【旧】魔法の世界でプログラム

北きつね

活動開始

--- クリスティーネ Side ---「クリス。これをアルが、構築していったのか?」「はい。それと、これを・・・」「なんだこれは?」「ゲートカードと呼んでいました」「ゲートカード?」「どうぞこちらへ」
ノース迷宮の地下から、アルノルト様の執務室につながっているゲートがある。それは、固定式と言っていた。双方向につながっているので、通れば移動できるものらしい。ただし、迷宮ダンジョンの支配領域でしか有効にならないらしい。
ユリウス様を連れて、移動した。そこには、大きめの魔石が一つ置いてある。魔石に、ゲートカードを近づけて、魔力を流す。目の前に、魔法陣が展開して、ゲートが出現する。扉を開けて、
「ユリウス様どうぞ?」「おっおぉ」
まぁそうなるのが当然ですよね
「え?クリス。ここは?」「見覚えありまえんか?」「・・・」
辺りを見回す、ユリウス様。魔法陣が消えている。近くには、ノース街にもあった魔石が、少し離れた場所に置かれている。
「ライムバッハ領か?」「はい。そうです。ライムバッハ領の、アルノルト様の執務室です」「・・・・」「ユリウス様。言いたい事は、後でまとめて下さい。アルノルト様に伝達します」「あぁわかった」「それでは、戻りましょう」
先程使ったゲートカードを裏返して、使う。これで、ノース街に戻る事が出来る。
そのまま、ユリウス様と、ノース迷宮に入る。ディスプレイに写される。王都の様子を二人で見る事にした。
やはり、領民は一人も居ないようだ。操作している人間に指示を出して、建物の中に入ってもらったりしているが、兵士以外を見つける事ができない。食料はどうしているのかと思ったが、城塞街から食料を運んできているようだ。
「ねぇテディ。これって、声を聞く事はできないの?」「できますよ。でも、どれか一つにした方がいいですよ。切り替えはできますので・・・。あっ主様が作っていました。あぁこれだ!」
テディが、何かを取り出して、私に渡してきた。
「これは?」「ボタンがついているでしょ。それを押すと、押されたゴーレムのマイクが拾った音声が流れる仕組みになっています」「へぇ便利ね」
何気なく押したボタンだったが、『宰相。どうなっている!』
豚がブヒブヒ言っているような声が聞こえた「クリス。何番だ!」「えぇと、11番です」「テディどれだ?」「あれです」
テディが指差す方向には、王城の玉座が映っている。美味く、ゴーレム鼠が入り込めたのだろう。まぁあの鼠型ゴーレムならしょうがないという思いがあるが、あれが実用化されたり、敵の手に渡る事を考えると怖い
「テディ」「えぇと・・・あ、もし敵に同じ事をされたらですか?」「そうね」「詳しい説明は、主様にお願いするとして、結界を作れば大丈夫です」「そうなの?」「はい。主様にも、最近まで電話での連絡ができませんでしたよね?」「え?あっそうね」「あれは、主様が、エルブンガルドの結界の中に居て、その結界の強度が強かったからです。あの強さの結界を張ってしまうと、魔力が通過できません。そうしたら、電話もゴーレムからの情報も、届かなくなります」「そうなのね?え?そうなると、なんで、これは届いているの?」「それを説明するのが面倒なのですよね」「簡単でいいわよ」「・・・う~ん。中継点を作っているのです。その中継点は、結界の外に展開しているので、そこで、受信して、ここで表示しているのです」「なんとなくだけど・・・理解したわ。ようするに、アルノルト様だからできたって思っていればいいよね?」「そうですね。今度、主様から詳しく聞いて下さい」「そうする」
それにしても、聞こえてくる豚の泣き声は、聞くに堪えない"食べ物が不味い""女が居ない""ヒルデガルドはまだか?""ノース街に攻め込んでしまえ"”ヘーゲルヒに食料と女を持ってこさせろ。エルフの若い女だ!”
最後には”余の好きにできないのなら、寝る。後は、宰相に任せる”で終わった。
食欲/性欲/睡眠欲だけで生きているのか?前は、馬鹿だ、馬鹿だ、と・・・は思っていたけど、ここまで馬鹿だったのか?
なんとなく、ユリウス様も同じ事を考えているようだ。
--- アルノルト Side ---問題は、簡単には解決できないようだ。ギルから連絡が入って、やはりかなりの数の貴族からは、色好い返事をもらえないようだ。ヘーゲルヒ辺境伯がついているので、へっ脅迫の寄り子ではそれほど問題はなかったが、それでも、兵を出すのは無理だと言われる場合が多い。それに関しては、辺境伯には、強制しないで欲しいとお願いしている。無理に出されても、指揮系統がはっきりしない兵なぞ率いたくない。俺の命令に従えないのなら、来なくていいとさえも思えてしまう。
さて、状況はあまりよろしくない。ヘーゲルヒ領に面しているのは、バルリング辺境伯のはずだが、どうやら、軍を率いてきているのは違う様だ。シュヴァイガー辺境伯の旗印が見えると言っている。俺が、そんな奴を知るわけがない。ものしりなコンラートに、ゴーレム隊が撮影してきた映像を見せた所、そう言われた。
どうやら、エルフやドワーフや森の中に住んでいた亜人達を襲ったのは、シュヴァイガー辺境伯の兵隊の様だ。使役されたと思われる、魔物やアンデッドの姿も見える。
地上からは、近づけなさそうだったから、飛翔隊で確認をしてみた。魔物やアンデッドは、数だけは多そうで、10万近くは居るように思える。突破するのは骨が折れそうだ。それに、人間の軍隊??も、2~3万は居るように思える。兵站とかどうしているのかと周りを探索させたら、アンデッドや魔物が運んでいた。ゴーレム隊の様な使い方も出来るようだ。厄介だが、まぁ戦い方次第だろう。
ただ、数の暴力をどうするのかは考えなければならないだろう。
「クリス」『アルノルト様。何か問題でも?』「ん?宰相に確認してほしいけど、シュヴァイガー辺境伯は、殺してもいいのか?」『・・・ちょっと待って・・・殺すのが簡単みたいに言わないでほしいのだけど・・・』「え?簡単だぞナーテと俺でゴーレムに乗って突っ込んでいけば殺せると思うぞ。ただ、シュヴァイガーの死体が確保出来る自身はない」『え?それは、辞めていただきたい。あっ解った、ちょっと確認する』
なにやら、宰相と話している声が聞こえる。
『生け捕りとはいいませんが、確認できる形に留めておいて欲しいのですが・・・』「わかった。それは、"殺して”もいいと判断していいのだな?」『・・・一番の解決策ではありませんが・・・』「そうか、手足をもぎ取っても、生きていればいいのか?」『そうですね。生きてさえ居れば、なんとかなると思います』「わかった。それをベースに作戦を考える。腕や耳は諦めろよ」
そこで電話を切った。方針は、決まったが、ロルフ達の集まり次第だろうな・・・これは。数が少なければ、犠牲云々ではなく、勝つための方法を考えなければならない。数が多ければ、運用を考えなければならない。どちらにしろ、面倒な事は間違いなさそうだな。
こうしている間にも、続々と情報が集まってくる。兵站部隊は、近くの村々から集めるだけではなく、帝国からも購入しているらしい。どうやら、後ろで”奴ら”が暗躍しているのであろう。
「ロルフか?」『あぁなんだ?』「一つ頼みがある」『出来るか解らないが、言ってみろ』「シュヴァイガー辺境伯が駐屯している場所が解った。そこで、補給線を絶って欲しい」『・・・解った。勢い余って、辺境伯とやらを切ってしまっても文句言うなよ』「えぇ大丈夫です。その代わり、切ったら、亡骸だけは確保して欲しい」『わかった』「補給路や駐屯地の状況は、コンラートにあずけておく、ヘーゲルヒ街で受け取って欲しい」『わかった。明日には、そっちに行けると思う』「了解」
エルフ族なら、森を使ったゲリラ戦も出来るだろう。
コンラートに、現状とカルラ達から上がってくる情報の分析を頼んで、俺は、シュヴァイガー辺境伯が駐屯している場所近くまで軍を進める事にする。頭数敵には、2,400対1の絶望な戦いだが、そのうち、10万は単純な命令を実行するだけの、木偶の坊だろう。やはり、一点突破先方しかありえないか・・・。
武器や魔道具が、集まっているのなら、動いているはずだ。あれだけの兵を食べさせるだけでも大変だろう。10万の魔物やアンデッドには、食料がいらないのかもしれない。それでも、2~3万の兵は従軍しているのだ。
--- クリスティーネ Side ---「クリス!」「なんでしょうか?」「アルは、大丈夫か?」「何がですか?」「だから、ほら・・・。奴の事だ」「はっきり言って下さい。ヘーゲルヒ辺境伯が信用出来ないと!」「・・・あぁそうだ。後ろから刺されるような事はないのか?」「さぁどうでしょう?刺されても、アルノルト様ならなんとかしてしまいそうですけどね」
そもそも、ヘーゲルヒ辺境伯をあそこまで追い込んだのも、アルノルト様ですからね。ヘーゲルヒ辺境伯が、生き残る為には、日和った自らの派閥を削ぎ落としてでも、ユリウス様に忠誠を誓う必要があるのでしょう。
「おぃ!」「ユリウス様」「なんだ」
「私も、アルノルト様の考えに賛成です」「だから、どういう事だ。ヘーゲルヒ辺境伯は、大丈夫なのか?」「・・・はぁ。ユリウス陛下・・。敵と味方という分け方はすごく危険な事です。それでは、敵ばかり増えてしまいます。私達が置かれている状況を、考えてみて下さい。それくらい、アルノルト様も、辺境伯もわかっていると思います」「だから、それで、なんで大丈夫だと言える?クリスティーネ」
宰相に言ってもらおうかと思ったけど、宰相はどこに消えてしまった・・・逃げたのだろうか?あの人も口やかましいから、陛下とも仲が悪い用に見えていたのだろうけど、お二人の間には、しっかりとして信頼関係が有ったのでしょう。
「はぁ・・・まず、辺境伯が今回の事で、裏切る可能性は皆無です。アルノルト様が”許した/許さない”は、それほど関係ありません。辺境伯が置かれている状況が、裏切る事ができない状況にあるのです」「・・・」「ユリウス様。大義は、我らにあるのです。いいですか?玉璽もある。皇太子さま・・・前国王陛下からの遺言も成立している。後は、貴方が戴冠すればいいのです。おわかりですよね?」「あぁ」「それを踏まえて、辺境伯の立場で考えて下さい。アルノルト様を後ろから討つメリットがありますか?」「・・・王城に居る豚に恩を売れる」「売れますか?バルリング辺境伯やシュヴァイガー辺境伯が居るのですよ?煙たがられるに決まっています。最悪は、3辺境伯で権力の奪い合いが始まるのですよ」「・・・」「若輩者が多い。私達の陣容に加わることで、ヘーゲルヒ辺境伯として生き残る芽を残したいと考えたのでしょう。それに、ヘーゲルヒ領を攻撃された恨みもあるでしょう」「・・・そうだな」「状況を考えれば、今ヘーゲルヒ辺境伯が、アルノルト様を後ろから討つ事は考えられません。あるとしたら、アルノルト様が負けて・・・敗走して、ヘーゲルヒ街なりに戻った時でしょう」「それじゃ、アルは」「解っていると思いますよ。一回でも負けたら終わりだという事が・・・」
そうですよね。アルノルト様?
--- ロルフ Side ---アルノルト・フォン・ライムバッハから、受け取った書類を持って、エルブンガルドに移動した。ゲートという魔法での移動で、一瞬で到着する事ができた。
おばばに状況を説明したら、結界がある上に、森の中に住んでいた者達も集まってきているとの話だ。過去にいろいろいざこざが有った種族も居るが、そんな事を言っていられない状況ではある。
俺は、戦えそうな者を選んで、編成した。総勢1,500名。親や子供や恋人を殺された者達だ。戦意は高い。
そこに、アルノルト・フォン・ライムバッハからの”頼み事”が入った。”補給路を絶つ”と、言うことだ。
俺は、各種族の代表を連れて、ヘーゲルヒ街に居るコンラートに会いに行った。そこで、情報をもらってから、再度移動を開始する事にした。前線近くの廃村に、アルノルト・フォン・ライムバッハが、橋頭堡を作っていると言うので、その場所に移動する事になった。
最初は、俺達は別行動だと思っていたが、橋頭堡があるのなら、そこに一度寄ってからの方が、情報が正しく手に入る上に連携もし易い。コンラートが、ライムバッハ卿に確認をとっている。
急いで行けば、明日の夕方には合流できそうだ。足の遅い奴らは、ノース街から派遣されてきた、ゴーレムが運ぶ馬車に乗って行くことに決まった。
ザシャに明日決着は難しいかもしれないが、一つ一つ、お前たちを殺した奴らを追い詰めていくと誓う。アルノルト・フォン・ライムバッハを利用して、俺は、俺達の故郷を、街を、森を、仲間を、こんな芽に合わせた奴らを殺す。

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