【旧】魔法の世界でプログラム

北きつね

北の迷宮

王都の宿は決めていない。学校での寮を使っていいと言われている。「ラウラ。カウラ。寮にするか?」「アル様。人数が増えていますので、ライムバッハの屋敷にしては、どうかと思います」
ラウラから、そう提案されて、少し考える。確かに、寮よりも、屋敷の方がいいような気がする。
「そうだな。あそこなら、全員泊まれる?」「大丈夫かと思います」「そうか、ラウラ。悪いけど、ユリアンネ達と一緒に、屋敷に行ってくれ。俺は、ヴァルマを神殿につれていく」「かしこまりました」
もう一つ、俺にはやるべき事がある。
「その後、冒険者ギルドで依頼を受けてから帰る」
何か、フルールが考えていたようだ「あるじ殿。それならば、わらわとヴァルマで神殿に行ってくる。アン殿に、道案内をお願いすればいい。あるじ殿は、冒険者ギルドに行けばいい」「そうだな・・・。そうするか、アン頼めるか?」「ん。了解」
これで、三方向に別れる事になった。アンとヴァルマとフルールで、神殿を回る。ラウラとシュトライト達は、ライムバッハの屋敷に行く。俺とカウラとヒルダで、冒険者ギルドに行く事になった。
冒険者ギルドに来たのが、すごく久しぶりのような気がする。指名依頼を受けに来たと、名前を告げると、すでに情報が廻っているのだろう。そのまま、奥の部屋に通された。受付をしてくれた人が、そのまま説明をしてくれた。依頼は、”皇太子”からとなっている。内容に関しては、クリスから言われている通り、”北の迷宮ダンジョン"の探索だ。施行条件も失敗条件も、記載されていない。報告方法だけが指示されていた、迷宮ダンジョンから帰ったら、”皇太子"に報告を行う事と、添えられていた。
なんとなく、どういう経緯で話が進んだのか、想像できる指示になっている。指名依頼でもあり、条件は悪くない。今回も、この探索で得た物の権利は、全て”発見者”に帰属する事になっている。それだけではなく、北の迷宮ダンジョン自体の所有権を主張する事も出来そうだ。
ギルドで、手続きを終わらせてから、一旦、屋敷に戻る事にした。
王都に住む者達が屋敷の準備をしていた。急なことだったが、受入は可能だという事だ。
皆と合流してから、ラウラとルトとシュトライト達に、食料と武具の調達を頼んだ。俺は、ひとまず、父さんが使っていた部屋に移動して、ナビを起動した。場所の情報を、記憶させて、ステータスプレートに配置しておいた。使う事は無いだろうけど、最悪、屋敷に戻ってこられるようにしておいた。
時間ができたので、王都で暮らす者達から、王都の様子を聞く事にした。ザクッとした形の聞き方になってしまったが、”最近、王都で何か変わった事ってある?”と聞いている。皆少し遠慮しながら、”物価が少し上がっている””以前よりも、傭兵をよく見かけるようになった””獣人や亜人を、見かける事が少なくなった””教会関係者がよく尋ねてくる”等々、少し前とは違ってきているという話だ。特に気になった話では無いが、物価が少しずつ上っているのは気になる。贅沢品が高くなるのはある意味しょうがないけど、食料品が高くなっていくと、住みにくくなってしまう。
迷宮ダンジョンから帰ったら、皇太子と会う事になりそうなので、聞く事にしよう。帝国の動きも気になるし、妖精の涙フェアリーティアを国と、どう考えているのかを聞くチャンスなのかも知れない。
そんな事を、屋敷の者達の、話を聞きながら考えていた。
夕ご飯に時間少し前に、アンとヴァルマが帰ってきた。今回は、降臨なんてイベントは無く、素直に加護を得られたと行っていた。
ヴァルマもしっかり魔法制御と精霊の加護を得る事ができたようだ。名前:ヴァルマ・リューデル魔法制御:0.43精霊の加護 風の加護:0.33 武の加護  剣の加護:0.41 守の加護  盾の加護:0.32と、平均よりも少し上という感じのステータスになっている。魔法に関しては、これから、毎日訓練する事で、1.00を越えてくるだろう。もしかしたら、風の上位加護にあたる、雷の加護まで行くかも知れない。剣と盾が芽生えたので、前衛職を担当する事になる。実際には、まだまだ弱くて俺達のパーティでは守られる側だが、鍛えていく事で、加護としては申し分ない感じだ。ヴァルマは、風の加護が使える事がよほど嬉しかったのか、早速、武器と防具を買いに行ってきていた。それで帰りが遅くなった様だ。
副産物として、アンとフルールが、買い出し部隊と合流したので、より買い物が捗った位だろう。
皆揃って、屋敷の食堂で、夕ご飯を摂る事になった。シュトライトやエードルフ達は遠慮したが、俺が別々にするのも面倒だから、気にしないで食事にしろと命令する事で、座席についた。
明日からの行動の確認を行う。迷宮ダンジョンに潜るパーティは俺/ラウラ/カウラ/ユリアンネ/アン/ナーテ/ルト/ヒルダ/フルール/ヴァルマと、なっている。ついでに、テディとエステルも一緒に行く。パーティは、二つに分ける事にした。俺とラウラとカウラとユリアンネで、攻略組とする。アンとヒルダとナーテとルトヴァルマとフルールで、後衛組として、迷宮ダンジョン内のバックアップを行う事になった。食料などは、ステータス袋の中に入れておくが、野営地の設営などの作業が必要になる。それらを、バックアップが行う事になる。
テディは、ヒルダが持っていく事になる。エステルは、俺の肩に捕まっていくと話していた。
外で、馬車と迷宮ダンジョンの入口を守る役目を、シュトライト達が行う事になった。
迷宮ダンジョンがどの程度の階層まであるか解らないが、いままでの感じだと、50階層だと考えれば、最低でも、1週間は潜りっぱなしになる。階層が倍あるとしたら、2週間は必要になるだろう。潜ってみないと解らない出たとこ勝負になってしまっている。その為に、シュトライト達が野営する地点もしっかり構築する必要があるという結論になった。
具体的には、明日出発してから、迷宮ダンジョンにたどり着くまでに2日程度は、いつもと同じ感じで、進む事が出来る。
その後、迷宮ダンジョンの近くで安全が確保できそうな場所に、野営地を設営する。シュトライト達には、最低往復で1ヶ月間待っていてもらう事になる。
その間。王都に戻ってきてもいいが、どうするのかと聞いたら、”ボス達を待っています”と、いう返事だった。階層が浅ければ、すぐに帰ってくるだろうし、深くても、1ヶ月では必ず一旦戻ってくるという感じになった。
シュトライト達の為に、ゲームも野営地に持ち込む事になった。食料は、全員が2ヶ月間食べられるだけの量を、用意した。
明日は、朝日が上る前に出発する事にした。北側の出口は、普段は閉められているので、王城に一度行ってから、開けてもらう必要がある。それは、ヒルダにお願いした。俺とヒルダで、王城の詰め所に寄って、開けてもらう事になりそうだ。
今日から、ヴァルマにも寝る前に魔法の訓練を、行うように言ってある。強い魔法である必要はなく、自分の限界を知るために必要な通過儀礼だと話してある。
俺達の中で、風魔法が上手く使えるのが、ラウラだったので、ラウラにヴァルマの相手をお願いした。
シュトライト達も、王都までの旅程で、休める時には、限界まで魔法や武技を、使ってから休むようにしていたら、魔法制御が徐々に上がってきていると報告があったので、やり方的には、間違っていないだろう。実際に、俺もまだ魔法制御が上がっている。聖獣の5名が、”もう上がらなくなっている”と、話しているのが、少しだけ気になっているが、気にしてもしょうがない事なので、頭の片隅に置いておく事にする。
それから、俺としてはすごく大事な事だったが、ヴァルマは"男の子”だった。一緒に風呂に入るというミッションをクリアした事で、判明した。そして、素地がいいのだろう。計算は、四則演算全てはまだだが、加減算は問題なく出来る。迷宮ダンジョン攻略しながら、ヴァルマとナーテに勉強を教えるのも悪くない。
明日が早いので、今日はそれぞれ起きていないで休む事にした。

翌朝、ラウラに起こされた。そのまま着替えをして、食事をしてから、出立の準備をする。
俺とヒルダは、決めた通りに、王城に向かった。皆は、門の近くで待機してもらった。北の門は、比較的簡単に開けられた。
俺が、ギルドからの依頼だという事を告げて、俺の名前を伝えると、すでに話が通っていて、すんなりと開けてもらえた。帰りの予定を聞かれたので、1ヶ月後だと伝えると、城壁を出て、外に詰め所があるので、門番がいなかったりしたら、詰め所にある魔道具を使ってくれという事だ。そうしたら、最悪翌日には、門を開ける準備を行うという事だ。
北の門を抜けると、目の前は一本道なのか、森の中を一本の道が貫いていた。大型の馬車が3台通れる位の幅の道があるだけで、他は辺り一面”木”だ。森が濃いとは聞いていたが、ここまでとは想ってもいなかった。そう言えば、王都で高い建物がないから、上から見下ろす事がなかった。北の門を出ると、”森”と表現するのが正しいのだろうけど、今までの森とは、明らかに違う”森”が広がっていた。
広さだけでも、最大級だろう。エルブンガルドがある森も広かったが、エルフ達の手が入っているのだと、ここまで濃いという印象はなかった。それだけではなく、多分”魔素”が濃いのだろう。不思議と街道はそうでもないが、一歩森に入ると、雰囲気が違ってくる。
森の中には、獣だけではなく、魔物も居るようだ。ナビの索敵を起動して待ってみると、街道から少し奥に入った場所に、生き物が居る事が解る状態になっていた。
それでも、二台の馬車は、順調に進んで、予定通りに、迷宮ダンジョンが、あると言われた位置まで、移動する事ができた。ここに、迷宮ダンジョンが、あると仮定しているが・・・。
「アル様。ここでしょうか?」「多分だけどな。テディ。どうだ?」「う~ん。多分、ここだと思う」「って事だ」
皆の顔が困惑しているのが解る。実際に、俺も困惑している。しかし、ここしか考えられない。道の終着点である事から、ここが目的地である事は間違いなさそうだ。
そう言えば、依頼票には、クリスの話も、”迷宮ダンジョン”の攻略としか教えられていなかった、迷宮ダンジョンがどういった形状ナノ化を聞いていなかった。
俺達が困惑しているのも、うなずける光景だと思う。目の前には、崩れた城壁だったと思われる物に、覆われた、かつては街だったであろう、場所が広がっている。その中心地に、崩れて、原型を留めていないが、かつては教会や神殿と呼ばれていたであろう、建物があった。

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