甘え上手な彼女

Joker0808

♯18

「にゃー」

「………」

 高志はコンビニに向かう途中の道で、段ボールに入った子猫を発見した。
 恐らく捨て猫なのだろう、子猫は生まれて間もない様子で、しかも段ボールには「メスです」と書かれていた。

「捨て猫……か?」

 猫や犬が好きな高志は、子猫の可愛らしい姿に目が釘付けになってしまった。
 小さな瞳は、高志を捕らえて離さず、必死に高志に何かを訴えるように鳴き声を上げる。

「にゃー」

「……」

 高志は無言で猫を抱え上げる。

「にゃー! にゃー!」

 持ち上げられた子猫は、必死に前足と後ろ足を動かし、高志の腕の中から逃れようとしていた。
 そんな可愛らしい姿に、高志は頬を緩める。

「可愛いな……」

 高志はそのまま子猫を手に、家に戻り始める。

「ただいまー」

「あら、早かったわ……ってどうしたの? その猫」

「拾ったんだけど、飼っても良い?」

 高志は自宅に帰り、リビングいた母親に猫を見せて、家で飼っても良いかの交渉を開始する。

「良いわよ、アンタが面倒見るなら」

「随分あっさりだな……良いの? 本当に?」

「私も猫好きだし、お父さんも嫌いじゃ無いし、アレルギー持ってる人も居ないし、別に問題ないわよ」

 あっさりと許可がおり、高志は子猫を連れて風呂場に向かった。
 外に居たので、少しばかり薄汚れていた子猫を高志は風呂場で綺麗にしてやろうと、子猫を洗い始めた。

「こ、こら! 暴れるな!」

「フー! シャー!!」

 子猫は水に怯え、風呂場から逃げ出そうと、前足の爪を立てて、高志に抵抗する。
 そんな子猫と格闘しながら、高志は子猫を綺麗にし、ドライヤーを掛けて毛を乾かす。

「よし、綺麗になった。さっぱりしただろー」

「にゃ!」

「いってぇ!!」

 前足で顔を引っかかれ、高志は片手で顔を押さえる。
 どうやらまだ懐かれては居ないらしいと気がついた高志。
 部屋につれて行き、環境に慣れさせようと部屋を自由に動き回らせる。

「にゃー……にゃー」

 子猫は新しい環境に戸惑っているのか、部屋をぐるぐる回りながら、仕切りに鳴き声を上げる。
 高志は、とりあえず餌を買ってこようと、再び家を出てキャットフードを買いに向かった。
「トイレも居るな……あと、寝床と爪研ぎようの段ボールもいるな……」

 ペットショップに向かう道すがら、高志はそんな事を考えながら、わくわくした様子でペットショップに向かった。






「……で、その子猫がこれか?」

「あぁ、可愛いだろ? 名前はチャコ。メスだ」

 翌日、高志は学校で優一に、拾ってきた子猫の話しをしていた。
 名前の由来は、毛並みが茶色かった事から来ている。

「お前、動物好きだもんな」

「あぁ、張り切って色々買いすぎたせいで、財布がすっかり軽くなっちまった」

 結局高志は、ペットショップで、猫用品を買いまくった。
 猫用トイレから猫のおもちゃまで、気がついたら買いまくっていた。
 
「子猫も良いが、大事な彼女も放っておくなよ? このクソリア充」

「相変わらず口が悪いな……」

 高志は、優一の口の悪さを指摘しながら、紗弥の方に目を向ける。
 友達と楽しく話しをしているようで、高志には気がついていない様子だった。

「猫……好きかな?」

「ん? まだ話して無いのか?」

「あぁ、なんかタイミングが無くてな……朝も猫の事は何も言ってないんだ」

「まぁ、女子って猫とか好きじゃん? 大丈夫だろ」

「だよな、女子は可愛い物とか好きだし」

 帰りにでも昨日拾った猫の話しをしよう。
 高志はそう考えながら、残りの授業を受け、あっという間に放課後になった。

「高志」

「帰るか?」

「うん、帰ろ」

 いつも通り、満面の笑みで高志の元にやってくる紗弥。
 そんな紗弥に高志も笑みを浮かべる。
 高志と紗弥は、いつも通り一緒に帰宅していた。
 初デートから二週間、すっかり紗弥と居ることにも慣れて来た高志は、今のところは紗弥と上手く付き合う事が出来ていた。
 登下校は必ずと言って良いほど、毎日一緒で、昼は屋上で二人で昼飯を食べていた。

「子猫?」

「あぁ、昨日拾ってさ…ほらこれ」

「わっ、可愛い~」

「今日見に来る?」

「うん、行く! 私猫大好きなんだ~」

 チャコの写真を見せ、紗弥は頬を緩ませながら、嬉しそうにそう言う。

(良かった、これで嫌いとか言われたらどうしようかと思った……)

 紗弥が猫好きと知り、高志は安心して家に向かう。

「ただいま」

「お邪魔します」

 家に着き、高志と紗弥は慣れたようすで部屋に向かう。

「あら、紗弥ちゃんいらっしゃい」

「あ、お母さん。お邪魔します」

「ゆっくりしてってね、あ! 高志、紗弥ちゃんに変な事するんじゃないよ!」

「しねーよ!!」

 初デート以降、紗弥は高志の家に来ることが増え、高志の両親とも仲良くなっていた。
 この前なんかは、高志抜きで、紗弥と高志の母親はお茶をしていた。
 高志の母は紗弥を相当気に入った様子で、最近では次はいつ来るのかを聞かれるほどだった。

「ほら、あれ」

「あ、あれ! 可愛い~」

 高志は部屋に入り、ベッドの方を指さして紗弥に言う。
 ベッドの上では、チャコが丸くなって昼寝をしていた。
 猫用の寝床を買ってやったのに、チャコはなんでか、高志のベッドで寝る事を気に入ってしまったらしく、昼寝の時には必ず、高志のベッドで丸くなる。

「にゃー」

「お、起きたか。ただいま」

「にゃ、にゃー」

「よしよし、大人しくしてたか?」

 チャコはベッドから起き上がり、大きく伸びをした後に高志の元にすり寄ってきた。
 昨日、餌を与え、一緒に遊んでいるうちに、チャコは高志にすっかり懐き、今ではすっかり甘えん坊になっていた。

「ほら、紗弥も抱いてみなよ」

「うん、チャコちゃ~ん、おいで~」

「シャー! フー!!」

 チャコは紗弥を見て、毛を逆立て威嚇する。

「あ、あれ?」

「初めて見た人だから、警戒してるのかな? チャコ、大丈夫だ。紗弥は優しいぞ?」

「にゃ~、ゴロゴロ……」

 高志の腕に抱かれたチャコは、高志の腕の中で喉を鳴らして高志に甘える。
 そして、チャコは紗弥をちらっと見る。

「フンッ………」

「な……」

 チャコは紗弥を鼻で笑い、再び高志に甘え始めた。
 ただ鼻を鳴らしただけかもしれなかった。
 しかし、紗弥は直感的に理解した。
 この猫は、自分のライバルだと……。

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