草食系男子が肉食系女子に食べられるまで

Joker0808

第17章 帰宅と登校10

 家に帰ると、なぜか石崎が花束を持って雄介を待っていた。
「石崎さん、もしかしてお待たせしましたか?」
「いや、来たところだ。それにしても騒がしいな……」
「あぁ…ちょっとバタバタしてまして……」
 気まずそうに言う雄介に、石崎は不思議そうな表情を浮かべる。 石崎は話を変えて、雄介に持っていた花束と手土産を差し出す。
「退院おめでとう。今日はそれを言いにきたんだよ」
「あぁ、ありがとうございます。石崎さんは自分の学校の担任なんですよね?」
 雄介は花束と手土産を受け取り、石崎に尋ねる。 石崎はいつも通りの眠そうな表情で雄介の問いに答える。
「あぁ、だから先生って呼んでくれねーか? さん付けってのはどうにもむず痒くってよ」
「あ、そうですよね、すいません。石崎先生」
「………なんか変な感じだな…」
 石崎は顎に手を当てて、雄介を見ながらそうつぶやく。
「変ですか?」
「あぁ、いやなんでもない。それじゃあ俺は行くからな」
「え、せっかくですから上がって行って下さいよ」
 帰ろうとする石崎を雄介は呼び止めて、中に入るように促す。 しかし、石崎にはこの後にも予定があった。
「悪い、ちょっと今から用があるんだ」
「そうだったんですか、じゃあ仕方ないですね、また何かあった時にでも」
「あぁ、そうだな。じゃあまたな、学校で待ってるぞ」
 石崎はそう言うと、家の側に止めていた車に乗って行ってしまった。 玄関先に残された雄介と慎は、石崎を見送り中へと入る。 リビング内の重たい空気は消え、今は何やらさっきよりも騒がしく、楽し気な雰囲気だった。
「あぁ~、ユウ君どこ行ってたの~? お姉ちゃん心配で三回くらい捜索願出そうとしてたんだよ~」
「出しすぎです。それに、どうしたんですか? 何か顔が赤いような……」
「え~、それはねぇ~、ユウ君とくっ付いてドキドキしてるからだよ~」
 普通の男子高校生なら、女性にこんな事を言われればドキドキするのだろうが、雄介はドキドキも何もしなかった。 その理由は簡単で、雄介は直ぐに分かった。
「里奈さん……お酒飲みました?」
「飲んでまへんよ~、ユウく~ん……」
 里奈のこの一言で完全に飲んでいると確信が出来た。 よく見ると、周りの皆の様子もおかしい。
「私が社長なんて……この会社は間違っている……そうだ、今すぐにでも社長職を他の者に譲ろう……そうすればまだマシな会社になるかもしれない……」
 なぜかすごく卑屈になっている徹は、リビングの隅で体育座りで何やらブツブツ言っている。 堀内と江波はと言うと……。
「おいコラ堀内! 私のグラスが空だぞ!」
「はい女王様!」
 江波はソファーに座って足を組み、その隣で堀内が上半身裸で片足をついて江波に頭を下げている。 異常な光景なのは間違いないのだが、なぜかその光景がしっくりきてしまった。 そして、玄と紗子はと言うと……。
「玄さ~ん、もう一杯~」
「やめておきなよ……飲みすぎだよ?」
「くれないなら良いわよ、浮気してやる…」
「ハイハイ……」
「はいはいって何よ~」
 紗子さんが泥酔し、それに捕まってしまった玄は疲れた表情で紗子の相手をしていた。
「なんだよコレ……」
 雄介はこの異常に高いテンションの空間に疑問を抱く。 すると、さっきまで後ろに居たはずの慎がどこかに消えてしまった。
「あれ? 慎…」
 リビングを見渡して慎を探すと、慎は沙月に捕まっていた。 床に座らせられ、その上に沙月が座り、慎に対して何やら文句を言っている。
「良いわね、顔が良いとモテモテで」
「いや…太刀川もスタイル良いし、可愛いと思うんだが……」
「うるっさいわねぇ~、私はそこらの面食いと違って内面を見てんのよ……」
「じゃあ、今のこの状況を説明していただいても良いでしょうか?」
「黙ってろこのイケメンが~、私は面食いじゃな~い」
 完全に酔っぱらった沙月に捕まり、慎は酒の相手をさせられていた。 一体どうしてこうなったのかを雄介は考え、辺りを見渡す。 すると、床に無数に転がっている高そうなジュースの瓶を発見する。 パッケージにはオレンジジュースと書いてあるが、なぜかその瓶からはアルコールの匂いが漂ってきた。
「まさか……誰かが間違って……」
 瓶を拾って考える雄介。 すると、背中に強い衝撃とムニュっという柔らかい感覚が同時に訪れた。 雄介はまさかと思い、背中を見てみると、背中に誰かが抱き着いていた。
「ゆ~すけ~」
「お、織姫…さん」
 抱きついてきたのは雄介に先日告白をした織姫だった。 顔を真っ赤にして瞳を潤ませながら、色っぽい声で耳元に話しかけてくる。
「織姫さんなんて他人行儀です~、呼び捨てにしてください!」
「ちょ…ちょっと!」
 織姫は強い力で雄介を背中から抱きしめ、体を雄介に押し付ける。 雄介は織姫のそこそこ大きめの胸の感触に顔を赤くし、織姫を引きはがそうとするが、織姫は一向に離れない。
「お、織姫さん、離れてください……当たってます…」
「ん~、また織姫さんって言った~」
 織姫は、さん付けがよっぽど気に食わなかったのか、更に強い力で雄介を抱きしめる。
「あ、あの! 本当にやばいんです! やめて下さい!!」
「や~、ちゃんと織姫たんって呼んで~」
「たんって何ですか! 呼び捨てだけじゃダメなんですか!」
 織姫は雄介の背中に顔を押し付け「早く~」と催促しながら雄介を拘束し続ける。 雄介はこれ以上抱き着かれ続けるのはヤバイと感じ、諦めて言われた通りに名前を呼ぶ。
「お、織姫…たん……」
 雄介は恥ずかしくて死にそうだった。 正気だった慎と玄は、雄介の方を見ながら必死に笑いをこらえている。
「ウフフ……雄介~、大好きですよ~」
「あの! 言ったんですから、離れてください!!」
「誰も離すなんて言ってませーん」
「な!」
 織姫はそのまま雄介の背中に張り付いたまま動こうとしない。 そんな二人の側に、倉前が顔を真っ赤にしてよってきた。
「お嬢様! はしたないです! ちゃんとベッドでしてください!」
「一体何をですか! 妙な誤解はやめて下さい!!」
「ん~、ベッドですか~?」
 余計に話はややこしくなってきた。 雄介は何とかこの状況から抜け出そうと、試行錯誤を繰り返すが、更に面倒臭い人物が、雄介の元に迫りつつあった。

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