エルフに転生したんだけどこんなはずじゃなかった〜エルフ集落から追い出されたのでロリババアと異世界でぶらり旅〜
第一話 テンプレ通りに異世界転生は突然に
人生ってものは退屈で、人間って生き物は醜悪だ。
1人をスケープゴートにして自身の鬱憤を晴らすなんてのはどこにでもある普通の後継。
それに反抗することの出来る者、全てを諦めてこもることの出来る者たちがいくら事実を伝えたところで、その立場に立ったからその考えに至っただけであり、実際問題、普通に生活していれば加担者と何ら変わりない。
容姿、趣味、思考、その全てか他と一線を画す者は少なからずその不幸を呪わなくては行けなくなる。
「香音ちゃーん、ちょっと付き合えよ」
ほら、またこれだ。平均から逸脱する者は、出る杭は打たれる方式で他社に蹴落とされていくのだ。
「おい、ちょっとコーラ買ってこいや」
「……ん、わかった」
人生は生まれながらにして平等ではない。強く生まれた者が弱者を蹴落とすように、初めから、昔から作られているのだ。
そんな理不尽な世界に対して盛大に心の中で溜息をつきながら、僕は彼が言う通りにコーラの買い出しへと向かった。勿論自腹だ。
別に金を使って済む話ならいい。体をいたぶられることもないのだ。
「……はぁ、理不尽だな……」
か細い自身の声を聞いて、より一層そう感じてた。
僕は昔から体が弱かった。小学生の頃は病気がちで病院に入退院を繰り返していて、体がだいぶ良くなった中学以降は以前にかかっていた病気によるものか成長が芳しくなく、高校生3年目にして未だに背丈は150cm台前半。
成長期も変声期も来ることなく容姿そのままに成長してしまった僕は、僕自身の理想とは全く真反対の現状にいつも項垂れることしかできなくなった。
やれ、可愛いだ、男の娘だと僕が男であるという尊厳を無視し、他人の容姿をバカにしているその単語たちに、ひたすらに嫌悪感が湧き上がる。
「ほら、いつものやつ」
「おーう、ありがとな、香音ちゃん」
「……」
これ以上は関わりたくないと明確な意思を見せつけて、部活動設定時間が終わったことを知らせるチャイムがなったと同時に、僕はカバンを持ってその場を離れた。
「ほっらー、怒らせちゃダメだってー」
「あっはは、何で怒ってるかまじわからねーんだけどっ!」
ゲラゲラと汚い笑い声をあげてコーラと菓子を貪り食う奴らの姿を背に、僕は帰宅のために、タイミングよくやってきていたバスへと乗り込んだ。
自宅は学校から20キロほど離れた場所にあり、この場合自宅が田舎かというとこの学校よりは都会だ。
周りは見渡すばかりの田畑。唯一通る大きな国道は、不良共がたむろするバイクロードとなっている。
小学校のあいだまともに勉強などで来ておらず、中学も軽く休みがちだった僕には、本などを読んで知識を得ることは出来ても、自身でなにか問題を解くという能力がなかったために、こんな田舎の学校に来ることしか出来なかったのだ。
別に田舎だから悪いということはないが、自宅から遠いのは個人的には少し忌むべきことだった。
ただ疲れる。そのまま寝てしまい、バスを乗り過ごすことなどしょっちゅう。
そんな僕にとっては、実は近い学校の方が都合がいいのだが、生憎近所の学校は頭がいい高校かお高い私立高校しかなかったために、仕方なくこの場所まで通っている。
今日こそは寝過ごしませんように、と、ちょうど着いたバスの前で願いながら、プシューと音をたてて開いたバスのドアを潜り、そのまま席につく。
やはり田舎、バスに乗る人は少なく、僕はいつも通り後方2番目の運転手側の窓際に座り、外の風景を見ながら頬杖をつく。
いつもと寸分も違わない景色に飽き飽きとしながら、僕は迫り来る眠気に身を任せる。
幸い、今日は起こしてくれる運転手さんだ。少し甘えてぐっすりと眠らせてもらおう。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
激しい頭痛に襲われて目が覚める。
「っつ〜……」
頭を抱えて起き上がった時に、不意に口から言葉にならない声が漏れた。
「おはようございます」
唐突のその声に運転手さんが起こしてくれたのかと思ったが、運転手さんは老齢の男性。こんな若々しいエネルギッシュな男性の声はしていない。
「おはようございます、香音さん」
「お、おはようございます……」
「それにしても不思議なプロフィールだ。どこかで出生管理ポカしましたね、私」
「えーと、どちら様で?」
「んー、あー、説明を1から始めると面倒くさいので、ぱっとわかりやすい名称で言わせていただくと、私、人類転生管理局次人生紹介課の佐藤と申します。俗に言う、神というやつですね」
「は?」
「では私も仕事なので説明に入らせていただきますね。まずあなたは乗っていたバスがトラックに横からぶつかられて交差点で回転。その時にトラックが衝突した場所にあなたが座っていて、あなたは即死でした。本来こちらではあなたはあと2分12秒後に乗ってきたDQNたちに絡まれてフルボッコにされてそのまま死ぬはずだったのですが、我々の下請けの手違いであなたと別のひとりのデータが入れ替わっておりまして、この次第です」
「いや、説明なが……」
「ですが死んでしまったことには変わりがないので、あなたには通常通りこの世界手間はない別の世界で第2の人生を送っていただきたく、ここに及びした次第です」
「ねぇ、人の話聞いてる?」
「ほかの担当官ならこうは行かなかったでしょうね、何せあいつらは皆様のことを特別だなんだとはやし立ててチート当たり前の世界に適当にチートをあてがって送り、最後には放置。仕事放棄もいいところです、ぷんぷん。しかし私は違います。この次人生紹介課に配属されて170年、課長であるこの佐藤に任せていただければ、快適なニューライフを送ることが出来るでしょう!」
「……」
「はい、ではまず香音さんのご希望の姿をお教えください、用意されているハードであなたの魂を入れられるものをなるべくご希望の形で探しますので」
「……え、これマジなやつですか? ドッキリじゃなくて?」
「なんです、ドッキリって。私仕事でふざけたりなんてしませんよ。ははは」
あー、はい。僕死んだらしいです。まぁ、なんかおかしいとは思ってたんだよ、周囲見渡すと天井も床も壁も境目がわからないくらい真っ白な部屋で、ど真ん中に置かれたデスクに向かい合ってソファに座ってるこの絵面。アニメで見たことあるようなあれだよね、うん。
「さぁ、新しい自分の体をご希望ください!」
「えーと、じゃあ、周りよりやや背が高くて」
「はい」
「周りより少し顔が整ってて」
「はい」
「あ、これから行く世界って、割とファンタジー小説ありきな世界だったりします?」
「そうですね、それに準じたものかなと」
「うーん、じゃあ家事全般がプロレベル、あと生き物が懐きやすいとかそんな感じですかね、なんか爽やかかっこいい感じするなぁ」
「わかりました、ご希望の体は……おぉ、最高級のグランドエルフの器が余っているそうですね! これは楽しみだ、おまけで魔法能力と格闘能力もマックスで付けときますね、じゃないとグランドエルフの器に合わないので」
「あ、はい」
エルフか、いいなぁ!
これでかっこよく、森の賢者的な感じに生活していく! テンションアゲアゲだね、転生バンザイ!
別に元の世界に未練なんてないしね。
「では、更にこちらのミスがあったことに関するお詫びとして、神獣を1匹お付けしますね! 記憶もそのままで行っちゃいましょう! では、素敵な転生を!」
そう佐藤さんが言うと、僕の体は徐々にうすくなり、感覚も希薄になっていく。
「ありがとう、佐藤さん!」
「いえいえ、喜んでいただけて何よりです」
笑顔で手を振る佐藤さんの姿を最後に、僕の意識は暗転した。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「それにしても、快活な女の子でしたねぇ」
佐藤は手元の資料を見ながら、「あ、ここも間違えてる、あの子は男の子じゃなくて女の子ですって」と、ペンで香音の性別の項目を書き直した。
「さぁ香音さん、素敵なセカンドライフをお楽しみください!」
最早神にさえ勘違いされた香音。
佐藤が見つめるパソコンの画面には、可愛らしい見た目のグランドエルフの少女の姿が映っていた。
1人をスケープゴートにして自身の鬱憤を晴らすなんてのはどこにでもある普通の後継。
それに反抗することの出来る者、全てを諦めてこもることの出来る者たちがいくら事実を伝えたところで、その立場に立ったからその考えに至っただけであり、実際問題、普通に生活していれば加担者と何ら変わりない。
容姿、趣味、思考、その全てか他と一線を画す者は少なからずその不幸を呪わなくては行けなくなる。
「香音ちゃーん、ちょっと付き合えよ」
ほら、またこれだ。平均から逸脱する者は、出る杭は打たれる方式で他社に蹴落とされていくのだ。
「おい、ちょっとコーラ買ってこいや」
「……ん、わかった」
人生は生まれながらにして平等ではない。強く生まれた者が弱者を蹴落とすように、初めから、昔から作られているのだ。
そんな理不尽な世界に対して盛大に心の中で溜息をつきながら、僕は彼が言う通りにコーラの買い出しへと向かった。勿論自腹だ。
別に金を使って済む話ならいい。体をいたぶられることもないのだ。
「……はぁ、理不尽だな……」
か細い自身の声を聞いて、より一層そう感じてた。
僕は昔から体が弱かった。小学生の頃は病気がちで病院に入退院を繰り返していて、体がだいぶ良くなった中学以降は以前にかかっていた病気によるものか成長が芳しくなく、高校生3年目にして未だに背丈は150cm台前半。
成長期も変声期も来ることなく容姿そのままに成長してしまった僕は、僕自身の理想とは全く真反対の現状にいつも項垂れることしかできなくなった。
やれ、可愛いだ、男の娘だと僕が男であるという尊厳を無視し、他人の容姿をバカにしているその単語たちに、ひたすらに嫌悪感が湧き上がる。
「ほら、いつものやつ」
「おーう、ありがとな、香音ちゃん」
「……」
これ以上は関わりたくないと明確な意思を見せつけて、部活動設定時間が終わったことを知らせるチャイムがなったと同時に、僕はカバンを持ってその場を離れた。
「ほっらー、怒らせちゃダメだってー」
「あっはは、何で怒ってるかまじわからねーんだけどっ!」
ゲラゲラと汚い笑い声をあげてコーラと菓子を貪り食う奴らの姿を背に、僕は帰宅のために、タイミングよくやってきていたバスへと乗り込んだ。
自宅は学校から20キロほど離れた場所にあり、この場合自宅が田舎かというとこの学校よりは都会だ。
周りは見渡すばかりの田畑。唯一通る大きな国道は、不良共がたむろするバイクロードとなっている。
小学校のあいだまともに勉強などで来ておらず、中学も軽く休みがちだった僕には、本などを読んで知識を得ることは出来ても、自身でなにか問題を解くという能力がなかったために、こんな田舎の学校に来ることしか出来なかったのだ。
別に田舎だから悪いということはないが、自宅から遠いのは個人的には少し忌むべきことだった。
ただ疲れる。そのまま寝てしまい、バスを乗り過ごすことなどしょっちゅう。
そんな僕にとっては、実は近い学校の方が都合がいいのだが、生憎近所の学校は頭がいい高校かお高い私立高校しかなかったために、仕方なくこの場所まで通っている。
今日こそは寝過ごしませんように、と、ちょうど着いたバスの前で願いながら、プシューと音をたてて開いたバスのドアを潜り、そのまま席につく。
やはり田舎、バスに乗る人は少なく、僕はいつも通り後方2番目の運転手側の窓際に座り、外の風景を見ながら頬杖をつく。
いつもと寸分も違わない景色に飽き飽きとしながら、僕は迫り来る眠気に身を任せる。
幸い、今日は起こしてくれる運転手さんだ。少し甘えてぐっすりと眠らせてもらおう。
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激しい頭痛に襲われて目が覚める。
「っつ〜……」
頭を抱えて起き上がった時に、不意に口から言葉にならない声が漏れた。
「おはようございます」
唐突のその声に運転手さんが起こしてくれたのかと思ったが、運転手さんは老齢の男性。こんな若々しいエネルギッシュな男性の声はしていない。
「おはようございます、香音さん」
「お、おはようございます……」
「それにしても不思議なプロフィールだ。どこかで出生管理ポカしましたね、私」
「えーと、どちら様で?」
「んー、あー、説明を1から始めると面倒くさいので、ぱっとわかりやすい名称で言わせていただくと、私、人類転生管理局次人生紹介課の佐藤と申します。俗に言う、神というやつですね」
「は?」
「では私も仕事なので説明に入らせていただきますね。まずあなたは乗っていたバスがトラックに横からぶつかられて交差点で回転。その時にトラックが衝突した場所にあなたが座っていて、あなたは即死でした。本来こちらではあなたはあと2分12秒後に乗ってきたDQNたちに絡まれてフルボッコにされてそのまま死ぬはずだったのですが、我々の下請けの手違いであなたと別のひとりのデータが入れ替わっておりまして、この次第です」
「いや、説明なが……」
「ですが死んでしまったことには変わりがないので、あなたには通常通りこの世界手間はない別の世界で第2の人生を送っていただきたく、ここに及びした次第です」
「ねぇ、人の話聞いてる?」
「ほかの担当官ならこうは行かなかったでしょうね、何せあいつらは皆様のことを特別だなんだとはやし立ててチート当たり前の世界に適当にチートをあてがって送り、最後には放置。仕事放棄もいいところです、ぷんぷん。しかし私は違います。この次人生紹介課に配属されて170年、課長であるこの佐藤に任せていただければ、快適なニューライフを送ることが出来るでしょう!」
「……」
「はい、ではまず香音さんのご希望の姿をお教えください、用意されているハードであなたの魂を入れられるものをなるべくご希望の形で探しますので」
「……え、これマジなやつですか? ドッキリじゃなくて?」
「なんです、ドッキリって。私仕事でふざけたりなんてしませんよ。ははは」
あー、はい。僕死んだらしいです。まぁ、なんかおかしいとは思ってたんだよ、周囲見渡すと天井も床も壁も境目がわからないくらい真っ白な部屋で、ど真ん中に置かれたデスクに向かい合ってソファに座ってるこの絵面。アニメで見たことあるようなあれだよね、うん。
「さぁ、新しい自分の体をご希望ください!」
「えーと、じゃあ、周りよりやや背が高くて」
「はい」
「周りより少し顔が整ってて」
「はい」
「あ、これから行く世界って、割とファンタジー小説ありきな世界だったりします?」
「そうですね、それに準じたものかなと」
「うーん、じゃあ家事全般がプロレベル、あと生き物が懐きやすいとかそんな感じですかね、なんか爽やかかっこいい感じするなぁ」
「わかりました、ご希望の体は……おぉ、最高級のグランドエルフの器が余っているそうですね! これは楽しみだ、おまけで魔法能力と格闘能力もマックスで付けときますね、じゃないとグランドエルフの器に合わないので」
「あ、はい」
エルフか、いいなぁ!
これでかっこよく、森の賢者的な感じに生活していく! テンションアゲアゲだね、転生バンザイ!
別に元の世界に未練なんてないしね。
「では、更にこちらのミスがあったことに関するお詫びとして、神獣を1匹お付けしますね! 記憶もそのままで行っちゃいましょう! では、素敵な転生を!」
そう佐藤さんが言うと、僕の体は徐々にうすくなり、感覚も希薄になっていく。
「ありがとう、佐藤さん!」
「いえいえ、喜んでいただけて何よりです」
笑顔で手を振る佐藤さんの姿を最後に、僕の意識は暗転した。
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「それにしても、快活な女の子でしたねぇ」
佐藤は手元の資料を見ながら、「あ、ここも間違えてる、あの子は男の子じゃなくて女の子ですって」と、ペンで香音の性別の項目を書き直した。
「さぁ香音さん、素敵なセカンドライフをお楽しみください!」
最早神にさえ勘違いされた香音。
佐藤が見つめるパソコンの画面には、可愛らしい見た目のグランドエルフの少女の姿が映っていた。
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かな
レベル1なのにMaxレベルよりステから応援させて貰ってます!こちらの話も面白かったので是非続きお願いします!