【旧】チート能力を持った高校生の生き残りをかけた長く短い七日間

北きつね

マノーラ領の開拓準備

入植地を作って、今日は、海の街を作りに行こうと思っている。ミルとルナと一緒に海の街に向かった。
今日もグリフォンに搭乗している。街道の整備は、眷属たちが行っている。海の街には二つの顔を持たせる事にしている。一つは、リゾート地として、もう一つは海産物を手に入れる為の街。もしかしたら、海を使っての海運業ができるかも知れない。まずは、街道の終着点を作る事にする。終着点は、海から少し離れた場所に作る。そこから、山側に進めば、港がある海の街で、海側に進めば、リゾート地の様な感じにしようと思っている。リゾート地には石壁は似合わないが、魔物対策として作っておくほうが安心できるだろう。監視塔も一つ作っておくことにした。
今までの流れだと、ハーレイやローザスも館を作るとか言い出すだろうから、まずは自分たちの保養施設を作っておく。海が見える場所に、3階建て位の館にする。場所だけ確保しておいて、後でアデレードに設計をお願いする事にした。いつものように水回りとして、お風呂とプールだけを作っておく事にした。両方を一体化した施設にした。温泉プールの様な感じだ。今まで何度か作っているので、手慣れた物だ。
さて、保養所の方の町並みは、メルナを参考にした。別荘の感覚は、近くもなく遠くもない感じで区画整理だけしておく。後は、勝手に建ててくれるだろう。港町の方は、海にせり出すように港を作った。船の事を聞いていなかったけど、目印になるものだけ作っておけば、後で拡張すればいい。せっかくだから、市場の様な建物も作っておく。仲卸と言う考えがあるか解らないが、漁師と商人は別々だろうし、売買を行う場所は必要になってくるだろう。
後は、漁師や保養所で働く人の家が建つ区画整理をしておく。街の真ん中に当たる部分に、ギルド用の建物と隣接するお風呂の施設を建てておく。こっちのお風呂は、それほどこらないで、男女別々になっている通常の銭湯と言う感じにした。大きな湯船を3つとサウナ・クールサウナ・水風呂だけの施設にした。
ミルとルナには、近隣の魔物の調査をお願いしている。
こちらも合わせて、入植者を募る事にしてもらった、同時に、保養所としてのアプローチも行ってもらう。まぁ来なければ来ないで眷属たちを使って海の幸を集めればいいだけだろう。
イリメリに、現状を報告した。そうしたら、伝言でメルナ森林の入植地にもギルドを作っておいて欲しいと言う事だ。街の真ん中に作った塔の中にギルド支部が入るようにできるから、それでいいのかと聞いたらOKだと言う事だ。調整だけを行いにいく。やはり転移門トランスポートは必要だと言う事なので、ギルド支部の隣に作る事にした。保養所はマノーラ家の別荘から少し離れた場所に転移門トランスポートを作成した。港町には、ギルドを作ったので、ギルドの内部に作る事にした。
ミルとルナが戻ってきた。「どうだった?」「う~ん。迷宮ダンジョンの10階とかそのあたりだと思う。少し手強くても、20階相当だと思う。」「そうね。個々の強さはそんな感じだけど、数が多いから単独では難しいかも知れない。単独で25階まで行ける程度は必要だと思う」「了解。イリメリとフェムに伝えておいて。魔物の素材は確保してある?」「もちろん。」「よかった。この前、サリーカに怒られたから、今回はしっかり持って帰ろう。」「そうだね。ねぇリン。こんな広く作って大丈夫なの?」「ん?入植地?」「そ、私が言うのもおかしいけど、ミヤナック家の領内にある村の数倍はあるよ両方共。」「僕も気になっていた。僕の出身の村の3倍位は余裕である。」「大丈夫だと思うよ。港町には、これを植えてもらう予定だからね。」「それ何?」「ん?」「育った所を見ればわかると思うよ。港町と森林街にも、エントとドライアドに居てもらう。入植者が来る前に、成長させておいてもらう予定なんだよね。」「・・・?」「あっ!」「ミルは気がついた?そう、これはゴムの木モドキ。一応、樹液を貯めて灰を混合する事で固まる事は分かっているんだよ。後は、配合率とかはカルーネとかタシアナとかに研究してもらうつもりだよ」「へぇゴムの木有ったんだね。」「うん。後、気候的に、港町には果樹園ができそうだから、果樹園を中心に作ってもらうつもりだよ。」「へぇそれなら果物が手に入りやすくなったらいいね。」「あと、蕎麦の実らしき物と、小麦らしい物と、サトウキビらしい物と、稲らしき物が見つかっているよ。」「お米?!」「小麦と蕎麦?」「あぁあと、港町には、塩田も作ったから、塩も作ろう。塩麹が出来れば、味噌や醤油が行けるかも知れないし、最悪でも魚醤が作れると思うからね。この世界には、魔法があるから、熟成期間の短縮はできるだろうからね。」「おぉぉそれは楽しみだな。」「うん。入植者が集まらなければ、新たに眷属に加わった者達に指示して作らせてもいいだろうからね。」「そうなんだね。それでこの大きさなんだね。」「うん。そうだよ。」
3人で施設を見て回って微調整を行ってから、ギルド本部に転移した。イリメリとフェムに二つの入植地に、転移門トランスポートを作成してある事や施設の事を説明した。概ね大丈夫だと言う事で、次に作っている、かわら版を見せてもらった。
一面は、マガラ神殿の地下三階に入っている店舗の説明がされている。広告と言ってもいいのかも知れない。下部には、空き区画の話や店舗を出す時の諸条件なんから書かれている裏面の下半分は、マノーラ家が入植者を募集していると言う話しに割かれていた。その上には、マガラ神殿の迷宮ダンジョンの事が書かれている。中開には、転移門トランスポートが作られた村や街の事が書かれている。ギルド職員の募集も合わせて行っていると書かれている。
問題はなさそうなので、マノーラ家の印章を刻印して、この前と同じように、大量に刷る事にする。まずは、粘土板に裏表を刷れるように準備をした。後は、人手をかけて刷っていけばいい。後の事は任せて、ミルとルナと一緒に、ハーレイの所に向かった。アゾレムの”投資”の件に関しての打ち合わせをするためだ。
場所は、アッシュの奴隷商を使う事にした。すでに二人は来ている。アッシュが相手をしているようだ。
「リン君。久しぶりだね」「えぇそうですね。行き違いが多いですからね。」
ルナを連れている事で、ハーレイがおとなしいのはいいことだ。よほど嫌われるのが嫌な様子だ。現状分かっている事を含めて、二人に詳細な事を話す。
「それじゃ、リン君。アゾレムというよりか、ウォルシャタは、宰相まで敵に回すことになるけど、そこまでするのか?」「どうでしょう。僕の予想ですが、奴等はやると思います。」「そうか、これは彼らをよく知っている君の意見に従っておくが・・・。」「もし、採掘がうまく逝ったらどうするんだ?」「その時には、利益をしっかり取ればいいと思いますよ。」「あぁそうか、そりゃぁそうだね。でも、考えてみると、この"投資"って事業は、そんなに儲けない事にならないか?」「そうですね。まっとうに運営したら儲けは少ないですよ。そこが抜け道になるんですけどね」「??」「リン。何がいいたいんだ?」「ハー兄様!」「いいよ。ルナ。」「えぇぇとですね。投資というのは、投資額で配当が変わってくるんです。」「そうだな。だから、多く出した物の方が儲けられると言う事だよな?」「はい。そうです。だから、皆多くを出そうとしてしまうのです。」「それは解る。」「その時に、元締めになっている人間が、投資した事にしたらどうなりますか?」「??」「例えば、採掘するのに、金貨100枚かかります。最初に、3箇所の採掘をするから、金貨300枚必要だと言って、投資金を集めるのです。」「・・・・。」「その時に、実際には200枚だけ集めて、残り100枚は自分が出した事にするのです。」「あぁそういう事か、それで3箇所ではなくて、2箇所掘って何かが見つかれば、丸儲けって感じだね」「だが、リン。それで出なかったらやっぱり、自分で100枚集めないとならなくなるんじゃないのか?」「えぇそうですね。この時には、手元には金貨が残っていない。さてどうしようと考えた時に、また投資を募るのです。そうですね。”新たな採掘方法の開発に金貨200枚必要になっています”とでもいいましょう。付け加えて、”今の工法でも掘れるのですが、量が取れない。従って、これだけの物しか取れなかった。”とでも言って、どこからか用意した鉱石をなんとか見せつけるようにしますね。」「あぁそうしたら、信用して、追加で投資する者も出てくるか....。」「はい。それに、一度投資した人は、投資したレインがもったいないと思って追加で投資をしてしまうんです。」「・・・・。言われたら、深追いする奴は多いだろうな。」「はい。それで、投資詐欺の出来上がりです。」「・・・・」「僕の予想では、2回目の追加投資の依頼をニグラの宰相の館やアゾレムの館辺りで説明会を催したら、詐欺確定でいいと思います。」「そうなったら、その会場に来た人間から投資の契約書を買い取ればいいんだな。」「いえ、その会場に来ている人間は後回しにしましょう。危険が伴う。会場に来ていない人間や団体に先に声をかけましょう。」「なぜだ?会場に来た者の方が大口の可能性があるんだろう?」「はい。大口の投資家なら、アゾレムも宰相も無下にはしないでしょう。しかし、小口の客が文句を言い始めたら、宰相やアゾレムがどう動くのか想像できると思います。」「あぁそうだな。間違いなく潰しに掛かるな。」「そうだね。」「ハー兄様。潰しって?」「あ。ルナ。それはね。宰相の時のパターンなんだよ。リン=フリークスのお母さんが幽閉された時にも同じような方法を使ったんだよ。」「え”そうなの?」「あぁ。適当な罪を作って、捕まえさせて、投獄する。後はいろいろ理由を付けて出さないようにする。」「最悪。リン。私がそうなったら助けに来てね。」「もちろんだよ。ルナ!」「おぃ。ルナ。僕が助けに行くから大丈夫だよ。」「ハー兄様はいいの。リンに助けに来てもらいたい。」「君達いい加減にしたほうがいいよ。ミル嬢が呆れているよ。」「ん?僕?あぁいつもの事だから聞いてなかった。ごめん。」「あぁそれで、小口の人間から買い取るんだね。そうですね。買い取るだけじゃなくて、詐欺だって事も教えて、協力して欲しいと申し出るつもりですよ。」「そこまでしてあげる必要は無いんじゃないのか?」「なるべくなら傷つく人は少ない方がいいですからね。満額では買い取れないから、そのかわり安全を提供するって感じかな。マノーラ家の入植地に行ってもらうとかで折り合いをつけてもらう。村単位なら、村単位で迎い入れる準備をしますよ。」「それならいいんだろうな。村単位で投資をしている所も多いんだろう?」「えぇサリーカとアデレードが調べていますが、アゾレム領内村はほぼ全部が投資していますし、ヴァズレ家の村々もほぼ投資をしているようです。」「そうか....」「ローザス。全部を救う事は出来ない。まずは、目先の事を考えろ。お前が立たないと、こんな悲劇はこれからも起こるんだからな。」「そうですよ。ローザスがしっかりしないとこの作戦は最終的な局面で瓦解してしまいますからね。」「あぁ分かっている。どこかで割り切れない物があるだけだ。」「それはわかりますが、いい大人が子供の僕でも解る様な手口に騙されるのが悪いんです。少し位痛い目に合わないと駄目なんです。」「子供ねぇ....」「何かいいたいみたいですね。ハーコムレイお兄様は!」「お前に、お兄様と.....ルナ。やっぱり婚約を取りやめにしないか....。」「ヤダ!」「無理だよ。諦めな。ハーレイ様。僕とルナは同じだから解るよ。何を言っても逆効果だよ。」「解っているよ。それくらい....。」
「あぁそれで、リン君。それ以外に何かあるのか?」「はい。まだ動きは掴んでいませんが、彼らは次の詐欺を行うつもりで居ると思います。」「はぁ?」「え”そうなの?」「リンは、どこでそれを....」「まだ確実で無いのですが、彼らの息がかかった商人が、安物の食器や剣や防具を買い集めていたので....ねずみ講でもやるのかと思うのですよね」「それってどこの情報なの?」「あぁメルナを通る時に、眷属に確認させているんですよ。彼らは、マガラ渓谷を越えないとならないですからね。そこで、マガラ渓谷を越える商隊で税を払わなかった商隊が持っていた物を報告させているんです。後は、マガラ神殿にも入り込んでいますが、ギルドカードには印が付いていますので、その物が神殿から出ようとした時には、荷物を検める様にしているんですよ」「はぁ....どこまで、君は....。」「え”敵対している組織なんだから、相手に流れる物資を監視するのは戦略を練る上で必要な情報だと思いますけど....ね。そう思うよね。ミルもルナも?」「えぇそうね。アゾレムというか、敵対した組織が可哀想に思えるけどね。」「うん。」
「あぁそれでですね。彼らは、自分たちが使わないような物を購入して何をしようとしているかと言うと。流入した量が正確にはわからないんですけど、まず間違いなく”ねずみ講”をやろうとしていると思う。」「あぁそれそれ、”ねずみこう”って何?聞いた事が無いんだけどね....。」「そうなんだ。ハーレイやローザスが知らないんじゃ、皆簡単に引っかかってしまうだろうな。」
「えぇと....イリメリとフェムがいればもう少し上手く説明できるかも知れないけど・・・・本来銅貨10枚程度の価値しかない食器を、僕がローザスに銅貨20枚で売ったら怒るよね?」「あぁ当然だな。」「でも、例えば、ローザスに紹介されたハーレイに食器を銅貨11枚で売って、銅貨1枚をローザスに上げるとどう思う。」「そうだな。僕は何もしないで銅貨1枚貰った事になるな。でも、ハーレイは銅貨1枚損している事になるよな」「そう、そこで、ハーレイにもルナを紹介して貰って、ルナに食器を銅貨11枚で買ってもらう。その時には、ローザスには、67レインを渡して、ハーレイに、33レインを渡す。ルナはミルを紹介する。そうすると、同じように分配をする。紹介した人を子供と呼んで、子供や孫が増えれば増えるほど、親が儲けられると言う感じなんだよ。」「ん?何か問題でもあるのか?全員が少しづつレインを貰う感じになっているんじゃないのか?」「違うよ。ハーレイ。今の場合だと、ミルが常に銅貨1枚損している事になるんだよ。」「それでも、ミル嬢がイリメリ嬢を紹介しても....あぁ同じか、結局はイリメリ嬢が損するんだね。」「そ、誰かが必ず損をする。でも、自分の下に子供や孫が出来た連中は儲けられるから、この仕組を維持したがる。」「そうだね。でも、それはいいんじゃないの?」「これが、全員が平等な権利を持つ場所だったらいいのかも知れないけど、そうじゃないよね?」「??」「アゾレムがこの仕組をやろうとした時には、村の長に命令すればいい。そして、村長は、村の有力者を自分の子供する。子供は自分の下に子供をつけた方が儲かるから、子供を多く作ろうとする。それが連鎖していくんだよ。そして、一番弱い物の所にしわ寄せが行くことになって、今よりも一層格差が産まれてしまう。」「どうしたら止められる?」
「そうだね。そうだ、アッシュ。」「はい。何でしょうか?」「商人や豪商は、取引をする時に、自分の所に優先的に商品を降ろさせた場合とかに、レインを上乗せして払って、上乗せした分を返さしたりするのか?」「はい。よくある事です。帳簿に乗らないように、レインを戻す手段としてよく使われています。その帳簿に乗っていない、レインを貴族や豪商への賄賂に使ったりします。」「その顔はローザスもハーレイも知っているね。」「あぁ」「・・・。」「これを取り締まる事が出来ればいいんだけど....難しいんだね。」「そうだな。すぐには無理だな。俺がトップにでもならないと難しいだろうな。」「了解。解った。それなら、情報で潰すようにするよ。それに、少し様子を見てからにするよ。もしかしたら、潰す前に潰れるかも知れないからね。」「そうなる事を祈るよ。」「そうだね。」
それから、もう少し事務的な話をした。アッシュが出入りの業者から奴隷落ちする人間を10名ほど引っ張り上げて、商隊の真似事をさせて、アゾレム領内に侵入させて、村々を廻って居る時に、投資の話を聞き出して投資すると言う手はずで落ち着いた。
アッシュの店を出る頃には、かなり遅い時間帯になってしまっていた。ギルド本部に戻ってから、屋敷に帰る事にした。ギルド本部までは、歩いても15分位だし、馬車を呼びに行っている時間でつけてしまう。たまにはいいだろうと言う事で、3人で歩いて帰る事にした。ローザスとハーレイが乗った馬車を見送ってから、久しぶりだと言う事で、商店街を見て回る事にした。プチデートだ。両脇に美女を従えて歩く姿は目立つのだろう。耳目を集めてしまっている。立ち寄る店で必ず誂われる。まぁそれも一つの楽しみだろう。確かに、ミルもルナも可愛い事には間違いない。何か珍しい物が無いか見て廻っていると、店のおっちゃんに、「おっちゃん何か珍しい物無い?」「珍しいって言われても、今日店先に並んでいるのは、ギルドの地下三階から仕入れてきた物だからなどれも、ニグラじゃ今まで取り扱っていなかった物だぞ」「へぇおちゃんをギルドカード持っているの?」「おぉこの当たりの商人で持ってない人間はいないんじゃないのか?」「そうなんだ。おっちゃんが遠くで仕入れてくればもっと安くなるんじゃないの?」「あぁ馬鹿だな。大量に仕入れて来ないと対して安くならないからな。なんでも、ギルドのマガラ支店の人が言うには、地下三階は問屋とか言っていたけど、同じ商品を大量に扱う商人が優先して店をだしているんだよ。」「へぇ~。それじゃ僕が行って買ってもいいんだね。」「あぁそうだな。でも、最低ロットって言っていたけど、一個単位じゃ売ってくれないからな。ほら、そこの芋粉も10袋単位でないと売ってくれないから、大家族とかなら別だけど、そうじゃなきゃぁ買っても困ってしまうだろう?」「へぇうまく出来ているんだね。」「あぁそうだな。おかげで俺っちみたいな人間は、それを買って、ここでばらして売っているんだ。今までは、それこそ、ミヤナック領まで行っていたけど、ニグラの街からちょっと出ればいいからな」「すごく楽になったんだね。」「おうよ。それだけじゃなくて、値段もすごく安くなっているからな。その芋粉もギルドができる前じゃ一袋銀貨3枚位は平気でしていたけど、今じゃ銀貨1枚で売っても儲けが期待できるからな」「へぇそりゃぁすごいね。それで、最近商店街がすごく賑わっているんだね。」「おぉそうよ。でも、ここだけの話、賑わっているのは本の一部だぞ。」「え”そうなの?」「あぁミヤナック家やウォード家はギルドへの協力を表明したから、いいけどそれ以外の街では徐々に税が上がったり、商人がギルド関係の仕事への移ったりしていて大変みたいだぞ」「そうなんだ。今度、この子達と外に出かけてみようと思ったけど、それならミヤナック家やウォード家の領地に行くようにするよ」「そうか、それなら、ミヤナック家の方がいいぞ」「なんで?」「お前知らないのか?」「え?何を?」「ギルドの運営をしている、マノーラ侯爵家に、ミヤナック家の3女のルアリーナ嬢が嫁入りするから、ミヤナック家の領地ではギルド関係の仕事や客は歓迎されるんだぞ」
ルナが耳まで真っ赤にして俯いている。面白そうなので、もう少し突っ込んで見る。
「へぇそうなの?もう婚姻したの?」「どうだったかな。なんでもルアリーナ嬢とアデレード殿下が、侯爵を争っているって話で、ルアリーナ嬢が侯爵にベタ惚れしてハーコムレイ様も二人の仲を認めたらしいからな」「へぇそれで、ルアリーナ嬢とアデレード殿下はどうなったの?」「おぉそれが侯爵やギルドから何にも発表が無くてな、ギルド関係者に聞いても教えてくれなくてな。」「口が硬いんだね。」「そうだな。でも、俺は、ルアリーナ嬢の勝ちだと思っているんだけどな!」「おっちゃんは、ルアリーナ嬢を見たことがあるの?」「いいや。すごく可愛いって噂は聞いているけどな。何にせよ侯爵が羨ましいぜ。可愛い嫁さんが9人居るらしいからな。」「そんなに、侯爵は大変じゃないのかな?」「それがそうでも無いみたいだぜ。俺も聞いた話だけどな。全員と仲良く暮らしているって話だからな。」「へぇ~~」「おぉこの辺りの商人や職人の間では、今一番の話題だからな。誰が一番最初に侯爵のお子を産むのかってな。」「へぇそうなんだぁおちゃんありがとう。面白い話が聞けたよ。あぁそうだ、その芋粉を3袋頂戴。」「おぉありがとうな。銀貨3枚でいいや。」「ありがとう。はいこれ。」「おぉ確かに、また来いよ!」「うん。」
店から少し離れた所で、「リン。ひどいよ。解ってて話していたでしょ?」「でも、いいな。僕なんて名前も出ていないんだよ。ルナは嫁として認められているし、イリメリやフェムも奥様呼ばわりだし....僕だけ、なんかヤダ。」「うん。ミルの事は僕が解っているだけじゃ不満なの?」「そういうわけじゃないけど....」「・・・ねぇミル。解っているの?」「何を?」「本当に、解っていないの?」「だから何を!」「癪だから教えない。」「えぇルナ。教えてよ。僕何か悪い事した?」「ううん。そういうわけじゃないんだけど....私が教えたって事は内緒にしてくれる?」「うん。もちろん。」「あっリンは駄目。」「え”今の流れだと、僕にも教えてくれる流れだと思ったんだけどね....」「ダメ。」「はい。少し離れています。」「うん。」「(ねぇミル。本当に気がついていない?)」「(何を?)」「(みんな気がついている事なんだけどね。無自覚さんが個々にも居たんだね。)」「(??)」「(あのね。リンが私達の事を呼ぶ時に、マヤの次に呼ぶのは、必ずミルなんだよ?イリメリよりも先に呼ぶんだよ。本当に気がついていなかったの?)」「え”」「(こら、リンに聞こえちゃう。)」「(あっごめん。うん。全然気が付かなかった。なんとなく、いつも最後に残って、リンと一緒に居るような気がしていたんだけど.....。それはそれで嬉しいけど、皆みたいに特殊な事が出来ないから、僕は、リンの前で戦ってリンを守るだけだから....。)」「(うん。仕事を割り振る時には、イリメリやフェムから始まるからね。でも、全員の名前を呼ぶ時には、ミルがマヤの次なんだよ。)」「(・・・・・。嬉しい。)」「(ミル。泣かないの。でも、これから、私がミルの座を奪うんだからね。)」「(大丈夫。守りきってみせる!)」
なんか、二人で笑いあっている。いいな、女の子同士で仲が良くて、ああやって笑い合えるのって羨ましいな。贅沢な悩みだけど、僕も友達が欲しいな。ハーレイやローザスって友達って感じじゃ無いんだよね。頼りになる同僚とか先輩って感じだし、ウノテさんも近所の気のいいあんちゃんって感じなんだよな。はぁ転生者では茂手木だけど、あんまり喋った事が無いしな。そもそも、あのクラスで友達って居なかったからな。はぁ異世界に来てまで、来世に期待とか思う事になろうとはな。
『主様。』カウラが猫の姿のまま話しかけてきた。『どうした。カウラ』『リン。遠巻きにだけど囲まれている?』『あぁ路地に入った辺りから着いてきていたけど....ターゲットは僕達みたいだね』『どうする?僕が行ってこようか?』『ううん。ルナもミルもちょっと様子を見ていて、できれば、怯えるような雰囲気を出しておいて』『解った。』『カウルも解った?他の眷属にも招集かけておいて、もう少し歩いた所に、少し開けた所があるから、そこで対峙しよう。』『主様。我等はどうしましょうか?』『敵の総数は解る?』『はい。15名です。』『逃さないように僕の合図で、全員を捕縛できるように準備して、準備できたら、僕に知らせて。合図を送るから』『主様よ。もう準備は出来ています。いつでも大丈夫です。』『あぁそうね。ミルもルナもいい。気がつかないフリして歩いてね。多分開けた場所で前を塞がれると思うからね。』『わかった。ただのチンピラ?』『どうかな?少なくても、僕のステータスを額面通りに受け取っている人たちのようだね。』『それじゃミルがターゲット?』『どうかな?相手の出方を見てみよう。本当にただのチンピラに絡まれただけかも知れないからね。』
三人で顔を見合わせながら、角を曲がった。確かに後ろからついてくるのが解る。次の角を曲がると、少しだけ開けた場所に出る。そこに、5人の気配があってさっきから動いていない。
逐次、従魔から情報が入ってくると、レベル10程度の人間だけだ。ミル一人でなんとかなる程度だ。少しだけ安心して、角を曲がった。
あぁ定番だなぁっと思いながら歩いて行く。ミルとルナはしっかり怯える演技をして、僕の腕にしがみついている。二人には、結界を張ってある。防御結界ではなく、ステータスを見られる事を防ぐ結界だ。最近開発した魔法で、ステータスを見ようとすると、静電気の様に痺れさす事ができる。
「おいおい。見せつけてくれるじゃないか?あぁぁん。小僧。ここからは有料なんだよ。」「あっそうなんですか、それじゃ戻ります。」
引き返そうとする。
「あっ今からこっちも有料になったんだよ。持ち物全部と可愛い二人を置いていけ、そうしたら、お前だけは助けてやる。女は今から楽しませてやるからな。」「あぁありがとうございます。僕の二人の嫁を可愛いって言ってくれて、でも、二人とも僕と一緒じゃなければ楽しくないと言うので、それは出来ません。それに、貴方のような下品な人種は嫌いですからね。楽しめないと思いますからね。」
「・・・・あぁぁぁ何言ってんだ。言われた通りにしておけば多少の怪我だけで済ませようと思ったんだけどな。もう許さねぇ」
「ごめんなさい。もう少し、ヒト族に解る言葉で話してくれませんか?僕は無学で、猿人や魔物の言葉がわからないので....それに、臭いので、近くに寄らないでもらえますか?話は聞きますので...」
「あぁこの餓鬼!もう許さねせ。いいですよね。旦那。」「あぁ女は好きにしろ。必要なのは、男だけだからな。」
『カウラ。今喋ったやつだけは絶対に殺すな。』『はい。この程度なら全員殺さないで捕まえられますよ。』『そうか、もう少し待って。』『かしこまりました』
「やだなぁ本当にこの動物。匂いも最悪だし、息も臭い。ねぇ君達もそう思うよね」
ミルとルナも頷く。
「この餓鬼。自分の状況が解っていないようだから、少し痛い目を見て、わからせてやれ。」「へへへへ。女は後でたっぷりと相手してしてもらうからな。餓鬼だけど、顔がいいし、そのまま思う存分使った後で、奴隷商にでも売ればいい儲けになりそうだな。」
「カウラ。もう聞くに耐えない。やれ!」「は。お望みのままに。」
それは一瞬で終わった。眷属たちが15人を取り押さえている。一人も抵抗できるような状態ではない。魔法が使えないように、結界を張る。やはり、数名は魔法を唱えようとしていたみたいだが、発動しない事に驚きの表情だ。
「さて、お前たち程度の人間に僕の大切な人を傷つけさせるわけには行かなかったし、なんか面白そうな事を話していたみたいだけど、どうする?耳が汚れてしまったから、そのくらいの罰を与えようか?」「いいよ。面倒だから、殺しちゃわない?」「私もそれがいいと思う。どうせロクでもない奴らでしょ」「僕もそれがいいと思っていたんだよ。15人程度なら別に心も痛まないし、ヒト族の言葉を話す魔物を始末した所で、誰も困らないだろうからね。」
「待って。誤解だ。」「あぁ?誰が喋っていいと言った。息が臭いから喋るな。」「主様。」「なんだ?」「我の眷属が爪とぎ用の肉を欲しがっていました。もし、この魔物達を捨てるのでしたら、我に与えてくれませんか?」「あぁ別にいいが、こいつら臭いぞ。」「大丈夫です。スナッチが爪の毒を抜くのに丁度いいと思われます。そのまま爪とぎ用としてスナッチに爪を研がせていれば毒も抜けていい感じになるでしょう。」「そうか、それなら、カウラ。お前に預ける好きにしろ。」「ありがとうございます。出来ましたら、回復薬も頂きたく思います。」「ん?何に使うんだ?」「はい。爪を研いでいますと、稀に爪が骨に引っかかって締まって、背の肉が剥がれたり、腕や足が取れてしまう事があります。そうしますと、うまく毒が染み渡る前に死んでしまうので、そうなったら、一度回復薬で戻してから最初からやりたいのです。折角ですから、全部綺麗な爪とぎ肉にしたいですからね」「そうか、爪とぎ肉にした後はどうするんだ。回復薬で戻すのか?」「いえ、我では無いのですが、ワームの餌にしようと思います。生きたまま内臓などの柔らかい部分から食べて、最後に脳を食べるのが好きなペットでして、良質な餌を与えると、畑仕事もはかどりますので....」「あぁすか、それなら無駄にならなくていいな。いいぞ、全部連れて行け。」「はっありがとうございます。お前たち、主様のお許しが出た、我等の寝床に連れて行って、三日程度かけてゆっくり意識を保ったまま爪とぎ肉にしろよ。失敗したら、罰を与えるからな。」
おぉ大人が青ざめているな。やっと理解が追いついたって所だな。遅かったな。
「待って。待って。」「あ”何?」「・・・。いや。待って下さい。私達は、あいつに雇われただけです。許してください。」「よくわからないな?まぁいい、雇われたとか言っていたけど、僕には関係ない事だからな。道端のゴミを片付けただけだし、カウラが欲しがっていたから上げればいいしな。」「本当に、待って下さい。なんでも話します。なんでもします。許してください。お願いします。」「帰ろうか、カウラ。後片付け頼むな。」「かしこまりました。」
「侯爵様。待って下さい。」「あぁ?僕の事を侯爵と呼ぶのか?」「はい。リン=フリークス・テルメン・フォン・マノーラ侯爵様。」「ほぉ知っていながらこの所業と言う事は、どうなってもいい覚悟は持っているんだろうね?」「申し訳ございません。私どもの雇った者が侯爵様に不快な思いをさせてしまって申し訳ない。」「不快?違うよ。ここまで来ておきながら名乗らない貴方に対して憤っているますよ。それでどうしたいのですか?面倒事は嫌なので、このまま全員殺しても僕はかまわないのですよ。なんなら、イスラ大森林の真ん中で解放してあげてもいいんですよ。」「お待ち下さい。申し訳ありません。その前に、この者達を下がらせて頂けませんか?この体制ではしっかりした挨拶もできません。」「そうだな。いいだろう。カウラ。その者だけ離してやれ」「侯爵様ありがとうございます。私は、レオプルド・シュターデンと申します。ルキウス子爵家寄子のラカイヤ領で商売をさせていただいている。フレーゲル家の者です」
『ルナ。フレーゲル家って知ってる?』『リン。知らないの?』『僕が知っていると思う?』『ごめん。そうだね。フレーゲル家は、宰相派の中では、ゴーチエが裏の商売の取りまとめなら、表の商売の取りまとめをしている家だよ。』『そうなんだ。』
「宰相派のフレーゲル家が僕に用事なの?」「はい。少々手荒になってしまった事をお詫びしますが、招待に応じていただけないでしょうか?」「僕にそれを受ける義理はないよね?やっぱり面倒だから、全員イスラ大森林に縛り付けておく、そうしたら魔物が勝手に片付けてくれるでしょ。」「そうね。旦那様。もう遅くなってしまったから、帰りましょう。」「そうだな。カウラ。こいつらをイスラ大森林の深層部においてきてくれ。僕達は帰る。あぁグリフォンを使ってもいいからな。」「かしこまりました。」「うん。帰ろう。身体も冷えたし、何か温かい物を食べてから帰ろう。」
「待って下さい。俺たちは、いや。私達は、騙されただけです。商売を邪魔する奴を懲らしめるだけで、侯爵様なんて聞いてなかったんです。聞いていたらこんな事していません。本当です。許してください。」「あ”お前は今二つの間違いをした。それだけで万死に値する。いいか、僕は身分で対応を変えるやつが大っ嫌いだ。命令でやったと言いながら命令の意味を考えないで実行する奴も嫌いだ。だから、お前を許す事は僕には出来ない。」「・・・・。許してください。お願いします。私には...子供も居ます。なんでもしますから許してください。」「あぁいいよ。許してやるよ。お前が自分の子供を僕の目の前で殺せるのなら、僕はお前を許してあげるよ。どうする?」「なっ....ごめんなさい。許してください。」「あぁそうやってお前の目の前で泣いた奴も居ただろうな。その人達をお前がどうしてきたから考えれば、僕がとる態度も解るだそう。今後の後腐れが無いように、お前の家族も一緒にイスラ大森林に送ってやるよ。幸い。僕の眷属には犬も居るし、お前の匂いを辿って家に行く位容易いからな。なぁシャラト!」「主様よ。そんな事で我を使われるのですか?」「嫌ならいいよ。別の眷属にお願いするから。ワーウルフも居るしヘルハウンドも居るからね。」「いやいや。我におまかせあれ。どれの家を突き止めますか?」「あぁそのカウラが抑えているやつだよ。」
「ケ・・・ケルベロス?」「そうだよ、ケルベロスだよ。珍しくも無いだろう?どうだ、シャラト。」「主よ。簡単過ぎて面白くない。ここから南西の方角に行った所に、コヤツの住処がある。中にはメスが二匹。あぁ一匹は子供のようです。もう一匹も子供のオスが居ますね。我が今から行って捕えてきましょうか?」
「やめてくれ....妻と子供には手を出さないでくれ。俺は殺されても文句は言わない。だから、お願いだ。」「そうか、でもお前を殺したのが僕だとわかると、子供が復讐に来たりして面倒なんだよ。だったら、全員殺した方が楽だと思わない?」「・・・・」「あぁありがとう。賛成してくれるんだね。シャラト。全員を「待って下さい。お願いします」」「ん。なんだ。僕に有意義な話をしてくれるんだろう?」「あっはい。勿論です。俺達は、本当に雇われただけで、そこの、レオプルドに、侯爵様を捕えて、連れていけば、金貨10枚をくれると言われたんだ。それ以上は本当に知らない。」「ほぉそうか、他の者も同じか?」「「はい。」」「そうか、お前たちをここで逃したら、お前たちはどうする?」「はっはい。二度と侯爵様の前に現れません。それに、雇い主を裏切った事になるので、二度とこんな商売はできなくなります。ですので、家族を連れてどこかの村に引っ越します。」「そうか、よし。お前たちを雇おう。金貨14枚。一人金貨一枚で雇う。そうだな。期間は1年。その間の衣食住は保証してやる。どうだ?嫌なら家族と一緒にイスラ大森林に行ってもらう。」「私は、侯爵に従います。」「私も...」「これで、14家族の入植者か塔の監視員が手に入った。」「侯爵。信頼していいの?」「信頼なんてしてないよ。裏切ったら家族諸共殺すだけだよ。」「絶対に裏切りません。お約束いたします。」
『ミルとルナは先に帰っていて、ちょっと害虫駆除をしてくるよ』『害虫?』『うん。フレーゲル家を潰すか手中におさめてくる。』『僕が一緒じゃ迷惑?』『ミル。違うよ。ミルとルナにはやって欲しい事があるんだよ』『何を?』『皆と皆の従魔に集合をかけておいて欲しい。そして、僕の合図で、フレーゲル家の関係施設に一斉に踏み込んで欲しい。従魔だけで踏み込ませてほしいんだ。あくまで魔物の襲撃って感じにしておいて欲しい。』『解った。リンはどうするの?』『このまま、フレーゲル家に行く。』『大丈夫?』『うん。少し考えがあるから僕に任せて。』『解った。いいわよね。ミル?』『うん。リン。無理はしないでね。』『あぁ』
「お前たち、14人は、彼女たちと僕達のホームに行ってもらう。そこで、彼女たちの指示に従え。」「・・・」「解ったらさっさと移動しろ。」「はっはい。奥様。どこに行くのですか?」「いいから、着いてきて、貴方たちは、侯爵に逆らったんだから本当なら、魔物の餌以外には道はなかったんだけど、侯爵が使いみちを考えてくれるらしいからね。しっかり働いて役に立つ事を証明できたら、生かしておいてくれるだろうからね」「はい。解っております。奥様。」「うん。頼むな。」
「さて、レオプルド。お前はどうする?」「どうするとは?」「選ばせてやる。ここで死ぬか?イスラ大森林で魔物の餌になるか?俺の役に立つか?」「侯爵様。私は、フレーゲル家に恩義があります。その恩を裏切るわけにはまいりません」「そうか、ならばここで死ぬか?イスラ大森林で家族と一緒に死ぬか位は選ばさせてやる」「いえ、侯爵様。侯爵様をフレーゲル家にご一緒していただきます。」「僕のメリットが何もない上に面倒事にしかならないだろうな。」「・・・・それは私が保証いたします。侯爵様や奥方。ギルドには指一本触れさせません。それではメリットになりませんか?」「ならないな。面倒になったら、潰してしまえばいい。僕には、それだけの権力がある。」「・・・・はい。しかし、侯爵様。」「そもそも、お前は、フレーゲル家の全県代理者か?それとも使い走りか?」「建前は後者でございます。」「建前か?商人が建前を大事にするとは思えないな。それに、お前が保証した所で、それは保証にはならないよな?違うか?」「・・・・。ですが、侯爵様。」「面倒だな。お前たちは何を望んでいるんだ?腹の探り合いもいいが、疲れてくる。」「はい。それを、当主からお話差し上げたいのです。」「それが僕を襲う事になると言うのには些か説明が必要な状態じゃないのか?」「・・・・・。はい。これは、私が勝手にした事で、当主とは関係ない事でございます。侯爵様を連れて行く時に、私ども意を組んで動いていただける様にするためにしたのです。その方法が間違っておりました事は痛感しているところです。従って、当家と私の行動は関係ありません。私の独断です。当家当主にお会いいただけるのでしたら、私の命程度なら、侯爵様に差し出します。」「・・・・解った。」「それでは、当家にご足労頂けますか?」「いや、ここから、フレーゲル家まではどのくらいの距離がある。」「はい。歩いて10分位でございます。」「そうか、今から20分待つ。僕に、会いたいというのなら、当主がここまで来い。それが最大の譲歩だ。それから、1分遅くなる事に、フレーゲル家の関連施設が魔物に襲われるかも知れないな。」「・・・・。」「いいんだよ。僕は20分待っていてあげるからな。あぁ違った、後19分だな。」「侯爵様。お待ちいただけるのですね。」「あぁでも急いだほうがいいぞ。後18分かな。」「はい。失礼いたします。」
『リアン。レオプルドの後をつけてくれ。』『かしこまりました』
さて、何が出てくるかな?
15分位経っただろうか?
「侯爵様。おまたせして申し訳ありません。フレーゲルが今こちらに向かっております。」「そうか、一応時間内だな。」「はい。それから、侯爵様。フレーゲル男爵の事は是非とも内密にお願いいたします。」「あ?お前、まだ自分の立場が解っていないようだな。僕に対してお願いできる立場じゃな事を早く理解した方がいいぞ」「・・・・申し訳ございません。ですが....侯爵様」「レオプルド。よい。さがれ。後は、儂とマノーラ侯爵様との話だ」「はっ」「侯爵様。家の者が申し訳ありませんでした。」「謝罪には及びません。現在進行系で迷惑を受けております。男爵は、どうされるおつもりですか?」
そこに現れたのは、僕と年齢的には変わらない。少年だ。
「ご挨拶が遅れました、私は、ウィルヘルム=ガルミッシュ・フォン・フレーゲルともうします。マノーラ侯爵。」「・・・・。それで?宰相派の商人が、僕に何の用事があるのですか?」「誤解を与えてしまって申し訳ない。私は、本当に、侯爵様とお話がしたかっただけなのです。」「えぇですから、何のお話ですか?立ち話も落ち着きませんね。ワク。テーブルと椅子を並べてくれ。」『はい。ご主人様。』
ワクが飲み込んでいたテーブルと椅子を二つ取り出した。「なっどこから...」「あぁ...」「どうぞ、何も無い所ですがお座り下さい。」「ありがとうございます。」「それで、フレーゲル男爵は、私に何のお話があって、あんな者達を使いに出したのですか?」「はい。最初に、レオプルド達の事を謝罪させて下さい。」「いえ、謝罪は必要ありません。この会談次第で、殺す事が決定しています。それに、謝罪されると言う事は、主である男爵が、レオプルド達に命じたと解釈しますが、それでいいのですか?」「侯爵様。男爵は「レオプルド。控えなさい。今は、私と侯爵との対談の場です。」」「侯爵。失礼致しました。はい。そう考えていただいて問題ありません。すべて、私の責任です」「解りました。それでは、あえてお聞きします。貴殿は、私に何をして欲しいのですか?」「ありがとうございます。私が望むのは、我が家の吸収です。」「吸収とは?」「おわかりだと思うのですが、我が家は、遠からず没落致します。そうですね。もって半年と行った所でしょうか?」「ほぉ。男爵は、それを指を咥えて見ていると言うわけですか?」「いえ、そうしたくないので、こうして、お話をさせていただいているのです。ギルドの実質的なオーナでマノーラ家のご当主様と....」「解りました。それで貴殿は、私に何を提供していただけるのですか?」「情報と私自身では足りませんか?」「ほぉ。それで、貴殿は何を望みますか?」「我が一族や関係者の安泰と、どこか商売ができる場所を頂けたら、その権限の中で最大の成果を上げてご覧に入れます。」「・・・・。貴殿は、フレーゲル家を捨てると言っているのですか?」「そのように捉えていただいて構いません。私に取っては、親から引き継いだだけのフレーゲル家よりも、家臣や領民の方が大事です。」「なぜそう思うのですか?」「侯爵のお言葉とは思えません。ギルド・マガラ神殿。それに、MOTEGI商会これらの事は、宰相派特にアゾレムですかの情報封鎖と物流の圧迫を強いる事では無いのですか?」「ほぉ」「宰相派の連中もいずれ気がついて右往左往する事は間違いないのですが、その時にマノーラ家に差し出せる物は少なくなってしまっているのでしょう」「・・・・」「今ならば、私が持つ宰相派の情報や我家の価値があります。そして、宰相派の裏切り行為を高く売る事ができると考えたのです。」「その買い物には毒が含まれていないと誰が保証するのですか?」「私自身と、我が領民すべてでは足りませんか?」「それは、私の領地に移動してくると言う事ですか?」「はい。すべての領民というわけには行きませんが、ほぼすべての領民が移住してくる事になります。」「貴方はどうしますか?」「そうですね。人質として、どこかに幽閉していただいても構いません。」
案外いいかも知れない。男爵家がまるまる一つ手に入る。人手不足もある程度は解消できるかも知れない。どのみち教育したりはしなければならないのは代わりが無い。ウィルヘルムには、メルナの街で執務に当たらせてもいい。領民たちは、新しく作った入植地に移住させてもいいだろう。
「男爵。その提案をお受けいたします。少し、諸条件を整える必要がございます。貴方には暫くマガラ神殿でお過ごし頂きたい。お一人で」「解りました。ありがとうございます。」
こうして、マノーラ領内を開拓する人手を確保する事ができた。明日にでも、イリメリやフェムとナッセ・モルトを交えた話をする事にした。

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