【旧】魔法の世界でプログラム

北きつね

ダンジョン攻略

今、俺は考えている。昨晩、寝る前に、確認した。
次の96階層から何か出て来る可能性がある事を、そして、武具の手入れを行って、ゆっくり休む事にした。ここまではOKだ。
一人で寝る事にした。これもOKだ。間違いなく、一人だった。どうせ、誰かが入り込んでくるのだろうと、予測もしていた。
それが、今、俺は、95階層の簡易宿泊施設を出て、すぐに、魔物(?)の集団に襲われている。確かに、その可能性がまったくなかったわけではない。どういう理屈か解らないが、迷宮ダンジョンの一部が生き返ってしまっているようだ。
「テディ。間違いなさそうなのか?」「主様、迷宮ダンジョンが活性化しています」「そうか、考えられるのは、スリープしていた迷宮ダンジョンが、俺達の魔力に反応して、起きたって事だな」「そう思います」「わかった。その部屋も安全ではないって事だな。ラウラ!カウラ!一緒に行くぞ、アン。ルト。ユリアンネ。皆を守れ!」「はい」「はいにゃ」「了解」「かしこまりました」「お兄様。私も!」「ユリアンネ。おまえは、テディとエステルとヴァルマを守れ、フルール。自分の身位はなんとかしろ!」「わかった。エステル。テディはこっちに!ヴァルマ。結界を貼るから手伝って、風の加護で結界の周りに防御風を」「あるじ殿。了解じゃ」
「うん。行くぞ!」「「おぉ!!」」
ゾンビの様な魔物や、鳥や蝙蝠の様な物から、犬?と思われる獣種や、蜘蛛の様な、虫種まで居るそれらの魔物(?)は、魔核を持っている。それを動力として動いているような印象だ。一般的な用語は解らないが、今は総称して”ゴーレム”と呼んでおく。
俺とカウラが、ゴーレムの集団に連続で突撃を行う。ラウラが、魔法で支援を行っている。後ろでは、聖獣が協力しながら、結界を維持しながら、ゴーレムの攻撃を防いでいる。辺りに転がり始めている、魔核から、かなりの数を壊してきているのだろう。最初ゴーレムの弱点が解らないで、闇雲に攻撃をしていた。腕や足への攻撃では、ゴーレムは止まらなかった。頭を切り飛ばしても、歩みや攻撃が止まらない。人でいう所の丹田部分が弱点の様だ。そこを集中して攻撃する。それで崩れたゴーレムから、魔核を抜き出すか、破壊する。獣型のゴーレムは、頭に魔核が備わっている。その為に、頭を破壊すればいい。
困るのが、虫型のゴーレムだ。全体を破壊するしか無い。魔核がどこにあるのか解らないからだ。それも、数が多い。天井びっしりと湧いていた、蜘蛛型のゴーレムを見た時には、全具を焼き払ってしまおうかと思ったほどだ。心の底から、G型がいない事を祈ろう。いた時には、俺は、この迷宮ダンジョンを、破壊してしまうかも知れない。
湧いて出てきているのは、魔核がそわっているゴーレム型のようだ。さしずめ、ガーディアンという所なのだろうか?
「アル様。際限なく、湧き上がってきます。どうされますか?」「防御を固めても、ジリ貧になりそうだ。ラウラ。カウラ。階段まで行くぞ、そこで、5分位時間を稼いでくれ」「かしこまりました」「わかったにゃ」
階段近くに、簡易宿泊施設を作ったのが幸いしていた。95階層からは、ゴーレムが生まれていない。96階層から”上がってきている”感じだ。
「テディ。迷宮ダンジョンで、産まれた魔物は、階層を跨がないよな?」「はい。そうです!」「それじゃ下の階層から上がってくる、こいつらは、産まれているのではないのか?」「わからないです」
階段近くまでやっとこられた、数メートルがすごく遠く感じた。「ラウラ。カウラ。頼む!」
ラウラとカウラが、俺の前面に出て、魔法を展開しながら、上がってくるゴーレムを屠っている。
どのくらい時間が経過しただろう。巨大な魔法の詠唱が終了した。俺が持つ全ての加護をつなぎ合わせた魔法だ。もう一度同じ物を詠唱しろと言われても・・・無理だ。結構適当につなげた感じがする。
「”ゴーレムを喰らい尽くせ”」
その詠唱で、魔力がごそっとなくなるのが解った。属性魔法の編み込んだ、龍が、階段から上がってくるゴーレムを飲み込みつつ、96階層への消えていく・・・・分岐で、龍が分かれるように詠唱したつもりだ。虫型のゴーレムを潰しながら、皆が集まってくる。
「ヴァルマ」「へ・・あっ何?」「あぁナーテと協力して、魔核を集めて欲しい」「え?あっはい」「ナーテ頼む。ヴァルマに教えてやってほしい」「うん。わかった」「ルト。サポートしてやってくれ。ヴァルマは、風の加護があるから、上手く使えば、魔核を集めるのも出来ると思うからな」「そうですね。かしこまりました」
ヴァルマ達が魔核を集めている間に、ナビでゴーレムの存在を確認するが、”生物”として認識していないようだ。
10分位待ってから、96階層に向かう事にした。ゴーレムが上がってくる気配がない。大量の残骸を避けながら、96階層に出た。
そこに展開されていた部屋は、ただただ広いだけの部屋だ。他の迷宮ダンジョンの階層主の部屋と違って、天井が高くない。通常の階層と同じ程度だ。俺達の計算では、ここまで広い部屋ではなかった。予想以上に広い。サッカーコートが、4~5面取れるくらいの広さがある。
片隅に目をやると、何か物体がまとまっている。近くまで言ってみると、ゴーレムが居た。壊れているのか、動く様子がない。
俺が作った龍も消えてしまっている。ここは、暫くは安全だと判断して、この施設を調べる事にした。時間を60分として、その間、手分けして調べる事にした。俺は一人でゴーレムが居た辺りを探る。ラウラとカウラは、入ってきた辺りを、中心に探索を行ってもらう。アンとヒルダは、俺が居る反対側の壁に移動して探索を行ってもらう。ナーテとルトは、ラウラとカウラの反対側に、次の階層への階段が、あるか調べて貰ってから、辺りを探索してもらう。ヴァルマとフルールとテディで、俺が探している壁沿いを調べてもらう。
エステルは、俺の頭の上で、船を漕ぎ始めていたので、そのままにしておく事にした。
45分位経った頃に、アンとヒルダが戻ってきた。「アルノルト様。少し見て欲しい物があります。テディにも確認して欲しいです」
何かあると困るので、皆が揃うのを待ってから、アンとヒルダが見つけた場所に移動した。
「アル。これなのだけど・・・」
壁には、筐体が置かれていた。そう、よくゲームセンターに置かれている。100円(俺の住んでいた田舎では、古い基盤のゲームが10円でできた)入れて遊ぶあれだ。子供の時に、オヤジが基盤を何枚も買ってきていたな。家の中にある筐体につなげて、遊んでいたのを思い出す。家の中に、ゲーセンの筐体がある。ファ○コンを買ってもらえなかった。子供だったが、筐体がある家は、近くには自分だけだったので、少しだけ誇らしかった。
完全に横道だな。そんな事を思い出させる筐体があった。思わず座って起動してみようかと、テーブル型の筐体の下に手をのばす。大体、この手のテーブル型の筐体のスイッチは、右下部にある。お金を入れる場所の下の方にある筐体が多い。
電源を入れようとする手を、テディが止めた「主様。何を・・・」「ん?生き返らせようかと思っただけだよ」「今は、止めておいた方が良いかと思います。もし、そのアーティファクトが、ゴーレム達を産んでいるとしたら、この迷宮ダンジョンを攻略する前に、また襲われたら・・・」「そうだな。後の楽しみにしておこう。それに、テディの言うことは正しいかもしれない」
「そうじゃな。わらわが見ていた所で、さっき襲ってきた物達が、動きを止めていた。ここでうまれたのじゃろ」「あぁそうだよな」
一旦話を切って、皆を見回す。俺だけが、筐体に"火”を入れたいらしい。生き返らせたいと強固に言えば、渋々ながら賛成してくれるだろう。ここは、一旦我慢する事にした。迷宮ダンジョンを攻略してからでも出来るだろう。
そういう事で、97階層に移動する事にした。そして、さっき”火”を入れるのを止めた、テディとフルールを褒めてあげたい気持ちになった。
「これが・・・」
ヒルダはそこまでしか言えなかった言葉を発したのは、ヒルダだけだ。
96階層と同じ位の広さだろう。そこに、甲冑が並んでいる。よく見ると、これもゴーレムのようだ。数は、およそ3万・・・いや、6万はいるかも知れない。それが、動きを止めて、佇んでいる。そして、やはり、筐体が置かれていた。間違いなく、ここで、ゴーレムは作られている。エステルが奇妙な事を言い出した。部屋の中心部分にだけ空白地帯があるという事だ。それも気になるが、やはり筐体が気になる。さすがに、これだけのゴーレムを見てしまうと、”火”入れをする気は起きない。しかし、今度のゴーレムは、先程までのゴーレムと形が違っている。何か、理由でもあるのだろうか?
壁沿いを通りながら、98階層/99階層と進んでいく。恐ろしい事に、97階層と同じように、ゴーレムが並んでいた。99階層もスルーして、さらに下の階層に向かう階段を発見した。
100階層にたどり着いた。予想では、ここに制御室があると思ったが、予想は外れていた。まだ、ゴーレム工場が続いていた。今度のゴーレムは、飛行型の様だ。それも、確実に俺がしっている形だ。今まで見てきたゴーレムを考えてみる。かなりの悪趣味な話だが、アーケードゲームで見たことがある形をしている。その考えが正しければ、この階層にも筐体が置かれているのだろう。多分、最初は”魔界○”系だろうか?次が”ドル○ーガ”系かと思う。筐体か基盤を調べれば解るだろう。そして次の獣が多かったのは"サファリ○ント”だろうか?99階層に並んでいたのは、”蟲○”か?ボスらしき物に見覚えがあった、弾幕ゲームとして散々やりこんだ記憶がある。100階層の飛行型は、”沙○曼蛇”だろう。
リアルでゲームが出来るのなら、すごく楽しいだろうが、そういうわけではなさそうだ。
101階層に足を踏み入れた。ゴーレム工場ではなさそうだ。一本道が続いていて、横に小部屋が並んでいる。慎重に進む。部屋の中を見るが、ゴーレムが居るわけでも無く、普通の部屋だ。ただ、何かしらの商談が行われていたような雰囲気がある。中央にテーブルが置かれていて椅子が並べられている。俺が、そこを商談していたのではと思ったのは、部屋の入口に対して、水平にテーブルが置かれている部屋と、垂直に置かれている部屋がある事だ。そして、垂直に置かれている部屋の入口は中央ではなく、右端か左端になっている。明確に、上座が作られているのだ。部屋の数は、片側15部屋の合計30部屋。広さは、バラバラだし、作りも違うが、使い方や訪問者で分けていたのだろうか?迷宮ダンジョンの最下層だと思われる付近で、そんな事打ち合わせをしていたとは思えないが、部屋は事実存在している。
道なりにまっすぐ進むと、前世の記憶の様なエレベータホールが目の前に現れる。そして、道は、来た方向を入れて、4方向に伸びている。
これが、この迷宮ダンジョンの秘密なのか?中央を貫くように、エレベータでも設置しているのか?
動かし方もわからない上に、動いているとも思えないので、下層に伸びる階段か、制御室を探す。見渡す限り、階段は見当たらない。
「アル!階段が有ったよ!」
アンとヒルダが階段を見つけたようだ。皆でそこに駆けつける。一番奥の部屋に階段が仕込まれていた。
102階層に降りる。階段を降りると、そこには、ドアが有った。ドアは、引いても、押しても開かない。ノブをひねってみたが、回った感触がない。何かしらの認証システムでも組み込まれているのか?
ドアの前で考えていると、ヴァルマが来た「あるじはどうしたの?」「ヴァルマか、ドアが開かなくてな。多分、この奥が制御室だと思うから、壊して入るのは、最終手段にしたいと考えているのだよ」「へぇこのドアを開ければいいの?」「あぁそうだな」
ヴァルマが、ドアノブに手をかけて、横にスライドした・・・。開いた・・・。押すでも、引くでもなく、引き戸だった。それも、立て付けが悪いのか、ヴァルマ位の身長130cmの人間が、少し下に引っ張りながらでないと上手く開かない。
「あるじ!開いたよ!」「あっあぁぁヴァルマすごいな」「うん!」
ヴァルマの頭を撫でてやる。ドアの先も部屋だ。
今度は、よく見た感じだ。その先にもドアがある。
認証を行うのだろう。ドアに手をかけると、いつものようなインフォメーションが流れる。そして、俺が認証された。やはり、持ち主が居なくなってしまった、迷宮ダンジョンだったようだ。
そして、制御室に入った。「あるじ殿。ここが、制御室?」「あぁそうだ。ヒルダ。アン。いつものように、探索を頼む」「わかりました」「了解!」
「ラウラ。ルト。ナーテ。他に部屋がないか探してくれ。ここも、今までと同じ様な気がする」「「かしこまりました」」「にいちゃん。おいらも、探していいの?」「あぁ頼む」「うん。わかった!」
「カウラ」「はいにゃ」「危険がないか、外の様子を見ていてくれ」「わかったにゃ」
「ユリアンネ」「本や資料を探してきますね」「あぁ頼む。フルールとヴァルマも、ユリアンネを手伝ってくれ。エステルも起きているのなら、手伝ってやってくれ」
「テディ」「主様。解っています。施設の調査をしましょう」「あぁ頼む。生き返らせる事が、出来るかを先に確認しよう」
ここにも、パソコンが設置されていた。なんと、あの名機”X68○○○"と”X○Turbo”ターボは、TurboIとIIとIIIとZがあった。そして、まさかのM○-1500だ!ゲーム作りに特化したパソコンが置かれていた。でも、これでなんとなく理解できた、ここが、筐体が置かれていたり、ゴーレムがゲームのキャラクターだったりした理由が・・・。メインは、MZなのだろう。
「テディ。ここのアーティファクト達は、魔力切れ?」「そのようです」「わかった」
まずは、MZに魔力を注ぐ。暫く待っていると、どくときの起動音が鳴って起動した。もとの機能では、認証はなかったと記憶しているが、起動後に認証画面になる。初期起動設定を行わなければならないようだ。やはり、MZで当りのようだ、名前を求められたので、ノースと名付けた。
その後、順次端末に魔力を注いでいく。いつの間にか、フルールとエステルが興味深そうに見ている。ヴァルマは、文字ばかりの資料を見ていて、眠くなってしまったようだ。
全部を起動してから、筐体があった部屋に戻る事にした。復活したモニターで階層を、見てみたが問題はなかった。
X64Kは、HDD付きの、SUPER-HDだった。俺が欲しかった奴だ、これで、BBSを開局したかった。SUPER-HDを起動した所、壁に付けられていたスクリーンに、迷宮ダンジョンの様子が映し出された。
パソコンの役割を、調査するのは後日にして、筐体の階層がどうなっているのかを見てみると、何も変わった様子はなかった。
筐体の部屋に移動しようとした所で、ユリアンネから反対の声が上がった。危険があるかも知れないから、最低でも、ラウラとカウラは連れて行って欲しいという事だった。俺も、それに素直に従う事にした。暫く、端末で遊んでいると、ラウラが帰ってきた、部屋の外に出ていた、カウラを伴って、筐体の部屋に移動した。筐体に"火”を入れると、やはり認証を求められた、いつものように認証を行うと、基盤が起動した。
やはり、これでゴーレムを作っていたようだ。”火"を入れると、流れ作業で、ゴーレムが産まれてくる。動き出す様子はない。他の階層も同じだ。空いているスペースにゴーレムが産まれてくるが、それだけだ。
筐体に"火”を入れた所で、一旦制御室に戻る事にした。戻ると、ヒルダとアンが戻ってきていた。
「アル」「アルノルト様」「ん?どうした?」「すごいよ」「すごいですよ!」
二人に引っ張られるように、ひとつの部屋に入った。何の変哲もない部屋だと思っていたが、そこには、さらに下層に降りる階段が有った。

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