【旧】チート能力を持った高校生の生き残りをかけた長く短い七日間

北きつね

御前会議

御前会議は、ほぼ決められた通りに進むから問題は無いとは思うが、思った以上にオイゲンが緊張している。何度も確認してくる。しょうがないと言えばしょうがないけど、エルフリーデが横に居るので、大丈夫だろうとは思っているが少しだけ心配になってくる。
それよりも、二日後に”投資”に関する説明会がある。今日の夜に、ギルドにローザスとハーレイに来て貰って確認をする事になっている。
遊技場に居たミルに声をかけた。「ミル。ローザスとシスコンハーレイと打ち合わせしてくるから、今日は遅くなるかもしれないから、先に休んでおいて」「ん。僕はついていかなくていいの?」「そうだね。ミルだけでも付いてきてもらおうかな。」「解った。それじゃ食堂にアデレードとタシアナが居るから伝言しておくね。」「おねがい。僕はギルド本部の執務室に居るから後から来て」「了解。」
ギルド本部に転移した。執務室には、シュトライトが常に居てくれる事になっているので、転移は天井裏にする事にしている。
執務室に移動すると、シュトライトが書類に目を通していた。僕が来た事に気がついて「リン様。今日はこちらに来る予定でしたか?」「あぁローザスとハーレイとアッシュで明日の投資詐欺の件で打ち合わせをする事になってね。」「そうでございますか。儂は、リン様に説明されたのですが、それでどうして追加でレインを出す人間が居るのか不思議でならないのですよ」「そうだな。おじさんの様に堅実にやろうとしている人でも、損したくないって思うとハマってしまうと思うよ。今は少し余裕が出てきていると思うから、大丈夫だと思うけどね。」「そんなもんですかね?」「そうだね。それが、あの詐欺のいやらしい所なんだよ。」「あぁそうでした。まだお時間がよろしければ、これらを確認していただけませんか?」「いいよ。ローザス達が来たら部屋に通して。あぁベック達に言って飲み物と軽く食べられる物を持ってこさせて」「かしこまりました」
シュトライトが部屋から出ていった。渡された書類を上から見ていく。最初の書類は、ギルド全体の数字的な物で、イリメリがシュトライトとナッセに教えた、複式簿記で書かれていた。今までは、月末にレインがいくら残っているのかで記載されていた、そのために、使途不明金が出てしまっていたが、複式簿記をギルド全体で扱う様にした。まだまだ慣れていない部分があり、ミスがあるが1レインでも違っていたらなんて事を言い出すつもりは無いけど、どんぶり勘定ではどこかで行き詰まってしまうかもしれない。レインに余裕がある間に対応しておきたいと言う事で導入に踏み切った。
次の書類は、ギルドの依頼の種別と達成数をまとめてもらった物だ。まだ数ヶ月なので、達成率云々を言うつもりはないし、依頼数の増減を見るには、期間が短すぎる。でも、たしかに、ウォード家やミヤナック家の中でも、他の貴族と接している場所で、ここ1~2ヶ月は討伐依頼が増えている傾向にある。
「リン。居る?」「あぁ入ってきていいよ。」「ん。ごめん。遅くなった、アデレードに捕まっちゃった。」「ん?大丈夫だったの?」「うん。大丈夫だよ。」「それならいいけど...」「ミル。これ見て欲しいんだけど....」「ん?どれ?」「討伐依頼が増えているように思えるけど、どうかな?」「う~ん。増えて入るけど、一過性の物じゃないの?」「そうだよね。もう少し長期的に見ないとわからないよね」「あぁそうだ。それなら、商人部門がまとめている書類で....えぇぇと、あぁ・・・。」「どうしたの?」「確か、前に、アデレード達と話しているときに、魔物の素材が極端に値段が下がっている物があるって言っていたんだよ。どれだったかな?」
「ミル。この書類じゃないのか?」「アデレード!?」「・・・。」「リン。これが、多分ミルが言っていた書類じゃ。」「ありがとう。それでアデレードは、今日用事は大丈夫なの?」「ん。妾は、タシアナと武器の調整が残っているだけじゃよ」「そうかぁ少し時間があるなら、書類の説明をしてくれると助かるよ」「わかった。」
アデレードに説明して貰ったら、ミルが言っていた通り一部の魔物素材が値下がりし始めている。市場に数が出回っている事に証拠でもある。手元の書類では、単純に市場価格でしか書かれていないが、ギルドでは市場価格よりも高く買わないように日々調べている為に、間違いは無いだろう。
「アデレード、どの支部での値段か解る?」「すまん。それはわからん。次の時には、支部毎にまとめた物を作成してもらう。」「うん。お願い。でも、ほぼこれで確定したよ。どこの支部が近いのかは別にして、魔物が増えている。増えている理由は、どこかで魔物を討伐して、素材として売っている奴等が居るって事だね。」「あぁそうじゃな」「でも、そんなに強い魔物の素材は値段が変わらないどころかあがっている所を見ると、表層部とだけで狩りをしているって感じなんだろうね。」「そうじゃな。でも、一部の素材は、例えば、キラービーの針とかはそこそこ強い魔物じゃないのか?」「そうなの?ミル?」「うん。でも、多分キラービーの素材に関しては、マガラ神殿から出たものだと思うよ。」「あっそうか!23階で大量に出るんじゃったな。」「うん。僕達が大量に狩ったから素材として出回ったんじゃないかな?」「ほかは、ほぼ低層で出るような魔物だから、僕達の狩りとも関係しているかも知れないけど・・・。」「そうか、だから、支部毎の数値が必要なんじゃない。」「うん。でも、大体はわかったから、急がなくてもいいけど、次回からは支部ごとにしてもらったほうがいいかな。全体の数字も必要なんだけどね。」「解った。」
結局、アデレードが何しに来たのか解らなかった。
次が最後の書類になるが、学校に関する事だ。入学希望者が増えていると言う事だ。今の寮では入らなくなってきてしまっていると言う事だ。ミーシャとウィンザー両名からの嘆願になっていた。教室の問題もあるし、今はまだいいが、貴族の子弟にも入学希望者が居るのだと言う。
「リン様。ローザス様とハーコムレイ様がいらっしゃいました。」「入ってもらって」
「リン君。」「ローザス。あれ?ハーレイはどうしたの?」「あぁハーレイはいいよ。そのままで、まだ落ち込んでいるんだよ。」「え”もしかして...」「そうだね。リン君がルアリーナ嬢と婚約しちゃったからね。」「まだ....」「あぁ」「それじゃハーレイはおいておいて、ローザスとアッシュで話を詰めればいい?」「そうだな。」
「アッシュ。それで、大丈夫なのか?」「あっはい。大丈夫です。私達につながりが解らない人間で、宰相派ともつながっていない人間を集めて、それぞれに投資させています。」「そうか、それならいい。明日の会議には、数名出席させるけど、それも大丈夫だよな?」「はい。3名ほどの出席で良いのでしょうか?」「うん。そうだな。そいつらに、金貨5枚ずつ持たせておけよ。」「はい。追加投資の話はすでに伝わってきております。」「本当に、リン君の言ったとおりになってきているね。」「まだ破綻しないだろうけど、明日の説明会でどの程度なのかわかると思うよ」「・・・」「そうだな。宰相を追い落とす足がかりになればと思ったけど、明日では難しそうだな。」「う~ん。どうかな?」「ん?何かあるのか?」「足がかりって意味なら、御前会議の場で宰相に対して、僕とローザスとハーレイも投資するっていい出してみるのもいいかと思うよ。」「ん?それでどうすんだ?」「あぁハーレイ。もし、このまま宰相が投資を募っているだけだと、アゾレムに責任を押し付けて逃げる事が出来る。これは、最初に説明した通り何だけどね」「あぁそうだったな。」「うん。今までリン君の予想通りに進んでいるんだよな。」「はい。二度の追加投資の話が来て、それから説明会の通達です」「多分、宰相としてはノーリスクなんだと考えているだろうけど、御前会議で、投資の話をして、僕達が宰相の言う事だからと言って投資したらどうなる?」「・・・・」「投資が増えるかもしれないな。」「そうですね。ローザスやハーレイの事を信頼出来る人だと思っている人たちが投資するかもしれないね。」「あぁ」「でも、僕達は”宰相”を信頼して投資をすると明言しているので、この事業が失敗した時には、宰相に詰め寄る事が出来る。多分、宰相はアゾレムがとかいい出すだろうけど、御前会議で、”宰相”を信頼してといい切っているから、宰相の事はどうにでも出来ると思うよ。」「・・・・。」「君は怖いな。」「その為にも、今の状況を知る為の情報は欲しいんだよね。」「リン。僕は、君の事が嫌いだ。」「・・・・」「でも、ルナが君に惚れている。だから、もう君に対してとやかくいうのは辞めにする。」「・・・」「だから、ローザスは裏切らないで欲しい。ローザスの部下になってくれとは言わない。ローザスの友になって欲しい。ダメか?」「ハーコムレイ様。僕は、ローザスも貴方も、勿論陛下にも思う事はありません。むしろ、助かっていると思っています。僕が敵対するのは、アゾレムの次期当主のウォルシャタだけです。アゾレムの現当主に関しては、僕達兄妹への仕打ちに対する報復をしているだけです。」「・・・・」「リン君。」「だからというわけではありませんが、ローザスともハーレイとも友と呼べるのなら、すごくうれしいです。これは嘘偽りのない気持ちです。それに、お二人とも、僕のお義兄さんですからね。」「あぁそうだったな。詮無きことを言った忘れてくれたらありがたい。」「はい。大丈夫です。」
二人との話が終わって、アッシュに明日行く人間に、追加投資の前に、現状の説明を口頭ではなく必ず書面で貰ってくる事を念押しした。
◆◇◆◇◆◇◆◇
夕方にもう一度アッシュとローザスとハーレイと集まる事になっている。説明が終わったとアッシュからの報告は受け取っているが、内容までは詳細に聞いていない。
「アデレード。今日は、何かある?」「妾は、特にないぞ、ミルと一緒に迷宮ダンジョンに行こうかと話していただけだからな。」「そう、よかったら夕方からの打ち合わせに一緒に行ってほしいけどダメかな?」「ミルも一緒になら問題ないと思うぞ」「了解。アデレードからミルも誘っておいて、今日も本部だから、執務室に直接入ってきて。」「了解。」
ギルドの執務室に移動した。今日もシュトライトが執務をしていた。「リン様。」「あぁいいよ。そのまま作業していて、何か僕に連絡あった?」「いえ....いつも通りの物だけです」「いつも通り?」「はい。『娘を....』と言う奴と『絶対に儲かるので....』とか言うものです。」「そうか、そんなに多いのか?」「はい。『娘を...』は最近は少なくなってきています。娘を妾にとか、メイドとしてとか言う話は、多分ギルドよりも、マノーラ家の方に言っていると思います。『儲かる系』は増えてきています。」「そうなのか?」「はい。実は先程までお一人来ておりました。」「どうしているんだ?」「話を聞いて、数日後に『検討した結果、ギルドの業務から逸脱しているので、お受け出来ません。』としております。」「そうか....。ギルドもそんなに言うほど儲かっていないんだけどな。」「リン様。そのことなのですが、昨日の報告書の中に、ミーシャとウィンザーの嘆願書が入っていたと思います。」「あぁ学校の寮の件だろ?それがどうした?」「はい。ギルドに属している物は、地下二階で大規模な学校が行われているのを知っています。そこでは、食事を与えて居る事も働きに応じて給与も支払っている事も知っているのですが、外部の人間にはそれがわかりません。」「あぁそうだな。宣伝するような事もでないだろうからな。僕の趣味みたいな物だからな。」「はい。それは理解しておりますが、学校と言う施設に関して、もっと宣伝してみてはどうでしょうか?」「ん?どういう事だ?」「はい。ギルドとして、儲けは”学校”に注ぎ込んで、子供たちの育成に力を入れているから、他に回すレインは無いと言う事を、暗に言うのです。」「あぁそれはいいかもしれないな。」「はい。」「そうだ、おじさん。次のかわら版で”学校”の事や意義を裏面にでも書いてよ。」「あっはい。かしこまりました。学校への入学はどうしましょうか?寮が足りないのは間違いないです。」「そうだな。寮は作ればいいけど、学校は教える方がまだ少ないだろう?」「はい。」「そうだな。クラス分けとかもしないとならないだろうし、どこかに大きく学園街みたいな物を作るかな?」「・・・・」「あぁ募集に関しては、暫く止めておいて、半年後をめどに再開するって言っておいて欲しい。孤児の受け入れだけはしておいてくれよ。」「かしこまりました。」
「今日も、ローザスとハーレイが来るから案内よろしくな。」「はい。何かお持ちしますか?」「そうだな。アデレードとミルも来るから、6人分の珈琲と軽く摘める物を持ってきておいて欲しい。」「かしこまりました」
シュトライトが部屋からでていってから、入れ違いでアデレードとミルが入ってきた。「リン。もういいのか?」「ん?大丈夫だよ。」「ねぇ僕も居ていいの?」「うん。ミルは僕の側にいて欲しい。」「え”....」「ん?どうしたのアデレード?」「いや、妾も今日は居ていいんだよな。」「うん。もしかしたら知恵を借りるかも知れないからね。」「・・・」「何?あぁそうだ、アデレード」「なんじゃ!」「学校の先生とかに心当たりない?」「(なんだ...)そうだな。学校の事を大々的にしていいのなら、御前会議で聞いてみればいいと思うぞ」「ん~。それも考えたんだけどね。まずは、個別に話を持っていきたいんだよね。学校の運営に関してもまだ少し考えないとならないからね」「ねぇリン。」「何?」「これから、僕達が攻略する神殿にも学校作るの?」「う~ん。神殿がダンジョンになっているんだよね。そうなると難しいかな。攻略後に考えよう。」「うん。そうだね」
ドアをノックする音がした「リン様。ローザス様がお見えになりました。」「あぁ入ってもらって」
「ローザス。ハーレイ。アッシュは?」「アッシュは後から来る。」「先に、これをリン君に読ませようと思ってね。」「あぁ例の書類だね。」「うん。僕とハーレイが読んだけど、君の話を聞いていなければ、うまく行きそうな雰囲気が有るんだよ。」「へぇ~そうなんだね。」
ハーレイが差し出した書類を受け取った。現在の発掘状況が書かれている。現状3箇所の採掘を開始しているとなっている。採掘を行う鉱夫が全部で100名。採掘場所の守備隊が合計30名。現在採掘出来た物は、鉄鉱石と銀鉱石。金鉱脈やミスリル鉱脈も見つかっているとなっている。現状集めたレインでは、3箇所の採掘場所の維持を行う事しかできなく、折角見つかっている金鉱脈やミスリル鉱脈の採掘を行う為に、投資を募りたいと言う事が書かれている。
予想通りの展開で悲しくなってくる。この世界でも、一箇所で複数の鉱脈が見つかる事は稀だと言う事や。鉄・銀・金・ミスリルって4種類の鉱脈が近くに存在している事は考えにくい。
「リン様。アッシュさんが来ました。」「あぁ入ってもらって」
「リン様。あぁご覧になっていますか?」「あぁ。それで、アッシュ。レインの分配は行われたのか?」「はい。約束の金額には届きませんでしたが、金貨100枚ほどが場に出されたそうです。」「そうか、宰相とアゾレムで半分以上持っていったんじゃないのか?」「え”そうらしいのですが.....。」「見せ金を用意したってところだろうな。何人位来ていたんだ?」「はい。潜入した者の話では、100名近く来ていたそうです。出口近くで、全員に眷属を忍ばせまして、さっき眷属が帰ってきた所です」「うん。それで僕が言った通りだったろう?」「はい。半分以上の人の60名がアゾレム領主の館に入っていったと言う事です。」「やはりね。」
「ねぇリン。妾にもわかりやすく説明してくれ。」「あぁごめん。この話は、全部が嘘で固められているんだよ。まずは、採掘していると言う事も、僕が嫌がらせで全部の採掘場所を潰して回っている。確かに、3箇所の採掘は初めているけど、掘る前に鉱夫や守備隊は全員拿捕している。ここまではいいよね?」「あぁ」「リン君。その場所は本当に鉱脈があるのか?」「オイゲンを連れて調べたけど、有るにはあるが、埋蔵量も微妙な感じみたいだね。多分、掘っているって言う証拠づくりだと思うよ」「ごめん。横道に逸れたね。」「いい。それで」「うん。前々から可能性の一つとして、再投資を言ってくると説明していたんだよ。」「そうだったな」「そのときに、単純に再投資を呼び掛けても、以前の投資を回収していなければ、人は再度レインを出しにくい。ただ少しでも戻ってきて、これ以上の利益が望めるとなったら、再投資をする人間がでてきても不思議はない。」「そうじゃな。でも、実際に、少しとはいえ約束通り戻ってきたんじゃろ?」「それが、本当に採掘して得た物なら言うこと無いんだけどね。」「ん?でも、さっきアッシュが分配されたとか言ってなかったのか?」「そうだね。ねぇアッシュ。今日の説明会の順番だけど、受け付けを行って、書類を渡されて書類の説明が入って、投資額に見合うレインの分配を聞かされて、それから休憩にでも入って、一人一人再投資の個別に聞かれたりして隣の部屋とかで金貨何枚とか聞かされたりね。」「えぇ確かに、その順番だと言う事です。個室で再投資を聞かれて、最初少しだけ渋ったら、隣の個室から”ありがとうございます”とか聞こえたって言っていましたよ。」「うんうん。詐欺の手口だね。それで、投資を煽るんだよ。それで、投資をすると決めると、少しでも手付を今日入れてもらえれば、優先度が上がるとか言っていたんだろう?」「はい。そうです。」「それで手付を払ったんだろう?」「はい。持たせた金貨を払ってきたと言っていました。」「ね。アデレード。これで解ったでしょ?」「いいや。一切わからん。」「僕も。」「・・・・」「あのね。再投資の時の手付がそのまま分配されただけだよ。僕達以外にも40名近くいたんでしょ。それが金貨1枚づつ手付で払ったとして、潜入させた4人が金貨5枚づつ払ったんだから、合計で金貨60枚位にはなっているんだよ。」「・・・・あぁそうか、それに自分たちで用意した金貨を加えて、投資額別に配分したと言って、分配したんじゃな」「そういう事。」「リン君。これからどうするんだい?」「まだ何もしませんよ。昨日も言った通り、宰相を追い詰めるのなら、御前会議の席上で僕達3人+αで投資を行うでいいと思いますよ」「リン。そのことだが、宰相やアゾレムにレインが流れるだけじゃないのか?」「あぁそうか、ハーレイやローザスには言っていなかったな。アッシュ。話してあげて」「はい。お二人は、最近の魔核の相場をご存知ですか?」「魔核?いや、僕の所はミヤナック家に出入りしている商隊から買っているからよくわからないな。」「あぁそうだな。俺も、商隊にまかせているから解らないな。」「ミヤナック家に出入りしていると言う事は、地下三階で買い付けを行っているのだと思います。違いますか?」「多分。そうだな」「でしたら、値段調整が終わっている物を購入されていると思います。」「どういう事だ?」「はい。今、ギルドが小さい魔核を買い占めていまして、それこそ値段は数倍に値上がっています。」「え?数倍?」「はい。」「でも、そんな話は聞いていないよ。」「はい。通常値段が上がるのは、需要を供給を上回った時です。でも、供給はしっかり行われています。ホレイズ・マシュホム・アドゥナで魔核を買い取る時のみ貴族が買う金額よりも高い金額を提示しているのです。」「あぁそれで、宰相派の貴族は魔核が買えなくなっているんだな。」「はい。それで通常、宰相に持っていく魔核が足りなくなって、守備隊を動かしたりしているのですが、それでも足りなくなってレインを収めたりしているようです。宰相も必要な魔核が揃わなくて、買いに出しては居るようですが、今魔核はギルドの地下三階でしか扱っていないので、宰相はなかなか手にはいらないのです。」「あぁそれで、ギルドに属している商人が高値で宰相に魔核を売っていると言うわけだな。」「そうだよ。今は、地下三階で買える値段の5倍で売りつけているよ。」「おぉそれじゃ宰相が文句言うんじゃないのか?」「いきなり5倍にしたらそりゃぁ文句を言われるけど、徐々に上げていったからね。それに、今投資詐欺のおかげでレインが手元にあるから余計に平気だと思えるんじゃないかな?」「あぁ.....」「あ!それで、イリメリが帳簿とかいい出したんだね。」「そ」「なんじゃ、帳簿とは?」「帳簿の説明は、後で、入メリに聞いて。お願い。」「あぁ解った。」
「それに、魔物の素材を売ってなんとかしようとしている動きが有るんだけど、それも奴等が狩れそうな魔物の素材をギルドから安値で大量に市場にだしているから、値が落ちていくよ。」「あぁそれで、魔物の素材の買取値段を気にしていたんじゃな。」「うん。折角、いい感じで干やがってきているから、収入の部は少なくしてあげるほうがいいからね。」「・・・・。」
「よし、今後の方針は、御前会議で宰相に投資を依頼させるって事だな。」「そうだね。ローザス。何かいい方法ないかな?」「会議の議題にでもあれば、いいんだけどな。ハーレイ何かないか?」「あぁリン=フリークス。ルナから聞いたけど、この後、そこのミトナルやアデレード殿下がマヤ=フリークスと一緒に各地を廻るんだろう?」「うん。ながければ、半年くらいかな?」「そう言っていたな。そのときに、武器防具はどうするんだ?」「あっそういう事なら話が通るね。」「あぁどうだ?」「彼女たちって言うと外聞が悪いから、マノーラ家で守備隊を編成したいって事にした方がいいかな?」「そのほうがいいだろう。」「ありがとう。ハーレイ」「リン。また置いてけぼりなんだけど....。」「ごめん。結論を言うね。この前、アゾレムが御前会議で、魔物対策の為に、守備隊を増やしたいと言う事を提言したよね?」「あぁ」「今度は、僕が、マノーラ家の邸宅とメルナ周辺を守る為の守備隊の編成をお願いする。」「うん。でも、予算を別に王家から貰う必要がなければ、申請の必要はないぞ」「解っているけど、僕は最近貴族になったばかりだよ。そんな事知らなかったで押し通すよ」「・・・・。」「それでね。守備隊を作るとなったら人手もだけど、武器防具が必要になるよね?」「あぁそうじゃな」「僕達が用意すればいいんじゃないの?」「うん。実質的には、カルーネやタシアナが用意する事になるけど・・・。御前会議では、違う展開する。」「違う展開?」「そ、守備隊の武器防具を作るために、鉄や出来ればミスリルを用意したい。でも、僕の領地ではまだ採掘出来ていない。」「・・・・」「・・・・」「それで、宰相が最近、鉄やミスリル鉱脈を発見して採掘をすると伺ったのですが、それを廻して貰う事は出来ませんか?と言い出す。」「・・・・」「・・・・」「宰相が、採掘が詐欺だと気がついていれば、なんとか回避する方向に持っていくだろうけど、気がついていなければ、僕に投資を持ちかけると思う。そして、僕が投資するならって事で、お義兄さん達も投資すると言い出すと言う感じなんだよ。」「回避されたらどうするのじゃ?」「その時でも、鉄・銀・金・ミスリルの鉱脈の発見が出来ているって言質が取れれば追い落とすのには十分でしょ?ローザス?」「あぁ十分だな。鉱脈があると言っているのに、なかった、または採掘出来ていないとなったら、それだけで問題に出来るからな。」「ってことだよ。アデレード。」「あぁ解ったが.....。まぁいい。妾は横で笑っていればいいのか?」「う~ん。アデレードが演技が出来るのなら、僕が投資しようとした時に、一回は静止してほしいんだけどね。わざとらしくならない程度にね」「そのくらいは出来ると思うが.....。」「静止された僕は一旦考えて、宰相に、ほんとに鉱脈はあるんですよね?って問いかける。ってのができればいいんだけどね」「あぁ大丈夫と言えば、言質を二重に取った事になるし、言葉を濁したら、そこを突っ込むってわけじゃない。」「うん。そんな感じでいい?」「あぁいいだろう。」「それじゃお願いするね。」
概ね予定通りに進んでいるとはいえ、何が起こるかわからないから準備は必要だろう。あと、5日で御前会議だから、オイゲンとも詰めなければならないからな。
◆◇◆◇◆◇◆◇
準備で使った5日は会っという間に流れていった。そしていま、僕達は改良した馬車で王城に向かっている。「リン。本当にこの馬車揺れないな。」「でしょ?」「話には聞いていたけど、ここまでとは思わなかったぞ」「うん。」「いくらで売っているのじゃ?」「さぁ?」「『さぁ?』って、エルフリーデ。いくらなの?」「ダンパー部分と車軸と基本的な部分だけで、金貨3枚にしています。」「だそうだよ。」
そんな話をしていたら、王城に付いて、控室に通された。
「リン。本当に大丈夫なのか?」「あぁ大丈夫だよ。」
『リン=フリークス・テルメン・フォン・マノーラ様』
僕を先頭に、右側にミル。左側にアデレード。後ろに並んでオイゲンとエルフリーデが続いた。僕達は、侯爵と言う事もあり、ローザスの隣に通された。
この前と同じように、陛下の入場と共に会が開始された。まずは、オイゲンの准男爵への授与式が行われた。宰相が推薦人になっている為に反対者も出来ないまま進められて、オイゲンが陛下から錫杖を受け取って終わった。次に、ローザス起案でオイゲンを僕の寄り子に推薦すると共に、僕がおさめる領地からオイゲンに領地を与えて、男爵にすると言う物だが、これもローザス起案と言いながら、宰相にも話を通している為に問題なく進められた。ここで、アゾレムの領主とウォルシャタが到着して会場入りしてきた。オイゲンが陛下から男爵の錫杖を受け取り、僕に寄子へのお願いをして、僕がそれを受諾して、オイゲンの話は終わった。
次の議案は、宰相派のホレイズ・マシュホム・アドゥナ各家からの守備隊増強のお願いだ。これもすでに予算化されているので、型通りの話で終わるときに、ローザスが口を挟んだ。「マノーラ家も、宰相閣下に倣って、スネーク山の開発を行うらしいが、マノーラ侯は、守備隊を持っているのか?」「殿下、私の眷属で賄おうかと思っておりました。」「それは無理です。マノーラ侯。我が家から人手を出しますので、守備隊を構成してはどうでしょうか?陛下、どうですか?侯爵家にも守備隊を持っていただいて、スネーク山やメルナ山脈やニグラ山脈の開発をお願いしてみては?」「そうだな。リンよ。この者達の言っている事も確かだし、守備隊を編成してみてはどうだ?人数は、他の家よりも少なくて20名ほどでどうじゃ?」「はっ。陛下のご配慮ありがたくお受けいたします。しかし、陛下現在我家には武器防具がありません。作る職人は居るのですが素材が無いのです。」「リンよ。何が必要なんじゃ?」「武器と防具を作るのに、鉄やミスリルがあればと思います。」「そうか、王家から出すわけには行かないからな....ローザスどうじゃ?」「ミヤナック家の在庫も昨今の守備隊の増強で使ってしまっていまして、市場で買い集めるか、採掘するしかありません。」「宰相閣下からお譲りいただくわけには行きませんか?」「儂の所にも、今、鉄やミスリルが有るわけじゃないのでな。採掘を初めたばかりでな・・・。」「そうでございますか?」「マノーラ侯。どうじゃ。儂がやっている事業に出資せんか?」「出資とは?」「あぁ詳しくは、後で詳しいものに説明させるが、採掘を行うのに、侯爵も協力してくれれば、侯爵の望む鉄やミスリルを融通する事が出来ると思うのぞ。」「ぉぉそれは素晴らしい。どうしたら良いのですか?」
「リン。少しまって、宰相。いや、宰相閣下。本当に、鉄やミスリルは出ているのですか?」「これはアデレード様。はい。すでに、鉱脈を見つけていまして、採掘もされております。これから人手を増やしまして、増産を行う所です。」「アデレード!」「申し訳ない。宰相。アデレードが詮無きことを聞いてしまった。解った。私は、宰相を信じよう。いいな。アデレード。」「わかりました。リンが決めた事ですので...。ウルコス。すまなかった。許してくれ。」「いえ。いいのです。アデレード様。それで、侯爵も出資していただけるのですか?」「あぁそのつもりだ、鉄やミスリルを普通に市場で20名と僕達の分を揃えたら、どのくらいになるオイゲン。」「はい。侯爵家の守備隊ですから、下手な物をもてません。総ミスリルとして考えまして、金貨100枚は必要になろうかと思います。」「そうか、宰相。その出資と言うのは、金貨100枚で足りるのか?」「金貨100枚でございますか?」「あぁ市場で出回っていない物を集めようとすれば、そのくらいは必要だろう?それに、これから誰が採掘するのか解らないが、増産するにもレインが必要だろう?」「そうですね。アゾレム。どうなんだ!」
皆の視線がアゾレム領主に集まる。「はっ金貨100枚で全部が賄えるのかは計算してみないとわかりませんが、増産体制には入れると思います。」「そうか、侯爵。アゾレムもこう言っております。金貨100枚の出資をして頂けますか?」「あぁ大丈夫です。明日にでも、宰相に届けよう。その時に、より詳しい説明を使いの物にしていただけると助かる。僕では、よくわからないだろうからな。」「ハハハ。解りました。」「宰相。」「なんですか?ローザス様。」「僕がいい出した事で、マノーラ侯ばかりに出させるわけにはいかない。流石に、金貨100枚は無理だが、僕もその出資に、ミヤナック家と合同で金貨30枚を出そうかと思うが、受けてくれるか?」「ローザス・・・。」「ハーコムレイ。いいよな。」「解りました。私は、貴方に従います。」「どうだ?宰相?」「解りました。条件などは、侯爵と同じで良いのでしょうか?」「あぁ構わない。なんなら、僕達の分は、侯爵に合算してくれてもいい。」「横からすみません。宰相閣下。寄親のマノーラ家が出すと言う事ですし、宰相閣下には借りがあります。その上、なんとなく儲かりそうな匂いもしますので、私もその話に加われせてください。兄の残した遺品や魔物の素材の売上が金貨20枚ほどあります。それを出資させてください。」
合計、金貨150枚。宰相とアゾレムが何か相談している。ダメだね。アゾレムは、ここは我関せずにしておかないとダメなのに....。
「解りました。オイゲン男爵。ローザス様。ミヤナック家。マノーラ侯の出資をお受けいたします。全部で金貨150枚にもなりますが、どうしますか?」「あぁ明日、我家の使いの者に持たせる事にする。ローザス殿下とハーコムレイもオイゲンもいいよな?宰相からの説明も我家の者が聞いて、説明するほうが一度で済むしいいだろう。」「わかりました。侯爵。明日準備をしてお待ちしております。」
「よかった。これで、守備隊のめども立った。後は人選だな。」「リンよ。そう言えば、おまえは、イスラ大森林での狩りも出来るのだろう?その手並み見せてはくれんのか?」「いいですが、ここでは手狭ですし、会議が終わりましたら、場所を変えて模擬戦でもどうでしょうか?」「いいのか?」「はい。その為に、今日は私の婚約者のミトナル=セラミレラ・アカマースを連れてきています。二人で王城の守備隊と対峙させていただければと思います。」「それは面白い。ローザス。ファンに言って、準備をさせろ。そして、ローザスはそのまま守備隊の指揮を取れ。リンとミトナルの指揮はアデレードが取ってみよ。」「「「はっ」」」
その後、会議は予算の話や技術発表が行われて閉会して、場所を演習場に移した。武器は、演習用の刃を落とした剣になる。守備隊はファンを入れた5名。こちらは、僕とミルとワーウルフをウルフに擬態させた魔物3匹。ここで、僕のジョブがテイマーである事を説明した。そして、ミルが魔法を青・赤・黄・灰・黒を使える魔法剣士である事を公にした。武器は、長剣と長槍だけにしてある。開始の合図が鳴り響いた。まずは、ウルフ3匹を演習場ギリギリを走らせて後方に向かわせて、それに合わせて、ミルが黄魔法で土壁を出現させる。僕は、そのままの位置で剣を構える。ファンがウルフに注意を向けたときに、ミルが灰魔法で風を起こして、僕の体ごと守備隊に奇襲をかける。守備隊が僕達の方に注意を向けたときに、ウルフが土壁の上から奇襲をかける。ファン以外の人間がこの奇襲で武器を落とす結果になった。その後、僕がファンの剣をなんとかしのいでいる時に、ミルが赤魔法を後方から打ち込んで勝利を勝ち取った。
「見事。アデレードの戦略も見事なれど、ミトナルの魔法や剣術も見事。リンよ。いい配下を持ったな。」「はい。私にももったいない妻達です」「いや、そうだな。何か褒美を取らせる。」
「陛下。少しお待ち下さい。」「なんじゃ。アゾレム。おぉそう言えば、おまえの跡取りは伝説のジョブだったな。」「はい。それだけではなく、息子の所には、侯爵に負けず劣らない豪の者が揃っております。本日は、ウォルシャタと配下の者が来ております。侯爵とのお手合わせをお願いしてよろしいでしょうか?」「そうだな。侯爵は今戦い終わったばかりじゃがどうだ?」「私なら大丈夫です。噂の伝説のジョブの持ち主とお手合わせできる事など滅多にありません。是非お願いいたします。そうだ、オイゲン。お前も来い。こんな事は滅多にないからな。」「へっ俺も?」「あぁこっちにきて一緒に戦え。よろしいですか?アゾレム男爵?」「どうだ、ウォルシャタ?」
「俺はかまわないぞ。なんなら守備隊もそっちに付いて、8対4でいいぞ」「お、面白い。リン。うけよ。戦ったばかりだが人数で圧倒出来るのなら、いい勝負になるだろう」「はっ解りました。ただ、ミル。ミトナルの魔力がもうなくなってしまっていますので、10分程度休みをいただければ、少しは回復致します。」「どうじゃ。ウォルシャタ。リン達はそう言っておりが?」
「いいぜ。なんなら、ほら。これでも飲んで。魔力を回復しろよ。」投げ渡されたのは低位の魔力回復薬だ。
「ありがとうございます。高価な物をよろしいので?」「構わない。そうじゃなきゃ面白い戦いにはならんからな。」「ありがたくいただく。ミル。飲んで回復しておけよ」「うん」
「それでは、リン=フリークス対ウォルシャタの模擬戦を行う。初め!」
出てきているのは、立花ウォルシャタ山崎エスタール細田イアン冴木ブレディだ、三塚が居ないのが残念だ。確かに強いが、言うほど強くない。正直、僕一人で十分。多分、ミルが本気を出せば勝てるだろう。ステータスだけはバカ高い数値になっているが、それだけだ。武技を持っては居るが使い方がなっていないので連続技が放てない。魔法も威力はあるが、狙いがわかりやすいのでかわしたり結界で逃げる事が出来る。守備隊の人には、適当に戦って、魔法に当ったふりをして倒れてもらった。僕の結界で守られているので、ノーダメージだがそこは演技力と派手に土煙を挙げる事でごまかした。ミルとオイゲンがわざと山崎エスタールに突っ込んでいって、山崎エスタールの動きを封じた。その上で、ステータスを読み取らせた。改竄してあるステータスだから、自分たちの方が有利である事や、オイゲンが茂手木では無いことを認識させる事にしている。僕は、立花ウォルシャタと数合打ち合って、派手に剣を飛ばされて、片膝を付いて居る状態になっている。8対4で負けると言う演出を行った。
「やはり伝説のジョブだな。」「次の宮廷師団長は、アゾレムに決定だな。」「守備隊を圧倒したマノーラ家を一蹴したアゾレムが最強なんじゃないのか?」
「見事。ウォルシャタ。見事な戦い方じゃ。」「なに、侯爵は戦い終わったばかりでお疲れのようだったし、少し歯ごたえがなかったですな。これなら、俺だけでも勝てましたよ。」「強かったです。流石です。ありがとうございます」
そう言って、片手を出して、立花ウォルシャタ山崎エスタール細田イアン冴木ブレディと順番に握手した。勿論、僕の万物鑑定見透す力で鑑定して記憶した。
こうして模擬戦も無事終わって、解散となった。
立花ウォルシャタ山崎エスタールが話しかけてきた「おい。待てよ。」「はい。なんですか?」「お前が初めたギルトとか言う奴はどうやって知ったんだ?それから、そこのオイゲンは兄貴が居るのか?」「あぁもしかして、オイゲンの双子の兄さんの事を知っているのですか?」「双子の兄?」「はい。一緒にパシリカを受けに来たらしいのですが、途中で逸れてしまって、一度は合流したらしいのですが、それから、この国に居ると殺されるとか言って、出ていって帰ってきていないのです。何か知っているのでしたら教えてあげてください。その兄さんには私も世話になっているのです。ウォルシャタさんの耳には入っているかもしれませんが、私は妹とマガラ渓谷に落ちたのですが、そのときに、オイゲンの兄さんに助けられたのです。そこで、ギルドと言う組織の事や、オイゲンさんの国の話なんかを聞いて、それをベースに作ったのが学校やギルドなんです。是非、お礼をいいたいので、ウォルシャタさんが知っているのでしたら、教えてください。彼は今何処に居るのですか?」「ハハハ。そうか、そのオイゲンの兄って名前を何ていうんだ。」「僕には、本当の名前だと言って、”モテギ”と呼んで欲しいと言っていました。」「そうかぁそうかぁ奴は逃げているのか?」「その、モテギと言う奴は、他になにか言っていなかったか?」「なんでも、21名の知り合いが居るって訳の解らない事を言っていました」「そうか、誰かと会ったとかは言っていたか?特に女の事とか?」「いえ、何も....。それが彼を探す方法なのですか?」「お前が知る必要はない。」「そうですか?」「それで、お前はそいつを探すために、MOTEGI商会を作ったんだな。」「はい。そうです。彼が暇つぶしだと言って作った物を売っていれば、いずれ彼が来てくれると思っています。」「そうか、そうか、頑張れ。もし、モテギが現れたら俺にも教えてくれ、礼はしっかりするし、少し話したい事があるんだ」「わかりました。もしかして、彼が言っていた、仲間とは、ウォルシャタさん達の事ですか?」「ハハハ。そうだ。」「わかりました。必ず伝えます。」「頼むな。」
山崎エスタールが再度僕を鑑定しているのが解った。これで疑いは完全に晴れただろう。オイゲンとも握手して鑑定しているから、もう大丈夫だろう。

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