99回告白したけどダメでした

Joker0808

189話




 健がまさかの出会いをしているその頃。
 誠実と恵理は、一向に決まらず、ぐだぐだと歩いて店を回っていた。

「誠実君……そろそろ決めてよ……」

「恵理さんも自分の買い物してたじゃないっすか……」

「でも、それにしても来まらな過ぎでしょ……」

 疲れが見えてきた二人、時間もお昼を過ぎ、そろそろ決めてしまいたいと誠実も思っていた。

「ショッピングモールにも行く?」

「そうですね……この際仕方ないです」

 誠実達が居る場所から、ショッピングモールは少し離れている。
 バスで五分くらいなのだが、バス停までも五分程掛かってしまう。
 
「じゃあ、行きましょう。バスの時間も今からなら丁度位でしょ?」

「はい、じゃあ早速」

 誠実と恵理はバス停に向かった。
 丁度バスが到着しており、丁度良くバスに乗ることが出来た。
 しかし、中々にバスの中はかなり混雑しており、誠実と恵理は身動きが取れなくなってしまった。

「え……恵理さん……大丈夫ですか?」

「だ……大丈夫よ……誠実君こそ大丈夫?」

 お互いに向き合い、かなり密着した状態でバスに乗ってしまった二人は、ぎゅうぎゅうの車内でお互いに背中を押され、抱き合うような形になってしまった。

「せ、誠実君……も、もう少し後ろに下がれないのかしら?」

「ざ、残念ながら……え、恵理さんももう少し後ろに下がって下さいよ……」

「わ、私だって無理よ!」

 互いに密着する二人。
 恵理は誠実よりも背が低いので、丁度胸の辺りに顔が来る。
 最近何かと誠実を男として意識するようになった恵理。
 恵理にとってこの状況は、かなりまずかった。

(あぁ~もうなんなのよぉ! なんでバスがこんなに混んでるのよ! べ、べべ別に誠実君と密着していようが、わ、わわ私は気にしないけど……く、苦しいのよ! もう!!)

 恵理は恵理で、自分で自分をごまかしていた。

「恵理さん、顔赤いですよ? 大丈夫ですか?」

「だ、大丈夫よ!! ただ暑いだけ!!」

「それ…大丈夫っていうんですか?」

「だ、だだ大丈夫よ!!」

(あ、なんか柑橘系の良い匂い……って違う!! 何ちょっとうっとりしてんのよ! 私!!)

「あの、恵理さん本当に大丈夫ですか? もしかして体勢キツいですか? なら、俺のほうに寄りかかっても良いですよ?」

「だ、大丈夫よ!! そ、そんなにお姉さんに抱きつかれたいなんて、誠実君は変態さんなんだから~」

「いや、あの……一応本当に心配してるんですけど……」

「だ、大丈夫よ……」

「プルプル震えてるんですが……」

「だ、だいじょう……きゃ!」

「うわっ! 大丈夫ですか?」

 突然バスが大きく揺れた。
 その瞬間、恵理は体勢を崩し誠実の方に倒れていく。

「だ、だだ大丈夫よ!」

(ぎゃぁぁぁ! 私は何をしてるの!! こんな……こんな……)

「す、すいませんけど、我慢して下さいね……」

「お、おおおお姉さんは、こ…この程度……どうって事無いわよ……」

「本当に大丈夫ですか? 顔真っ赤ですよ?!」

「う、うるさいわよ! 余裕よ!」

 そう言う恵理だったが、余裕なんて無かった。
 顔は真っ赤で、心臓もどんどん早くなる。
 この心臓の音が、こうしてくっついている誠実にも聞こえているのでは無いだろうかと、恵理は不安で仕方なかった。

(な、なんでこんなにドキドキするのよ! 私は別に誠実君なんて………結構がっしりした体ね……)

 そんなこんなで、バスが目的地に到着するまでの間、誠実と恵理は密着したままだった。
 なんとか目的のバス停に到着し、誠実と恵理はようやく離れる事ができた。

「あ、あの……大丈夫でしたか?」

 誠実も恵理と密着していたとあって、顔が赤く恵理からも視線を反らしている。

「だ、だだ大丈夫よ! な、何? 誠実君顔を赤いわよ?」

「恵理さんも真っ赤っすよ……」

「こ、コレは暑いからよ! 良いから行くわよ!!」

「あ! 待って下さいよ!」

 恵理はそう言ってずかずかと、ショッピングモールに向かって歩いて行く。
 




 誠実達がバスに乗っている頃、武司と志保は食事を取っていた。
 結局志保は、武司が選んだスカートを購入した。
 本人いわく、武司にしては良いセンスだったらしい。

「はぁ……それにしても、俺の初デートの相手が、まさかお前とは……」

「ん、なによ? 不満な訳?」

「いや、そうじゃねーよ……ちゃんとした彼女と、初デートしたかったなって、思っただけだ」

「アンタに彼女なんて出来る日が来るの? 来たらその日は槍でも降ってくるんじゃない?」

「お、おまえなぁ!」

 武司は注文した、ハンバーグステーキを食べながら、志保に文句を言う。
 しかし、よくよく考えて見れば、確かにそうかもしれないと思い、武司は口を閉ざした。

「はぁ……てかなんで、お前は今日俺を呼んだの?」

「へぇ!? そ、それは……」

「まぁ、わかってるよ。どうせテストで俺が負けたからだろ?」

「はぇ?! そ、そうよ! それ以外にアンタと買い物に来る理由なんてないわよ!」

「ま、だよな……んで、午後もまだ見るのか?」

「当然よ」

「頼むから下着売り場は勘弁な、俺は流石にあそこには行けない……」

「誰が、アンタと下着を買いに行くのよ! 馬鹿じゃないの!」

「ま、そうだよな、安心したわ」

 女性服専用のアパレルショップで、あれだけ浮いていた事もあり、武司はそんな要らない心配もしていたのだが、よくよく考えてみれば当たり前の話しである。
 男友達と下着を買いに行く女なんて居るわけが無い。

「それはそうとよ……」

「何よ?」

「お前良く食うのな……」

 志保は顔を真っ赤にして、自分のテーブルを見る。
 マカロニグラタンに、ナポリタン。
 更にデザートにはイチゴパフェを頼んでいた志保。
 全部合わせると、武司の食べた量の二倍ほどの量を食べていた。

「い、良いでしょ! 別に! 料理部なんだから、コレも部活の内よ!」

「それは部活関係ねーだろ……」

「うっさいわね! 良いでしょ!」

「悪いとは言ってねーだろ!」

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