですか?」「どのような事をお命じになるのですが、それによってもう少し絞りこめると思います。」「そうだな・・・。3体で連携を取って、守備隊500位と安全マージン取ってやりあえる感じだと安心できるかな。」「はぁ・・・。」「それでも、まだ多いんだね」「はい。それでも殆ど変わらないかと思います。リン様達がお相手でない限り、私達で対処できるのは1,000人単位です。目覚めたばかりの者ですと少しきついかもしれませんが....。」「そうか、そうだ。認識阻害や気配遮断ができる者に絞って欲しい。尾行には気づかれないだろうけど、それができればより安全だろうからね。」「かしこまりました。運営はどういたしましょうか?」「そうだな。カエサルかヒューマに任せよう。アドゥナ伯爵の庭園に集まった貴族を全員マークできるようにしておいて欲しい。」「かしこまりました。」
ヨフムがオーガを数体連れて、部屋から出ていった。そのまま島に行って人選をしてくるようだ。そう思っていたら、5分ほどして、ヨフムが戻ってきて、一枚の書類を手渡してきた。
「リン様。依頼内容はこれでよろしいでしょうか?」
手渡された書類には、先程話をした内容が書かれていた。依頼者の名前には、ヨフムの名前が書かれていて、クライアントの部分は空欄になっている。報酬は”なし”となっている。
「これは?」「あっはい。この度、眷属用のギルドが立ち上がりまして、そこからのお願いで、依頼がある場合には、依頼票を記載する事になりました。サラナ殿とウーレン殿がそれに優先度を付けて眷属を斡旋する事になっております。」「へぇそうなんだ、わかりやすくていいね。」「はい。リン様のご指示に関しては、サラナ殿とウーレン殿の認証なくて募集が行われる事になっています。」「へぇ・・・」
話を聞くと、サラナとウーレンってよりも、イリメリとフェムがやり始めた事の様に思える。裏ギルドへの依頼は、表のギルドからも行く事があるが、反対もあり得ると言う事なんだろう。買い物などは、サラナとウーレンが行かなくても、裏ギルドから表ギルドに流す事ができるという事なんだろう。そして僕の依頼に関しては、名指しになる事も多い上に眷属に直接と言う事もあるので、そのまま依頼が実行されるようにしているのだと言う。
「でも、報酬が”なし”になっているのはいいの?」「はい。リン様からの依頼ですから、問題無いです」「そうなのか....でも、僕がそれじゃ気に入らないから、報酬を出す事にする。相場がわからないから、ヨフムの方で適正報酬を支払うようにしてね。」「かしこまりました」「うん。後は、クライアントの所に僕が署名すればいいの?」「はい。それで、後はゴットケープ島のマノーラ神殿一階に提示するだけです。名指し依頼なので、私が説明しに行ってまいります。」「そうか、それじゃ”はい”これでOKかな、お願いね。」「はい。かしこまりました。少し行ってきます。」「たのむな」
ヨフムがマノーラ神殿まで行ってきてくれるようだ。裏ギルドが機能し始めれば素材の事で困る事はなくなるんだろう。
レマーに珈琲を頼んでから、アゾレムとウォルシャタの領地の報告書を読む事にした。
内容は、今まで報告を受けてきた物と変わりは無い。アゾレムの領主は荒れた生活をしているようだ。もう家の者も殆ど無い状況らしい、妻達も荷物をまとめて出ていったのを確認している。
そろそろ、ティロンの出番かな?閉じ込めたまま生かしてある。死んだと言う報告が上がっていないから生きているんだろう。
「レマー。アゾレムの行政官だった、ティロンはまだ生きているよな?」「私ではわかりません。」「そうか、ちょっとアッシュに確認してくてもらえたら嬉しい。」「かしこまりました」
しばらくしたら、レマーに連れられて、アッシュが入ってきた「悪いな。アッシュ。報告書を呼んでいたら、ティロンの事を思い出してな。そろそろ仕上がったんじゃないのか?」「あぁ・・・そうですね。すみませn。私も忘れていました。早速確認に行ってきます。」「わるい。頼む。それと仕上がっていたら連れてきてくれないか?」「かしこまりました」
トリーアで事変が発生した時の前線基地をどうするのか考えておく必要があるな。アドゥナ伯爵が一番可能性が高い。まぁ確かに攻めにくく守りやすい地形になっているよな。昔は別の国が有ったというのもうなずける。
攻めにくいのにはもう一つ理由がある。アドゥナ領に至る街道がスネーク山と大河に挟まれているためだ。遠回りをしていく事も可能だが、時間的にも数倍必要な上に、そちらには、他の2伯爵の領地が存在している。回避する為には、ミヤナック領かウォード領から諸外国を抜けて、ラブプール王国から攻め入る方法もあるが、それを使っても、何も無い草原での戦いになり、攻め入る側の疲労を考えると得策ではない。よしんば、巡回行動が成功して、アドゥナの裏を付けたとしても、短期決戦で仕留めないと、左右から他の伯爵領から出る隊に挟み撃ちにあってしまう。
う~ん。そうかぁ各軍での連携運動とかどうしているのだろう?信号にしても手旗信号では限界があるし、狼煙を出すにしても....まして、伝令を走らせるにしても、タイミングを逃してしまうのは間違いない。もしかしたら、個々の戦術だけで成り立っているんじゃないのか?そうだとしたら、すごく簡単になってしまうぞ。誰か、詳しそうな奴が居たら聞いてみたい。ファンは....ダメだろうな。戦術は大丈夫だけど、戦略の話ができそうにない。ローザスやハーレイも具体的な命令形態まではわかりそうにない。
「リン様。」「おぉアッシュ。どうだった?」「はい。ティロンを連れてまいりました。リン様に絶対の服従を約束すると言う事です。」「そうか、それならいい、入らせろ。それに、息子を除く家族の事も教えてやれ。」
そう、ティロン家は山崎エスタールを除いて漢族街で暮らしている。高待遇ではないが普通に困らない様にはなっている。
「アッシュ。まずは、家族に合わせてやれ。その後で、仕事がある。それをうまく乗り切ったら、家族の元に返してやる。」「侯爵様。息子は?エスタールはどうなりますか?」「奴次第だな。俺に跪いて許しを願い出て、自分がやった事を全て認める告白をしたら、殺すような事はしない。」「息子は何をしたのですか?」「それをお前が知ってどうする?」「・・・・私の命で許されるのなら・・・・」「お前は馬鹿か?お前の命にそんな価値があると思っているのか?」「アッシュ。本当にこいつは解っているのか?」「・・・・はい。大丈夫です。万が一の時には、首を刎ねます」「そうか、それならいい。」「それでどうする?俺の申し出を受けるのなら、家族と暮らす事もできるぞ!」「はい。もちろんです。侯爵の申し出を受けさせて下さい。」「そうか、解った。」
あぁぁ居た!紛争レベルだけど戦闘の経験者がいたな。
「アッシュ。ティロンを家族の元に届けて。ゆっくり・・・そうだな。3時間程度過ごさせてから、戻ってこさせろ、風呂にも入らせろよ。」「はい。」「それから、監獄街に行ったら、アルドとオルトにこっちに連れてきてくれ。」「よろしいのですか?」「あぁ大丈夫だろう。」「かしこまりました」
アルドとオルトなら少しは状況が解るだろう。最先端とは言わないけど、戦闘もできるだろうし、指揮もしてきただろう。ミルとタシアナ達をレマーに呼びに行ってもらっている。
珈琲を飲みながら待っていると、アッシュが帰ってきたようだ。「リン様。二人をお連れしました。」「うん。入ってもらって」「どうぞ、オルト准男爵。アルド殿」「あぁありがとう」「もうしわけない。」
「オルト殿とは面識はあるけど、アルド殿は、マノーラ家のダンスホールでお目にかかっただけで挨拶はしていませんでしたよね。」「・・・えぇ。俺は、、いや、私は、アルド=ウー・ランベクといいます。侯爵。殿などと呼ばないで下さい。私は、貴方に侯爵様に救われたと思っているのです」「そうですか、それなら、僕の事は、侯爵と呼ばないようにお願いします。むず痒くなってしまいますし、できれば、様付けもしてほしくないのですよね。アッシュにも言っているんだけどね...」「はぁそうなのですか?」「そうなんだよ。まぁ呼びやすいように呼んでください。」「はい。それで、今日はどういった....。」「あぁそうでした。少し、お二人と話したい事が有りまして来てもらいました。もう少し待って下さい。」
「えぇ構いません。むしろ、俺たちで何を話せばいいのか?」「大丈夫ですよ。一般常識のレベルだとは思うのですが、これからのこの王国で発生する可能性がある事への対処を考えるときの指標がほしいだけですからね」「はぁそうなのですか?」「むしろ、お二人はトリーア王国が今後どうなるとお思いなのですか?」「そうですな。正直な話。ついこの間まで、宰相が国をまとめて行くんだと思っていましたが、オルトの話やイスラ街での話を聞くと、違って見えてきます。」「それは是非お聞きしたいですね。」「侯爵・・・リン様がそうしているのかわかりませんが、あの街はすごくいい街です。街の成り立ちは所在地を聞くと信じられない位です。」「そうですか?」「えぇなんというのか、平等なんですよ」「平等ではないと思いますけどね。明確な区別をしてあります。」「いえ、言い方が悪かったですね。しっかりやっていれば報われると言う事です。オルトの話を聞くと、それがよくわかりますし、街の中で働く者達もそれが解るのか、無理に仕事させようとしなくてもしています。それは、多分、私が今まで見てきたどこの領主とも違っています。」「そうなんですね。そう言われると言う事は、アルドは今まで幾つかの家を渡り歩いたの?」「そうですね。元々は宗兵マルクトでしたが、宰相に腕を見込まれて、貴族の守備隊を転々として、この前までアゾレムで守備隊の隊長をやっていました。」「そうか、アドゥナ伯爵の下には?」「はい。小隊でしたがお世話になりました。その後、アゾレムで隊長をやる事になったのです」「そうか「リン。何?話って」あぁ丁度良かった。ミルとタシアナにも意見がほしかったんだよ。」
ミルとタシアナが戻ってきてくれたようだ。時間がかかったのは軽くシャワーを浴びてきたからだろう。
「それで、リン様。どういったお話なんでしょうか?」「あぁ今の情勢は聞いている?」「あっはい。概ねは。内乱が起こるかも知れないって事と、イスラ街はエントやレイクサーペントが守っているから大丈夫、それ以外にもいろいろ魔物・・・眷属って言うでしたっけ?守っているから大丈夫だと言われています。実際に、一度、ドライアドと会った時には驚きましたよ。」「あぁそうか....それじゃ、そこのレマーもかな?」「え”?えぇぇぇオーガ?えぇぇ?」「あ”「レマー!」はい。元の種族は、オーガですが、今はリン様の加護の下に、鬼人となっています。よろしければ、お手合わせいたします。」「いや、レマー殿申し訳ない。俺はまだ死にたくないので、遠慮します。オルトお前がレマー殿と模擬戦でもするか?」「私がですか?隊長。冗談を・・・・。それで、リン様。何かお話が有ったのですよね?」
「あぁそうそう、内乱が発生した時に、僕の所に内乱を鎮圧しろと命令が来る事になっているんだよ。そこで、地図を眺めながらどうしたらいいのかを考えていたんだけどね。相手の出方がわからないからね。それを、二人に聞きたかったんだよ。」
「そういう事でしたか?」「うん。」「想定敵は?」「アゾレムはこの際考慮しなくていい。アドゥナ伯爵・マシュホム伯爵・ホレイズ伯爵の三伯爵だな。」「そうですか・・・。アドゥナ領に入られると厄介ですよ。」「やっぱりか・・・。でも、敵もそう考えるだろうから、アドゥナ領に集結する可能性が高いんだよね。」「そうですよね。よほどの馬鹿でもない限りそうすると思いますよ。相手側の敵の数は?」「どうだろう?エミール。予想は出ているの?」「あっはい。少なく見積もると、6,000程度だと思われます。男爵や准男爵の幾つかの家は参加しないと思われますが、それでも最低でその程度だと思われます」「最大では?」「最大はわかりませんが、アドゥナ以外の伯爵も守備隊を全部集めると、30,000~35,000だと思います。」「アドゥナの街の規模は、アゾレムの3倍程度だと思われます。」「ねぇアルド。アゾレムの守備隊って常備兵でどのくらい居たの?」「オルト。どの程度だった?」「隊長しっかりして下さい。5小隊+分隊と隊長直部隊の7部隊、1部隊約200名で構成されていて、1,400名です。リン様」「意外と多かったんだね。」「えぇそうですね。ウォルシャタについていった部隊を除いて、全部イスラ街に居ますけどね。」
「それで聞きたかったのは、戦闘中とかに部隊間の連絡をどうしていたのかとかだね」「連絡?」「そう?」「戦闘中に?」「うん。」「オルト何かしたか?」「僕はした事無いですよ。」「そうだよな。俺は、伯爵や男爵に定時連絡があるから伝令を使ったりしていましたけど、それだけですよ」「え”そうなの?予定の場所に敵が居なかったり、予想以上だった場合にはどうしていたの?」「あぁその時には、誰か1人を隊長の所に向かわせたりはしますが、基本的には、ここの隊の小隊長に任せると言う感じですね。」「そうか、それじゃ連携して何かをすると言うのは考えなくていいのかもしれないな」
「ん?侯爵・・・じゃなかった、リン様はどうされるつもりだったのですか?」「あぁ僕達の神殿の力の事は聞いた?」「もちろんです。びっくりしましたよ。でもいろいろ納得しましたよそれで...。」「うん。転移できるとって言っても、一度には制限が発生してしまうんでね。例えば、ナーイアス神殿に一度集結させて、そこから国境を越えて、アドゥナ領の後ろに広がる草原に陣を張ろうとは思っている。」「へ?そんな事できるのですか?」「うん。ナーイアスからだから進軍に5日ほどかかってしまうけどね。」「?!」「でね。そのときに心配になるのが、マシュホムとホレイズから挟撃されないかって事なんだよね。相互に連絡取り合っていると、タイミングを合わせて、挟撃できるだろう?」「リン様。そりゃぁ無理ですよ」「無理とは?僕の考えが?」「いえいえ。違います。要は、リン様の部隊がアドゥナと対峙しているときに、左右からマシュホムとホレイズの守備隊が襲ってこないかって事ですよね?」「うん。そうそう。少し考えれば解るだろうから、準備されていたら目も当てられないからね。でも、真正面から当ると僕達の被害が出てしまうだろうから、それは避けたいんだよね」「・・・リン様。タイミングをあわせて襲ってくる事は考える必要は無いです。そもそも、出来ないと思います。向こうによほどの戦略家が居て、リン様の行動を読み切って、草原に現れるタイミングまでぴったし読みきらなければ意味がないです。そんな事ができる人間が向こうに居るとは思えません。」「そうなの?」「えぇもしそれを心配されるのなら、アッシュ殿に偵察をさせればよいと思います。戦場で時間が取られてしまって、相手の伝令が別の領主の所に津あえに行ったとしても、帰ってくる頃には、リン様は他の場所に移動すればいいだけなのです。広い戦場を設定して、その中を伝令が相手にバレないように抜け出して、伝えに行くのに、何日かかると思っているのですか?最低でも往復で15日は見ないとダメでしょう。それを考えれば、戦闘が始まってから10日以上経過してしまったら、左右を警戒しだしても遅くないと思います。」
「そうか....」
日本の戦国時代の戦闘を思い浮かべればいいんだな。これで大分考えやすくなった。
それから、地図上に駒を置いて戦略を皆で考えた。アドラもそれが楽しかったようで、また呼んで欲しいと言われた。トリーアじゃなくてもいいのなら、テルメン国に来てくれたら、もう少し詳し話もできるというと、喜んでと言う事だったので、アドラをテルメン王家で召し抱える事にした。役職は面倒なので、軍事部門のトップをやらせる事にしたが、まだ本人には伝えていない。オルトが隊長ばっかりズルいと言う事だったが、オルトは準男爵になったばかりだったので、今回はダメだと言った。代わりの者が見つかったら、オルトにも来てもらう事になった。
二人には地図と駒を渡して、相手が考えそうな手を考察しておいてほしいとお願いした。二人を帰したときに、アッシュが再度やってきて
「ティロンを連れてきました」「あぁ丁度いいタイミングだったよ。ティロン。家族は無事だったか?」「っは。はい。はい。ありがとうございます。侯爵様。息子があんな事をしていたなんて知りませんでした。自分の妹や母親を仲間の慰め者にしようとしているとは....アイツは鬼です。」「あぁいいよ。ギリギリ間に合ったことだしね。」「はい。妻も娘も侯爵様には感謝しても仕切れないと言っております。私でできる事ならなんでも致します。お申し付け下さい。」
「あ!!アッシュ。オルトを呼び戻して!」「かしこまりました」「ティロン。少し待っていて。お前にやってもらいたい事が二つある。」「かしこまりました。」「一つは、お前の名前を借りて、かわら版に記事を載せたい。」「かわら版?」「あぁそうか、アゾレムには意識的にあまり出回らないようにしていたんだった。」
エミールがティロンにかわら版の説明をしている。そこに、アッシュに呼びに行かせた、オルトが戻ってきた。
「リン様。御用ですか?」「あぁオルトの変わりに、イスラ街の分領を任せる人間を見つけたからな。お前さえ良ければ、早速手続きをしようとおもってな。」「え?本当ですか?」「あぁ。その代わり、トリーア王家の准男爵じゃなくなるぞ?それでもいいのか?」「えぇ未練はありません。隊長と一緒に行かせて下さい。」「わかった。ティロン。もう一つのやってほしい事は、オルトに変わって、イスラ街にある分領をまとめて欲しい。暫くは、代官って感じだけど、しばらくして問題なければ、準男爵にするからな。悪い話じゃ無いだろう?」「え”?私が、準男爵?」「ティロン殿なら問題無いですよ。私に出来たことですからね。」「・・・・考えさせて下さい」「ダメだ。受けてもらう。そして、準男爵になってもらう。アゾレムを裏切った男として生き恥を晒してもらう。いいな!」「・・・・それが、私への罰なのですか?」「そうだ、そのかわり、息子を除く家族は優遇しよう。どうだ?」「はい。一つお約束していただきたい。」「なんだ?」「娘の婚姻の時には、父親として出席させて下さい。私は奴隷でもなんでもいいですが、妻と娘は何卒....」「そんな事か、それは約束しよう。他には無いのか?」「はい・・・。娘の婚姻は娘と妻の意思におまかせ頂けますか?」「あぁ勿論だ。それは約束にならないな。当然の事だからな」「・・・・リン様。そのお話お受けいたします。」「そうか、やってくれるか、ありがとう。オルト。良かったな。」「はい。それじゃ私は、隊長の所に戻って話をしてきます。後、エベンス殿の所にも事情を説明しにいきます。」「あぁ頼む。何かあったら連絡くれ」「はい。それでは・・・。ティロン殿。よろしくお願いします。」
「それで侯爵様。かわら版の方は?」「あぁそうだったそうだった。ティロンが、アゾレムで代官をしていたのは貴族社会では有名な話だよな?」「あっはい。」「そこで、頼みと言うのは....」
ティロンに頼みたい事は証人になってもらう事だ。居場所としては、ギルド側が安全を保証すると言う事にして、3つの事を証言してもらう事になる。アゾレムが不正に溜め込んで本来なら税として収めなければならなかった物を貯めて、ゴーチエ家を通して、アドゥナ/ホレイズ/マシュホム各伯爵家に流れていた。その為に、アゾレムは領民に無理な税を課して、税が払えない時には、若い娘を無理やり奴隷に落として、外国の奴隷商を通して、伯爵家に流したりしていた
アゾレムが不正にしていたのは、私服を肥やそうとしたわけではない。伯爵家や一部教会関係者から頼まれてやっていた事である。断れば、男爵家の取り壊しをちらつかせられていた。
宰相主体で進められていた、ミスリル鉱石の採掘事業は破綻している事。集まったレインは、伯爵家や一部教会関係者が手数料と称して抜いた後のレインが来ていた。アゾレムは、それを採掘に使う前に、貴族や一部教会関係者に利息として支払いを行っていた。その為に、採掘をする前段階の魔物討伐がまともにできなくなってしまっていた。第二回目の投資でなんとか採掘場所の作成は出来たが、採掘には至っていない。散々集めたレインはすでになくなっていて、後には採掘出来ない状態で取り残された、アゾレム山脈だけが残されている。結果、詐欺の様になっている事。そして、この様な状況になっても、アゾレムは投資をした侯爵や宰相を騙す目的で偽物のミスリル鉱石を渡して、更にレインを引き出そうとしていた。
そして、ティロンはこれらの事を告発する為に、マノーラ侯爵の下に下ったとまとめる事になる。
「どうだ?ティロン。問題ないか?」「はい。私は、リン様に全てを捧げます。問題などあろうはずがございません。」「そうか、ありがとう。アッシュ。って事で、号外を作れるか?」「はい。大丈夫です。」「それなら、早速指示してくれ。内容は。タシアナとミーシャも協力してやって欲しい。今日から、アッシュは暫く不眠不休になるはずだからな」
「了解」「かしこまりました」「あっエミールも手伝って上げてね。」「はい。リン様は?」「ん。暫くはニグラで居ないとならないようだからね。始まるまでは、ニグラに居るから大丈夫だよ。ミルもウィンザーも居るからね。」「かしこまりました」
ドアがノックされた。眷属が1人入ってきた。入れ替わるように、ティロンはイスラ街に戻っていく。「リン様。アッシュ殿。アドゥナ伯爵の庭園に貴族が集まり始めています。どういたしましょうか?」
「了解だ。ミル。始まったよ。」「うん。そうみたいだね。」「勝とうね」「うん。リンは勝つよ。」
「アッシュ。手筈通り進めてくれ。ミル。ウィンザー。トリスタンと共に、会場の庭園に赴いて、精神魔法を使ってくれ!」「了解!!」「かしこまりました」「うん。あるじさま!!」
「アッシュ。分かっているな。無理に捕まえなくてもいいからな。逃げ出す奴はそのまま尾行だけ付けて逃していいからな」「はい。」
「うん。さて、楽しい老後の為に、トリーア王家の掃除を開始しよう。皆。勝つための算段はしている。無理しなくていいからね。無事帰ってきてくれる事の方が大事だからね。」「「「おぉぉ!!」」」

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