サッカー異世界杯‼︎

宝生レム

第1話 やる気無い天使とドうるさい女神

「…ーい、…きろ……きて…か」
誰かの声が聞こえる。
「生…て…かー。あっそうか、死んでるんやったわアハハ!」
「うわぁ!」
「アエエ起きたぁぁ ︎アイィィイエェェェエ ︎」

勇輝が目を覚ますと、そこには、とても広く、真っ白い空間が広がっていた。勇輝の下には、複雑な魔法陣が置かれており、周りには、虹の痕跡を残しながら、オーブが廻り続ける。

目の前には、2人の人影が見える。さっきから、うるさいその女の子は、とても体が小さいが、先程から中身と性別と年齢が合っていない。
一方、隣に眠い目を擦っている女の子も見えた。先程の一人とは違って、落ち着いており、見たものの心が癒すような雰囲気を醸し出している。

すると、その子が話かけてきた。

「ごめんね。いきなりここに呼び出されて、見知らぬ人にちょっかいかけられたら、ふつうびっくりしちゃうよね。待ってて、今からこいつを黙らすから」
そう言い終わると、ふざけている女の子の腹にストレートをかました。
「ギィヤァァァァ ︎」
耳を抑ぐ程の断末魔が聞こえる。余程痛かったのだろうなぁと勇輝は白い目で思うだけである。

「いや、あのよぉ…お前ら誰だ?」
さっき断末魔あげたのが、ひょっこりと顔を上げた。
「そういや言ってなかったな!わしはこの世界の神さま[タイガ]や!よろしゅう頼みますわ!」
「成る程…ってハァ ︎神ィ ︎」
「で、隣の奴が、わしの忠実な僕[ミカエル]や!どや、天使やから羽生えてて、かわぇぇやろ?」
ミカエルと名乗る天使が、面倒ながらも、ゆっくりとお辞儀をする。
「そいつは天使なんだなぁ。まぁ、かわいいけどよ、忠実な僕って言った割には、さっきまでフルボッコにされてなかったか?」
「気にするんじゃあない!それより要件済ませてたいのに、最初の1分が茶番で無駄になったぞ!誰だよ時間無駄にした奴!」
「…殆どお前だよ」
ミカエルが小声で一言。見るものの心を癒す筈なんだが、勇輝には、一瞬、心に恐怖が植え付けられた気がした。

「にしてもあれやな!お前サッカーめっちゃ上手いんやろ!見たで!ロングボレーシュートしてるとこ」
「えっ、見てたのか?俺の十八番」(マジか?)
「いやぁ、アレはほんま良かったわ!わしはああいうのを探してたんや!確かお前の、名前は…ハチカミー」
「やがみ。ハ神勇輝」
ミカエルが、すかさず正しい名前を言った。

「あぁ、それや。うーんもうユウキでいいや」
タイガは少し溜めてから、叫んだ。
「単刀直入に言おう!ユウキのその素敵な力が世界を救うのに必要で必要で…だから死んでもらったぁ!」
勇輝は、突然の告白にきょとんとしてしまった。
「…はっ?」

「本当にすみませんっしたぁ!」
そう言い終わるとすぐに、白い空間の地面に、亀裂が入る程の、凄まじい土下座をした。

「えええええ!?じゃあ、あれ!トラックにぶつかった時のって…」
「そう、ちっと、神の能力で、ちょちょっとね。えへへ…」
タイガが必死で誤魔化している様子を見ていて、飽きてきたミカエルは、眠りに入った。
「えへへじゃねぇよ!なに、人の人生変えてるんだよ!」
タイガはテヘペロ顔で済まそうとしているが、当然、ユウキは殴ってやりたい気持ちでいっぱいだった。

しかし、やるせない気持ちになった勇輝は、体育座りをすると、それから呟いた。
「あぁ、もう俺のもといた世界には、帰れないのか…Oh,no…」
勇輝のオーラは、徐々に暗色が目立ってきたのである。

「まぁまぁ、そう落ち込むなって、ほらさ、みんな大好き異世界転移っつうのがあるだろう?」
「…異世界転移だと?」

異世界転移

それを聞いただけで、勇輝のオーラは、一瞬にして明るくなった。
「面白そうだな、詳しく聞かしてもらおう!」
勇輝は、異世界転移でテンションが上がったのか、それとも、何もかもが吹っ切れたからがはタイガと、ミカエルの視点からはわからないが、勇輝の声が、まるで某ゲームの司令官風の声へと変わってた。
(…やったぜ☆)
タイガは心の中でガッツポーズをする。
そんな速いスピードで、展開が進んでいくなかでも、ミカエルはまだ睡眠中であった…。





「まず、ユウキを殺してまで、異世界に転移させる理由っつうのも、大体察してと思うが、わしらの世界は、混沌を極めており、いつ世界社会が崩れてもおかしくない。そこで、ユウキの力が必要や。ユウキはこの世界のルールに従いながら、世界を救ってほしい」
「なるほど、なるほど」
勇輝はうなづきつつ、集中しながら聞いている。興味深々である証拠だ。
「因みにだが…お前アニオタだし、異世界には直ぐに慣れると思うけど、一応お前がポッキリ死なんように、お前が寝てる時に、少々のマナ(魔力)と小説でお馴染みのチートを送ったから」
「マジっすか!あざーす!」
(しかし…こいつ、怖い位の切り替え感だな…)

「そういえば、その世界の地図とかって、どうなってるんだ?」
その件に関しては、タイガもふと思った。
「あぁ確かにな…」
「ふわぁ〜」
すると、気持ち良さそうに寝てたミカエルが、やっと起きた。
「あぁミカエル、ミカエル。3日程でええから、わしらの世界のナビしてくれへん?」
「えぇ、めんどいけど…わかった、やる」
これで、勇輝の、世界ナビ問題は解決した。
「宜しくお願いしまぁーす」
「よろしく!…ってもまだ眠り足りない感じか?」
「だぁいじょうぶ…」
と言いながらも、体がふるふるしているのは、気のせいなのかと勇輝は思う。







「長くなっちゃったけど、そろそろ行くで」
タイガが転移の準備をしようとした瞬間、勇輝が手を挙げた。
「あっ待って!まだ、この世界について教えて貰ってないけど…」
「そういや、せやったな!この異世界は、他の世界とは違うある特徴がある!

リンク・ワールド…全ての運命がサッカーで決まる世界や!」

「へ?」

「さぁ行った!」
タイガが指パッチンを鳴らすと、勇輝とミカエルが、立っているところの床が、ポッカリと無くなっていた。
「ちょ、エエエエエエエエエエエエエエ!!?」
「くぁwせdrftgyふじこlp」
勇輝(Withミカエル)は、理不尽な死(殆どタイガのせい)を経て、新しい世界に投げ飛ばされるのであった。













タイガは、やっと転移を完了させると、ふところから手帳を出し、何かをメモり出した。
「時間は15分程か…長すぎるなぁ、これ小説やととっくに2000字超えとるで…
もっとコンパクトに説明させてから、転移させたかったんだがなぁ…このす(自主規制)参考にしようかな」





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