【旧】魔法の世界でプログラム

北きつね

ノース街

謁見の間で、勅命を受けて、ライムバッハ子爵になった俺だったが、変わった事は、領地ができた事だ。
領地の広さは、正直解らない。殆ど使い道が無い森になっている。炎の魔法で、焼き尽くしてしまおうかと思ったが、フルールに反対された。まぁやるつもりもなかったので、そのままにしておく。最初に行ったのは、領民の移住計画だ。コンラートとクリスが計画をしてくれていたものを、承認する形になる。ただ、都市計画だけは、俺がしなければならなかった。
俺の子爵の授与と、領地の下賜は、翌日には、王都で発表された。ギルドから、早速問い合わせが来た。それもそのはず、発表と共に、”新たに・・・迷宮ダンジョン”が見つかった事も合わせて、発表された。その迷宮ダンジョンの上に街が作られる事になる。街の名前も、ライムバッハ街だと、ライムバッハ辺境伯である”カール”の治める街があるので、俺が治める街は”ノース”と名付ける事になった。ヒルダとアンからは、単純と笑われたが、わかりやすくて良いので、そのまま”街の名前”と”迷宮ダンジョン"の名前に採用した。
クリスから、いろいろ教えられたが、新しく作る街は、5年間は無税となる事が決められている。なので、俺も”領民への税金は、5年間無税”とする事に決めた。発表は、しないほうがいいだろうと、ホルスト・フォン・フォイルゲン辺境伯・・・クリスの父親に言われた。王国内では、領主の裁量で税金が決められている。その為に、一部の街では高めの税金設定になっている所がある。その手の貴族から、横槍が入る可能性がある。どうせ、1年経てば、どういう形態で、運営しているのかは、バレてしまうだろうから、”それまでに、基盤を作っておくように”と、言われた。
シュロート商会は、いち早く、ノース街に商店の場所を確保して、責任者”ギルベルト”が街にやってきた
建築ラッシュも始まっている。住む場所や、商店の場所がなければ、何も始まらない。ディアナにお願いして、ドワーフの職人を多めに送ってもらっている。
街道の整備も始めている。幸いな事に、ノース街からは、王都にしか行く場所がない。街道は、8割以上が森の中という特殊な環境下でもある。少し、森を切り開いて、馬車が5台並んでも通られるような広さにした。中央は、王家や貴族専用として、片側二車線にした。そして、王家の許可を取って、この街道を使う場合に、通行料を摂取する事にした。ノースの住民や、拠点を持つ冒険者及び商人や職人は、通行料は免除されるが、それ以外は、規模に寄って通行料を取る事にした。理由は、街道の整備にお金がかかった事や、街道の安全の為に、結界を張っているからだと説明した。新たに見つかった、ポケコンで結界を発動させる事に成功している。その為に、街道を覆うように結界を連続で発動させている。その発動させた結界に入る為には、識別札を持つ必要があり、その識別札を持っていないと、結界の中に入られない。結界の範囲の問題もあり、つなぎ目や重なっている部分もある。その為に、街に入って出るまで、識別札を持っている必要がある。住民で、魔法制御が1.00を超えている場合には、ステータスシートに識別札を配置する事で、常に持ち歩く必要はなくなる。
ゴーレムのオーナ登録の問題は、ほぼ解決した。オーナ登録と命令に関しても、魔法制御が1.00を超えていれば、ステータスシートに配置出来る事が解った。ゴーレムへの命令も、いくつか作る事ができた。言葉での命令は、まだできないが、ステータスシートに配置した魔法での制御が出来るようになった。元々、ゴーレムには、ゲームの思考ルーチンが組み込まれている。その為に、”掘れ”や”運べ”や”動け(前後左右)”は問題ではないが、積み上げろとかは”まだ”できない。また、一体だけなら、ゲームのコントローラを使って操作する事が出来る。視覚同調の様な事も出来る。その為に、子供にゲームのコントローラ(106階層に転がっていた物)を渡して、ゴーレムを操作させる事で、人夫の問題を解決した。
街の広さは、ノース迷宮を中心に、東西南北に4km程度になるようにした。これは、元々のノース街の建物があった場所の4倍近い数字だが、ゴーレムを使っての伐採が行われた、おかげでかなりの速度で行う事ができた。伐採された木々を使って、建築も行っている。街の形状は、京都を真似た都市を作るように設定を行った。街の外周を、円状にして、中は、馴染みがある”碁盤の目”の様に設計にした。
中心部には、500m四方程度の場所を確保して、行政区とした。中心部には、ノース迷宮への入口があり、各ギルドが入っている建物を用意した。一つの建物の中で、全部のギルドが入るようにした。3階建てで、一階は待合室の様なラウンジにした。二階部分に、ギルドの業務を行う場所にして、三階部分は打ち合わせや面談を行うスペースはギルド職員様の施設が入るようになる。
建物を作っている時に、ノースの制御室で、いろいろ確認をしていたら、エレベータの謎が解けた。なぜ、エレベータが、地上部に突き出しても問題なかったのか?どうやって作ったのかが解らなかったが、迷宮ダンジョンツク○ルを起動して、確認している時に気がついた。地上部も、迷宮ダンジョンの支配領域になっている。当然と言えば、当然だろう。ウーレンフート迷宮では、潜っていなくても、地上部で生活している人からも魔力の摂取があるのだ。そして、迷宮ダンジョンの機能を使って、建物を作る事も出来る。ただ、魔力を相当使うので、基礎的な物だけに留めている。行政区に関しては、さっさと作って行政を行える状態にしないと、いろいろ始められない。その為に、必要な建物は先に作る事にした。領事館。迷宮ダンジョンへの入口。神殿施設。ギルドが入る建物。孤児院。温泉施設。エレベータを隠す為の、俺達の家(の基礎)。それらを覆うような、5m程度の高さの内壁を作成した。行政区の中にもまだ空きはあるが、建物の建築は基本的には、禁止とした。俺が何か作りたいと思った時のためだ。
碁盤の目の様に、道を作成している。東西南北に門を作成した。行政区にも同じ様に門を作成してある。門の名前は、そのままの名前を付ける。南の門を朱雀門。道を朱雀街道。南の門から王都に繋がる道が出ている。東は、青龍門。道を青竜街道。西は、白虎門。道を白虎街道。北は、玄武門。道を玄武街道とした。
青竜街道と白虎街道から北部分を、領民の住居にする事にした。朱雀街道と青竜街道に挟まれた部分は、商業区として、商店や宿屋を設置出来るようにした。空いている。白虎街道と朱雀街道の間は、遊休地としている。いろいろ余裕ができてきたら、闘技場や実験施設を作ろうと思っている。
亜人達は、玄武門から出た森の中に散らばって、居住区を定める事になった。それぞれを自治区とした。各、自治区にもポケコンを貸し出して、結界で自衛する事が出来るようにした。それに合わせて、各々領事館に、大使館の様な物を作成してもらって、ここで結界の中に入る為の申請の授受を行う事にしてもらった。税金は、面倒なので取らない事にしたが、そのかわり、ポケコンの貸出と領事館の賃料を貰う事にした。幸いな事に、迷宮ダンジョンや森での採取が出来る為に、現金を得るのはそれほど難しくない。
俺が、領地を貰って、ヒルダの正式な婚約者と発表されてから、6ヶ月が経過した。その間。領地は建築バブルに湧いていた。材木は周りの森を切り開くことで得た物がある。石材も、案外近くに見つける事ができた。玄武門を抜けた亜人の領域に、石が採掘出来る場所が存在していた。そこで石を採掘して、街で使っている。街の外周は、城壁で覆った。これは、迷宮ダンジョンの機能を使った。一晩で壁ができた事を、住民は不思議がっていたが、ライムバッハ子爵だからという理不尽な理由でスルーされた。
冒険者の数も増えてきている。迷宮ダンジョンが、美味しい存在だと認識してくれたらしい。周りの森でも、薬草の採取が出来る事が、初心者冒険者が増える要因にもなっている。それにともなって、冒険者相手の商売をする人間も増え始めている。宿屋から始まって、食堂や、武器・防具屋。魔道具屋まで店舗が見え始めている。そうなると、従業員が必要になって、人手不足になる。従業員や仕事を求めての移住が行われるようになっている。
6ヶ月かかって、王都から朱雀門までの街道の整備が終わった。石畳の街道で、馬車で快適に飛ばす事が出来る。水はけも通常の地面と違っているので、商人からは好評だ。今まで、4日程度かかっていた道も、3日程度で到着出来るようになった。結界が貼られているので、魔物や獣の侵入も無く、結界内は識別札がないと移動できないので、強盗の類もほとんど居ない。休憩所も数か所作っている。王都からノース街に来る方を”下り”とし、王都に向かう方向を”上り”した。街道の左側を上り、右側を下りとした。また、馬車の企画で二車線になるようになっていて、急いでいない人や徒歩は、二車線の左側を通る事を推奨して、急いで通る場合に右側を移動する様に推奨した。実験的に、休憩所間でゴーレムが引く自動乗合馬車を動かしてみた。ゴーレム馬車の料金は、無料とした。将来的に、有料にするつもりである事を告知して、実験運用をしている事も合わせて告知した。そして、この自動馬車が意外と受けがいい。街中の移動で使えないかと言われた。街道と違う所は、人の行き交う事が多い。その為に、街中を走らせる事は躊躇していた。街道の馬車なら、事故が多発するようなら、専用車線を作ってもいい。そう考えていた。街中の移動も結構面倒だし、増えた住民の中には、年を重ねた人や、軍で手傷を追った人たちも含まれていた。その為に、街中を走る馬車を開発した。開発と言っても、インフラ周りの整備をしただけだ。迷宮ダンジョンの施設として、地下道を作成した。かなりの魔力を使ったが、満足できる形になった。地下道を、ゴーレムに引かれた馬車が走る。全ての門から、行政区に向かう、地下道と、各区画内を通る地下道だ。後は、外周を回る形にしてある。ゴーレムも、街の外に迷宮ダンジョンの支配領域外に出さなければ、魔力切れにならない事も確認できた。
俺も別に遊んでいたわけではない。いや、傍から見たら遊んでいるように見えたかもしれない。ゴーレムの安全の確保や、結界の安定を行っている。後は、俺の本業にしていきたい。”魔法装置”の開発を行っている。今、この世界では、よほど裕福な貴族でなければ、魔導コンロの購入や設置はできない。これを、庶民レベルとは言わないけど少し無理すれば、購入できる位の価格帯で、販売、復旧させたいというのが、俺の考えだ。魔導コンロだけではなく、家電で便利だと思う物を、魔法理論で構築し直して、魔道具化を行う。量産出来るような体制をつくる事が俺の考えだ。
今は、孤児院の年長者に”魔法制御”の訓練をさせている。まだまだ、年齢的な事もあるので、難しいが、数年後には、”魔法プログラム”を教える事にしている。それらの為の、施設や環境を作るのが、俺の役割だと思っている。
領地運営の殆どを、コンラートとヒルダにまかせて、俺はニートよろしく、102階層に篭って開発を行っている。
領地を得てから、1年が経とうしていた。俺も、今年で18歳になる。約束していた、婚姻の年だ。皇太子からは、新年の挨拶をした時に、そのことを告げられた。建国祭(後、8ヶ月)で、婚姻を発表して欲しいと言われている。断る事もできない事柄なので、了承する旨の返事を伝えてある。
それから、今年の”4の月”から、ユリウス達は王都に戻ってきている。ライムバッハ領は、ルステオら旧家臣団がもり立てる事になった。後ろ盾としての、ユリウスは健在なのだが、実質の運営は、建前的にはカールに移った事になる。ユリウスとヒルダの婚姻も建国祭で行われる事になった為の処置だ。それに合わせて、ザシャとディアナはヘーゲルヒの街に移り住んだ。イレーネとエヴァは、ノース街に来ている。建前的には、孤児院の運営のためだ。本当なら、王都に居なければならないのだが、理由を付けて、ノース街に住居を移している。イーヴァとクヌート先生は、ライムバッハ領の”水が気に入った”様で、正式に、ライムバッハ辺境伯の家臣として過ごす事になった。
ゲートの魔法も、試験運用が出来るレベルには完成した。改良の余地がある部分が2点。・目的地に一度魔法陣を展開する必要がある事。場所を特定しないと、ゲートが開かない。・結界の中から出る事は出来るが、入ってくる事ができない。これらは、現状運用でカバーするしかない問題になっている。場所の問題は、ギルにお願いして、ゲートが必要な場所に予め、ナビを持って赴いてもらう。そこで、座標を調べてから、魔法陣が展開できる場所をキープしてもらう。結界の問題は、それほど難しくない。今、結界が設けられているのは、王都と、ノース街と、近郊の村や亜人の里と、エルブンガルドになっている。
結界の販売は、していない。エルフとの関係もあるが、それ以上に”珠"となる、ポケコンに限りがあるからだ。その代わり、ノース街の主要産業の一つに、ゴーレムの販売がある。販売出来る条件を、魔法制御が1.00以上ある事だったが、それが、緩和できる方法が見つかった。奴隷紋を刻む時に、”主人登録”を行うのだが、これの応用が使えた。魔力には、指紋や声紋の様に、魔法紋と言われる個々で違う"紋”が存在する。これを、登録した魔道具で、ゴーレムを動かす事が出来る様にしたのだ。ゴーレムにも、主人の魔法紋を刻む事で、主人以外の命令を受け付けないようにした。怖いので、管理者モードは設定してある。
ノース街の周りにも村ができ始めている。重税を課せられた者達が逃げてきたりしてできた村だ。最初、元々の領主が、返還を求めてきたが、俺が買い取るというと、値段を釣り上げてきた。交渉の末、相場観での売買で落ち着いた。逃げてきた者達は、俺に借金をする形になったが、それでも、今まで課せられていた税金の1/5以下の支払いになる事で、納得してもらった。この事件が、商人を伝って、王国中に知れ渡ると、重税に苦しんでいる農民が、助けを求めるように、ノース街に殺到した。コンラートとヒルダとギルの”大丈夫”という言葉のままに受入を行った。その結果、ノース街の食糧事情は、飛躍的に好転した。今まで、食料は輸入に頼っていたが、農民がきはじめてから、半年が経った位から、農村から食料が届き始めた。開拓に貸し与えた、ゴーレムのおかげと、結界のおかげで、安心して農作業を行えると喜んでいた。村荷化したゴーレムも、単純仕事だけとは言え、力になっている。土を掘り返すのも、力が居るが、ゴーレムならそれほど苦労なく行う事が出来る。これらの事を行ったのは、ゴーレム使いの子供たちだ。
急速に力を付けた歪も発生したが、王都の北に位置する事から、横槍を入れてきたりする貴族も少ない。嫁の押し込みも最初の頃はあったが、ヒルダのおかげで、それも無くなっている。面倒なのは、王都で開かれる”お茶会”や”懇親会”や”舞踏会”へのお誘いが大量に舞い込む事だが、これは、代官としてコンラートに出てもらっている。
今日も、午前中に領内の報告を受けてから、102階層に移動して、開発を行っている。世間では、アルノルト・フォン・ライムバッハ子爵は、引きこもり子爵だと言われているらしい。そして、”こうもり”とも呼ばれ始めているようだ。ユリウス達との友誼は有名な話だが、家臣団の半分は、ヘーゲルヒからの連れてきた者達だ。そして、家令の的な事を行っているのは、ヘーゲルヒ辺境伯の長男のコンラートだ。コンラート自身は、すでに、フォンの称号を外している。ヘーゲルヒ辺境伯にも、絶縁状を提出している。それでも、そんな事は関係ないと言わんばかりに、王弟殿下派閥の皆さんは、コンラートにコンタクトを取ってくる。ノース街やライムバッハ子爵家や、マナベ商会から何かしらの利益を欲しての行動だろう。コンラートが、全て俺に報告して、ヒルダと協議して決めている。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品