エルフに転生したんだけどこんなはずじゃなかった〜エルフ集落から追い出されたのでロリババアと異世界でぶらり旅〜
第5話 テンプレ通りのスローライフは何処へと
「さて、隠居したババアの家にのこのことやって来るってことはそれなりの覚悟があるんじゃろ? 掟から外れたこの我が身、今すぐ貴様ら全員屠っても良いのじゃぞ?」
「お前が起きてから外れていても、こいつは掟から外れてない。島で生まれたエルフは、掟から外れない限りは一生生まれた土地から離れないのが鉄則だ」
「はっはっはっ、おいカノン、きいたかの? 島で生まれたエルフじゃって! わし面白おかしすぎて腹抱えて大爆笑じゃー!!」
女性の発言に腹を抱えて笑うリッツァの行儀の悪さに少し引きつつ、確かにそれはおかしいなと少し笑いそうになる。
ここひと月でリッツァに聞いた話だと、金髪のエルフは本来外来種で外の大陸から来た銀髪エルフよりも旧時代のエルフなのだと言う。
そしてそもそも論を言うと僕はこの島で生まれたわけじゃない。転生こそすれど、この体はもう成長した状態だった。
この島で生まれたから掟に縛られる、なんてのはもはや関係ない話だ。
「わし達金髪のグランドエルフはそもそもこの島からしたら外来種。基本統率なぞ何も取れていないような貴様らが急に掟だのなんのと出張ってきたところで、貴様らが決めたルールにわしらが該当しないと明記してあるではないか」
にやけ顔でそう語るリッツァに対し、先程レーホンと言われていた筋肉質の女性が渋い顔でこちらのことを睨んでくる。
すると、真ん中にたっていたエルフの長のような女性がこちらを見て一言言い放った。
「あなた方が素直にこの話に賛同してくださらないことは初めから計画に盛り込まれていました。我らの未来のためにも、あなたがたにはこの地を離れていただきます」
その言葉が合図となったのか、長の周りに12、13人程の、鼻のあたりまで深くフードをかぶった集団が前えと歩いてくる。
『ポータブル、接続完了。魔力回路、動作不具合無し。転移先、キルオア王国レルシエ領沿岸部に設定。大魔法強制転移を発動』
フードたちが、全員一言一句たがわずに同じタイミングで発したその言葉により、私とリッツァ、ライノの足元に魔法陣が浮び上がる。
『マルゲリータ、これはまずいぞ!』
「うるさいわい、サトーごときがわしに指図するでないわ! 指摘だけでなく回避方法を持ってこい!」
『残念だが、これは魔族式の強制転移だ、回避はできない!』
「回避できないって、なんなんですかそのクソゲー!」
もはやどうにもならないことを悟ったのか、そもそも気にしていないのかライノは何処吹く風で四つん這いにしてその場に立ち尽くしている。
「わしに対するこのような暴虐、貴様ら、許さんぞ!」
「ええ、あなたに許しを乞うつもりなど最初からございませんよ」
『転移準備完了。転移開始します』
もう止めてくれよ、僕はただ普通の生活がしたいだけなんだよ。みんなと仲良くして、笑顔で談笑してるような普通の生活がしたいだけなんだよ。
「やめろぉぉぉぉぉ!!」
「カノンっ!?」
驚いた顔のリッツァが僕の背中を掴んで行くなと言うが、僕は1発長の顔を殴ってやらないと気が済まなかった。
「あ、あなた、なんで魔法陣の外に出られるのですか!?」
「オラァァっ!」
「ひゃっ!?」
思い切り繰り出された僕の右ストレートが長の左頬に大きな衝撃を与え、長が素っ頓狂な声を上げてその場に倒れる。
すると、倒れた長を中心として銀エルフとフードの集団を囲むように、リッツァたちの足元にある魔法陣が現れる。
「ああっ!?」
「これはっ!?」
『転移魔法陣、魔族式のものをなぜこんな一瞬のあいだに構築を済ませられるのだ』
『アリエナイ、アリェナィ、ァリィェナィィ!』
「おい、聞いてないぞこんなこと!」
「知るか、こんなことわかってたらまず誰もこいつに近付けねぇよ!」
銀エルフとフードたちが口々に何かを言っているが、何がなんだかよくわからない。
「リッツァ、1発やってきたよ!」
「……お、おう。お主随分と清々しい顔で言いよるのお……」
「?」
「おいサトー、カノンに与えた能力にこんなものはあったか? わしが聞いているものの中にはないんじゃが」
『私も今カノンさんに関連する事項として与えた能力等を調べているのですが、魔法陣のすり抜けはまだしも、魔法陣そのものをコピーするというものに類似するものは何も……もしかしたら、その体に関係する能力やもしれませんね』
「ふぅ、しかし、キルオア王国のぉ……」
『どうした? マルゲリータ』
「いや、初めて島の外に行く理由が旅行でなく魔法陣で飛ばされたから、とはのぉ……」
感慨深そうにリッツァはそう言った。
『な、まずいぞ、こちら側の魔方陣は口頭詠唱していないから、陣形だけがここに張り込まれて発動していて、行き先が決まっていない!?』
唐突にひとりのフードが叫び出す。
それに合わせてほかのエルフやフードもカエルの合唱よろしく、助けて許してのオンパレードだった。
いや、僕の方見てそんな事言われても何もわからないんですけど……魔法陣いきなりでてきただけだし……
「お、転移が始まるのぉ。カノン、はよォこい、このような森に1人では危険じゃし、貴様の神獣もここにおるでな! まぁ、のんびり気ままにあちらでも暮らせば良い! 幸い、最初の金になりそうなポーションの材料は大量にわしが持っているでな!」
「あ、うん、急ぐ!」
薄くなりかけていくリッツァの体に飛びつくようにして魔法陣の中に入り、次の瞬間私は海辺の砂浜の上に立っていた。
砂浜には、どこか見覚えのある槍が埋まっていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「くっ、あのグランドエルフはなんなのですか……」
「あれ、長様! レーホン様がいません!」
「なんですって!?」
『彼女なら、先程のエルフの魔法陣の支配を逃れ、あちら側の魔方陣の方に飛び込んでいきましたよ』
カノンたちの転移の瞬間に、集団の中で唯一勘で魔法陣を回避したレーホンは、何を思ってかカノンたちの飛ばされた魔法陣の中に飛び込んでいったのだという。
「彼女が私の元を離れるなんて……一体あの一瞬で、彼女の中にな何かあったと言うの?」
長は泣きそうな顔で静かにそう吐き捨てた。
「でも、これで良かったのかもしれない……あの娘にこの狭い世界で一生を送らせるよりは、その方が……」
長のそのつぶやきは誰に聞かれるということもなく、転移後に突如鳴り響いた爆音にかき消されて消えてしまった。
「お前が起きてから外れていても、こいつは掟から外れてない。島で生まれたエルフは、掟から外れない限りは一生生まれた土地から離れないのが鉄則だ」
「はっはっはっ、おいカノン、きいたかの? 島で生まれたエルフじゃって! わし面白おかしすぎて腹抱えて大爆笑じゃー!!」
女性の発言に腹を抱えて笑うリッツァの行儀の悪さに少し引きつつ、確かにそれはおかしいなと少し笑いそうになる。
ここひと月でリッツァに聞いた話だと、金髪のエルフは本来外来種で外の大陸から来た銀髪エルフよりも旧時代のエルフなのだと言う。
そしてそもそも論を言うと僕はこの島で生まれたわけじゃない。転生こそすれど、この体はもう成長した状態だった。
この島で生まれたから掟に縛られる、なんてのはもはや関係ない話だ。
「わし達金髪のグランドエルフはそもそもこの島からしたら外来種。基本統率なぞ何も取れていないような貴様らが急に掟だのなんのと出張ってきたところで、貴様らが決めたルールにわしらが該当しないと明記してあるではないか」
にやけ顔でそう語るリッツァに対し、先程レーホンと言われていた筋肉質の女性が渋い顔でこちらのことを睨んでくる。
すると、真ん中にたっていたエルフの長のような女性がこちらを見て一言言い放った。
「あなた方が素直にこの話に賛同してくださらないことは初めから計画に盛り込まれていました。我らの未来のためにも、あなたがたにはこの地を離れていただきます」
その言葉が合図となったのか、長の周りに12、13人程の、鼻のあたりまで深くフードをかぶった集団が前えと歩いてくる。
『ポータブル、接続完了。魔力回路、動作不具合無し。転移先、キルオア王国レルシエ領沿岸部に設定。大魔法強制転移を発動』
フードたちが、全員一言一句たがわずに同じタイミングで発したその言葉により、私とリッツァ、ライノの足元に魔法陣が浮び上がる。
『マルゲリータ、これはまずいぞ!』
「うるさいわい、サトーごときがわしに指図するでないわ! 指摘だけでなく回避方法を持ってこい!」
『残念だが、これは魔族式の強制転移だ、回避はできない!』
「回避できないって、なんなんですかそのクソゲー!」
もはやどうにもならないことを悟ったのか、そもそも気にしていないのかライノは何処吹く風で四つん這いにしてその場に立ち尽くしている。
「わしに対するこのような暴虐、貴様ら、許さんぞ!」
「ええ、あなたに許しを乞うつもりなど最初からございませんよ」
『転移準備完了。転移開始します』
もう止めてくれよ、僕はただ普通の生活がしたいだけなんだよ。みんなと仲良くして、笑顔で談笑してるような普通の生活がしたいだけなんだよ。
「やめろぉぉぉぉぉ!!」
「カノンっ!?」
驚いた顔のリッツァが僕の背中を掴んで行くなと言うが、僕は1発長の顔を殴ってやらないと気が済まなかった。
「あ、あなた、なんで魔法陣の外に出られるのですか!?」
「オラァァっ!」
「ひゃっ!?」
思い切り繰り出された僕の右ストレートが長の左頬に大きな衝撃を与え、長が素っ頓狂な声を上げてその場に倒れる。
すると、倒れた長を中心として銀エルフとフードの集団を囲むように、リッツァたちの足元にある魔法陣が現れる。
「ああっ!?」
「これはっ!?」
『転移魔法陣、魔族式のものをなぜこんな一瞬のあいだに構築を済ませられるのだ』
『アリエナイ、アリェナィ、ァリィェナィィ!』
「おい、聞いてないぞこんなこと!」
「知るか、こんなことわかってたらまず誰もこいつに近付けねぇよ!」
銀エルフとフードたちが口々に何かを言っているが、何がなんだかよくわからない。
「リッツァ、1発やってきたよ!」
「……お、おう。お主随分と清々しい顔で言いよるのお……」
「?」
「おいサトー、カノンに与えた能力にこんなものはあったか? わしが聞いているものの中にはないんじゃが」
『私も今カノンさんに関連する事項として与えた能力等を調べているのですが、魔法陣のすり抜けはまだしも、魔法陣そのものをコピーするというものに類似するものは何も……もしかしたら、その体に関係する能力やもしれませんね』
「ふぅ、しかし、キルオア王国のぉ……」
『どうした? マルゲリータ』
「いや、初めて島の外に行く理由が旅行でなく魔法陣で飛ばされたから、とはのぉ……」
感慨深そうにリッツァはそう言った。
『な、まずいぞ、こちら側の魔方陣は口頭詠唱していないから、陣形だけがここに張り込まれて発動していて、行き先が決まっていない!?』
唐突にひとりのフードが叫び出す。
それに合わせてほかのエルフやフードもカエルの合唱よろしく、助けて許してのオンパレードだった。
いや、僕の方見てそんな事言われても何もわからないんですけど……魔法陣いきなりでてきただけだし……
「お、転移が始まるのぉ。カノン、はよォこい、このような森に1人では危険じゃし、貴様の神獣もここにおるでな! まぁ、のんびり気ままにあちらでも暮らせば良い! 幸い、最初の金になりそうなポーションの材料は大量にわしが持っているでな!」
「あ、うん、急ぐ!」
薄くなりかけていくリッツァの体に飛びつくようにして魔法陣の中に入り、次の瞬間私は海辺の砂浜の上に立っていた。
砂浜には、どこか見覚えのある槍が埋まっていた。
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「くっ、あのグランドエルフはなんなのですか……」
「あれ、長様! レーホン様がいません!」
「なんですって!?」
『彼女なら、先程のエルフの魔法陣の支配を逃れ、あちら側の魔方陣の方に飛び込んでいきましたよ』
カノンたちの転移の瞬間に、集団の中で唯一勘で魔法陣を回避したレーホンは、何を思ってかカノンたちの飛ばされた魔法陣の中に飛び込んでいったのだという。
「彼女が私の元を離れるなんて……一体あの一瞬で、彼女の中にな何かあったと言うの?」
長は泣きそうな顔で静かにそう吐き捨てた。
「でも、これで良かったのかもしれない……あの娘にこの狭い世界で一生を送らせるよりは、その方が……」
長のそのつぶやきは誰に聞かれるということもなく、転移後に突如鳴り響いた爆音にかき消されて消えてしまった。
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