【旧】魔法の世界でプログラム

北きつね

旅程

ヘーゲルヒの街で行う事を終えた。本当に、終わったと思っていいのだろうか?
辺境伯への伝言は、”自然な形”で辺境伯の屋敷に届くようになっている。実際に手を動かしたのは、ギルとザシャなわけだが、二人が大丈夫と言っているので、大丈夫なのだろう。
俺は、移動魔法の”正常系”をもう少し工夫している。魔力を抑えるというよりも、演出や安全性を上げる方面だ。”異常系”に関してもある程度は組み込んだ。後は、”例外”をどこまで考えるか?と、いう事にある。エラー抑止があれば、楽はできそうだが、探したが、そういう物は見つからない。命令自体の記述は出来るようだが、想像しているような動作にはならない。その為に、”例外”も考えていなかければならない。今の所、俺だけが使う事が前提なので、手順通りに使うし、問題は無いだろう。もし、使うとしても、特定多数の人間だし、馬鹿な事はしないという約束を、最初に握ることは出来る。
そんな事をしていたが、コンラートの屋敷に関しての、処置を忘れたわけではない。ルネリート夫人は、デリアと言うらしい。デリアは、もともと、侍女をしていたが、ルネリートが辺境伯の命令で、第一夫人を迎えてから、側室になった。男女二人の子供を作ったが、第一夫人が”謎の失踪”で居なくなってしまってからも、側室のままになっていた。本人は、それでも良いと思っていたらしい。
今は、子供たちと離れて、マナベ商会で、店番を行う為の教育を受けている。簡単な計算が出来るので、店番には持って来い。子供を人質に取っている形になっているので、信頼も出来る。あと、側室で表舞台に、出ていなかった事もあり、ルネリートの関係者だという事は、バレていない。どうせ、辺境伯が元気になれば、バレてしまう事なので、開き直る事にした。
大幅に陣容が変わってしまったので、一日かけて、王都に向かう者。ライムバッハに向かう者。ヘーゲルヒに残る者を、分ける事にした。やはり、シュトライトとエードルフをヘーゲルヒに残って貰う事はできなかった。いつの間にか、ザシャ達を味方につけていた。御者も必要だし、一般常識的に考えても、居たほうがいいだろう。ヴァルマも”ダメと言われても付いていく”と言っている。エステルは、俺の肩に安住するようだ。俺が無意識に垂れ流している魔力が、心地よいという事だ。問題なのが、フルールとザシャがすこぶる仲が悪い。種族的には、仲が悪いという事はない”らしい”。目の前の状況では、そんな事はないと断言できる。そのフルールは、俺の従者だと言い張って、付いていく事を強く主張している。
ディアナは、ライムバッハに戻る予定だったが、父親と兄に頼まれて、暫く、ヘーゲルヒに残る事になった。主に、俺との連絡係だ。それを聞いた、ザシャが、ディアナと一緒に残る事にしてくれた。コンラートの私兵だった者達が、エルフと契約する形で、商店を警護してくれる事になった。シュロート商会も、ギルが連れてきた護衛と現地でやっと護衛で守る事になったので、概ね大丈夫だろう。エルフとドワーフからも数名護衛に加わる事になっている。そして、ポケコンを一つここで使う事にした。迷宮機能を外して、結界を張る機能に特化させた物を組み込んだ。それを、ザシャに渡して、何か有った時には、皆を商会に集めて、起動して欲しいとお願いした。
ライムバッハには、ギルが向かってくれる事になった。ユリウスとクリスに、渡すものがあるという事だ。ギルが、亜人達と子供とエルフの奴隷を連れて、行く事になる。護衛は、デブレールやルネリートの私兵となっていた奴らで、奴隷紋を受け入れた男を家族共々連れて行く事になった。総勢200人にもなる商隊だ。
森で拾った男達は、俺に絶対の忠誠を誓うと言っているし、裏切られても、困った事にはならないだろう。人手不足でもあるので、シュトライトとエードルフの下に、3名ずつ付けて、護衛の形を取る事になった。
問題になったのが、非合法の奴隷市場に参加した奴隷商が連れていた、商品になってしまっていた者達だ。帰る場所があったり、帰りたい場所がある者達は、旅費を渡したので、すでに、その場所に向かっているだろう。護衛を雇えるだけ金も渡したので、大丈夫だろう。しかし、残された者達が、結構多い事だ。村ごと襲われたり、里ごと連れてこられたり、そんな状況になってしまっていて、男手の殆どを殺されてしまって、復興出来る見込みがない”らしい”。村や里として、まとめる者が居ない状況になってしまっている。そのような者達が、100名以上居るのだ。結局、ライムバッハ領に送る事にした。キャパ超えは、ユリウスとクリスがなんとかするだろう。
クリスに、一報だけ入れておく事にした。そして、100名も、ギルにまかせて、一緒に連れて行ってもらう事になった。ヘーゲルヒの街には入ってきていないので、一度ライムバッハとは反対方向に進んで、そこで、まとめ上げてから、再度ライムバッハに向けて出立する事になっている。俺も、その場所までは一緒に行く事になっている。捕えている奴隷商の処分をしなければならないからだ。
さて、準備も終わった、さっさと寝て、明日に備える事にしよう。

今日から、俺付きの従者として、ヴァルマが付くことになった。これは、妥協に妥協を重ねた結果だ、俺としては、従者は必要ないと思っていた。そうしたら、フルールが部屋に、ついて来ようとした。曰く「わらわは、あるじ殿の物だから、常に一緒に居る」との事だしかし、これをザシャが許さなかった。それなら、自分も一緒に寝ると言い出した。二人を追い出す事ができたが、今度は、アンが部屋に居座ろうとした。曰く「アルも身分的な事を置いておいても、従者の一人や二人付けていなくては、今後困る」との事だ。一利有ったのが、さらに問題になった。今度は、ルトとフルールとザシャが言い争う事になった。ザシャは、それなら、エルフ族から人を出すという。それなら、自分でもいいではないかというフルール。前から、やっている自分こそが一番で、武力もあるから・・と、ルト。
収拾がつかなくなってきたので、俺が、暫くの間の従者をヴァルマに決定した。年齢は、8歳だという事だが、まだ”加護”を確認していない。途中の街で、加護が受けられそうなら、受ける方向で話をした。できれば、王都まで行って、王都で受けたほうが良いのだろう、そのあたりは旅程との兼ね合いで考える事にする。
ヴァルマに起こされて、食事を取ってから、外に出た。俺と一緒に王都を目指すのは、ルト/アン/フルール/ヴァルマ/シュトライト/エードルフと6名となる。結構な大所帯になってしまった。恨めしそうに見ているギルの視線は無視させてもらう。
「アル。もう大丈夫なのか?」「あぁギルは?」「どうとでもなれって感じだな」「悪いな。他に、頼れそうな人間が居なくてな」「いいって、俺も商会も、アルには世話になっているからな」「そうか?」「あぁ王都に行ったら、オヤジに会いに行ってくれ」「わかった」「歓迎するって言っていたからな」「そりゃぁ楽しみにしておくよ」「あぁそろそろ行くか?」「あぁ」
昨日の段階で、ディアナに渡していた、ナビをギルに渡した。使い方も一通り説明してある。ナビにも容量的に余裕があったようで、配置が使える事が解った。裏側のOSもわかっているので、出来るだろうなと思っていたら、簡単にできた。メモリにも余裕があり、少し重めの処理もこなせるようだ。そして、もともとのナビを拡張する事ができた。これは、組み込み系のプログラムと同じ容量で、接続した事で、インタフェースを見る事ができた。
そして、ポケコンと同じように、通常のプログラム上から、配置している”魔法”を呼び出す事に成功している。エルブンガルドから得た事は、俺に取って”最高”の成果だといえる。開発が楽しく行えるようになってきた。
「アル。これ、本当に大丈夫なのか?」「これって、ナビ?」「あぁ」「大丈夫だって、攻撃系の魔法は一切組み込まれていない。防御系と補助系だけだよ」「そうか・・・ユリウスに渡せばいいよな?」「そうしてくれると助かる。ライムバッハに着いたら連絡くれよ」「わかった」
人が集まるのを待って、ヘーゲルヒの外に向かった。ザシャとディアナも見送りに、来てくれた、ザシャに、携帯電話を渡しているので、何かあったら連絡くれるように言ってある。
「アル!」「解った、先に行っていてくれ、すぐに追いつく」「わかった」
ギルは、一部の者を連れて、奴隷商を捕えている場所に、先に行っていてもらう。
「ザシャ。頼むな」「うん。アル。注意してね」「あぁわかっている」「本当に?フルールとかいう黒い奴は近づけないようにね」「わらわの事か?白いの?」「そうだよ。ねぇアル。この黒いのだけでも殺さない?」「二人ともいい加減にしろよ。フルールも言っただろう。ザシャは、俺に取っては、大切な人間だと」「あるじ殿。そう言っても、この薄っぺらい胸で」
フルールは、そこまでしか言うことが出来なかった。ザシャが、短剣をフルールの喉に突き刺そうとした。
「はぁ解った。解った。フルール。それ以上言うようなら、お前も、ライムバッハに送る事にする」「申し訳ない。あるじ殿。許してたもれ」「それから、ザシャ」「なにかな?アル?」「いや、なんでもない。それよりも、頼むな。多分、ヘーゲルヒの街は、まだまだ安定しないだろうからな」「うん。エルフ族の為にも、守るべき場所は解っているよ」「あぁ何かあったら連絡をくれ」「うん」
ザシャとディアナと握手をして別れた。
用意された馬車に乗り込む。「アルノルト様」「出してくれ。急がなくてもいいよ。どうせ、ギルもいろいろやる事が有るだろうからな」「かしこまりました」
暫く馬車で走ると、一つの集団が見えてきた。街道から少し外れた場所で、屯しているのがわかる。
「ギル」「あぁ早かったな。こっちは終わったぞ。後は、奴隷商をどうするか、だけだな」「了解。そっちは、こっちで引き受ける」「頼むな。それから、ヒルダ嬢から連絡が来たぞ。この先の街で待っていると言っていたぞ」「え?なんで?」「ん?お前と合流するためだろう?ラウラやカウラやユリアンネやナーテも一緒だって言っていたぞ」「この先の街?避けたら怒られるだろうな」「あぁ確実にな。なんか、クリスが、ヒルダ嬢に、お前への伝言を頼んでいるって話していたぞ」「・・・直接、俺に言えばいいのに、なんでそんな手間がかかることを・・・」「さぁなぁ。まぁしっかり伝えたからな」「あぁ解った。街を避ける事に決めた!」「何も解っていない。アル。頼むぞ、俺が怒られる」「そうだな。聞かなかった事にした方が、被害が少なくて済みそうだな」「・・・おまえな。ヒルダ嬢は別にして、ユリアンネやラウラやカウラから逃げられないだろう?」「たしかにな。諦めるしかなさそうだな。戦力が増えるのは純粋に助かるから・・・いいのだけどな」「そうだな」
ギルは、早々に出立するらしい。結局、合計400名にも届きそうな大所帯だ。亜人やハーフも居るので、目立つ集団になってしまっている。子供が多いのも、野盗や盗賊が襲いやすそうに見えてしまう。それらを考えると、多少強行軍になっても、昼間に距離を稼いでおきたい。最悪の事を考えて、ギルのステータス袋の中身には、食料を大量に詰め込んである。
「アル」「あぁごめん。さぁってと、ゴミを片付けに行くか!」「なぁあるじ殿。そのゴミども、わらわとヴァルマに始末させてもらえないかえ?」「どうして?」「あぁ同胞を殺されたという事もあるが、あるじ殿がわざわざ手を下すほどの事もないと思っていな」「あっそうか、う~ん。できれば、心を折って、俺に味方させたい。今後、本当の敵になるであろう、やつらの情報を調べるのに、裏の情報網がほしいからな」「それなら、そういう風にするぞえ。そうだな、アン殿とルト殿に協力して貰えば、出来ると思うぞえ」「う~ん。アン。ルト。大丈夫か?」「大丈夫」「ご命令いただければ」「そうか、フルール。アン。ルト。奴隷商の心を折って、俺に忠誠を誓わせろ。面倒なら、殺しても構わない」「「かしこまりました」」「うん。了解!」
3人は、奴隷商を集めている場所に移動した。俺は、シュトライトとエードルフとヴァルマで、模擬戦を行って待っている事にした。人数が増えた事もあり、いろいろなシチュエーションを作る事が出来るのは嬉しい。俺とヴァルマだけで、シュトライト+3名の相手をしたり、ヴァルマを6名で守らせて、シュトライトとエードルフで戦わせたり、いろんなパターンを試す事が出来る。模擬戦と言っても、かなり本気だ。俺が、回復魔法が使えるので、軽傷なら治せる。腕を切り落とされても、ルトが居れば治す事が出来る事はわかっている。そんなわけで、徐々に激しくなっていく。魔法ありでの訓練も行う事がある。俺がほぼ全属性が使える事から、魔法への対処を含めた模擬戦も行う。6名の男たちも、俺の事を「ボス」と呼ぶようになっている。賃金的な事もあるが認められたような雰囲気がある。裏の事情にも通じているので、これから汚れ仕事なんかも出来るようになっていくと思う。6名の中でも、ボス格なのがアヒムだ。重戦士という感じで、全体の盾役になっている。初期魔法が使える、ベノンが知恵役となっていたらしい、2属性が使える天才だと思われていたが、俺達に出会って、そんな気持ちは吹っ飛んだと笑っていた。クルトは、斥候役で、そちらの技能が優れている。弓矢を使っているが、隠密行動中は短剣を使う事が多い。
デニスは、アタッカーだ。もう見事なアタッカーだと言える感じだ。取り敢えず突っ込めばなんとかなると想っている感じがする。もう一人のアタッカーが、エッボだ、アタッカーというよりもバーサーカと表現した方がいいような戦い方を好むが、それはスイッチが入ったときだけのようだ。普段は、普通に片手剣を使っているが、スイッチが入ると、両手剣に変わる。ゲッツは、魔法師だ。こちらも2属性が使える。光と水だ。軽傷程度なら治せるらしい。
ゲッツとベノン以外は、武の加護や守の加護は持っているが、魔法が使えるようになる加護は持っていない。その為に、魔法制御も低かった。全員に、これから、休む前に限界ギリギリまで、加護を使って、魔法力を使い切ってから休むように指示する。
俺の"鑑定"が、4を越えた辺りから、触れる事で、加護を見る事が出来るようになった。スキルも見られる。数値に関しても見る事が出来る。隠蔽されているものは、見る事ができないようだが、隠蔽の方法を知っている者も少ないだろうから、今はそれでいいだろう。
3時間位、模擬戦を楽しんでいた。フルールとアンとルトが一人の男を連れて俺の前に来た

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