99回告白したけどダメでした

Joker0808

167話




「ただいま~」

「おぉ、おかえり」

「やっと帰ったか」

「なんだ、健も起きてたのか」

 誠実はコンビニから、旅館の部屋に戻ってきた。
 手にはコンビニで購入した、お菓子や飲み物がたくさん入っており、誠実は机の上に買ってきた物を出していく。
 寝ていた健も、いつの間にか目をさましたようで、スマホを弄って外を眺めていた。

「ほらよ、コーラとその他炭酸飲料」

「サンキュー、ほら金」

「おう」

 誠実は武司から金を受け取り、財布にしまう。

「俺も渡しとこう、どうせごちそうになるしな」

「じゃあ、三人で割り勘で…」

 健からも金を貰い、誠実は財布に金をしまい、三人でテーブルを囲んで、飲み食いを始めた。

「なぁ、前から聞きたかったんだけどよ」

「なんだ?」

 誠実はスナック菓子を食べながら、健に向かって尋ねる。

「健と島崎って、一体どう言う関係なんだ? なんか、テスト勉強の辺りから、妙にお前懐かれてるよな?」

「………聞かないでくれ」

 誠実の質問に、健は顔を真っ青にし頭を押さえながら、誠実にそう言う。

「でも、見たんだろ? 裸」

「それを言わないでくれ……俺は見たかった訳じゃない……」

 健は溜息を吐きながら、武司に言う。
 女性の肌を見て、男としてこの反応はどうなのだろう、なんてことを思った誠実だった。

「そう言う、武司も何を古賀と何をしてたんだ?」

「え? お前見てのか?」

「なんだ、その話? 俺にも詳しく教えろよ」

 健は話題をすり替えようと、武司の話題を切り出す。
 話しを振られた武司は、コーラを飲みながら、つまらなそうな顔で答える。

「別にただ偶然会ったから話してただけだ、なにも面白い事は無いぞ?」

「本当か? お前と古賀は最近やたらと仲がいい気がするが?」

「健、お前のその目は節穴か? 仲なんて良くねーよ……ま、少しは仲良くなったかも知れねーけど……」

「ほう……狙ってるのか?」

「はぁ?! んな訳ねーだろ。変な事を言うなよ……そういう話しは、誠実にしろよ」

 武司は、これ以上話しをしたくないのか、誠実の方に話しを振った。
 
「なんで、俺に話しをを振るんだよ?!」

「俺らの話しより、そっちの方が面白いだろ?」

「話題にされる方の身にもなってくれよ」

「その言葉、お前にそのまま返すよ。で、どうなんだ? 実際はどっちを選ぶんだ?」

 武司は笑いながら、誠実に尋ねる。
 誠実はそんな武司の言葉に、胸が痛くなった。
 そして同時に、先ほど綺凜との会話を思い出した。

「………さぁな」

「おいおい、さっさ決めてやらねーと、あの二人が可愛そうだぜ?」

 誠実は短くそう答えた。
 本当は答えなんて決まっていた。
 二人への返事も決まっていた。
 でも、今はそのことをこの二人に話すべきでは無いと誠実は思っていた。

「武司、こういうことは本人達の問題だ、俺たちが口を出す事じゃない」

 健は誠実の表情を見て、武司に言う。

「ま、それもそうか……んで、島崎の裸はどうだった?」

「おい、俺の話を聞いてなかったのか、健?」

「いや~、そうは言われても、気になるじゃんよ~」

 武司はニヤニヤした表情で、健に尋ねる。
 下心丸出しの表情に、健は後ずさり、武司は健に詰め寄る。

「武司、よく考えろ、あの島崎だぞ?」

「確かにあの島崎だしな……あの体型だし……」

 誠実も健の意見に同意する。
 鈴はよく言えばスレンダー、悪く言えば貧乳。
 そんな凹凸の少ない体つき故に、あまりエロさを感じない。
 一部の特殊な趣味をお持ちの方には、大変に人気だろうが、一般的にはあまり魅力のある体つきとは言えない。

「まぁ、そうだが、女子の裸に代わりはないだろ?」

「そうだけどよ、どうせならもっと凹凸のある体を見たくないか?」

「貧乳でもアイドルなら良し」

「健は相変わらずだな……」

 話しの流れで、女性の体の好みの話しを始める三人。
 結局議論は白熱し、夜通しそんな馬鹿みたいなくだらない話しを続けた。

「だから! アイドルだって、元をたどれば女の子なんだぞ!!」

「武司! 女には裏と表が必ず存在する、アイドルもそれは同じだ……しかし! アイドルはステージの上では最高の女の子! 最高に可愛い女の子だ! 俺はそんな彼女達を応援できればそれで良い!」

「アホか、応援だけで満足なんて馬鹿だ! 女とエロい事したいと思わないなんて……お前金玉付いてんのか!!」

「聞きずてならんな、女と付き合う、イコール繁殖行為という考えは、動物のそれと変わらん……愛では無い!」

「愛の果てにそう言う行為があるんだろ?! お前の愛なんて、所詮画面に向かって叫ぶだけの偽物だ!」

「ほう……言うようになったな武司……なら、俺がこれからアイドルの奥の深さを教えてやる」

「良いだろう……今日こそお前の目を覚まさせてやる!」

「「なぁ、誠実!」」

「眠いから寝て良い?」

「「おい!」」

 白熱する二人を他所に、誠実は目をこすりながら二人に言う。
 時刻は既に0時を過ぎており、誠実は海でのつかれもあってつかれていた。
 しかし、誠実は眠らせてもらうことが出来ず、二人の議論に巻き込まれた。

「なぁ……もうどうでもよくね?」

「「良いわけあるか!!」」

「誠実、お前もわかるだろ?! 付き合ったら、いろいろしたいだろ?」

「騙されるな誠実、見ているだけで、そこにいるだけで十分……それこそが本物の愛だ!」

「いや、お前ら二人、何を言ってんだよ……」

 深夜のテンションなのか、二人はいつも以上にテンションがおかしかった。
 誠実はそんな二人のテンションについて行けず、重たいまぶたを必死で開けて、耐えていた。
 しかし、二人の議論は更にヒートアップする。

「だぁぁぁかぁらぁ!! 人がエロく無かったら、種族の繁栄ができねーだろ!!」

「それは動物的な考えだ! 愛という定義に基づいて考えるならば……」

 時刻は深夜の2時過ぎ、誠実は意識を保っているのがやっとだった。
 他の二人はと言うと、昼間以上の元気の良さで議論を続けていた。

「なぁ……もう……寝ないか?」

「「まだだ!」」

「じゃあ……俺だけで……も……寝か……せて」

「「ダメだ!!」」

「俺は……関係なくね?」

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