【旧】チート能力を持った高校生の生き残りをかけた長く短い七日間

北きつね

幕間 静川瞳

私は死んでしまったようだ。立花君達と凛君のいざこざの為にバスの出発が予定よりも遅れてしまった事が影響しているのか解らないが、バスが事故に合ってしまったらしい。先生に理由を説明しないとならなかった。私がこんな目に合わないとならないの?凛君とは、家が隣同士で幼馴染だったけど、中学までは違う学校だったし、高校に入ってから先生に言われて、気にかけているだけなんだけどな。確かに、凛君は同級生とは思えない落ち着いた雰囲気がある。弟さんやご両親が死んでしまった事も関係しているだろうけど、どこか私達とは違う雰囲気がある。父親が新聞記者だった事もあっていろんな事を知っているのも確かだし、母親もタウン誌で記事を書いていたからいろんな事が詳しいのも解る。中学の時に、弟をプールの事故で亡くした時には声もかけられない位憔悴していた。それから変わってしまったようだった。以前は、話しかければ答えてくれたけど、今は周りのすべてを遮断しているように思える。
そんな凛君が私の横で寝ている。気を失っているが正しいのかもしれない。私が起きたときには、数名しか目をさましていなかった。周りの子を起こそうと思っても、何か透明の壁の様な物があって移動する事が出来ない。凛君の所には壁が無いようで移動する事が出来た。一人だと心細いし、凛君が何か知っているかもしれないから、起こすことにした
「凛君。凛君。起きて、ねぇ起きて」すぐに凛君は起きてくれた。「ひとみ?ここはどこ?僕バスに乗っていたよね?」やっぱり、凛君も知らないようだった。でも....「うん。私も今起きて、隣に寝ていた凛君を起こして聞こうと思っていたの?」凛君の答えを待っていると、頭の中に声が響いてきた
アドラと言う神を名乗った子供だった。立花君が力でなんとかしようとしたがダメだったみたいだ。
アドラが今の状況を説明してくれた。理解できない事も多かったが、”まだ死んでいない”事がわかってホッとした。70名近くはすぐに生き返る事が出来ると聞いて安心した。そして、アドラが柏手を売った瞬間に、甲高い音が部屋を支配した。音が耳に届くと、目をつぶってしまった。これで助かったんだと思った安堵感が心を支配した。
目を開けた時に、同じ部屋にまだ私が残されている事実。立花君が何か喚いている。心が何かを拒否している。私は生き返られないの?死んじゃうの?ママやパパやおじいちゃん・おばあちゃんにも会えないの?泣きそうになってしまった「私も?」と呟くしかできなかった。ダメ。泣いたらダメ。私は委員長で皆に頼りにされている。私がなんとかしなくちゃならないんだから。私が残されたのは、皆を導くため。きっとそうに違いない。周りの壁も消えたようだ。残された友達も私の周りに集まってくる。不安を押し殺すような表情で皆で手を合わせている。泣きそうな顔が沢山ある。私も今すぐにでも泣きたい。
アドラは説明を続けた。私達の身体は損傷が激しくてすぐに生き返らせる事が出来ないらしい。そして、実際には、3人が死ぬ必要があるとの事だった。
その事実を告げられたとき、立花君がヒステリックに喚いた。「そんなの、うすのろとそれをかばう女とだれか一人を決めればいいだろう?なぁそう思うだろう?」うすのろは、凛君の事を言っているのだろう。かばう女って誰?もう一人は茂手木と呼ばれた男子が死ねと言われている。かわいそうにと思っていた。周りの友達が、私から少し距離を取っている。そして、男子の視線も私に集まっている。かばう女って私の事?私は凛君を特別視したりかばった事はないよ。そんな思いが湧いてくる。死にたくない。まだ沢山やりたい事がある。死にたくない。「なんで私が死ななきゃならないの?凛君の事は先生に頼むて言われただけで別に好きで気にしているわけじゃないし、少しでも内申点を上げたくてしている事なんだから、なんで私が死ななきゃならないの?凛君でいいでしょ!あっ....」
なんで私が死にたくない。言ってしまった。言ってしまった。私は悪くない。
みんなの視線が私に集中しているのが解る。近くに居た凛君が泣きそうな顔で私を見てくる。友達も私の顔と凛君を見比べている。
「ひとみ」そう凛君に呼び掛けられたが、何も答える事が出来なかった。
静寂を破るように、アドラが話し始めた。異世界と呼ばれる地球とは違う場所で過ごして、その間で順位を決める。そえで一番になった人が死んでいく人を選ぶらしい。異世界のルールやスキルに関して説明してくれていた。私達はこれからそこで過ごして一番にならないと確実に生き残れない事が解った。立花君達や凛君が一番になったら私は死ぬことになる。それは嫌だ。なんとか生き残って地球に帰る。
真由が質問をしている。さっきやり玉に上がった茂手木君も質問をしている。最後に質問したのは、最近転校してきた、鵜木さんだったと思う。彼女もご両親を事故で亡くしていて、育ての親も既に他界しているらしい。そんな彼女が一番最初にアドラの所に行って球体に触っている。彼女の身体を青い光が包んでいる。あれが力を得た証拠なんだろうか?
真由が近くに来て、「ひとみ。凛君に謝ったほうがいいよ」「・・・だって」「ひとみがあんな事を言う位追い詰められていたのは解るし、凛君もきっと解ってくれるよ」「・・・」「それに敵は作らないほうがいいよ。ね。ひとみも凛君の事が嫌いじゃないんでしょ。」「・・・・。うん。」「ほら、早く。謝るなら早いほうがいいよ。ね。」「・・・うん。」あまり気乗りはしなかったが確かに言われれば敵は少ないほうがいいに決まっている。それに、凛君は嫌いじゃない。気になったのは、真由が『ひとみ”も”凛君の事が』って行っていたことだが、言葉の綾なんだろうと思う事にした。
「凛君」そう声をかけるのが夜兎だった。「いいよ。もう僕に構わないで、今までありがとう。これからは、もう気にしなくていいからね」「(え”)」そんな目で私を見ないで、「凛君聞いて。ねぇ」絞り出すように話しかけたが、振り向いて貰えなかった。確かに自業自得なのは解る。もしかしたら、私が凛君に依存していたのかもしれない。そう思った時、全身に悪寒が走った。失わないと思っていたものを失ってしまった悲しみが全身を駆け巡った。立ち上がれない。どうしよう。
「ひとみ。」真由が近づいてきて、支えてくれた。なにも聞かないで居てくれるのが嬉しかった。「スキルを取ろう。向こうで凛君に二人で謝ろう。そして、凛君を助けて許してもらおう。」「・・・・うん。」真由と二人でアドラの所に行って、球体に触れた。赤い光に包まれて、光が収まると、スキルが見られるようになっていた。ジョブ:炎術師体力:180魔力:320腕力:90敏捷性:120魅力:60魔法:赤魔法(1)スキル:隠蔽、詠唱破棄ユニークスキル:属性無視
真由もスキルを取得している。真由は、黒色の光が発行して収まっていった。触れて、ステータスオープンと唱えると同じような表示が出て来る。ジョブ:氷術師体力:180魔力:320腕力:90敏捷性:120魅力:60魔法:黒魔法(1)スキル:隠蔽、詠唱破棄ユニークスキル:属性無視
二人して顔を見合わせた。数値やスキルが炎と氷が違って、魔法が赤と黒の違いがあるだけで他は全く同じになっている。これなら、異世界で真由を探す事も出来るだろう。本当は、凛君のステータスも見たいけど、見せてくれる雰囲気ではない。真由と話をして、隠蔽を隠蔽して、属性無視と詠唱破棄も隠蔽しておく。茂手木君が言っていたように何があるかわからないから、隠蔽出来るのなら隠蔽しておいたほうがいいだろう。それから、異世界で会うための方法を二人で考えていた。私は、ラノベを読まないけど、真由がアニメやマンガの知識がある。それで、真由の作戦に従うことにした。異世界で”白い部屋”での事を思い出したら、あるか解らないが、右腕に私は黒色の布を真由は赤い布を巻くことにする。そして、出来るなら。思い出した場所から一番近い宿屋にできるだけ滞在する。それから、二人で凛君を探すことにする。
二人で話している最中に、鵜木さんが凛君の手を引っ張って異世界に行ってしまった。慌てて、私と真由も一緒に異世界に向かった。

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