【旧】魔法の世界でプログラム

北きつね

アインス迷宮-攻略後

--- ナーテ Side ---にいちゃん達と、アインス迷宮に来たのだけど、以前のように攻略に戸惑う事はなかった。にいちゃんが魔法陣に魔力を注入する事で終わりだった。
緊張した面持ちだった、ディルク達も一安心だろうと思っていたら、やはりにいちゃんだ。おいら達を置き去りにして、管理室の物色を始めた。まずは、テディに連絡して、ノース迷宮と繋いだ。にいちゃんが言うには、ノース迷宮で全部を管理できるようにしたほうが楽になると言うことだ。
今までの迷宮と違って、この迷宮の管理室には、休憩所が存在しない。その為、管理室でにいちゃんが操作しているのを、ヒルダ姉ちゃんもフルールねえちゃんも、ディルク達は唖然として何かをいいかけているが、見つめるだけになっている。
「よし。生き返った!」
にいちゃんが、動かしていた手を止めた。壁に情報が表示され始める。
階層は、全部で51階層になっていて、最初の5階層は、元々はショップや休憩所になっていて、魔法陣で好きな階に移動できるようになっているらしい。それぞれの階も、魔力が充填され次第生き返っていくだろう。何に使えるか解らないので、とりあえずは、このままにしておくと言っていた。
「俺は、一旦ノース街に戻ってくるけど、どうする?」「妾は、ここに残る。ノース街に行ってもやることがないからな。すぐに、次のツヴァイ迷宮に向かうのじゃろ?」「そのつもりだよ。それで、フルールどうする?街を作るのならここでもいいけど?」「う~ん。全部を見てからでもいいかえ?」「いいよ。ここは、周りを森に囲まれているし、街道からも離れているから候補としてはいいのだけどな。迷宮が少し、妾達向きじゃないかもしれないからな」「そう?なんなら、迷宮を作り直すよ?」「そうじゃな。全部見て、環境がここよりいいところがなかったら、その時には、主様に頼る事にする」
「アルノルト様。私も、残りますわ」「そう?」「えぇ戻ったら出てくるまでに時間がかかりそうですからね」「たしかにな、クリスに掴まったら、出てこられなくなる可能性もあるだろうからな」
「にいちゃん。おいらは、着いていくよ」「そうだな。誰かは付いてきてほしかったからな」
フルールとエステルは、残ることになって、ヒルダもここに残るという事だ。ナーテは、食料とかの調達をしてくる事になった。
「それで、ディルク達はどうするの?」「そうだな。儀式をしている時間はなさそうだから・・・な。ディルクはどうしたい?」
「はい!できれば、このまま一緒に居させて下さい」「う~ん。俺としては、ノース街に連れて行って、屋敷で待っていて貰うのがいいのだけどな」「え?戻るってノース街に戻るのですか?」「そうだよ?」「どうやってですか?」「あぁそうか・・・そうだ、さっきここに来た時みたいに魔法で門をつくるから、それを通れば着くよ」「え?それなら、ノース街に行きたいです」「了解。暫く、俺達は戻らないけど、屋敷に居る物にお願いはするから安心していいよ」「はい!よろしくお願いします」
にいちゃんが、ゲートを起動した。魔法陣が出来上がって、門が出現した。
--- フルール Side ---「フルール。アルノルト様は行きましたね?」「えぇそれで?私に聞きたい事とは?」「えぇダークエルフの姫君であった貴女なら知っていると思うのだけれど、”聖獣”と”精霊神”について教えてくれない?」
ヒルダから、少し聞きたい事があると言われていた。主様が、一旦ノース街に変えるタイミングで残って話をする事にしたのだ。
「”聖獣”と”精霊神”ですか?」「えぇそうよ。何か知っている・・・ですよね?」「・・・・なぜ、そう思うのですか?」「だって、エステルは、妖精族だと言っているけど、精霊でしょ?」「なっ!」「え?なんで?」「アルノルト様もお気づきですよ。勿論、ナーテもね」
そう、たしかにエステルは、妖精族ではなく、精霊に該当する。
「別に、それでなにか変わる事はないのだけれども、教えてほしいのは、死んだ人間が精霊になれるかどうかという事なの?」「どういう事でしょうか?」
ヒルダは、言葉を選びながらなのか、ゆっくりとした口調で、説明を始めた。妾が知っている事もあったが、殆どが知らない事だった。その旨を正直に伝えた。しかし、一つ気になった事があるのも事実だ。妾達が知っている、精霊神様とは違うという事だ。それも、ヒルダに伝えた。そして、エステルは、その精霊神様から妾に着いていくように言われた精霊だという事も正直に説明した。その上で、妾はその時に一度だけしか、精霊神様にお会いしていない事や、姿を見たわけではなく、言葉を交わしただけだと言うこと・・・・
「う~ん。それじゃ、もし、僕の想像が当たっていると・・・精霊神同士で・・・・」「どうじゃろうな。もし、そうなら、妾が、アリーダ様?の陣営になる、主様の所にいられるとは思えない」「そうだね。それにしても、情報不足だね」「あぁそうじゃな」「ねぇエステルも何か知っていたら教えてよ」「・・・なぁヒルダ。お前、”僕”って言っていたけど、男なのか?」
なんとも場違いなエステルの言葉に、妾とヒルダは顔を合わせて笑ってしまった。
「エステル。ヒルダは、主様の前以外では、”僕”と言う事が多いのじゃよ」「そうなの!!」「エステル。私は、りっぱな女の子ですよ。そりゃぁまだおっぱいは小さいですけど・・・これから・・・ううん。多分・・・きっと・・・」
ヒルダは、何やら自分で地雷を置いて、自分で踏み抜いてしまったようだ。
それから、主様が戻ってくるまで他愛もない話をして時間を過ごした。時折、主様が設定した迷宮装置が、”ビー”と音を出したが、最初の何回かは、ヒルダが主様やテディに聞いていたが、ノース街から確認して貰ったら、問題ないという事だ。テディの説明では、各階層の魔力充填が終わった知らせだと言っていた。
これから、地形が調整されて、川や草木が生えたり、鉱物が生成されたり、魔物が徘徊するようになるという事だ。今は、ノース街の余剰を回しているが、この迷宮も利用しようとしたら、やはり街が必要なのだろう・・・。
「なぁヒルダ。少し階層を見に行きたいのじゃが、付き合ってくれぬか?」「うん。いいよ。僕も見に行きたいと思っていた所だからね。でも、危ないと思ったら、すぐに戻ってこようね」「主様も居ないし、ナーテも居ないからな」「そうだね」
先程、主様が設定に使っていた場所に行くと、各階層の説明が書かれている物が映っていた。それを、二人で見てから、15階層に行く事にした。ここは魔物もでてこない場所で、草原に川と森がると書かれていた。全部が生き返っているとは思えないが、それでも、見に行ってみる事にした。
--- アルノルト Side ---アインス迷宮の起動を確認してから、コンラートとクリスに連絡を入れる。ディルク達をこのままノース街につれていく為の交渉だが、思った以上に簡単に終わった。ディルク達は、”元々”王国には存在しない子どもたちなので、ノース街に流れ着いた難民扱いにしてしまう事になった。コンラートには、屋敷に住まわせて、俺が帰ってきたら、奴隷商につれていく事にした旨を伝える。
ディルク達にも、屋敷の中はある程度自由にしてもいいが、外に出るのだけは暫く我慢してもらった、そのかわり、ナーテにお願いして、ゴーレム隊で教えるのが上手な隊員を数名派遣してもらって、ゴーレムの操縦方法を訓練してもらう事になった。
その後、コンラートに執務状況の説明を受けた。農業は順調だが、林業への理解が難しいようだ。森も適度に伐採して行かないと、代謝が出来ない事を説明していかないとならない。エルフ族は、そのあたりは解っていて、ある程度の間伐はしてくれている。問題は、”森は自然のままで恵みをもたらす”と言って聞かない人間の方だ。自然は自然のままでと言っているが、自分たちは街に住んで、魔法や自然以外の恩恵を受けている。そんな団体が、ノース大森林の間伐や亜人への貸し与えに反対意見を上げているらしい。
正直、無視して放り出したい気持ちだ。毎日の様に、屋敷に押しかけては、俺に合わせろと言っているらしい。
面倒この上ない。金で解決できるのなら、さっさと渡して終わりにしたい気持ちだったが、コンラートに反対された。この手の団体は、”森林を守る会”だけではないので、一度”金”を出してしまうと、他の団体が寄ってくると言っている。
徹底的に無視するか、話を聞いて追い返すかしかないと言っている。面倒なので、徹底的に無視する事にして、ノース街の宿屋には、ブラックリストとして、”会”のメンバーや抗議に訪れた者達を泊めないように”お願い”をする事にした。次に、クリスの所に移動して、北門でブラックリストに乗った者は通さないように依頼した。
これだけの事で、騒ぎが収まるとは思わないが、何も対策しないで居るよりはいいだろう。
クリスからは、教会との話し合いは続けているから、結論はもう少し待って欲しいと言われた。その足で、ギルの所に顔をだして、”森林を守る会”の事を調べてもらう事にした。基盤や後ろ盾だけではなく、資金源も合わせて、調べてもらう事にするつもりだ。
「なぁアル」「ん?」「それなら、カルラ達に頼めばいいと思うぞ?」「カルラ・・・・あぁマナベ商会・・・・。そうか、もともと・・・」「お前、忘れていたな!」「いや、覚えていたけど、思い出さなかっただけだ」「・・・ん。世間は、それを、忘れていたと言わないか?まぁいい。マナベ商会の王都支部?本部?に、顔を出して、依頼すればいいとおもうぞ」「あぁそうだな。ありがとう。ギル!」「なぁにいいさ。それよりも、アル。何か新しい調味料やゲームはないか?」
「・・・調味料は、少し待てよ。すぐに作られない。ゲームなら・・・そうだ!この前頼んだ、サイコロは出来たか?」「あぁ1~6の数字を書いた物だろう?これでどうやって遊ぶ?」「ん?いろいろ遊べるぞ。1~6だけじゃなくて、1~20とか、いろいろ作って欲しいけど、今は1~6だけでいい・・・そうだな。”双六”って遊びだけどな」
ギルに、紙を持ってきてもらって、双六の説明をした。これなら、盤面を作れば、いくらでも遊べる。本当は、チンチロリンを教えたかったが、ルール説明が面倒だし、今度にする!今は、カルラに会いに行かないとならない。
「ギル。これで大丈夫か?」「あぁありがとう。いつもと同じようにしておくな!」「了解!」
ギルの所をでて、大通りに戻って、クリスから教えられた場所に向かった。元々、男爵家だったらしいが、立派でもないけど、貧素でもないそんな感じの屋敷だ。
看板が掲げられているが、”マナベ商会”とだけ書かれている。
なんとなく、呼び鈴を押してしまった。
「はぁ~い。マナベ商会へようこそ!」
でてきたのは、何度か見たことがある女の子だ。
「え?」「あ・・・カルラは居る?」
女の子は、俺にすぐに気がついて、来るとは思っていなかったのだろう、軽いパニックからすぐに復帰した
「あ・・・え・・・あっはい。いらっしゃいます。お呼びしましょうか?」「うん。お願い!」
女の子は、奥にすっ飛んでいく勢いで入っていった「(カルラ!カルラ!)」「(うるさいわね。どうした?客の様だったけど、いつもの奴なら追い払っておいていいわよ)」「(違います。カルラ。侯爵閣下・・・侯爵閣下が・・・)」「(侯爵?だれ?そんな人が来る予定にはなっていないわよね?)」「(いいから!早く、早く。侯爵閣下が怒ったら大変だよ)」「(いいわよ。そんなおじさん。怒らせても怖くないわよ)」「(カルラ!アルノルト・フォン・ノース=ライムバッハ侯爵閣下が来られているのよ!)」「(え?アル様が?)」「(さっきから、そう言っているわよ!)」
全部まる聞こえなのだけど・・・な。二つの足音が、近づいてくる。
「アル様!」「あぁカルラ。久しぶり、おじさんでもいいぞ!別に!怒らないぞ!」「え?いやですよ・・・アル様」「・・・まぁいいけど、それで、この店は?」「え?あっクリス様からお聞きになったのでは?」「軽くね・・・でも、カルラが店長やっているとは思わなかったよ。ごめんね」「いえ・・・それよりも、今日はなぜ?」「あぁごめん。ごめん。一つは、マナベ商会の事が気になったって事もあるのだけど・・・」「アル様。嘘はいいですよ。さっきまで忘れていましたよね?」
妙に鋭い所は変わっていない。
「忘れてないぞ、ただ思い出さなかっただけだ!」「それを忘れているって言うのですよ。アル様、もうボケたのですか?それとも、本当に”おじさん”になってしまったのですか?その若さで?」「そんな事あるか・・・まぁいい。カルラ。それで、この店は大丈夫なのか?」「え?あぁ大丈夫です。なんとかやっていけています」「そうか、それならいい。それで、本題だけどな」「あぁやっぱり何か厄介事ですか?」
「やっぱりってなんだよ。依頼を持ってきたのだぞ」「依頼って・・・まぁいいですけど、それで、何をすればいいのですか?ユリウス殿下とクリス様の情事の回数でも調べてきますか?」「そんな物に興味はない」「それなら、イレーネ嬢とハンスのデートコースですか?」「それは、少し興味あるけど、今度でいい。それよりも・・・・」
カルラに、ノース街での事を説明して、”森林を守る会”の構成員や資金源を調べるように依頼した。
「・・・・かしこまりました。アル様。ですが、少しお時間をいただく事になると思います」「そうなの?」「はい。正直にいいまして、”マナベ商会”の仕事は楽しいのですが、忙しいのです。ギル殿にある程度投げてしまっていますが、それでも・・・人数が少ないのも影響しているとは思いますが・・・」「そう?人数増やしても、採算がとれるのなら、増やしてもいいよ?別に、マナベ商会で大きく儲けようとは思っていないからね」「え?それなら、私達の元同僚と誘ってもいいのですか?」「いいよ。それで、俺の依頼が正確に済ませられるのなら、その方がいいな。これからも、似たような依頼があると思うから、そう思ってくれていると嬉しいな」「・・・・解りました。直ちに動きます」「うん。お願い。」
その後、カルラや店に居る従業員から、マナベ商会の現状を聞いた。赤字ではないらしいが、大きな黒字にもなっていないらしい。従業員がしっかり生活出来る位にはなっているらしいので安心した。
商人ギルドにある、マナベ商会の財布から必要な分を引き出して使ってもいいとは言ったが、それは、アルノルト・フォン・ノース=ライムバッハが個人的に稼いだ分だからと言って使わないことにしているらしい。困った事があったら、相談する事でなんとか説得をした。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品