エルフに転生したんだけどこんなはずじゃなかった〜エルフ集落から追い出されたのでロリババアと異世界でぶらり旅〜

ニムル

第8話 テンプレートを逸脱するのが好きなエルフ

 暫くするとドタドタという足音とともに先程の受付嬢が帰ってきて、アクリル板をポイントカード状に切り抜いたような、厚さ3ミリ程のカードが3枚手渡された。

「これを後ろのお連れ様方にも1枚ずつお渡しして魔力を流していただけますか?」

「はい、分かりました」

 やはり宿を紹介するとなると、1人だけ登録してあとはおまけ、みたいなことはダメになるらしい。あくまでもギルドの一員としての割引であり、ファミリー割引的なものは発生しないようだ。

「リッツァ、レーホン、この板に魔力を流して」

「ほいほい」

 リッツァは瞬時にカードに魔力を通し、リッツァに魔力を通されたカードは表面に文字と顔写真のようなものが映し出される。

「うおお、なんじゃいこれ」

 驚いているリッツァを横目に僕も自分のカードに魔力を流し込む。するとリッツァの時と同じように文字が映し出され、今の自分の顔写真がカードに写る。

「ぶふっ」

 ……おい僕、鼻血レベルで可愛いじゃねぇかコノヤロウ。

 まぁそれはさておき、未だにレーホンの感想だけ確認していないのでどうしたのかと彼女の方を振り返る。

 すると彼女は泣きそうな顔でこっちを見ているではないですか。

「カノン、魔力ってどうやって通すんだったか?」

 今にも消え入りそうな声でレーホンがそう呟く。

「あー、カノン、こいつはな、魔力を上手く扱えんのじゃ」

「あー、そうなんだ」

 今そう聞くと、確かにあれだけ武術に特化していた理由も何となくわかる気がする。

 あの環境で外敵から身を守るためには、レーホンの場合は武術しかなかった。そういうことだろう。ラノベ脳だからそう至るまでに数々の苦悩があったのだろうと妄想するが、今はそんな場合ではない。

「え、じゃあどうするのさ?」

「ん? お主がこいつの魔力をその板に誘導してやれば良いじゃろ」

「……あー、魔力誘導ね」

 魔力誘導というのは、他人の制御下にない魔力をそのまま操ることが出来るという言わば魔術師の初歩の初歩に覚える行為だそうだ。

 僕は基礎を割とすっ飛ばして色々な魔法を覚えているのだけど。

「うん、じゃあやるよ、レーホン。肩の力抜いてね」

 レーホンの肩甲骨あたりに両手を当ててゆっくりとレーホンの魔力を手の当たりへと誘導する。

「んぁっ、んっ、んくっ、な、なんか手のひらがあったかくなってきたぞっ!」

 レーホンが艶っぽい声で嬉しそうにそう言う。やめろよみんなこっち見てるじゃないか……

 大分調子が整ってきたので、そのまま微量の魔力をカードへと流し込み、あとはレーホンの体の中に先程までと同じく散らしておくことにした。

 それにしても、佐藤さんに口頭で教えられただけでここまでできるものなのかと自分自身のスペックに少し驚きが隠せない。

「はい、では皆様終わりましたようでしたらカードを回収しますね」

「「へー、あれカードっていうのか」」

 世間に疎いと言うべきか、生活圏が限られていたから仕方ないと言うべきか、良くも悪くも一般常識のないリッツァとレーホンは、板の名前をカードだと覚えた。

 これから一緒に暮らしていくとこういうこともあるのだろうなと思うと、ちょっとした育成ゲームをしているような気さえしてくるのだが、本人達にその旨を伝えると怒りそうなので胸の内に秘めておくことにする。

「しっかし、思っていたよりも静かな建物じゃなー」

「だな。私は冒険者の建物と聞くと、荒くれ者共がガバガバ酒を飲んでいる印象しか持ってなかったからな」

 2人が僕の思っていたことを的確にいつてくれたので、受付嬢がそれに大して答え始めた。

「世界各地でギルドの品質向上化が進んでおりまして、ここリゲルはその最先端の街なんです! 御国の端で他の国の都市とのやり取りも多いですからモデル都市に選ばれたのです!」

 意気揚々と語るその姿に内心楽しそうだなぁとニヤニヤしつつ、この世界のギルドは、案外想像していたよりも利用しやすそうな施設だと感心する。

 当初思っていたような粗雑で野蛮な人間が集まるところ、という訳ではなさそうだ。

「ではギルドカードの確認を始めさせていただきますね! えーと、マーガルさんにケイサーさん、そしてミナミさんですね」

「えーと、レーホンの姓はこれで合ってるの?」

「ああ。間違いないぞ」

「じゃあ大丈夫です」

「はい、では次は能力値の測定の方に移りますのでおひとりずつこの水晶玉に触れてください。こちらは魔力を流す必要はございませんのでご安心を」

「おう、助かる」

 レーホンが手を水晶に掲げると、水晶の脇に置いてあったギルドカードが光だして新たな項目が記載された。

「戦闘能力強化、ランクF?」

「はい、その戦闘能力強化はケイサーさんの能力で、ランクはギルド内での階級ですね。皆様Fからスタートしてもらっています」

 なるほど納得。道理でギルドの依頼にFランクのものが多いわけだ。多くの新人が沢山の依頼を達成することで達成報酬の1部はギルドに入る。

 大きな、なおかつ長期間の依頼を受けて貰ってその報酬をまつよりもよっぽど現実的だ。

 そのためにギルド側がFランク相当のクエスト内容を斡旋しているのだろう。

 さらに付け加えると低ランクの依頼が多いのは、この辺りが比較的安全地域だからということだろうか。

「えー、マーガルさんは薬物錬金、成長限界突破、くらいですかね、主だったものは……ちょっと数が多すぎるので省かせていただきますね」

 物騒な名前のスキルが多いな……というかまだあるのか……まぁ気にする必要は無いんだけど。

「ミナミさんは、体魔術超強化、成長限界突破、そして概念複製ですね」

 ん?

 何故か聞き覚えのない能力を持っているのですが?

 僕は意味もわからず、その場にボケっと立ち尽くすことしか出来なかった。

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