甘え上手な彼女

Joker0808

♯21




「高志? 帰ってきたばっかりで何処にいくの?」

「ちょっと、散歩」

 高志は紗弥からの返信を貰って、すぐに返信を返し、家を出た。
 家を出て一分くらいの場所にある、自動販売機の前。そこで待ち合わせをした。
 お互いの家が近いため、待ち合わせの場所も必然的に近場になる。
 
「お待たせ」

「ん、私も今来たから……」

 紗弥は自販機の前に座り、ペットボトルの飲料水を飲んで待っていた。
 高志はそんな紗弥の隣に立ち、自販機に寄りかかる。

「今日はどうしたんだ? なんかいつもと違ったっていうか……」

「うん……あのさ……」

 紗弥は立ち上がり、高志と同じく自販機に寄りかかる。
 そして、不安そうな表情で言う。

「私って……甘えすぎかな?」

「………は?」

「いや……その……今日、由美華に……」

 紗弥は今日の由美華との会話の一部を高志に話す。
 それを聞いた高志は、深い溜息を吐き、ほっとした様子で紗弥に言う。

「はぁ~、よかった……それで今日の帰りはあんな感じだったんだ……」

「うん……そう言うのって、やり過ぎると……嫌われるらしいし……」

「俺はてっきり、チャコにヤキモチ焼いて、怒ってたのかと思ったよ」

「ヤキモチは焼いたわね、私に全然構ってくれないし」

「あ、焼いてたんだ……」

 紗弥は頬を膨らませながら、高志に文句を言う。
 そんな紗弥を見ながら、高志は紗弥もヤキモチとか焼くんだ、と思いながら横目で頬を膨らませる彼女を見ていた。

「こんな小さい事でヤキモチ焼く女って……面倒だよね……」

「……確かに面倒かもね」

「う……」

「でも、それを承知で付き合ってる訳だし……気にする事無いよ」

 高志は覚えていた、紗弥が部屋で高志に言った言葉を。
 紗弥が自ら言った、自分は面倒臭い女だと言う言葉を。 

「それに、俺もちょっとチャコに構い過ぎてたかもしれないし……」

「高志……」

「それに、いつもの紗弥じゃないと、こっちまで調子狂っちゃうよ」

 高志は笑顔を浮かべながら、紗弥に言う。
 そんな高志の言葉に、紗弥は安心し、いつもの笑顔で高志に言う。

「あ~あ、慣れない事ってするもんじゃないわね~」

 やっといつもの調子に戻った紗弥。
 紗弥は、高志の隣にぴったりとくっつき高志の肩に頭を乗せる。

「今週末は、どうする?」

「行く」

 結局、紗弥の我慢は半日も経たずに終わってしまった。
 その後、そのまま別れようとした高志だったが、紗弥がそれを許さず。
 まだそこまで遅く無いからと、高志の部屋についてきた。

「ただいま~」

「おかえ……あら? 喧嘩してたんじゃないの?」

 帰ると、高志の母親が不思議そうな顔で紗弥を見る。

「喧嘩なんてしてませんよ」

 紗弥は笑顔で高志の母親にそう言い、高志の後に続いて部屋に向かった。 
 部屋には案の定、チャコがベッドの上で眠っており、高志が帰ってきたのに気がつくと、飛び起きて、高志の方にやってきた。

「にゃー」

「ただいま。紗弥に唸るなよ~」

 高志がそう言っている間に、チャコは紗弥を発見し、昨日同様に威嚇を始める。

「シャー!」

「やっぱり、慣れるまでは時間が……って紗弥?!」

 紗弥は威嚇するチャコの首根っこわ掴み、自分の膝にチャコを乗せる。
 もちろんチャコは、大人しくなどしている訳も無く、大暴れだった。 
 しかし、そんなチャコを紗弥は押さえつけながら、頭を撫でる。

「はいはい、そんなに暴れないでね~」

「にゃ! にゃ-!!」

「大丈夫よ、恐くないわよ~」

 そう言いながら、紗弥はチャコを優しく撫で続ける。

「シャー!! ゴロゴロ……」

「お前は、怒ってんのか? それともじゃれてんのか?」

 撫で続ける事約数分。
 チャコは、紗弥にお腹を撫でられ、怒りながらも紗弥にじゃれていた。
 そして、更に撫で続けること数分……。

「にゃ~、ゴロゴロ……」

「はいはい、良い子ね~」

「懐いたな……」

 チャコは紗弥に懐いていた。
 先ほどまで、唸って居たのが嘘のように甘い鳴き声を出し、紗弥の膝の上で紗弥の手を追いかけて遊んでいる。

「可愛い~、ちゃんと懐くのね」

「やっぱり昨日は警戒心が合ったんじゃ無いか?」

 隣でチャコと戯れる紗弥を見ながら、高志は言う。

「チャコ~こっちにもこ~い」

 そう言って、高志はチャコに手を差し出すが、チャコは紗弥に夢中で気がつかない。
 昨日はあんなにも懐いて居たのに、なんだか疎外感を覚える高志。

「チャコちゃ~ん、ほ~ら気持ちいい?」

「ゴロゴロ~」

 紗弥はチャコの喉を撫でながら、チャコに向かって言う。
 チャコは気持ちよさそうに目を細め、喉をならす。

「なぁ、紗弥…そろそろ俺にも触らせ……」

「まだ、もうちょっと。ね~チャコちゃ~ん」

「にゃ!」

「う~チャコ……」

 チャコを紗弥に取られ、高志はなんだか複雑な気分だった。
 昨日の紗弥もこんな感じだったのかな? 
 なんて思いながら、高志は溜息を吐きスマホを弄る。
 すると、それを見た紗弥がチャコを抱きかかえたまま、高志の膝の上に頭を乗せてきた。

「え?! きゅ、急に何?」

「チャコちゃん取っちゃたから、代わり私を撫でて良いよ」

「は、はぁ?」

「あ、それともにゃ~って言った方が良い?」

「あ、あのなぁ……」

 チャコが紗弥に甘え、紗弥が高志に甘えると言う構図になり、高志はなんだか大きな猫が一匹増えたような気分だった。

コメント

  • ふつ

    西東 北南は笑った

    0
  • ノベルバユーザー239382

    (*´꒳`*)ヨキヨキ

    2
  • 西東 北南(さいとう ぼくなん)

    紗弥可愛い

    6
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