部活対抗殺し合い政策

Natrium リウム

悲劇の始まり

「ねぇねぇ叶美?メール来てた?」
「来てた!来てた!あれ何なの?迷惑メール?」
「えーでも学校からだったよね?」
今日はいつもの何倍も騒がしい。…話題は学校側から送られてきたメールだそうだ。
そのメールの内容は-
[明日、午前10時から1週間、学校側で部活対抗殺し合い政策を実施する。
但し、生徒は強制参加。]
だそうだ。まぁ、多分誰かがハッキングでもしてイタズラしているのだろう。今日の夜はテレビでニュースがやりそうだ。それにしても皆荷物が多いな。本気で信じているのだろうか?…気にすることじゃないか。ふと思ったが親は止めないのか…?
まぁ、俺達が心配することではないのか。
今日も退屈な長い廊下を歩き、トイレへ行くのだった。

【午前 9時37分】

時刻が近づき始め、一層騒がしくなる。煩い。耳障りだ。

【午前9時56分】

…皆楽しんでいるようだ。恐怖もみじんに感じていないようだった。

【午前10時00分】

キーンコーンカーンコーン、と1時限目の始まりのチャイムが鳴る。
女子達の短い悲鳴が聞こえる。それと同時に、校内放送のチャイムの音が鳴った。
《これから部活対抗殺し合い政策を実施する。ルールは、各部活が殺し合うという単純なルールだ。…部活対抗殺し合い政策。開始》
…放送が終わるチャイムが鳴る。しかし教室は静かだ。が、皆机の中央を見つめていたり、下を俯いているばかりだった。
しばらくすると、野球部の大嶋がガッと音を立て立ち上がった。そして大声で言い放った。
「おい!八木!お前帰宅部だろ?まず弱い帰宅部から殺るぞ!!」
…いつもは優しく明るい大嶋が、帰宅部の八木の胸ぐらを掴んだ。目元まで隠している前髪が揺さぶられる。
「ぁ…ごめ…ん…ごめんなさい…ごめんなさい…」
震えた声を振り絞って命乞いをする八木に、大嶋は一瞬顔を歪ませた。しかし、次の瞬間八木の頬に殴りかかった。
静まり帰った教室に、女子達の悲鳴が響く。
「お、大嶋さん!やめて!」
級長の矢部の聞きなれない大声が響いた。すると大嶋が顔を背けながら言った。
「ごめん…ごめんな八木。俺の父さんも実は反対したんだよ…」
「…」
大嶋の父親は議員だ。その''殺し合い政策''には反対だったそうだが、上司に睨みを聞かされ、可決させられたという。
しばらくの沈黙の後、八木がこう言った。
「…良いよ。皆信じないと思うけど、僕がやってた占いでは必ず死者がでたんだ。…運命には逆らえないよ…ちょっとみんなの前で言うのは恥ずかしいな…」
八木の最後の一言で教室がほっこりムードで包まれた。しかし、それはほんの一瞬だけだった。
スパーンという鋭い音が教室に響く。
「…え?な…んで」
八木が倒れた。また女子達の悲鳴と男子達の短い悲鳴が響く。
「…どうせ死者が出るなら、この手で終わらすしか無いわ」
銃を構えてそこに立っていたのは、成績トップの石橋だった。
紺色のストレートヘアを手で払って言った。
「残念だけど、あなた達には死んでもらうわ。…それにしても誰も殺害の準備をしていないようね。それはこちらからすれば好都合だわ」
少し口角を上げたかと思うと、女子の髪の毛が銃で切れていた。
「…ヒッ」
「あら…当たらなかったわね」
青ざめた顔をしていたのは癒し系女子の一人、笹原だった。長い綺麗な髪の毛が、一瞬の内に地面にパラパラと散らばった。
いつもはニコニコしていて天然な笹原の様子がおかしくなっていた。
「…あははははははこわいよォ!コワいなぁ!!アハハハハヤバい!!アハハハハ」
あまりの恐怖に精神状態がおかしくなったのだろうか。口が開けっ放しで笑っている為、ヨダレが垂れ出ている。
以前彼女のことが好きだった男子は、絶望したように、呆然としながら見ていた。
…段々と狂っていく。クラスがおかしくなっていく。






「…上手く行っているようです。早乙女様」
「そうか。見事にクラス一つ一つがおかしくなっているようだな」
剃るのを忘れた顎のヒゲを、親指と人差し指で挟みながらなぞる。すっかり冷めた緑茶を、表情一つ変えずに一気飲みした。
「誰が生き残るか…楽しみだな」
モニターから見下すその目は、とても冷酷なものだった。






ここまでご視聴ありがとうございます。次回はいよいよ殺し合いらしきものが始まります。
どうか最後まで御付き合いくださいませ。

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