【旧】チート能力を持った高校生の生き残りをかけた長く短い七日間

北きつね

ファーストコンタクト

食堂に入ると、店主が近づいてきた。「おすすめ2つ」「おぉエールはつけるか?」「エールはいらないので、何か酒精が入っていない物を2つ下さい。」「はいよ。二人分で2,500レインだ。」銅貨25枚。貨幣価値は解ったが相場が解らない。言われた金額を払った。
「おぉ座って待ってろ」店の奥で女性が三人何か話している。一人は重久である事から、残り二人も転生者である可能性が高い。三人の話し声が聞こえてくる。『あの人・・・・エー・・・酒精がない・・・・言っていたよ。』とぎれとぎれだけど話はわかる『あっ・・人・・・パシリカの時・・・確認したけど違ってた』重久が否定した。ジョブまでは覚えていなかったようだが、真命が違っていたから、転生者ではないと判断したらしい。やはり、だれかを探していたんだろう。
「おぃフェム。これ持っていってくれ」「はぁ~い」重久は、店長から料理を受け取って、僕達のテーブルに持ってきた。
「やぁフェム。食べに来たよ」「あっありがとう。覚えていてくれたんだね」「もちろん。こっちは、妹のマヤ。マヤ。こちらは、フェナサリムさん。ここの看板娘らしい。」「「よろしく」」二人で挨拶を交わしてる。運んできた料理が美味しそうに湯気を出している。野菜と肉を焼いた物と細かく刻んだ野菜スープと硬い黒パンのセットだった。価値の鑑定ができるかなと思い鑑定をしてみたが、一個一個の食材やお皿の価値になってしまってよくわからない事になってしまった。「ねぇリン。すごくきれいな人だね。どこで知り合ったの?」「ん?何?ゴメン聞いてなかった。」「むぅ~。フェナサリムさんとはどこで知り合ったの?」「あぁパシリカの時に前に居た人で、昨日この店に来た事を覚えていて話しかけてくれたんだよ。」「へぇそうなんだぁリン。ああいう人が好きなの?」「何、嫉妬しているんだ。そんなんじゃないよ。」「ねぇ本当に妹?」いつの間にか、重久は空いている椅子に腰掛けていた。「妹だよ。それ以外に見えるの?」「どう見ても恋人同士にしかみえないよ。」マヤはなぜか嬉しそうに下を向いていた
「暫くはニグラにいるの?」「どうかな。明日には戻ろうとは思っているけどな」「そうなんだ。せっかく、マヤちゃんと友達になれると思ったのに....」「いいよ。友達になろ!」そう言って、マヤは手を差し出した。『あっ』と思ったが、顔に出さないでやり過ごせた。重久はマヤと握手をしてステータスを確認したんだろう。手を離すと「うん。これからよろしくね」と言葉を交わして、重久は二人の所に戻っていった。マヤが転生者かどうかを話しているんだろう。一人は重久で間違いはない。もう二人は誰だろう?ひとみの可能性は高い。そうなると、もう一人はひとみの友達だろう。今はそれよりも、食事をして宿に帰ろう。食事をしながら、念話をマヤに繋げた
『!!!リン。』『そうだよ。そのまま食事しながら聞いて』『うん』『ポルタに帰るのは当然なんだけど、その前に確認しなきゃならない事が出てきそうなんだよ。宿で後で説明するな』『うん』『それと、今日から寝る所は別々な。』
「えぇぇぇぇ!!!!!」
念話が切れる。どちらかが声を出してしまうと切れるのかもしれない。「マヤ。落ち着いて座って。」「ヤダ。絶対にヤダ。ヤダったらヤダ」「マヤ....。」「ヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダ。ヤダったらヤダ」「そんなに。」「うん。」「・・・・。解った今日は昨日と同じにしよう。次の宿からな。」「・・・・(ヤダ)」「解ったよ。」「うん。」
マヤをなだめながら食事を済ませて、宿に戻った。
宿の部屋に入って、念話を繋げた。『ねぇリン。念話する必要があるの?』『別にないけど、慣れておこうと思ってね』『ふ~ん。そうなんだ。』『マヤ。頭の中で違う事考えてみて』『うん。・・・・・・・。』『考えた?』『うん。そうか、考えただけじゃ伝わらないんだ。伝えようと思わないとダメなんだね。』『へぇリン。やってみて。』『マヤ。可愛いよ。(大好きだよ。マヤ。)』『・・・・リン。』『何?伝わったのなら言ってみて・・・。』『”マヤ。可愛いよ”って聞こえたよ。』『そうか、それだけ?』『うん。それだけ。えぇぇぇ何考えたの?教えてよ。』『ダメ。念話使っていると疲れるね』『そう?私は大丈夫だよ。』
はっ自分のステータスを確認した。魔力が20/80となっていた。念話は魔力を使うんだ。マヤは魔力が膨大にあるから、同じだけ使っても疲れなかったんだ。念話を切った「マヤは、魔力が多いから疲れなかったんだね。」「へぇ。」
ステータスの確認や魔法の確認もしたいとはおもうけど、まずはマジックポーチの確認をしないとこれからの予定も立てられない。マヤにマジックポーチの整理をするから眠かったら寝ていいよとだけ告げた。僕の背中から抱きつきながら、僕の作業を見るようだった。
マジックポーチをおいて、手を入れた。『万物鑑定見透す力でマジックポーチをスキャンしますか?』!!!もちろん実行をさせた。暫く待っていると、スキャンが終わったのか一覧表が出てきた。
・手紙1個・書類1個・コボルト魔核74個・魔核999個・魔核999個・白金貨15枚・大金貨60枚・金貨685枚・銀貨110枚・銅貨85枚・黒パン(黴)5個・(腐敗)999個・(腐敗)999個・初心者の弓2個・木の矢979個・石の矢999個・木剣1個・木盾1個・鉄剣1個・鉄盾1個・羊皮紙10個 etc見きれない位並んでいる。でも、これで整理しなくて済みそうだ。カビた黒パンと何かが腐った物は早急に捨てたいけど、どこに捨てたら良いんだ.....。マジックポーチの中は少しとはいえ時間が進む事を忘れていたんだろうな。それで生物を入れて、腐らせた。と言うところだろうな。それにしても一財産あるな。書類も手紙も単位が個になっているのは愛嬌だろうな。それにしても、日本語なのか?それとも、こっちの言葉なのか?自動翻訳されているって事も考えられる。考えるのも面倒だし自分が見れればいいか、どうせ自分しか使えない袋なんだからな。
「マヤ。終わったよ....マヤ。」抱きついたまま眠ってしまったようだ。身体も拭かないで寝てしまったマヤを起こさないように寝床に移動させた。
こっちの両親のおかげでひと財産ある。暫くは何するのにも苦労しないだろう。やっとどうしたら良いのかを考える事が出来るが、情報が少なすぎる。上位隠蔽とでも呼べば良いのか、真命を改竄出来るスキルのお陰で他の転生者よりは少し優位に進められそうだが、基本スペックが低い事や、使いみちが解らないスキルが多い。まずは、スキルの確認と転生者の確認をしないとダメだろうな。
さて、僕は地球に帰りたいのだろうか?答えはノーだ。未練は何もない。強いて言うのなら、来月出るイ○スの最新版をやれない事と来年から始まる銀○伝のアニメを見れない事位だ。異世界と言うか、こっちの世界で生きていく事を選びたい。そのためにはどうしたらいいんだろう。アドラの出した条件は抜け道がありそうだった。バトルロワイヤル的な感じに最初は捉えたが、僕が”異世界に残る”と宣言する事で大分見え方が違ってくる。全部で21人の転生者が居る。全員が今まで生き残って、パシリカを受けたと仮定して、残りを”有名になる”と言う曖昧な基準で戦う事になる。王族にでもなって大陸中に名前を広めるのが一番だが残りの年数から考えて非現実的だ。それなら、地道に活動してもそれほど違わないのではないか?いや違うな。一人で出来る事はやっぱり少ない。それに情報伝達方法が発達していない世界では地方の有名人ではたかがしれている。
まずは仲間を増やすのが良いだろうか?ゲートに入る前の感じでは、和葉は仲間になってくれるだろう、ひとみは微妙だがしっかり白い部屋の中の態度を謝って協力して欲しい旨を言えば解ってくれるとおもう。ひとみと和解できれば、ひとみの友達も仲間に出来るかもしれない。それで確か10人立花の取巻きもたしか9人で立花を入れて10人。五分の人数に持っていける。後は、茂手木を率い入れられれば過半数を取れる。対峙するわけではなく”有名になる”だから戦う方法はあるだろう。
基本方針は概ねそれで問題はないとおもうが、どこから手をつければ良いんだろう.....。重久に打ち明けるにしてもタイミングを逃してしまった感じがある。この宿屋でひとみや和葉を探すこともできそうだが、明日になれば、領主のバカ息子達がニグラに到着してしまうだろう。こんな、安宿にあいつが泊まるとは思えないが、ウーレンやサラナは泊まるかもしれない。まだ誰が味方か解らない段階では接触しないほうがいいだろう。ひとみや和葉の可能性もあるが...。
ごちゃごちゃ考えすぎた。蛇が出るかわからないけど、巣穴に手を突っ込んでみようか?
今わかっているのは、食堂の娘が重久だって事と、そこに二人転生者らしき人間が居ると言う事だった。それなら、まずはこの二人を確認して話をするしかないだろう。その時にこちらが示すカードはやはり、僕が"神崎凛”である事だけだろうな。どうやって知らせるか?改竄を戻すのは得策ではない。と思う。
手紙を渡して............どうやって?
”コン・コン・コン”ドアをノックする音がした。マジックポーチから鉄剣を取り出した。
ドアの下から羊皮紙が差し入れられた。警戒しながら、羊皮紙を受け取る。ドアの前の人間は、少し経ってから立ち去ったようだ。
羊皮紙に書かれていた"日本語”を読んだ。
”これが読めて、話が出来るのなら、『夜の蝶』に来て。                      鵜木和葉                      重久真由                      千葉美久”


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