【旧】チート能力を持った高校生の生き残りをかけた長く短い七日間

北きつね

幕間 その頃アロイでは

今日は朝から慌ただしかった。最初は、アゾレム領主から伝達があると言う事で、宿屋関係者が集められた。月に何度かある事だったので、それほど不審に思わないで居たが、内容が酷かった
「ニノサ=フリークス・テルメン 及び サビニ=フリークス・テルメン 両名を見つけ次第領主に連絡せよ。」 実質的な捕縛命令だ。罪状もなにも書かれていない。重要な情報の提供には、10万レインの報奨もでると書かれていた。あのケチな領主が金を払うわけがない。どうせ情報だけ受け取って、受け取った小役人が自分の手柄で報告するのだろう。そんな馬鹿らしい事をするよりは、ニノサとサビニが何をしたのかが気になる。それに、リン君とマヤちゃんの事も気になる。集会場から宿屋に帰ろうとした時に、”後をつけられている?”でも、素人ね。はぁニノサとサビニが私に接触してくるのを狙っているのかしら?馬鹿な人たちみたいね。そんなわかりやすく接触してくるはずないのにね。どうも、何か違う人も探しているみたい。まぁニノサとサビニなら滅多な事にはならないだろう。
夕方過ぎに珍しく、マガラ渓谷を越えて来た商隊が出た。普段は、朝はやくから渓谷に入って、昼前には渓谷を越えるようにするのが一般的な行程になる。急な荷物とかだと強行スケジュールで夕方になる場合も多いが、昼過ぎ位から魔物が沿道にも出始めるから、それを回避する意味でもあまり進められていない。何より、遅い時間に渓谷に入ると、暗くなってしまって足を踏み外す危険性があるからだ。渓谷に落ちてしまったらほぼ助からない時々、落ちた場所が良かったり、落ちた先が深い湖になっていたりしたりして助かる人間も居るが、年に1~2人いれば多い方だ。商隊が馬車を組み直して先を急ぐようだ。その商隊から本当の凶報が入った。”リン=フリークス と マヤ=フリークス”が桟橋で足を滑らせて渓谷に落下したとの話だ。商隊のリーダは確認していないが、同郷の女の子二人が、二人が落ちていくのを見ている。着水時の音も聞いているから間違いないようだ。すぐに助けに行こうとした。ニグラから無事戻ってきたガルドバに止められた。今、私が動いていい結果になるとは思えないと言う事だ。確かに、私では渓谷の魔物ならなんとか1対1なら勝てるだろう。でも、複数だったり、ネームドモンスターならまず勝てない逃げられないかもしれない。ガルドバの言うとおり、ここで待つ事にした。ニノサとサビニの事も気になる。結局商隊は、アロイとメルナに一人づつ残して先に進む事にしたようだ。問題は、その残る二人がニノサ達の話が有った時から私を見張っている子と話をしている事が気になる。同じ一連の流れの中に居るような感じがする。メルナ側に向かったのは、エスタール=ティロンとかいう若造だ。リン君の様な可愛げがある子どもではなく、自分が特権階級にでもなっかたのような傲慢な人間だ。私の所に顔を出して、リン君やマヤちゃんが訪ねてきたら教えろと言ってきた。なんでも、荷物を持ち逃げした疑惑があり領主が二人から話を聞くと言っているらしい。適当に聞き流していたが、彼らが小汚い小僧の荷物やションベン臭い娘の荷物なんかに手をだすとは思えない。リン君がもつ規格外な物を知っているからそう思ってしまう。
そんな事があったが、宿屋は日常運転を行っている。ガルドバの料理も評判になって、夜には食堂がほぼ満席になる日が多くなっている。
2日が過ぎた位で、商隊から離れた小僧が里では無く、メルナに向かったと言う話が聞かされた。領主の所に向うのなら、方向が逆じゃないかと思ったら、ガルドバ情報として、アゾレムのご当主様はニグラに行っているようだ。名目的には、長男のパシリカに併せての滞在と言う事らしい。
リン君達の行方不明の報が入ってから、3日目の朝。宿屋を青い髪を切りそろえた、黒目が印象的なすごく可愛い子が訪ねてきた「ナナさんの宿で間違いないでしょうか?」姿勢を正してから、そう尋ねてきた。そうわよと返事をすると、「少しお時間をいただけないでしょうか?」「いいわよ。でも、宿の仕事が一通り片付くまで待ってもらえるかしら?」「どのくらいに来ればよいでしょうか?」「そうわね。昼過ぎ位には落ち着くとおもうわよ」「・・・・・解りました。」背中を丸めて一礼をして店から出ていこうとしていた。「ねぇ緊急な事?」「・・・・・はい。私にとっては、命よりも大切な人の事でお尋ねしたかったのですが、お忙しいようなら、別の方法を考えます。」「考えて無理なら?」「・・・・・・。無理でも考えます。マガラ渓谷に落ちたと言う事も聞きました。だったら、マガラ渓谷を探しに行きます。」「ガルドバ。お店お願いしていい?」「あぁ任せろ。」「貴女名前は?」「私は、ミトルナといいます。ミルと呼ばれています。」「ミル。貴女が探しているのは、キレイな目をした癖っ毛が強い栗色の髪の毛をした男の子と、その子にいつもピッタリ一緒に居る可愛い女の子の事?」「はい。何かご存知なのですか?」「こっちに来て....」店の奥に作っている。遮音の魔道具がおいていある部屋に、ミルと名乗った女の子を誘導した。
「ミル。ここなら何を話しても外には聞こえないから安心して.....それで、貴女は、リン君の敵?味方?」「仲間です」即答だ。パシリカ前に会ってから、ニグラで何が会ったのか解らない。でも、リン君とマヤちゃんを仲間と呼ぶ人ができたんだと嬉しく思えた。「その言葉嘘偽りはないわよね」「はい。命に変えましても」「解った。私が知っている事を全部話すわ」
ここ数日に発生している事を詳細にミルと言う女の子に説明した。自分が持っている情報とすり合わせしているかのように、ミルは黙って話を聞いていたが、握った拳が震えているのが見て取れた。私にも経験がある。限界を越えた怒りや焦りは自分でも制御できなくなっていく。自分の手を傷つけているのにも気が付かないで力が入っていく。
「ここまでが私が確認した事。次は貴女が教えて、リン君とマヤちゃんは、ニノサとサビニは何に巻き込まれたの?」
彼女が語ったのは、領主と領主の息子がしているであろう事。問題なのが、その後ろに王国の後継者争いが絡んでいる事にある。アゾレムの領主は宰相派だ。ニノサやサビニが義憤で動くとは思えない。リン君やマヤちゃんが居るから余計にそうおもうが、何か、私が知らない事情が有ったのだろう。多分親ばかな理由だろうけど....。
ミルは私を真っ直ぐにみつえたまま話し終えた。「ナナさんの事は、リン君とマヤちゃんに聞きました。私には頼る人がいません。何か少しでも情報があれば教えてください。お願いします。」「・・・ミル。ゴメンなさい。私もそれほどの事を知っているわけじゃないの?気になる事はいくつか有るんだけどね」「些細な事でもいいので教えてください。」「あのね・・・。」
ニノサとサビニの話があった時に、見張りというか尾行というか、私の事を見ていた人間が居た事。商隊が現れた時に、私に横柄な態度でリン君とマヤちゃんが現れたら教えろと行ってきた人間が居た事。その二人とアロイに残ってリン君とマヤちゃんが現れるのを待っていた人間が仲間みたいだった事を話した。ミルの中で何かが繋がったようだった。
「そいつら、私達の敵です。」すごくすごく冷めた声だった。
「私達?リン君には、貴女の他に仲間が居るの?」「はい。リン君を中心に10人ほどの人数がいます。それ以外に従業員で20名近く居ると思います。」「え”何をやろうとしているの?」「それは、」
ミルが話した、リン君がやろうとしていること。この世界を変えようとしているのかもしれない。まだニグラの小さな組織かも知れないが、大きくなる要素は大きい。特に、冒険者というのはいい。今は、知り合いにお願いして狩りをしたりする必要がある。定期的に行っていても、入荷には波がある。それがなくなる可能性もある。雑事をお願いすることもできるらしい。値段を依頼する側が決めるのもいい。安ければ受け手が居ないし、高ければ簡単に受けては見つかる。そうしている間に適正価格が出来てくるだろう。後、素材の買い取りをメインにする場所も狩りをする人間にとっては嬉しい。依頼された魔物や動物を狩りに行っても、違う魔物が出てきたりして、結局倒さなければならないのは一緒なのに欠いてを自分で探さなければならない。露天商などに買い叩かれるのが関の山の状態が緩和されると、魔物を倒すだけで生計が立つ事になる。
「ねぇミル。宿屋の主人の席は空いていないかしら?」「リン君がどう考えているのかわからないし、私はリン君の剣であり盾であると思っています。ギルド運営は別の者たちがやっています。」「そう、まずはリン君を探すのが先って事ね。」「はい。」
ミルから、依頼された”アロイの街を中心にリン君を捜索して欲しい。見つけたら、ニグラのギルド本部まで連絡して欲しい”と言う物だった依頼量は、成否にかかわらず金貨30枚。この辺りの護衛なら10人を10ヶ月雇ってもお釣りが来る。びっくりしている私にミルが、これはリン君が持っていたコボルト魔核のオークションでの売上だと言う事だった。それなら納得できる。
「わかったわ。私が護衛を編成して、マガラ渓谷の谷底まで探るようにするわ。」「よかった。お願いします。」ミルは少し安堵の表情を浮かべて、お金を渡してきた。お金を受け取って「そうだ、護衛にも賃金以外でもボーナスを与えたいのだけれどもいいかしら?」「??」「マガラ渓谷に潜ると言う事は、大量の魔物と戦う事になる。その時に得られた素材や魔核の取り分は折半と言う事に出来ないかしら?」「問題ないと思います。」「そして、魔物の素材は、ギルドで買い取ってほしいの?出来るかしら」「即答は出来ませんが問題ないと思います。」「即答出来ないのは?」「私がその担当ではないためです。」「わかったわ。魔物の素材や魔核は折半でOKで、買い取りは後日交渉という事でいいかしら。」「はい。私達としては、リン君が無事に見つかれば良いのです。それ以外は正直どうでも良いのです。」
清々しいほどに一直線。
「ミル。解ったは、なんとしても、リン君とマヤちゃんを見つけましょう。」「はい!」「ミル。貴女はこの後どうするの?マガラ渓谷に潜るの?」「最初はそのつもりでしたが、私程度では足手まといになると思います。リン君の産まれた村に言って、一緒に帰ったと言う、マヤちゃんの友達を探して話を聞こうと思っています。」
そう言って、ミルは立ち上がった。そして、私に向かって手を差し出してきた。癖でステータスを確認してしまった。名前:ミトナル=セラミレラ(5)真命:ミトナル=マノーラジョブ:魔法剣士体力:440魔力:720腕力:280敏捷性:290魅力:100魔法:青(4)・赤(4)・黄(2)・灰(2)・黒(3)・白(1)・紫(1)スキル:短剣武技、長剣武技、弓武技、盾武技、大剣武技、戦斧武技、長槍武技
!!!!!!!!!何この子のステータス。異常過ぎるわよ。武技の数もそうだけど、魔法が全属性使えて、剣のスキルもある。化物じゃない。パシリカを受けたばかりでレベル5?そういえば、気にしなかったけど、一人でニグラからここまで来た?足手まとい?少し鍛えれば10年護衛やっている人間程度じゃかなわないわよ。どうしたら、そこまで強くなれるの?
呆けていると、ミルは私に一礼をして、ガルドバにお礼の言葉を残して出ていった。
ガルドバがやってきた「おい。ナナどうした?」「え?何?」「顔が真っ青だぞ。ドラゴンと対峙したときよりも絶望的な顔しているぞ」「あぁ化物を見たは・・・。」
今見たステータスを説明した。ガルドバは見間違いじゃないのか?そんな事ない。それはガルドバも解っているはずだそれに、まだ何か隠されているように思える。
あの子がリン君とマヤちゃんの仲間なら少しは安心できるかも.....。その前に、やることをやらないと....。
ガルドバにミルとした話を簡単に説明した。そして、腕の立つ護衛を15人集めてくれとお願いした。命がけの仕事にはなる。でも、リターン多い。乗ってくる連中は多いとおもう。暫くは、この宿も開店休業状態にして拠点にしてしまおう。ガルドバもその方がいいだろうと承諾してくれた。

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