甘え上手な彼女

Joker0808

♯9

 高志と紗弥が付き合い始めて、早いもので一週間が過ぎようとしていた。
 この一週間で、周りの視線にも大分慣れてきた高志。
 登下校はもちろんの事、放課後の時間を一緒に過ごしていた。
 しかし、最近の高志にはとある悩みがあった。

「んで、相談ってなんだよ、色男君」

「あからさまに不機嫌な顔をして言うなよ……」

 顔を顰(しか)めながら優一は高志の話しを聞いていた。
 本日は週末の金曜日、高志は紗弥に、今日は用事があるからと言って、一緒に下校するのを断り、優一を誘って学校近くのハンバーガーショップに来ていた。

「けっ! あれだけ見せつけてた癖によぉー! 何が相談に乗ってくれだ、俺がお前に相談したいくらいだよ、どうやったら彼女が出来ますか? ってな!」

「なんで俺が怒られてんだ……そう言うなよ、友達だろ?」

「友達? はん! お前に彼女が出来た時点で、お前は友人である前に、俺の敵だ!」

「友人ではあるんだな……」

 優一の言葉に、ため息を吐く高志。
 こういう感じになるのを予想していた高志は、とある用紙を優一に差し出す。

「なんだ、俺は物でつられる男じゃないぞ!」

「お前、確か新作のゲームの限定版予約出来なくて嘆いてたよな?」

「それがどうした?」

「ここにそのゲームの限定版の予約済み用紙がある」

「話しを聞こう、友よ!」

「物で釣られ過ぎだろ……」

 随分とあっさりと連れてしまい、高志は拍子抜けする。
 自分は友人の選び方を間違えたのではないのかと思うほど、目の前に居る優一の心代わりは早かった。

「実は……このままで良いのかと思って……」

「何がだ?」

「俺と、宮岡の関係……」

「良いも何も、付き合ってるんだろ?」

「そうだけど……あっちは俺の事を好きだけど、俺は……宮岡を好きなのかどうか……自分でもわからないんだ」

「贅沢な悩みだな。そんなん、付き合っておけば良いだろ? 付き合ってるうちにお前も宮岡の事好きになるかもしれないだろ? っていうか、分かれるなんて言ったら、俺はお前の頭を疑う」

 先ほど注文したドリンクを飲みながら、優一は呆れた様子で高志に言う。
 紗弥は本当に良い彼女だった。
 毎日弁当を作って来てくれるし、いつも高志の事を思ってくれていた。
 高志自身も彼女と居るのは楽しかった。
 しかし、ながら高志のこの気持ちが紗弥への好意なのか、高志はわからなかった。
 そんな気持ちで、真剣に自分を思ってくれる紗弥と付き合っていて良いのかと、高志は悩むようになっていた。

「なんか、好きって言われたから、なんとなく付き合ってる感じがして、宮岡に悪い気がして……」

「それでも良いんじゃねぇの? 彼女は幸せそうじゃん、前は全く笑ってる顔なんて見なかったけど、お前の前じゃいっつもニコニコしてる」

「え? そうなのか?」

「そうだよ、気がついて無かったのか?」

「う、うん……」

「はぁ……これのどこが良いんだか……ていうか、この話だけど、ようは分かれるべきか、付き合うべきかって話しだろ?」

「えっと……まぁ、ざっくり言うと……」

「それ以前に、宮岡がお前を離さないと思う」

「そ、そうかな?」

「だって、宮岡って、お前の事相当好きだぞ? 端から見ててもわかる」

 周りからはそう見えているのかと思うと、高志はすこし照れてしまう。
 優一の言うとおり、ここ一週間付き合って見た高志も紗弥の好意を感じていた。
 紗弥はとにかく積極的だった。
 何かに付けては高志にボディータッチをしてくるうえに、二人っきりだと必ずと言って良いほど、体をくっつけて来る。

「まぁ、確かに分かれようって言っても、すんなり分かれられる気がしない……」

「まだ付き合って一週間だろ? 上手くいってるなら、そのまま付き合ってみろよ」

「あぁ……」

「そして俺に女子を紹介してくれ」

 目をキラキラさせながらいう優一を見て、高志はため息を吐きながら、自分が注文したドリンクを飲む。
 
(好きって、どんな感じなんだろうな……)

 優一と別れ、自宅に帰る途中の高志はそんな事を考えていた。
 今まで彼女なんて出来た事無いうえに、好きな人だった出来たことがない。
 可愛いと思う相手はいても、それだけで別に好きとかそう言うのでは無かった。

「ただいまぁ……」

 乙女のような悩みを抱えながら、高志は自宅に帰宅する。
 部屋に向かおうと、階段の一段目に足を掛けた瞬間、リビングのドアが開き、高志の母が出てきた。

「あら、おかえり。裏手の奥さんから、引っ越しの挨拶で貰ったお菓子があるけど食べる?」

「いい、軽く食べて来たから、夕飯出来たら呼んで」

「はいはい」

 高志は母にそう告げると、自室向かい、鞄を置いてベッドに寝っ転がった。

「明日は休みだし……何して用かな?」

 予定もないし、買い物にでも行こうかと考えていると、高志のスマホが震えた。
 どうやらメッセージが届いたらしく、高志はポケットのスマホを手に取りメッセージを見る。
 相手は紗弥だった。

『明日暇? デートしない?』

「デートって……」

 高志は紗弥のメッセージを見ながら、ついにこの時が来てしまったと、頭を悩ませた。
 恋人同士が休日に二人でデートをするのは、全く不思議では無い。
 しかし、高志の場合はこれが人生初デート。
 何を着ていけば良いのか、どこに行けば良いのか、悩む事ばかりだった。
 高志はとりあえず「予定を確認してみる」と返信し、どうしたものかと考える。

「今回断っても、いつかはしなくちゃ行けない事だし……う~む……」

 高志は悩みながら、とりあえず一旦落ち着くために、甘い物でも食べようと一階に下りていった。
 貰ったお菓子があると言う話しを母がしていた事を思い出し。
 高志はリビングに向かった。

「母さん、やっぱりお菓子もらっていい?」

「あ、やっぱり食べる? じゃあ、お茶でも入れてあげるわ」

「てか、何? このカラフルなお菓子……」

「アンタ知らないの? マカロンよ、マカロン」

 カラフルな色合いの丸いお菓子を見ながら、高志は母に尋ねる。
 母の答えに、そう言えばそんなお菓子を聞いた事があるなと思いながら、高志はマカロンを口に運ぶ。

「随分お洒落な人だね、これをくれた人」

「そうね、若々しくて美人だったわぁ~、アンタと同い年の娘が居るなんて思えないわ」

 母の言葉を聞いて、高志は何かが引っかかった。
 最近、自分もそんな人に会った事があるような気がすると。

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