【旧】魔法の世界でプログラム

北きつね

ダンジョンの調整

ヒルダとアンに案内されて、階段を降りる。103階層なのだろう。
そこには、96階層から始まる場所と、同じような広さの場所になっていた。違うのは、その場所に有ったのが、ゴーレムではなく、”家電量販店の倉庫”と思われるようなダンボールの山だ。開けられている物もあるが、使い道が解らなかったのだろう、そのまま放置されている。少し高めの天井に、人一人通られる位の通路があるだけで、びっしり物品が詰まっている。炊飯器やジューサの様な物まである。
誰かが整理したのか、それとも、この形で流れ着いたのかは解らない。家電を観察してみる、時代的には、2010年前後なのだろうか?
「アル。それよりも、まだ下があるよ」
そう言われて、104階層に進む。そこには・・・・。俺に、”ここで生活しろ”と、言っているのか?パソコンやパーツや、ゲーム基板、何に使っていたのか解らない物まで、大量に転がっている。ネットワークの機器や、”そんな物を使わないよ”と、言われるような物まで、ジャンク品の見本市みたいな形で置かれている。
105階層は、ダンボールのままになっている”パソコン”が置かれていた。”火"入れも行っていないのだろう。それにしても、1,000 や 2,000ではないだろう。全部を起動させる必要はないが、壊れたときの、パーツ取りや交換用の部品として使えるだろう。
106階層は、携帯とスマホと携帯ゲームが大量に存在していた。
そして、中央にはやはりエレベータホールの様に整備された場所が存在していた。
制御室が生き返った事で、エレベータも生き返ったようだ。階層を示す数字が表示されていた
5・4・3・・・・・・・・・・・・・・B96・B97・B98・B99・B100---B101・・B103・B104・B105---と、なっている。二機のエレベータがある。そして、地上階にもつながっているようだ。
上矢印しかないボタンを押すと、B105が光った。扉が開くかと思ったが、点滅するだけだ。扉に魔法陣が浮き出した。その魔法陣に触れると、”認証されました”と音声が流れて、ドアが開いた。暫く待っていると、扉が締まるので、また同じ手順を繰り返した。今度は、魔法陣にヒルダが触れるが”認証できません。管理者に連絡してください”と、アナウンスが流れるだけだ。
この階層は、俺達の考えでは、106階層だが、エレベータの認識では、105階層になっている。そうなると、制御室は、B102になるのだが、直接は行けないようになっている。しょうがないので、B101に移動した。そこは、予想通り、会議室の様だ。そこから、隣のエレベータを呼び出した。こちらも、ヒルダでは認証できなかったので、俺が認証されて、エレベータに乗った。
どのくらい時間が経ったのだろう。20分位乗っていた感じがする。”チン”という音と共に、エレベータが止まった。
ドアが開いて、外に出る。そこは、迷宮ダンジョンに潜った、階段がある場所から少し離れた、建物の二階部分だった。
久しぶりの地上だ。近くで野営しているはずの、シュトライト達の所に行く。野営地に全員揃ってゲームをしていた。
「ボッボス!」「あぁクルト。みんな揃っているみたいだね」「え?あっはい」「こちらは、何もなかった?」「はい。時々獣が来るだけで、魔物の一匹も来ませんでした」「そうか、それなら良かった。みんな無事?」「はい。ボスたちも?」「うん。大丈夫だよ。迷宮ダンジョンも生き返ったよ。挑戦してみる?」「え?あっ遠慮しておきます。勝てそうにないですからね」「そんな事ないと思うけどな。シュトライトとエードルフは?」「呼んできます」
すぐに、シュトライトとエードルフが駆けつけてきた「おかえりなさい」「うん。もう暫く、俺は迷宮ダンジョンに潜るけど、シュトライト達はどうする?ここで待っていてもいいし、一緒に来てもいい」「あ~。そうですね。俺達は、ここで出入り口を警護しています」「そうか、解った」
シュトライト達を残して、エレベータでB100に戻る事にした。シュトライト達には、2週間を目処に戻る事を告げた。
制御室に、戻って、クリスに連絡をする事にした『はい。アルノルト様?』『あぁ。クリス。北の迷宮ダンジョンの攻略終わったぞ』『え?もう?』『生き返ったぞ。それにかなりのアーティファクトも確認できている。』『そう・・・』『どうした?クリス?』『なんでもない。それで、アルノルト様は、何をしているの?』『今か?103階層で、迷宮ダンジョンの把握をしているだけだよ』『ちょっと待って、すぐにまた連絡する』『解った』
クリスに報告だけして、俺は、制御室に戻った。エレベータの事を、皆に告げる。
「お兄様」「どうした?」「ゴーレムの使い方が解りましたわ!」「え?」
ユリアンネが見つけたゴーレムの使い方は、残されていたメモでわかったのだという。ゴーレムは、”商品”だったらしい。それで、商談スペースの様な物が有ったのだな。値段表も有ったようだが、古代の貨幣での取引で、現在の貨幣に変換は難しいようだ。
ユリアンネが見つけてきた、メモには、ゴーレムのオーナ登録の方法も存在した。オーナ登録したゴーレムは、オーナの命令どおりに、”行動するようになる”と、書かれていた。どの程度の事が出来るのかも、書かれていた。俺達が、戦った感じでは、護衛としてはそれほど役に立たないと思える。確かに、力は強いので、物品の持ち運びや・・・それこそ、鉱石の採掘とかの単純仕事にしか役に立たないと思える。戦いは、力は強いが動きが単調なので、役に立たない。盾にもならないかも知れない。そう考えると、微妙な感じがする。今のところ、使い道としては、拠点防衛に使うか、魔石の回収を行うか、生産の貯めの単純仕事をやらせるか・・・だけだろう。まぁクリスから連絡が来たら、合わせて、報告しておけば、後は勝手に考えるだろう。
そんな事を考えていたら、ユリウスから電話がかかってきた『ユリウス?』『あぁ悪い。クリスがまだ調整中でな。変わりに俺が、話を聞いておくことになった』『そうか、解った。って、それほど話が、あるわけじゃないのだけどな』
ユリウスに、現状わかっている事を、説明した。
『そうだ、ユリウス。クリスもだけど、北の迷宮ノースに来るのなら、ウーレンフートで待ち合わせするか?』『ん?』『多分、だけど、ゲートをつなぐ事が出来そうだからな』『あっそうだったな。あぁクリスの調整が終わったら、連絡させる』『解った』
ユリアンネが青い顔をして駆け寄ってきた「お兄様!」「ん?なに?お腹減った?」「ちっ違いますわ。それに、私はお腹空きません!。いえ、違います。そんな事ではなく、これを見て下さい」
ユリアンネが差し出してきた書類・・・。
その書類の束は、ゴーレムの購入者や種類・数が書かれていた。その中に一つ、”バラーク"の文字が書かれていた。その書類は、"不許可”となって居て、売買契約にはなっていないようだ。
「ユリアンネこれが?」「お気づきになりませんか?”バラーク”は、先日つまらない手紙を残した"あの人”が名乗っていた家名ですわ」「え?あぁそうか・・・え?そんな事・・・・」「そうですわ。この施設は、少なくても、前大戦時代の・・・いえ、それ以前の物だと思われます。もしかしたら、フランケンシュタイン博士よりも前の時代かもしれません。その頃からとなると・・・」「そうだな。ライムバッハ家も古いって言われていても、アーベントロート王家と同じだからな」「・・・はい」
なんとも言えない空気が場を支配している。
携帯電話がなった『おっクリスか?』『アルノルト様。話は、ユリウス様からお聞きしました。幾つか、実際に見て確認したいので、是非見学させて下さい。諸々の引き継ぎを行ってからになりますので、10日後位に、迷宮の街ウーレンフートの、執政官の屋敷でお会いしたいですわ』『了解。迎えに行く』『お願いします。ユリウス様と私とギードとハンスになると、思いますわ』『解った。俺とヒルダで迎えに行く』『はい』
話を近くで聞いていたユリアンネが、皆にクリスとユリウスが来る事を告げている。10日後か、移動はゲートを使えばいいだろう。迷宮ダンジョン同士なら、繋がる事は間違いないだろう。つなげておけばいいだろう。
それよりも、試しておきたい事がある。「テディ」「なんでしょう?」「今、この施設の状態はどうだ?」「それは、魔力という意味でしょうか?」「そうだ」「2%程度でしょうか?」「・・・・そうか、ウーレンフート迷宮やブラント迷宮。マラブール迷宮の状況は?」「少し待って下さい。多分、主様の方が早くわかると思います」
そう言われれば、そうだな。「そうだな。ノーパソで確認する」「はい。申し訳ない」「いいよ。それよりも、施設の塩梅を見ていてくれ、ここに人が入るように鳴るのは、少し先かも知れないからな」「わかりました」
王家がすぐにここの解放を決めるとは思えない。もし、すぐに開放してくれれば、魔力の充填が早まるが、最初の頃は、本当に手応えがない。ゴーレムだらけの迷宮ダンジョンになってしまう。その前に、出来ることなら、魔力を貯めて、魔物を出現させておきたい。
ノーパソを広げて、各施設にアクセスする。収支のバランスが取れているのが、マラブール迷宮だ。ウーレンフート迷宮では、端末を交換してから、効率がよくなっている。それに、今までは無理だった、上層部での取り込みが出来るようになっている。街に人が住んでいれば、徐々に溜まっていく事になる。従って、魔力が常に100%に近い状態になっている。マラブール迷宮やブラント迷宮では、端末を止めて、必要なさそうな物を止めているので、マイナスにはなっていない。
何を調べたかったのかと言えば、魔力の状態を調べて、ここ”ノース”とつなげて、魔力をこっちに回せないかと考えたのだ。十分な供給が出来るような状態だったので、実行に移す事にした。
まずは、今まで繋いでいたリング型ではなく、スター型に変更する。ネットワークの識別が出来るか解らないが、単独で動いていけるのだから、大丈夫だろう。104階層を改良して、拠点とする事にした。エレベータの件があるから、適さないかもしれないが、利便性を優先する事にした。
104階層の一角をキレイに整えてから、他の迷宮から、剥がしてきた端末を、設置した。104階層には、ルータも転がっているので、それらを使って、ネットワークを構築していく。
拠点となるサーバは、AS君を使うことにしたい。前回、諦めた事だが、AS君をマラブール迷宮から、引き上げるか、中央で動かすサーバにする。
手順を考えてみる。まず、サーバ基を一台、ノース迷宮で起動する。その後、ゲートを各迷宮につなげてケーブルの敷設を行う。
まずは、魔力だけ流れるように調整して確認して見なければならない。
ケーブルの敷設が終わった。「主様。ノースの魔力が、貯まり始めています」「そうか、ありがとう。ついでに端末に、他3つの迷宮ダンジョン状況も表示しておいたから見ておいてくれ」「わかりました・・・・。他は、98か97です。問題は無いと思います」「了解。」
マラブール迷宮に移動して、AS君をシャットダウンする。シャットダウンした端末を、ラウラとカウラとユリアンネに頼んで104階層に持っていってもらう。その間に、以前マラブール迷宮で動いていた、AS君以外のサーバ機を設置して起動した。
処理速度的な問題があるかも知れないので、モニタリングだけ、しておく事にした。3時間程度、起動状況やリソース状況を、モニタリングしていたが、問題はなさそうだ。大規模な侵攻がなければ大丈夫だろう。
一旦、ノース迷宮に戻って、移設したAS君を起動して、権限を切り替える。持ってきて起動しただけでは、マラブール迷宮の所属になっていたものを、ノース所属に切り替える。ブラント迷宮からも、ラックサーバを移設する事にする。
「主様。ノースの魔力が減り始めています」「大丈夫。わかっている」
当然の事だろう、迷宮ダンジョンの処理を、ノースで全部管理してしまおうとしているのだ。ルータの調整を行う。絞っていた、魔力を垂れ流しに近い状態にまで持っていく。まずは、ウーレンフート迷宮だ。これだけでも、今なら収支的に大丈夫だろう。
でも、ノースには端末を増やすつもりだ。その為にも、ブラント迷宮やマラブール迷宮からの魔力の流入が行われる様にしてしまう。
「主様。ノースの魔力が順調に回復しています」「そうか、テディ50%を超えるのは、どのくらいになりそう?」「今のままですと、1日後位には、30%程度は貯まると思います。ですので、2日あれば大丈夫だと思います」「そうか、解った。少しリソースの状況を見ていてくれ」「わかりました」
今は、充電中だから、そのままにしているが、魔物を発生させたり、ゴーレム様の魔核の調整を行う必要がありそうだ。後、眠っている端末を起動させたい。ここを一台拠点にしてしまえば、今度もし、クリスの無茶振りで、攻略を行う事になった場合でも、対応が出来るだろう。

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