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草食系男子が肉食系女子に食べられるまで

Joker0808

第17章 帰宅と登校3

 アルバムの中には、幼い雄介と里奈の写真があった。 小学校に入ってからの写真が多く、あまり笑っている写真が無い。
「不愛想だな……」
 記憶が無い雄介にとっては、知らない不愛想な子供の写真を見ている気分だった。 ページをめくる毎に、雄介と里奈の写真が増えているのがわかった。 小学校高学年の写真なんかは、必ず写真のどこかに里奈が居た。
「…ちょっとしたホラーだな……」
 少し不気味なアルバムを見ながら、雄介は苦笑いをする。 しかし、どの写真を見ても、雄介以外の人間は笑っていた。 雄介自身は楽しくなさそうなのに、他の人間は必ずと言って良いほどに、写真の中の誰かが笑っていた。
「……俺は何がつまらないんだろう」
 写真の中の自分に語りかけるように、雄介は呟き、ため息を吐く。 アルバムを閉じ、元の場所に戻すと、雄介は一階に降りて行く。 どこに何があるのか、紗子に尋ねるためだ。
「あの、紗子さん?」
 雄介は、一階の玄関から直ぐ部屋に入って、紗子を呼ぶ。
「あら、雄介。どうかした?」
 中は凄く散らかっていた。 ゴミ袋が三袋ほどおかれ、洗濯ものは散らかりっぱなし、部屋の隅には誇りまで溜まっていた。
「あ、あの……どこ何の部屋があるのか、知りたかったんですが……この部屋は?」
「り、リビングよ……」
「随分個性的なインテリアのリビングですね……」
 散らかったリビングを見ながら、雄介は呆れた声でそういう。 そんな雄介に同調するかのように、玄が洗濯物の山から現れて言う。
「これは散らかりすぎじゃないかな?」
「し、仕方ないのよ! 雄介が今まで掃除とか家事をやってくれてたから、中々毎日の家事って言う習慣が無くて……」
 俺は一体この家でどんな立ち位置に居たのだろうか? そんな疑問が雄介の頭によぎる。 台所からも、何やら異臭がしており、雄介は鼻を手で押さえた。
「あの、掃除しませんか? これから皆さん来る事でしょうし…」
「そうね……流石にこの状態をよそ様に見せるわけには行かないわ……」
 今村家の4人は、各所に分かれて掃除を始める。 雄介は、記憶は無くなっても、体が覚えていた家事スキルを発揮し、どんどん部屋を綺麗にしていく。 しかし、問題はその他の三人だった。 まずは里奈だ。
「ユウ君! エプロン有る?」
「ありますけど、つけますか?」
 そう言って、雄介は自分のつけていたエプロンを里奈に渡そうとする。
「あ、じゃあ私も全裸ならなくちゃね!」
「あの、なんでですか?」
「もう、ユウ君ったら、裸にエプロンだから、裸エプロンって言うんでしょ? ユウ君はおバカさんだな~」
 おバカさんは貴方では? などと思いながら、雄介はエプロンを里奈に渡すのをやめて自分でつけなおす。
「え~なんで貸してくれないの~」
「風邪をひくと悪いので、そういう使い方をするならかしません」
「む~、ユウ君はお姉ちゃんのそういう姿見たくないの?」
 雄介はその瞬間、当たり前の事だが、別に見たくないと思ったが、同時に違和感も感じた。 健全な高校生男子だったら、こんなに美人で血のつながらない姉の裸エプロン、なんてエロゲーのようなイベントを速攻で否定などできるものだろうか?
「……俺って…本当に女性が嫌いだったんだな…」
 もしかしたら、記憶を失う前の自分はホモだったのではなかったのかと、自分を疑ってしまうほどに、雄介はそういう事に興味を持てなかった。
「ユウ君! 聞いてる?」
「……あ、すいません。考え事を…」
「フフ…もう、ユウ君は本当に仕方ないな~」
 里奈は雄介の腕にしがみ付き、甘い声で囁くように雄介に言う。 雄介が記憶はないとはいえ、帰って来た事が里奈はうれしく、いつも以上に雄介とスキンシップを取っていた。
「あ、あの……掃除してもらっていいですか?」
「え~、もう少し~」
 雄介の前とは違う新鮮なリアクションが里奈は面白く、小悪魔のような表情を浮かべながら雄介に密着する。
「里奈! 雄介が困ってるでしょ!」
「イタ! お母さん最近暴力的だよ~」
「まったく、あんたはお父さんと洗濯物干してきて!」
「む~、せっかくユウ君と良い感じだったのに~」
 里奈は紗子に頭を箒で叩かれ、大人しく玄の元に向かって行った。
「はぁ~、あの子はまったく……」
「ありがとうございます。ああいう時、どう対応すれば良いのか、まだわからなくて…」
「大丈夫よ、あの子が特殊なだけだから」
「は、はぁ……」
 自分の娘を特殊と言い切った紗子に、どう言葉を返せばいいか分からず、雄介は生返事で答える。
「ところで紗子さん……」
「ん? 何かしら」
「その右手に持ったお風呂用洗剤は?」
「洗剤ならなんでも良いと思って、これで窓を磨こうかと……」
「ちゃんとした洗剤で磨いてください……」
「そ、そうよねぇ…あはは…」
 紗子は笑いながら雄介の元を離れて行った。 雄介はそんな紗子を見ながら、本当に家事は自分がやっていたんだと確信する。
「早く終わらせないとな……」
 雄介は掃除を続けながら、なんだか懐かしい感覚を感じていた。 昔もこんな風に掃除をしていたような、そんな感覚だった。
「うわぁぁ! どうしよう、洗剤があふれてきた!」
「お父さん何やってるの! どんどん出てくるわよ!!」
「ちょっと! 貴方、里奈! 何やってるの!」
 どうやら洗濯組の二人が何かをやらかしたらしく、雄介は掃除を中断して、洗濯機のある風呂場を覗きに向かった。
「うわぁ! なんですかコレ……」
 洗濯機の周りは、泡で溢れかえっており、いまだに洗濯機から泡が出続けていた。
「あ、雄介。どうしよ、止まんないんだよ! コンセント抜いてみる?」
「感電するかもなのでそれは絶対ダメです。とりあえず洗濯機の停止ボタンを押してください」
 玄は言われるがままに、洗濯機の停止ボタンを押して洗濯機を止める。 周りに広がった泡を見て、雄介はこう思った。
(絶対俺がこの家の家事担当だったんだな……)
 雄介は仕事が増えたと思いながら、ため息を付き、顔を叩いて気合を入れて掃除を再開する。 そして、他の三人に指示を出した。
「紗子さんは台所の洗い物をお願いします」
「わ、わかったわ…」
「里奈さんは洗濯済みの洗い物を干してください」
「りょ、了解……」
「玄さんは、自分とこの泡を片付けましょう」
「は、はい……」
 雄介の気合の入った指示に、三人は驚きながらも従う。 皆が来るのは後一時間ほど、果たして掃除は終わるのであろうか、先が思いやられる雄介だった。

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