【旧】チート能力を持った高校生の生き残りをかけた長く短い七日間

北きつね

反撃の狼煙

『夜の蝶』を出る頃には辺りは雰囲気がある暗さになっていた。宿は、途中重久フェナサリムが気を利かせて連泊する事を伝えてくれた。
宿に入ると、お金を渡して中に入る事が出来た。夕ご飯も、重久フェナサリムの事で食べてきた。この世界の料理も美味しいけど、ジャンク的な物が少ない。それに、日本人的には”米”が食べたい。味噌が欲しい。かつおだしが欲しい。決定的な事として醤油が欲しい。甘いものも絶望的に少ない。少し落ち着いたら、チートな資金力を活かして、それらの開発をしても良いのかもしれない。幸い協力者の中には料理が出来るだろう子が多い。立花とかの脅威が去ってからか、リスクヘッジができる状態になってからじゃないと出来ないだろうけどな。
あとどの位時間が残されているんだろう。アドラは、1460倍って言っていたよな。一日が、1460日になるんだよな。それが7日間だから10220日。どの辺りからの日数なのかわからないけど、今は約13年経っていると計算すると、4745日経過した事になる。残りは、5475日で残り15年の計算になる。15年かぁ意外と短いかもしれないな。ギルドの浸透を考えると、10年は必要だろうからな。
まずは領主に対する対応を考えないとな。
マヤが、宿からお湯を貰ってきて身体を拭いている。水でもいいが、お湯の方が気持ちよくなる。日本人に目覚めてからは、無性に風呂に入りたくなっている。日本に居る頃には、面倒だったが入れないと思うと途端に入りたくなってくる。タオルを受け取って、自分で背中や首筋をこすって居る。タオルは独特の匂いがするが嫌な感じはしない。肌触りは、使ったことはないがヘチマブラシを少し柔らかくした感じだと思う。食事や日用品にはまだまだ改良の余地がある。それがうまくできれば、資金的な事も解決するのではないか?
「リン。今日はどうするの?」「今日?もう寝るよ。」「そう....。」「どうしたんだ?」「ううん。なんでもないよ。今日も一緒に寝よ。」「あぁ」
すぐに抱きついてきた。「リン。これからも一緒だよ」「勿論だよ。」
マヤを抱きしめながら「おやすみ」軽いキスをした。それからゆっくりと目を閉じた。
夜中に目が醒めてしまった。隣で寝ているマヤを起こさないように寝床から出た。正直、熱川ルアリーナの話はありがたいと思った。先方にも打算が有るのだろうけど、僕に取っては、有っても無くても面倒な物である事には違いはないし、貴族や王族と喧嘩する気はないが向こうがちょっかい出してくるのなら対応を考えなければならないだろう。それに、全員と味方になる事は出来ないし、全員と敵になるつもりもない。そうなると、一人でも味方してくれそうな人が居た方がいいだろうし、重久フェナサリムがやろうとしている事に関しても、貴族や教会の協力は必要になってくるだろう。
そういえば、スキルはどうなっているんだろう?真命:リン・マノーラ(1)ジョブ:プログラマ体力:80魔力:80腕力:70敏捷性:50魅力:190(+250)魔法:外(2)スキル:(隠蔽)隠蔽(3)、言語理解(1)、(隠蔽)念話(1)ユニークスキル:(隠蔽)動物との会話(1)エクストラスキル:(隠蔽)万物鑑定見透す力(2)
隠蔽のレベルと万物鑑定見透す力のレベルがあがっている。今日一日で、鑑定しながら隠蔽をしていたからそれであがったんだろう。ジョブを直しておかないとな、プログラマから魔法技師とでもしておこう。
万物鑑定見透す力(2)”接触していなくても鑑定出来るようになる。"隠蔽(3)"鑑定スキルで隠蔽した事が見抜けなくなる"
地味に使いやすくなっている。鑑定は触っていなくても出来るのは便利になった。どのくらいの距離離れていても大丈夫なのかを調べる必要があるな。
1メルメートル程度離れて、マヤを鑑定してみた。しっかり、ステータスが表示された。部屋の端に寝ているマヤを部屋の端から鑑定をした、距離で3メル程度だろう。それでもしっかり鑑定された。もう少し離れていても大丈夫なのかもしれない。そう思って、宿の明り取りから、外を眺めた。夜が更けているからなのかひと通りはない。15メル程度離れている『夜の蝶』を鑑定してみた。建物も鑑定対象の様で、鑑定結果が表示された。この位離れていても大丈夫なら、立花達を探すのも苦労しないかもしれない。少し夜風は冷たいな。あまり部屋の温度を下げたくないし、マヤが体調崩したら申し訳ない。
鑑定をしていたら疲れた。魔力が少し減っているのが解る。遠距離の鑑定は距離に比例して魔力を使うようだ。手に触れていると魔力は使わなくなっているのは昨日確認している。使い所が難しくなりそうだけど、そんなに遠距離の鑑定は必要ないだろうから大丈夫だろう。
寝床のマヤの横に潜り込む。明日は、熱川ルアリーナのお兄さんに会うんだったよな。いい人だといいな。
◆◇◆◇◆◇◆◇
いつの間にか寝てしまっていたらしい。今日は、マヤの方が早く起きていたようだ。
「リン。起きたんだね。今日は昼にフェムの所に行けば良いんだよね?」「そうだね。外を出歩くのも領主の息子に会うと面倒だから、宿にいようと思うんだけどいいかな?」「いいよ。ねぇそれならいっその事、フェムの所に行って待ってない?」「ん?」「だって、行くんだよね?それに、相手は貴族様なんでしょ。だったら、待っていたほうが良くない?それに、あそこならフェムからリンの昔の話やスキルの事が話せるからね。」「僕の事を話している理由がわからないけど、スキルの確認が出来るのはいいな」少し考えるがデメリットが見つからない。「そうだな。フェムの所が大丈夫なら行って待っていようか。」「うん。」
確認したら、フェムが店先に出て準備をしていた。こっちに気がついたから、行っていいか?とジェスチャーしたら、OKの返事が来た。万が一があるので、宿屋を後一日延長しておいた。
『夜の蝶』に移動して、重久フェナサリムと親父さんに挨拶をした。ギルドやクラウンの事を親父さんに話をしたら概ね賛成だって話だった。場所を昨日の部屋に移して話を聞いた。食堂には今までもニグラ周辺の困りごとや魔物の素材・護衛なんかを探している人が声掛けをしていたらしい。ただ、いろんな酒場や食堂で勝手にやっていた上にそれを商売にしようと考える人が居なかった。まずは、重久フェナサリムが店の外に掲示板の様な物を作成して、尋ね人広告の様な感じで提示する事から始めるらしい。街の中の事は、韮山タシアナがスラムの孤児院に話をして手伝ってもらって、スラム街の人間では問題が起きそうな事を、松田フレットが対応する事になる。素材に関しては、善意の第三者に話をしなければならないが、中里サリーカが手伝う事になったという。話を聞いていて、素材に関しては、直接取り引きを行わせるか、一度中里サリーカが買い取って転売する形で良いのかを客に選ばせる方が自然でいいと思うと伝えた。
最初は店の常連とか顔見知りだけでやっていって、徐々に大きくしていけばいいと話している。親父さんもそれで客が増えれば食堂としても嬉しいと言う事だった。
そんな話をマヤは横で聞きながら何故かニコニコしていた。「ゴメン。マヤ。面白くなかった?」「ううん。話はよくわからなかったけど、楽しいよ」「!?」「だって.....(りんが格好いいなんて言えないよ。馬鹿。)」「ん?何?」「ううん。いいよ。イリメリにリンの昔の話を聞いているから気にしないで....ね」「あぁぁ」
マヤとひとみイリメリ和葉ミトナルが何やら話している。美女三人が揃っているから圧巻な雰囲気が醸し出している。少なくても、地球に居た時の僕なら絶対に近づかない場所だろうなと考えていた。
「ねぇリン。話し聞いているの?」「あっゴメン。」「マヤちゃんとイリメリとミルを見て何考えていたのかな??」茶化すが対人間スキル『スルー』をカンストしている僕は華麗にスルーした。
話を聞いていると、ひとみイリメリ和葉ミトナルは、重久フェナサリムの所に泊まっているようだった。そして、僕と同じなのか、この世界の食事は美味しいけど、ひと味足りないし、”米”と”味噌”と”醤油”が欲しいという意見は同じだった。女子は、お風呂も欲しいが最低でもシャワーが欲しいと切実に感じているみたいだ。魔道具で探してみたらしいが近いものは有ったらしいが金貨2枚と言う値段で手が出なかったらしい。
そんな話をしていたら、親父さんが重久フェナサリムを呼ぶ声がした。時間的にはかなり早いが、熱川ルアリーナがお兄さんを連れてきた。
ドアがノックされて、近くに居たマヤがドアを開けた。そこには、熱川ルアリーナと20歳を少し越えたくらいの栗毛短くして、見るからに高そうな服を来た青年が立っていた。
「やあやあやあ。君がリン君だね。よろしく。」いきなり初対面であるはずの僕に握手を求めてきた。出された手をぐっと握られて、強い力で引っ張られたそして、耳元で「(僕のルアリーナを誑かそうとしてもダメだからね。可愛い妹は誰にやらないからな)」「(!?!?!)」「ハッハハ。ルナの言っていた通りだね。早速本題にはいる前に、これだけ美人が揃っているのなら挨拶をしておこう。」「僕は、ハーコムレイ・フォン・ミヤナック。辺境伯ミヤナックの次期後継者だよ。でも、ここでは貴族の身分よりも、可愛い可愛い可愛い可愛い可愛いルナのお兄ちゃんとおぼえてくれればいいよ。僕の事は、ハーレイと気楽に呼んでいいいよ。そこの男以外は!」睨まれてしまった。それにしても、熱川ルアリーナの実家が大物だったのにびっくりした。辺境伯と言うからには伯爵だろうし、たしかミヤナックは建国の5英雄の一人だったはずだ。ただのシスコンではないらしい。「ハー兄様。私の事はこの際おいておきます。後でじっくり文句を言わせていただきます。それよりは、リン君が持っている書類に関しての話を先にしませんか?」「あぁそうだった。今日も、ルナの可愛さに心を奪われてしまったよ。」
マヤがそっと耳打ちした「(ねぇリン。この人大丈夫なのかな?)」「そこの可憐な少女。私は至って正常だよ。」「(ヤバ。聞こえていたみたい)」「ハー兄様!」
「あぁゴメン。ゴメン。リンとか言う害虫は君で間違いないんだよな?」「ハー兄様!」「害虫リンでもなんでも良いですから、話をさせてもらっていいですか?」「うむ。良かろう。」もう無視して話を進める事にした。
まずは、簡単に自己紹介をしたが華麗に無視されて、その後も害虫や羽虫と呼ばれ続けた。大丈夫かこの人?っと思ったが、さすがは辺境伯の後継になった人だ。話はしっかり聞いてくれるようだ、熱川ルアリーナに関わりがなければと言う条件がつくが....。
「さて、そこの羽虫リンが持っている書類に関しては解った。マヤ君達の希望も解った。大事な事を幾つか確認させてもらう」「はい。」「まずは、その書類はどうして入手したんだ?入手経路がはっきりしない物を公開しても、僕達が恥をかいてしまう可能性がある。」当然の指摘だ、これに関しては、書類の初めにニノサが説明している。領内の協力者が、盗み出した書類をまとめてあるとの事だった。領主の印も入っているから偽造を疑われる事もないだろう。入手経路が問題になるのかと思ったが、それは大丈夫だった。”ニノサ=フリークス”を、ハーレイシスコンが知っていた。そして、僕を疑っていなかった理由が、ニノサの子供だったからと言う事だ。
「書類の入手に関しては解った。次は、書類の内容に関して、蛆虫リンはどの程度把握しているんだ?」正直に答えた。中を見たが、全体的に領主が何かしている事は把握出来るが、それ以上では無くよくわからない。ただ、ニノサが信頼できる人に渡せと書いてある事からそれに従う事にした。そして、マヤの安全が確保出来る方法として、信頼出来る人に渡して公表してもらうのが良いだろうと考えている。
「ハッハハハ・・・。あぁ面倒だ。リン君とか言ったな。」「はい?」「君はよほどの大馬鹿か、策士だろうな。」「え?」「君は、僕を信頼しているのか?」「あぁそれは少し違います。確かに、今の短い時間で、ミヤナック様がおかしな事をしない人だと言う事はわかりますが、信頼しているかと聞かれたら、違いますと答えます。」「それは何故だい?信頼している人に書類を託したいと思っているんだろう?」「はい。だから、ミヤナック様に渡そうと考えています。」「君。矛盾していないか?」「僕は、ミヤナック様の妹である。ルナの事を信頼しています。ルナとも昨日会ったばかりですが、ルナの事をしっている。イリメリやフェムが、ルナを信頼しているから、僕も安心出来るのです。」「ほぉそれは面白いな。それに、君達は何やら面白そうな事を始めるらしいな。ルナに昨晩話を聞いたよ。その話はまた後日ゆっくりしよう。」「はい。お願いします。」
「解った。書類を預かろう。そして、可能な限り君達の意思にそうような形にしてあげよう。」「ありがとうございます」「さて、それでは一番大事な質問をする。」「はい?」「君は、僕の可愛いルナとどういった関係なんだ?」「はい?」斜め上を行く質問だ、関係も何も、熱川ルアリーナが説明していないからどこまで話して良いのか解らない。「言い方を変えよう。僕の可愛いルナと付き合っているのか?」「!!」「はっきりしたまえ」「ミヤナック様。僕の事を、ルナからどうやって聞いているのかわかりませんが、僕はそのつもりはありません。」「そうか、それは本当だな。」「はい。」「今は、それを信じよう。今後、僕の可愛いルナに色目を使ったら、目を潰す位じゃすまないからな。」我慢の限界を越えたのか、熱川ルアリーナが、ハーコムレイ・フォン・ミヤナックの頭を叩いたはたいた。「ルナ。なにするんだ。僕は、そこの毒虫リンと大事な話をしているんだよ。」「ハー兄様。いい加減にしてください。リン君が何も言わないから黙っていましたが....。今後、そんな事を言うようなら、もうお兄様と呼びません。それで良いですか?」「ダメだ。ルナ。しょうがないな。リン=フリークス。妹の事は別にして僕に君のやりたい事を協力させて欲しい。それが、僕達が目指す事にも関連していそうだからな。」
そう言って、ミヤナックは僕に深々と頭を下げた。貴族が頭を下げるとは思っていなかったのでそれに驚いた。僕は、すぐに「ミヤナック様。僕がお願いしている事です。頭を上げて下さい。そして、これをよろしくお願いします。」
ミヤナックは頭を上げて、ニヤリと笑いながら、僕から書類を受け取った。そして、パラパラとページを眺めていた。「こりゃすごいな。ニノサに感謝しなきゃならないな。」「そんなにすごいのですか?」「あぁこれがあれば、アゾレムだけじゃなくて、ウルコスにまでは届かないが、あいつらの資金源の幾つかを潰せるかもしれないからな」「役立つ物で良かったです。」「あぁ本当にこれを借りて良いんだな?」「はい。僕が持っていてもしょうがないです。」「わかった。ハーコムレイ・フォン・ミヤナックがたしかに預かった。何か困った事があったら僕を頼ってくるといい。もちろん。ルナの事以外だがな」この人はどこまでもぶれない人のようだ。それが好感が持てる。貴族との付き合いなんてしたくなかったが、こういう人物なら伝手を持っておくのはいいだろう。「ありがとうございます。僕の事より、フェムやイリメリ達の事を助けてあげて欲しいです。」「解った、それに関しては、安心していい。ルナも関わるのだから、僕としては便宜を図る位は容易い事だからな。」
昼からの約束が思った以上に早くになってしまった。ミヤナックは、書類の精査をしたいからと言って早々に部屋を出ていった、部屋から出る時に、熱川ルアリーナを連れて行くと言う話で一悶着あったが、熱川ルアリーナの一言で撤退していった。
「リン君。ハー兄様がゴメンなさい。」「いいよ。ルナを大事にしているだなんだろうからね。」
昼飯がまだだった事もあり、重久フェナサリムが食事を持ってきてくれた。きっちり人数分の料金を僕が払った。その時の、重久フェナサリムの言い分は『サリーカから聞いたわよ。リン君大金持ちらしいね。食事代位ならおごってくれるよね?』だった、そしてこの食堂で一番高い料理を人数分奢らされた。まぁ必要経費だろう。それに、食事も実際に美味しかったから文句は少ししかなかった。
食事も終わって、今後の事を話し合う事にした。そうして、今日もいろいろ横道に逸れながらギルドに関しての話をしていく。気がついたら、夕方になっていて、そのまま『夜の蝶』で夕飯を食べて宿に戻った。

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