【旧】魔法の世界でプログラム

北きつね

状況報告と確認

「お兄様」「あぁユリアンネか?」「"ユリアンネか"では、ありませんは、昨日お休みにならなかったのですか?」「もうそんな時間なのか?」「おかしな事を聞きますわね。もう朝ですわよ」「え?あぁそうなのか?まぁ大丈夫だろう。今日は、ウーレンフート迷宮に移動するだけだろう?」「はぁ・・・わかりました。ラウラ。今日は、お兄様には強制的にでも眠ってもらいましょう。」「解りました。その為に、ルトの力を借りる事にしましょう。」「そうですわね。それがいいでしょうね。」
どうやら徹夜したのが、よほど気に入らなかったらしい。皆が怒っているのがわかる。徹夜なんて、そんなに珍しい事でもないだろうに・・・。
「それで、お兄様。目的は達成できたのですか?」「あぁブラント迷宮で生成された魔力が、マラブール迷宮にも提供する事ができたぞ。」「それは良かったですね」「方法は・・「あっそれは聞いてもわからないのでいいです。」」
詳細な説明は必要ないようだ。小型サーバをルータに設定して繋げる事で、施設間の接続が出来る。リソースの融通も出来るようだ。ネットワーク的に繋がっていれば、リソースの併合も出来るようだ。実際に、外回りでアクセスした時には、マラブール迷宮にも、ブラント迷宮からアクセス出来る事が確認できた。
今日は、このままウーレンフート迷宮に移動する。98を設置から外して、マラブール迷宮から外した端末を設置する。昨日の今日で、作業をすすめると、本格的に怒られそうなので、今日は移動だけにして、施設の調整だけにして終わりにするつもりだ。
朝食を摂ってから、ウーレンフート迷宮に移動する事にした。そこで、作業の指示を行う。まずは、端末を二台設置する。今までと同じだ。設置した上で、ネットワークケーブルをつなぐ。端末に"火"を入れる。これだけの作業だが、いま的違った緊張感がある。今日は、この後で、98の撤去を考えている。
端末のかどうは問題なかった。ウーレンフート迷宮の端末として認識できたようだ。
98につながっていたネットワークケーブルを外す。端末の両方からエラー音がしだす。一台のディスプレイを見ると、"マスターに格上げしますか?"と、メッセージが表示されている。思った以上に優秀な感じだ。どちらの端末でも良かったのだが、よりスペックが高そうな方を、マスターにする事にした。"構築中....................................成功。施設名を入力して下さい。"と出た、施設名は”ウーレンフート迷宮”として設定した。
これでよし、後は、今日一日状況を見守る事にすればいいだろう。これなら、徹夜にならないし、怒られる事もないだろう。
2台の端末で処理を始めたおかげなのか解らないが、明らかに魔物の産まれる速度が早まっている。まぁこのぐらいなら誤差の範囲だろう。冒険者に頑張ってもらう事にする。
監視を続けながら、設定を少し"いじる"事にした。思考ルーチンをいじってみる事にした。戦っている者も多いが気にしないでおこう。
一通り設定の見直しをしつつ、思考ルーチンを見直した。
「アル様」「ラウラ。解っているよ。今日は、この位にして休む事にするよ。」
周りを見回すと、ラウラしか居ない。
「あれ?皆は?」「はい。下で寝るのもいいけど、たまには、"宿屋で寝る"と言って、ウーレンフートに上がって、宿屋に行きました。アル様はどうされますか?」「面倒だから、ここでいいよ。ラウラも、宿屋に行っていいよ」「いえ、私はアル様とご一緒いたします。」
「(・・・信頼されていないのだね。)」
「え?何かおっしゃいましたか?」「なんでもないよ。ラウラ。」「はい。アル様。もうお休み下さい。」「はい。はい。ご飯は?」「できています。」
ラウラが持ってきてくれた、食事にしてから、寝る事にした。今やらなくてもいい事だけど、気になってしまったのだからしょうがないよね。

朝起きると、傍らにラウラが起きて控えていた。もしかしたら、俺はラウラ達にも無理させているのではないか・・・。もう少し、俺自身が気をつけないと、ダメなのだろうな。
「ラウラ。行くか?」「はい!」
地上に出て、ラウラの後をついていくと、前に泊まった宿屋に入っていった。「おぉ」「お兄様。」「あぁいい。食事をしたら、移動するか?」
「アルノルト様。ユリウス兄様にご連絡しなくていいのですか?」「そうだった。ヒルダ。宿屋の部屋はまだ使えるのか?」「はい。大丈夫です。」
店主に断りを入れた。荷物を取りに行くと言う事にした。
「ユリウス。おはよう。」「あぁアルか。早いな」「ウーレンフートに着いたぞ。昼くらいには、こっちを出るからな」「わかった。ギルがまだ帰ってきていないけど、他は居るから安心しろ。」「そうか、多分3日位で付けると思うからな。」「解った。皆にはそう伝えておく。」「頼む。直接屋敷に向かえばいいのか?」「あぁ大丈夫だ」「わかった。」
連絡を終えて、食堂に降りた。食事を終えて、飲み物を飲んでいる所だ。
「ユリウス兄様はなんと?」「あぁ大丈夫だ。ギルが居ないようだけど、それ以外は揃っているという事だ。」「解りました。それでは、今日にも出発でいいのですか?」「そうだな。一応、ギルドだけは廻っておこうと思う。ルト。ラウラ。アン。頼めるか?」「「「かしこまりました」」」
食料の購入を行った。馬車での移動ではなく、徒歩での移動を行う事にしている。その方が早いという事もあるが、余計な荷物を増やしたくないという事もある。
昼過ぎには皆が戻ってきた。冒険者ギルドに言っていたラウラが少しおもしろい話を拾ってきていた。迷宮ダンジョンの魔物から”魔核”が取れ始めているのだ。使い道もわからないので、一応ギルドで保管する形にしていたらしい。ラウラとルトに言って、すぐに商人ギルドに”マナベ商会”が魔核を買い取る事にしていると通知を出した。最終的には、ユリウスから領主が買い取る事にしてもらった方が良いかもしれない。
職人ギルトと魔法師ギルドは、何も情報がなかったようだ。
皆が揃った所で、ウーレンフートの街を出て、ライムバッハに向かう事にした。最初は街道を進んだが、人目が無くなった場所で森に入って、移動する事にした。出会う獣と魔物を倒しながら、ライムバッハに向かう。途中で、野営地を作成して、休む事2回。予定通り、3日目には、ライムバッハに到着した。徐々に移動速度が上がっているのがわかる。ヒルダとナーテが移動出来るようになってきたことも大きい。テディは、誰かがおんぶしている状態だが、誰も文句を言わない。ぬいぐるみ1個くらいならそんなに負担にはならない様だ。戦闘も、1匹なら瞬殺できている。深層部に行けば違うだろうが、そうではないので、誰が倒すのかを決める時間がかかるくらいだ。
移動を終えて、懐かしのライムバッハが見えてきた。入る前に、ユリウスに連絡を入れておいた。向かえに参上するという事だったので、待っていると、ルステオが駆け寄ってきたのが解った。「アルノルト様。ユリアンネ様。おかえりなさい。」「ルステオも元気そうだな」「はい。カール様のご成人までは、現役で居る事を誓っております。」「そうか、心強いな」
「アルノルト様」「どうした?」「いえ、お変わり無くといいたかったのですが、なんというか・・・。」「変わっていないと思うけどな。」「いえ、お姿は何も変わっておりませんが、雰囲気が・・・・。一気に、お父様にお近づきになられた様に思えます。」「そうか?」「はい。あぁ皆さんが、お待ちです。あちらに馬車を用意しております。急ぎましょう。」「ありがとう。」
ルステオが用意した馬車に分乗して、屋敷に向かった。
屋敷の前では、ユリウスとクリスが待っていた。
「ユリウス!」「アル!」
「お二人は全く・・・。ヒルダ。おかえり。皆さんもお疲れでしょう。話は、一息着いてからにしましょう。」「クリス姉様」「悪いな。クリス。いろいろ報告があるから、長めに時間が必要かも知れない。」「解っていますわ。カール様は、ギードとハンスが面倒を見ていますわ。」「そうか、それなら良かった。」
屋敷の中に入った。数ヶ月では変わる事もないが、学生の時以上に、長い間、離れていたような気分になってしまっている。
食堂で一息着いた。皆が着替えを済ますのを待っている。
「そう言えば、ユリウス達もここで生活しているのか?」「もう、俺達の執務室兼住居になる屋敷が完成したから、そっちに移動しているぞ。こっちは、カールとイーヴァとギードとハンスが交代でいて、それ以外はもともとの人間だけだな」「そうか・・・。まぁそのほうがいいだろうな。」「あぁクリスもそのほうがいいだろうという事でな。新しく作った孤児院の人材から、乳母に良さそうな人間を選んで、来てもらっている。おまえが希望した、貴族社会よりも、一般市民の生活に近づけてほしいという要望通りにな」「すまん。」「なぁにいいって、それよりも、アル。何があった?」
俺以外には、ラウラとカウラだけが戻ってきていた。ユリウス達は全員が揃っているようだ。「ふぅ・・・そうだな。まずは、簡単な事から話をするか・・・。」
共和国に入って、ナーテの村を見に行く過程で発生した事を話した。その中で、妖精の涙フェアリーティアの名前やクラーラやエタンやブノアの名前が出てきた事を話した。
「アル。それは」「あぁ本当だ。でも、今はこの話は置いておく、後で、相談と合わせて話をしたい。」「わかった。」
それから、ブラント村に昔迷宮ダンジョンが有ったと話をした。
ナーテとルトが丁度戻ってきた。テディも抱きかかえていた。
「アル?」「あぁすまん。そのブラント村の村長の"娘”だったのが、ナーテだったのだが、ナーテは、フランケンシュタイン博士の子孫だったらしい。」
皆が言葉を失っている。やはり一度に与える情報は少ないほうが良いのだろうか?ナーテを見ると、にこやかに笑っている。よく見ると、テディがおとなしく椅子に座っている。
「アル?」「なんだ?」「フランケンシュタイン博士の子孫だったという話は本当だとして、なんだ、その熊は?」「ん?テディの事か?」
「ねぇアル?もしかして、ナーテが女の子だって、その時まで知らなかったの?」ザシャの鋭いツッコミが入るが華麗にスルーさせてもらう。本筋はそこではない。
「テディ。いいぞ、ここに居るのは、俺の仲間だ。」「主様。解りました」
「なっ?」「え?」「どういう・・。」「精霊?違う?なに?」
「テディは、そのブラント迷宮の中に居た。フランケンシュタイン博士に助けられたでいいよな?まぁそんな事で、ブラント迷宮の管理をしていた。」「ちょっとまて、アル。ブラント迷宮は、なんにもない迷宮だったはずだよな?」「あぁそれが間違いだ。迷宮ダンジョンの全部なのか解らないが、俺が回った、ブラント迷宮とマラブール迷宮は、魔力切れを起こしていて、迷宮ダンジョンが休眠状態になっていただけだ。」「・・・アルノルト様。それはどういう事なのでしょうか?」「・・・テディ説明頼めるか?」「はい。主様」
必殺、丸投げ!
丸投げ出来る人物が居るのは嬉しい。テディが足りない部分は、ルトとラウラとアンが補足してくれている。俺は、皆の顔色を見るだけで良さそうだ。
理解の許容範囲を超えそうになったら、辞めさせようと思っていた。ギルが居ないのが良かったのだろう。迷宮ダンジョンの性質や魔核の事まで、全部説明できたようだ。
ザシャが魔核に付いて食いついてきた。ディアナが、迷宮ダンジョンの鉱石に付いて食いついてきた。それらの話は、後日にしてもらった。横道の更に脇道だからだ。
クリスだけ、後で話があると言って、一旦部屋から出ていってしまった。その為に、ここで休憩を取る事になった。その場に居た女性陣は、テディを可愛いと言いながら抱っこしている。中身が”おっさん”かもしれないとは言わないでおこう。
クリスが戻ってきたので、共和国の首都での話をする事になった。選定委員を紹介してもらって、妖精の涙フェアリーティアの事を調べる事にしたが、共和国では何かしているという動きがなかった事を話した。その上で、ギルドを介して受けた依頼で、クラーラの幻影に出会った事を話した。
その時の会話を、ラウラとルトが細かく話をした。
「アル。それで戻ってきたのか?」「それが一つ目の用事だ。ギルがまだ王都に居るのなら、俺もこの後で王都に移動して、ギルと合流して、話を聞きたい。」「そうだな、それがいいだろうな。ザシャ。ディアナ。お前たちも関連した情報があるのだよな?」「先に、俺達の話を聞いてからにしてほしいのだがいいか?」「そうだな」「はい」「もちろん」
俺達が、その後で、マラブール迷宮にも潜った事を説明した。そこで、ブラント迷宮と同じように、休止状態になっていた、迷宮ダンジョンを生き返らせた事を話した。
「そんな事が出来るのだな。」「あぁ俺達みたいに、ステータス袋がないと攻略は難しいだろうけどな。」「食料がなくなってしまうという事だな。」「そうだな。それに、道もかなり複雑で面倒な事も多いからな。」「でも、それだけの事をしても、生き返らせ方がわからなければ、意味がないのだろう」「あぁそうだ。俺は知識があったから、なんとかなったけど、初見では難しいと思うぞ」「そうだよな・・・。」「そうだ、それで、ブラント迷宮とマラブール迷宮や共和国の魔法師ギルドの依頼で魔道具やアーティファクトを大量に持ってきた。後で仕分けするから手伝ってくれ」「それはいいが・・・俺達でも使えるのか?」「どうだろう。まぁ大丈夫だと思うぞ。携帯電話も沢山見つかったからな。」「おっそれは嬉しい。」
魔道具とアーティファクトの餞別は後でやる事になった。
先に、ザシャがエルフ経由で得ている情報を教えてくれた。ザシャ出身の街は、共和国と王国の丁度間にある場所にあるらしいが、最近、森の結界を突破しようとする動きが加速しているという話だ。一部の証言では、王国兵ではなく、帝国様式の武器を持っている者が確認されているらしい。その為に、今エルフの街は最大の警戒心を持って活動しているという話だ。ザシャにも一度戻ってくるように話が来たが、道中の危険を理由に断っているらしい。
「アル。王都に行く前に、ザシャとディアナを、エルフの街に送ってやってくれないか?」「ん?いいけど、ディアナはなんで?」「あぁ今、」「ユリウス様。それは、私が説明する。」
ディアナの説明は、簡潔だった。ドワーフの一部がエルフと共同して、武器防具を作る事になったので、それの応援に行く事になったという事だ。二人とも、ステータス袋を持っている関係で、戦力というよりも兵站や物資の移動に協力して欲しいという事らしい。
「それは、いいけど、あまりにも気になる情報が多すぎて、パンクしそうだぞ」
「アルノルト様。最後にもう一つ。」「なに?まだあるの?」「はい。王国内にあって、フランケンシュタイン博士自らが攻略したと言われている迷宮ダンジョンの一覧です。」「え?こんなにあるの?」
クリスが持ってきた物には、11個の名前がかかれていた。「これって生きているの?」「・・・生きているとは、迷宮の街ウーレンフートの様な事を言っていらっしゃるのなら、NOですわ」「そうか、この中で・・・え?あぁそういう事か?クリス!」「はい。そうなのです。全部、王家所有の場所なのです。わたくしも前から不思議だったのですが、アルノルト様のお話を聞いて納得しました。」
頭の中で簡易的な地図を書き出すと、ライムバッハ領以外の迷宮ダンジョンは、10箇所は王都を囲むように配置されている。最後の一つは、王都から少し離れた場所にある。その場所は、王家の墓がある場所の地名だ。
フランケンシュタイン博士は、何らかの方法で、迷宮ダンジョンを意図的に作ったと考えるのが妥当だろう。その方法が解れば・・・。今は、それではなく、クリスの意図だ。これらの迷宮ダンジョンを俺に再起動させたいのだろう。
「クリス。俺の報酬は?」「迷宮ダンジョンの所有権では不服ですか?」「いや、十分だ。あと、王都に屋敷が欲しい。可能か?」「勿論です。なんなら、どこかに領地を作る事もできますよ」
「おい、クリス。何勝手に決めている。領地など、陛下にお願いしないと・・・。え?俺がやるのか?」「勿論ですわ。お願いしますね。ユリウス様」
話がいろんな方向に飛んでしまったが、食事をしながら、詳細な話をする事にした。ギルには、王都から動かないで、迷宮の街ウーレンフートに関する噂話しを仕入れておくようにお願いした。

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