【旧】魔法の世界でプログラム

北きつね

領主の誘い

イベントの予感に、心躍る。ニヤニヤしてしまいそうだ。
5人。確実に俺達を見ている。後ろには、居ないようだ。手抜きだな。後ろに逃げられると考えないのか?
ラウラとカウラが俺の前に出る。俺も、腰の刀をいつでも拔けるようにする。後一歩で、ラウラとカウラの攻撃範囲内に入る。
5人の男どもは、はっきりと俺を見ている。これは、確実に来るな!
後ろにもう1人居るようだ。黒幕か?5人の間から出てきた男がいきなり。
頭を下げた。
え?
「アルノルト・マナベ様。いきなりの事。申し訳ありません。」「ん?ラウラ。カウラ。」
ラウラは、首を横に振る。「アル兄ィ。違うにゃ」
「はぁそれで、貴方は?」「失礼致しました。私、バックハルムの現領主のレオポール様の秘書をやっています。ザールといいます。」「・・・その、ザール殿が、一介の冒険者である私に何の用事が有るのでしょうか?」「不躾で申し訳ありませんが、領主のレオポールが、アルノルト様との面談を希望しております。それもできるだけ早くと・・・。」「私には、それを受ける理由がありません。」「メリットとしてのご提示になってしまいますが、アルノルト様を襲うとしていた冒険者と盗賊がいます。この者達を、返り討ちにしても、罪に問わないという免罪符など必要ではありませんか?」
「ハッハハハハ。なかなか事情通で、面白い方のようですね。いいでしょう。お会い致しましょう。ラウラとカウラも一緒でいいのですよね?」「はい。問題ありません。」「私の身の安全は保証してくれるのでしょうか?」「勿論です。しかし、必要でしょうか?」「そうですね。単なる力という意味では必要ありませんが、権力という暴力の前には必要になってしまいます。」「そうでしょうか?その権力という暴力も、アルノルト様の後ろ盾を考えますと、大丈夫だと思いますが?」「いやいや。それはそれ、これはこれ。でしょう。」「そうなのですね。それは、こちらとしてもありがたいお話です。私が責任を持って、対応させていただきます。」「解りました。ザール殿を信じる事にしましょう。少しでも疑義があるようでしたら・・・。」「はい。解っております。その刀で私の首をお跳ね頂いて構いません。」
「ラウラ。カウラ。そういう事だ。」「はい。かしこまりました」「はいにゃ」
ザールに連れて行かれた場所は、1軒の商店と思われるような屋敷だ。王都では、中堅どころの商人の店だと思える位だ。不思議に思っているのが顔に出てしまったのだろう。ザールが、苦笑しながら「アルノルト様。共和国では、4年に一度、領主を選ぶ儀式があります。その為に、大きな屋敷に住んでいたり、世間とかけ離れた生活をしていると、選ばれない事があります。」「へぇそうなのだ?」「はい。レオポール様に、アルノルト様をお連れした事を、知らせてこい。」
一緒にいた1人に、ザールが指示を出している。どうやら、ザールの地位が上なのだろう。返事と共に、奥に引っ込んでいく。
「アルノルト様。こちらで少しお待ち下さい。」「あぁ」
通された部屋は、広くはないが清潔にされているし、調度品も悪くない。審美眼などないが、安いものではないだろう。しかし、高そうっていうほどではない。丁度いい品物なのだろう。奥のドアが開けられて、1人の美丈夫が入ってきた。年齢は、20代はじめだろうか?
「かけて欲しい。こちらからお願いする立番なのだ。ザール。アルノルト殿とお連れの美女に飲み物を、酒精でも大丈夫か?」「いえ、まだこの後があるかもしれませんので、お茶でお許し下さい。」「ハハハ。そうだな。これは失礼した。」「早速ですが、レオポール様。私達をお呼びになった理由をお聞かせいただければと思います。」「アルノルト様。私の事は、レオポールと呼んでください。しがない、街の領主ですからね。アルノルト様のお立場を考えれば、それが当然でございましょう。」「いえ、私は、アルノルト・マナベ。一介の商人で冒険者でございます。」「わかりました。それでは、アルノルト殿。これでよろしいか?」「はい。レオポール殿。」「うん。今日は、ご足労いただいたのは、これを渡そうと思っていな。」
そう言って、渡された紙には、冒険者ギルド発効の依頼書だ。依頼主は、レオポールとなっていて、依頼内容は、ユリアンネが聞き出した、拠点名が書かれていて、そこに屯する冒険者の排除並びに捕縛、捕縛ができない時には、殺害となっている。主犯格と思われる連中の名前が書かれている。こいつらは、捕縛対象だ。生きていれば、問題はないということらしい。そして、もう一枚には、この冒険者を支援している奴らが居るので、その所在を調べる事にある。もし、所在が判明後に、捕縛又は殺害で壊滅的なダメージを与えられたら、特別ボーナスが入る感じになる。
そして、二つの報酬は、大金貨で3枚。後は、捕らえた者によってのボーナスがある。そして、俺としは一番うれしい事だが、迷宮ダンジョンの譲渡契約が報酬になっている。
「一つお聞きしてよろしいでしょうか?」「なんでしょう?」「私達が、迷宮ダンジョンを調べたいと思っていたのをなんでご存知なのですか?」「あぁそれは、噂話で、興味があるのかと思っただけですよ。」「それだけですか?」「えぇそれだけです。もし、あの迷宮ダンジョンが生き返りましたら、私としてもうれしいですからね。」「え?そうしたら、譲渡契約はダメなのではないですか?」「そうでもないのですよ。アルノルト殿は、旅を続けるのでしょう。もし、迷宮ダンジョンが生き返っても、その場に留まる様な事はしないでしょう。誰かに管理を委託するでしょう。その時に、私を考えてくれるだけで十分ですからね。あぁ勿論、バロワン殿でもいいのですがね。」「バロワン殿をご存知なのですか?」「えぇ私のパトロンですよ。」「あっそう言えば、”リバーシ”を領主に渡すと言っていましたね。」「えぇそうです。アルノルト殿の人となりの事も、迷宮ダンジョンの事も、実は、彼から話を聞いたのですけどね。」「それなら・・・・。納得しました。この依頼、お受け致しましょう。私としては、メリットのほうが大きそうですからね。」「そう言って頂けて嬉しいです。」「手続きは、冒険者ギルドですればよろしいですか?」「はい。こちらの手続きは終わっています。」「解りました。」
領主の館を後にして、すぐに念話で皆を呼び戻した。眷属たちには、引き続き警戒にあたってもらっている。食堂を出た後で俺達を見張っていたのは、全部領主が雇った者だったようだ。俺達を見張っていて、冒険者達が襲ってきたら、一網打尽にするつもりだったようだ。
冒険者達は、拠点にしている所に集まっているようだ。人数として、27名。案外多いなというのが正直な所だ。生け捕りを指定されているのは、主犯格とされている3名だ。こいつらは、冒険者の資格は持っているがやっている事は、盗賊や強盗と同じだ。それも、ギリギリの所で尻尾を掴ませないので、質が悪い。
せっかくだから、派手にやる事にする。正面を俺とユリアンネ。裏側になる、西をカウラ。南をラウラ。北をアン。ルトは、ヒルダとナーテの護衛だ。配置が決まった。
俺を除く、全員で、奴らの拠点を決壊で覆う。遮音と防音もセットで行う。これで、多少激しく戦っても、音が漏れたりする事はない。
『ラウラ。カウラ。アン。ユリアンネ。準備はいいか?』『はい』『はいにゃ』『大丈夫』『お兄様。いつでも大丈夫です。』
『よし、タイミング合わせて、魔法を放つぞ。その後、俺は中に飛び込むからな。』『5・・・4・・・3・・・2・・・1・・・撃てェェェ』
四方からそれぞれの属性魔法が飛ぶ。その後で、眷属たちが突入していく。俺も、それに合わせて、中に飛び込む。襲ってくる奴らを切り伏せるつもりで突入する。
「あれ?」
そこには、破壊され尽くした部屋だった場所や。何かをしていたのだろう、そういったテーブルが散乱していた。そして、眷属たちと戯れる大人な達の姿が目に入る。
1分程度遅れただけで、終わってしまったのか?それも、上位とは言わないけど、冒険者の集団が・・・だよ?何か、間違っていないか?
1人の男の所に行って、「おい。ボスはどこだ?」「なっおまえ。こんな事してただで済むと・・。」
腹を軽く蹴飛ばした「もう一度聞く。ボスはどこだ?」「・・・。」
「そうか、喋りたくないのだな。それなら、口も喉も必要ないな。」
炎を生成して、口の中に放り込む。肉が焼ける嫌な匂いがするが、きにする事じゃない。その上で、口の中を蹴飛ばしておく、歯が数本折れたのだろう。でも、気にするような事ではない。
「ご主人様」「どうした?」
ここでは、名前を言わないようにいってある。ラウラが何かを持ってきた。
それは、女性の死体だ。確実に、集団で犯されて殺された様だ。
近くに居た別の男に「おい。この女性は誰だ?」「・・・しらない。俺じゃない。俺は関係ない。」「そうか、そうか、おい。玄武。蛇の眷属をこっちに回せ。」「はい。ご主人様。」「なにを・・・。辞めてくれ。」「なぁ。お前たちは、この人が辞めてくれと行って辞めたか?辞めなかっただろう?だから、俺も辞めない。やめる必要はない。おい。玄武。臭いだろうが、ここに居る獣達のはらわたを、ヘビたちに食べさせろ。死んでも構わん。それだけの事をしたからな。」「かしこまりました。ご主人様。蛇でよろしいでしょうか?より苦痛を与えるのでしたら、蛆などはどうでしょうか?生きたまま、卵を植え付けておくのも一興だと思います。卵が孵れば、腸を食べて成長するでしょう。なんなら、全員を一箇所に閉じ込めて、数匹の蝿を放ってもよろしいかと思います。」「そうだな」
女性の死体が置かれている場所に目を移す。見ただけで、4~5人の死体が見える。実際には、それだけではなかったのだろう。
「朱雀。玄武。白虎。生き残った奴で、生け捕りを指示されているやつら以外を集めて、空いている部屋に詰めておけ。あぁさっきの口を聞きたくない奴に最初の卵を植え付けておけ、最初に死ねるのだから、嬉しいだろう。」「「「はっ!」」」
「やめろ。なんで俺達が、助けてくれ」「はぁ?なんで、俺がお前たちをたすけなきゃならない。」「なぁなんでもいうことを聞くから助けてくれよ。」「なんでも?」「あぁなんでも、助けてくれれば、俺は一生あんたに従う。約束する。」
「そうかぁそうかぁ」「俺もだ。」「俺も。助けてくれ」
「ハッハハハ。なら、死ねよ。」
背を向けて、ボスたちが居るであろう一角に向かった。捕縛対象は3人だ。
探索をしたら、3人が揃っている場所がある。人数を数えたが、27名全員が揃っている。
ドアを蹴り破って中に入る。3人もすでに、眷属に拘束されている。ユリアンネは、青竜の姿になって、俺の肩の上に居る。
「なっアルノルト・マナベ!!こんな事して、ただで済むとおもうなよ!!」「誰だおまえ?あぁ名乗らなくていい。どうせ短い付き合いだからな。俺からは、お前たちに聞きたい事がある。」「・・・。」「喋らなくてもいいぞ。喋りたくなるまで、いろいろ、対応するだけだからな。青竜。おまえが一番醜いと思う者を立たせろ。」
俺から見て右側の男が立たされた。確かに、醜いな「なっ俺が誰だか解って居るのか?俺は、」
刀を抜いて、腕を切り飛ばす。「うるさい。俺に聞かれた事だけ答えればいい。おまえは馬鹿か?」「なっ・・。」「なんだよ。腕一本で気を失うのか?青竜。残った二人で、偉いと思う方はどっちだ。そいつを立たせろ。」
ユリアンネが二人の間を行ったり来たりしている。「アイツのほうが、自分で偉いと言っている。」「おまえのほうが、次の領主の選定式に立候補するのだろう。おまえの訃が賢いだろう。」
大人二人の言い争いは醜い。
表で待っているルトに念話を飛ばす『ルト。こっちは、もうすぐ片がつく。周りはどうだ?』『ご主人様。一名。こちらを見ています。』『そうか、その一名に接触してくれ。領主の使いの者だとおもうから、冒険者達は捕らえたと報告してくれ』『かしこまりました』
これでいいだろう。多分、10分位で守備隊がなだれ込んでくるだろう。
ユリアンネが中央の奴を立たせた。俺は、座ってホッとしている奴の耳を切り落とした。
「なっ」「あぁ俺は、馬鹿が嫌いだ。それとも、おまえは俺の質問に応えられるのか?」「・・・あぁなんでも・・・。」「そうか、お前たちを支援している奴の名前と本拠地を言え。」「なっ・・・。それは・・・。」「あぁやっぱり、馬鹿は嫌いだ。」
刀を構える。
「いう。いう。全部話す。だから、命だけは・・・。命だけは・・・。」「うるさい。聞かれた事だけ答えろ。決めるのは俺だ。お前たちも散々命乞いする奴らを殺してきたのだろう。自分たちの行いを振り返って見るのだな。さて、もう一度聞く、支援者の名前と居場所は?」
「支援者は、イポリック。居場所は、湖の村だ。」「そうか、そいつは、村長なのか?」「・・・・あぁそうだ。」「表の名前は?」「なっ」「どうした?早く言え。」
「トリスチド・ル・テリエ。共和国の選定委員の息子だ。」「そうか、それじゃ死ね!」「なっ!」
峰打ちで首を殴打した。ユリアンネに立たされていた男は、失禁して失神してしまった。
そうか・・・。ナーテの村を攻撃した容疑者が、湖の村だって話だったな。俺にとっても敵だという事で間違いないようだ。
領主から指示された守備隊が、なだれ込んできた。後始末をお願いして、俺達は、湖の村に向かう事にした。

「【旧】魔法の世界でプログラム」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く