99回告白したけどダメでした

Joker0808

214話



 あの日の事を俺は今でも良く覚えている。
 親父から聞かされた……あの話を……。
 当時俺はまだ中学生で、それが本当の事なのかどうかも良く分からなかった。
 
『誠実……お前ももう中学生だ……だから話しておこう』

 いつもはふざけた感じの親父が、その日は真面目な顔で俺に話しをしてきた。
 だからこの話しは良く覚えている。
 内容も内容だったこともあり、俺は衝撃を受けた。

『……だから誠実……この事は……には……内緒だ』

『……うん』

 俺は真剣表情で親父の言葉にうなずく。





「ん……むあ……朝か……」

 花火大会の翌日、誠実の目覚めはあまり良いものでは無かった。
 色々な事がありすぎて結局は良く眠る事が出来ず、誠実は頭を抱える。

「うーん……なんだかなぁ……」

 朝から暑い上に、寝汗で来ていたTシャツはビショビショ。
 朝から目覚めは最悪だ。

「誠実ぃ-! 早く起きなさいよぉ!!」

「分かってるよぉ-!」

 一階から聞こえる母親の声に、誠実は部屋から大声を出して答える。
 まずはシャワーを浴びて、朝食を済ませて……。
 なんて事を考えながら、誠実は風呂場に向かう。
 シャワーを浴び、誠実は汗を流してリビングに向かう。

「おはー」

「あんたねぇ、もうすぐで夏休みも終わりなのよ、生活リズム戻しなさい」

「へーい」

 誠実は欠伸をしながら母親の忠告に答え、誠実は用意された朝食を食べる。

「あれ? 美奈穂は?」

「朝早くからお仕事に行ったわよ、アンタと違ってあの子は働き者だから」

「どう言う意味だよ! 俺だってバイト始めただろうが!」

「アンタとあの子じゃ稼ぐ額が違うのよ」

「結局金かよ!」

 誠実は母親にツッコみつつ食事を続ける。

「なぁ……それよりも……今日だよな? 美奈穂の誕生日……」

「……そうね」

「……来年には話すんだろ? あのこと……」

「……えぇ……お父さんも悩んでたわ……あの子の誕生日が来る度に辛くなるって……」

「……だよな」

 誠実は洗い物をする母親の背中を見ながら、何かを考えるように顎に手を当てる。

「行くのか? 今日」

「えぇ……幸い美奈穂は仕事だから、変に怪しまれなくて済むわ……」

「そうか……まぁ、安心しろよ、いざとなったら俺がなんとかするから」

「アンタみたいな不細工に何が出来るのよ」

「息子に向かってなんてこと言うんだよ!! それに不細工関係ねーだろ!!」

「でも……そうね……いざとなったらアンタに頑張って貰わなくちゃね……」

「あぁ……なんたって俺は……兄貴だからな……」

 誠実はそう言ってアイスコーヒーに口を付ける。
 
「しょっぱ!! 何だこれ!?」

「あぁ、ごめん。それ麺汁だったわ」

「どんな間違いだよ!!」





「と言うわけだ!」

「「何がだよ」」

 誠実は近くのファミレスで、健と武司を呼び出していた。
 誠実の言葉に健と武司は声を合わせて尋ねる。

「だから言ったろ? どうやったら気持ち悪くなく、プレゼントを相手に渡せるかをだな……」

「その前にどうやったら気持ち悪くプレゼントを渡せるんだよ……」

「まぁ、誠実も武司も顔面が男性器だからな……無理もない……」

「「誰の顔が男性器だ!!」」

「頭からパンストを被って渡すのはどうだ? 多少は気持ち悪さが軽減されるはずだ」

「「そっちの方が気持ち悪いわ!!」」

 健の言葉に、誠実と武司は健を怒鳴る。

「大体だ、その相手って美奈穂ちゃんだろ? 普通に渡せば良いじゃ無いか、兄妹なんだ」

「まぁ……それもそうなんだが……改めて渡すとなるとなぁ……」

「じゃあ部屋の前にでも置いておけよ……そんなくだらない事でいちいち呼び出すな」

「どうせ暇だろ?」

「そ、そんな事は!」

 武司にそう返す誠実。
 誠実の言ったとおり武司は暇だった。
 夏休みも後残りわずかとなり、残された夏休みで何をしようかと考えている最中だった。
 そんな時に誠実に誘われたものだから、暇つぶしに丁度良いと思ってファミレスにやってきたのだ。

コメント

コメントを書く

「恋愛」の人気作品

書籍化作品