ギルドの下準備

ローザスさんとの話も一区切り付いた時に、タイミングをはかっていたかのように、奥方が変えの紅茶を持ってきてくれた。
「さて、リン君。ニノサから託された書類だけど......」「・・・。」「君に報告だけはしておこうと思ってね。今後ニノサと会った時に、君から説明して欲しい。もちろん、僕の名前を出して構わないし、ニノサがい必要だとおもうのなら僕自ら説明に伺おう。」「はい。」「ローザスとも話したのだが、この書類をこのまま公開すると、ニノサやニノサの協力者が危ない可能性がある。勿論、君達もだ。」「！！」「それで、少しセコイ手を使おうと思っている。第一王子に、書類を渡して、公表してもらう事にしたいとおもう。」「！！良いのですか？」「あぁ問題ない。第一王子は僕と違って、すごくふざけた人物で”悦楽主義”と言われても反論出来ない位に人を馬鹿にする事や人をからかうのが好きな人物でね。この話しもノリノリで参加してくれるだろう。」「へぇそうなんですか？」「リン君、君はユーモアを勉強したほうが良いかもしれないな。それはおいておくとして.....」
ミヤナックが説明してくれた事は、第一王子が”協力者”から書類の一部を入手して、それを明日の国王を交えた5英傑の議場で、書類の中に”間違えて”紛れ込ませる。書類の出本を探る話にはなるとおもうが、第一王子やミヤナック系が絡んでいると解れば、それ以上の追求は事実上難しくなり、内部的な犯人探しに没頭する可能性が高い。その上で、残りの書類が第一王子に届けられて、内々に発表すると言う手段を考えているとの事だった。まずは、トカゲの尻尾切りで、アゾレムが切り離されるかもしれないが、今まで資金源にしていた事もあり簡単には切り離せないだろうが、中央に証拠が握られている事から強くも出られなくなってしまうだろう。そうしていうる間に、他の証拠集めをして一気に叩くつもりでいるとの事だった。正直、政治の機微や貴族のパワーバランスに興味がない上にわからないので、全面的に任せる旨を伝えた。
「ほらな。ローザス。言った通りだろう？」「あぁそこまで父親に似るんだな。」「？？」「まぁいい。ローザス。この件は、話した通りでいいだろう？」「あぁハーレイがそれでいいのならOKだ。」
二人だけでなんか納得しているが、面倒なのでスルーする事にした。
「それで、リン君。真面目な話を一つしよう。」ミヤナックが突然真面目な口調で僕に向かって話しかけた「はい。」「この書類の代金はどの位払えばいいんだ？」「？？」「これだけの書類だからな。対価を支払うのは当然だとおもうぞ」「リン君。僕達はこれでかなり動きやすい状況を作る事が出来る。ハーレイも言っているが、対価を支払うのは当然だぞ」「そうですか......（僕としては、安全が担保できれば別に良いんだけどな）。少し考えさせて下さい。」「あぁいいよ。でも、もう明日にはこの作成は発動したいから、悪いけどこの場で決めてくれ。」「君とマヤちゃんだったかな、二人の安全はニグラ街にいる間は僕達が保証しよう。それは対価とは別と考えて欲しい。」「・・・・はい。それなら、ギルドで、物の売り買いをする権利を商売権を下さい。後、魔道具の職人や武器・防具の職人の紹介をお願いしたい。」「・・・。わかった、商売権はすぐに用意させよう。人の紹介は、どういった事で必要なんだ？」「はい。商売権は、すぐに行使するつもりはありませんが、素材の売買を行う可能性がありますので、必要になってくると思っています。職人は、仲間に魔道具や武器・防具を作るスキルを持った人間は居るのですがすぐに作れる保証が無いので、最初の頃は作れる職人から仕入れる必要があると思っています。その時に、信頼出来る人やミヤナック様の関係者の方が良いと思っただけです。後、贅沢を言えば、ギルドを運営初めた時に、後ろ盾に誰かのお名前を使わせていただけたらうれしいです。」「おい。ローザス。お前よりも先見の明があるんじゃないのか？」「そうだな。ハーレイよりも楽しそうな事を考えているな。リン。名前は、俺の”ローザス”の名前を使っていい。上級貴族や協会関係者には有効だし、憲兵や守備隊にも通せる力はあるからな。」「おい。ローザスいいのか？」「あぁいいんじゃないか。何よりも楽しそうだしな。おい。リン。いろいろ揃ったら俺も誘え。」「はい。解りました。」少し、頭を抱えるようにしているミヤナックが気になったが、邸宅には部屋が沢山あるらしいし、それなりの人物らしいから、そこに居てくれれば横やりの心配も減ってくるだろう。「・・・まぁローザスがそれでいいのならいいけどな。程々にしろよ。文句を言われるのは俺なんだからな」「おぉわかってる。わかってる。職人も俺の伝手で数名知っているから準備が出来たら連れて行くな。ついでに、魔法師も連れて行ってやる。お前たち、パシリカを受けたばかりでまだ魔法の習得はしていないんだろう？自然と出来るようにもなるけど、誰かに教えてもらった方が早く覚えるからな。」「あっありがとうございます。」「いいって。それと、明日。アッシュの所に行くから、昼前にお前の泊まっている宿に行くからな。準備しておけよ。」「はい。」
書類の件も落ち着けそうだし、王国の権力争いでどっちが勝とうか正直どうでも良いけど、仲間の家族が居る方に勝って欲しいと思うのは人情だろう。出された紅茶を飲み干したタイミングで、二人に礼を行って立ち上がった。そのまま従者に連れられて、門から出る。門で、札の提示を求められて、渡すと魔道具で何か印をしてくれた。これで問題なく帰られる。『夜の蝶』に戻ったら、既にマヤは宿に帰っているとの事だった。どこから説明していいのか迷ったが、韮山タシアナの孤児院での事はマヤが一通り説明してくれていた。熱川ルアリーナも帰っていたが、ハーレイとのやり取りやローザスという人間とのやり取りを簡単に説明して、商人街と職人街の入り口近くに立つ邸宅を買い取った旨を説明した。買い取った事にびっくりされたが、中里サリーカから資金についての説明があったので、なんとなく雰囲気で流されてしまった。その後、場所の確認や内見に関しては、明日以降になると説明した。後、勝手に決めてしまった事を謝罪したが、皆笑って流してくれた。ギルドの中で働く人物の事をも相談しなければならなかった。代表者に孤児院の院長を当てにしているにしても、小さな組織でも働く人は必要になってくる。邸宅の掃除や維持に関しては、韮山タシアナの所の孤児もある程度あてに出来ると思うが、絶対的に人手が足りないのも事実だ。皆それは納得しているが、資金面からも問題になってしまうと思っていた。僕からの提案として、奴隷を雇おうと思っていると説明した。ハーレイの所の食客のローザスが説明してくれた事をそのまま説明した。それぞれの注文が有るようだった。
ひとみイリメリと和葉ミトナルは、僕に一任するとの事だった。重久フェナサリムも基本は、僕に一任でいいが、女性ばかりにはしないで欲しいと言う話だ。それから各人と話をして料理が出来て、メイドの仕切りが出来そうな人物が一人ギルドの受付に二人（人族と獣人で一人づつ）。護衛に二人が最低ラインで後は僕に任せるとの話だった。
かなりの時間話し込んでしまったららしい。宿に戻って明日に備える事にした。
宿に戻ったら、マヤがもうぐっすり夢の中だった。僕もマヤの横で目を閉じた。
◇◆◇◆◇◆
朝になっていた。宿ももう一日更新した。
朝。マヤの様子が少しおかしかった。話を聞いたら、昨日『夜の蝶』で話をして帰ろうとした時に、サラナとウーレンが店に来ていたのに気がついた。話しかけようか迷っていたら、重久フェナサリムがマヤを厨房に通して二人の話が聞こえる距離に誘導した。そこで二人は、私とリンが勝手に隊列から離れて行方をくらましたお陰で遅れたと文句を言っていたらしい。そんな事無いのにと、マヤが言い出そうとしたときに、重久フェナサリムに止められた。リンに話してからにしたほうがいいよと言われて、なんか釈然としないけど、その場はそれに従った。それでどうしたらいいと思う？と言う話しだ。正直、そんなことに構っていられないが、マヤの気持ちの問題でもるからな。そう思いながら、『夜の蝶』の会議室に向かった。親父さんに挨拶して階段を上がるところで、重久フェナサリムに迎えられた。今日、奴隷商に行ったり、邸宅の内見に行ったりしなければならないから、マヤの事を今日もお願いしようと思っていたと話をつけた。奥から、和葉ミトナルが「リン君。同郷の子の言っていた事も気になるし、マヤちゃんの事も気になるのなら、私がマヤちゃんと一緒に探してみようか？」「ん？マヤどうするの？ミルと一緒なら僕も安心だし、何か有っても二人なら逃げられるだろう？」「うん。ミルと一緒に、サラナとウーちゃんを探す。どういう事なのか話を聞きたい。」「うん。ミルには申し訳ないけど付き合って欲しい。」「了解だよ。マヤちゃんは任せて！」
二人は、昼ごはんまでは会議室に居て、その後探しに出るとの事だった。僕は、そろそろ、迎えに来るはずだと思い、食堂で待っていた。そこに、赤髪を短くした身長が190セルもありそうな青年が声かけてきた。「リン君ですか？ローザス様の従者をしている。ファンといいます。」「あっリン＝フリークスです。」「ローザス様は、アッシュ様の所でお待ちです。ご案内致します。」そう言って、ファンと名乗った人は、待たせていた馬車に乗り込んだ。僕も後に従って馬車に乗り込んだ。商人街を抜けて、地球風に言えば風俗街の様な感じになっている所に馬車が止まった。ファンが先に降りて、ドアを開けてくれた。目の前の風俗店みたいな店が、アッシュという奴隷商の店なんだろうか？店から、昨日有ったローザスが出てきた。「ファン。悪いな。リン君。ここが奴隷商アッシュの店になる。説明はアッシュがするから、店の中に入ってくれ」「あっはい。」ローザスに続いて店の中に入っていく。
店は、幾つか個室が有るような作りになっていた。一つのドアが空いて、中から妖艶な女性が出てきた。「ローザス様。彼がリン＝フリークス様ですか？」「あぁそうだ。リン君。彼女が、アッシュ。ここの主人をしている。」「リン様。奴隷をお探しとの事で、当店をご利用いただきありがとうございます。」「アッシュ。後は任せた。」「はい。ローザス様。了解いたしました。代金などは、どうしたら？」「あぁ手付程度はリン君が払えるだろう。後は、オークション後になる。代金は、ミヤナックに請求しておいてくれ。」「はい。解りました。そのように致します。」「悪いけど、僕は次の用事があるからここで失礼するよ。リン君いい奴隷が見つかったら僕にも紹介してね。アッシュ。後は任せた。」
そう言うと、ローザスは僕を案内してくれたファンと一緒に馬車に乗り込んだ。窓から顔を出して陽気に手を振っていた。お辞儀で返答しておいた。
「リン様。こちらにどうぞ」アッシュに続いて小部屋に入った。4畳程度の広さだろうか？そこに椅子が一つおいてある所に、アッシュが先導して僕を座らせた。
「本日は、当館をご利用いただきありがとうございます。奴隷の契約は初めてでありましょうか？」「あぁそもそも奴隷制度がよく解っていない。面倒でなければ、それから教えてもらえたら嬉しい。」
少し横柄な態度を取ってみたが、アッシュは嬉しそうに微笑みを浮かべて、奴隷制度に関しての説明をしてくれた。奴隷には、5種類存在している。・一般奴隷　借金や口減らしなどで自ら奴隷になった者。主人になった人の許しが出れば、奴隷から開放される。　一般的には、買取金額の10倍の金額で自らを買い取る事が出来るようになっている。・戦争奴隷　紛争や戦争で捕えられた者。自らを買い取る事は出来ないが、主人の意向で奴隷から開放される事がある。・子供奴隷　パシリカ前に口減らしや貧困で売られたて奴隷になった子供。　買い取った奴隷商や主人がパシリカを受けさせる義務が生じる。　主人の意向でのみ奴隷から解放される。・犯罪奴隷　犯罪を犯して奴隷になった者。　奴隷解放は出来ない。決められた年月奴隷として過ごす事になる。決められた年月が過ぎた後で、一般奴隷となる。・未認証奴隷　エルフや獣人などが捕えられて、奴隷商に引き渡された者。　現在王国の法律で禁止されている。アッシュの所では、”一般奴隷”と”戦争奴隷”と”子供奴隷”を扱っているらしい。そして、奴隷を購入後の話として、奴隷紋を登録する必要がある。一般的には首輪にする事が多いが、実際にはなんでもいいらしい。受付や接待をさせるときには、目立たない場所に紋を刻む事も珍しくない。奴隷には、給金が発生する。また、給金の代わりに衣食住を保証する契約でも問題ないらしい。王国の法律で決められている事としては、大雑把に言えばそれだけだった。後は、奴隷を殺すのも犯罪なので、殺してしまったときには、自分が犯罪奴隷になってしまうとか、当然の事を説明された。
「何か質問はありますか？」「奴隷の給金はどの程度を考えればいいんだ？」「そうですね。仕事に寄って違ってきますが、月に銀貨数枚程度になると思います。」「そうか、衣食住を保証していれば、銀貨一枚でも大丈夫と言う事だな？」「はい。そうご理解頂ければ問題ないです。」「解った。」
「リン様。今日はどういった奴隷をお探しですか？」「まずは、受付業務が出来る人族の奴隷と獣人の奴隷を一人づつ。料理が出来る奴隷が必要だな。料理も人数が多くなるから、そういう経験があるといい。後は、館を2つ警護する奴隷が欲しい。」「解りました。少し質問してよろしいですか？」「あぁ」「ありがとうございます。受付はどういった事を行うのですか？」「そうだな。食堂で注文を受ける様な感じで考えてくれれば問題ない。簡単な計算が出来ればもっといい。」「了解しました。順番に、候補の奴隷を連れてきたほうが良いですか？」「そうだな。そうしてくれ」
暫く待つことになりそうだ。これが、ラノベの鉄板奴隷契約になるのかと思うと少し楽しみな気持ちになってきた。