ネトゲ戦車長がガチの戦車乗りになるみたいです。

亀太郎

肇、戦車との出会い

次の日、けたたましい金属音で肇はたたき起こされた。
カンカンカンカン!!!!!!
「のわぁぁぁ!?!?!?」
慌てて跳ね起きる。
「おはようハジメ。さぁ、働くわよ。」
そういったのはミーニャ。
「……もうちょっとましな起こし方は無かったのかい?」
肇が不機嫌に呟く。
「……ごめん。さ、気合い入れて働くわよ。」
「ぬぅ……分かったよ。」
肇が支度をして外に出るとまだ辺りは暗かった。
「なぁ、今からどこに向かうんだ?」
肇が聞くとミーニャに
「森よ。」
と、即答された。
「森って言っても……まだ暗いぞ?大丈夫なのか?」
「平気よ。この世界には魔法があるのよ。ハジメの世界はどうだったの?」
「僕がいた世界は無かったなぁ…でも、古代の文献には魔法の存在は書かれてたけとね。……まぁ、僕らは魔法は空想上のものだと思っていたし、その分科学分野が発達したよ。」
「……その科学って何?」
ミーニャが不思議そうに言った。
「科学っていうのは理論や理屈で物事を考えるものなんだ。例えば、水は水素原子2つと酸素原子一つで出来ているとか、植物が成長するのは光合成をしてデンプンを作ってるからとか…そんな感じかな?」
「……あなたの世界はかなり高度な技術を持っているのだけはよく分かったわ。じゃあ移動はどうするの?転移魔法が使えないなら歩きとか、馬車とかで移動するしかないじゃない。」
2人が森に入っても議論は続く。
「そんなことは無いさ。確かに昔は馬車とかで移動してたけど、今じゃ自動車とか飛行機とかで移動してるね。」
「飛行機は名前の通り空を飛ぶんだろうけど、自動車って何?」
その瞬間、肇の目つきが変わった。
「自動車って言うのはね、ガソリン……簡単に言えば油だけど、それを燃焼させて運動を生み出すエンジンを使ってその回転を利用して走る馬車の進化系のようなものだよ。また、エンジンにも……」
「ハジメ……」
「何?」
ミーニャは肇の目を見て言った。
「それっぽいものがこの先にあるんだけど、見に行く?」
「えっ?あるの?」
肇は驚いて聞き返す。
「私たちにはよく分からない物がただただ乱雑に置いてある場所なのだけど……金属でできた馬車のようなものもあったのよ。それでもしかしてと思って……」
「……そこに案内してくれるかい?」
「任せて、足場悪いから気をつけてね。」
と言うと、ミーニャは草の中に突っ込んでいった。

どれほど歩いただろうか、肇は疲れきっていた。
その時だった。
「着いたわよ。」
ミーニャの一言で疲れが吹っ飛んだ。一目散に走る。そして、それを見つけた。
「……これ、全部軍用車だ。殆ど壊れてるし、サビもひどいけど……僕のいた世界の車だよ。」
そこに広がっていたのは小さな広場だった。しかし、そこにあるのはスクラップも同然の軍用車ばかりだった。銃弾の跡が目立つハーフトラックに運転席が吹き飛んでいるケッテンクラート、星条旗の断片。双眼鏡や銃も置いてあった。
「……凄い、こんなの見たことないよ。」
「私たち猫族はここの事を打ち捨てられた土地って呼んでるの。……その反応を見るに名前の通りって事かしら。」
ミーニャが少し呆れている。
その後は使えるものがないか見て回った。しかし、殆どが使い物にならなかった。肇達が帰ろうとした時、ミーニャがなにかに気づいた。
「ねぇ、肇。あれは何?何か帯みたいなものが付いてるんだけど。」
そう言われて振り返ると、そこには戦車があった。
「……ポルシェティーガー」
肇がポツリと呟く。
「ポル……何?」
「ポルシェティーガーだよ。第二次世界大戦に試作されたドイツの重戦車……これ、動くかな?」
ミーニャが笑う。
「いや、流石に無理よ。苔に覆われてるじゃない。」
しかし、肇は黙々とハッチを開けている。
しばらくの後、
「開いた!!中も綺麗だし多分動く!!」
と、肇の声。
「動くって……動かし方分かるの?」
「僕は戦車オタクだ。構造は知ってるし何とかなる。」
そして、しばらくの後、
突如爆音が森に響き、ポルシェティーガーのマフラーから黒い煙が吹き出す。
「ミーニャ!!乗って!!出発するよ!!」
前方のハッチから肇が顔を出す。
「うぅ……すごい音……ドラゴンの咆哮並みに大きいわね……」
ミーニャは耳を抑えてうずくまっていたが、何とか持ち直して砲塔のキューポラに体を収めた。
「それじゃあ、出発するよ。しっかり捕まっててね。」
肇が大きな声で話しかける。
そして、駆動輪が独特の音と共に回りだしキュルキュルと音を立てて発進した。
巨大な金属の塊が20キロで森の中を駆けてゆく。速度が上がり、音も一段と大きくなる。
「FOOOOOOO!!!!最高だぜぇ!!!!!」
「いやぁああああああああ!!!!!下ろしてぇええええええ!!!!!」
二人の叫びとともに森の中を駆け抜けてゆく。
こうして、肇の異世界戦車長ライフは幕を開けたのであった。

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長ったらしくすいません。ここまでで2000字超えてますが、反省も後悔もして無いです。(笑)

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