99回告白したけどダメでした

Joker0808

166話

「アンタこそ急に何よ、気持ち悪い」

「もうそれで良いから、質問に答えろよ」

 武司と志保は、ベンチに座りながら、購入した飲み物を飲み、会話をしていた。
 武司なりに、志保といつも喧嘩のようになってしまう事を気にしていた事もあり、一度ちゃんと話しをしたかったという本音があった。
 昔は、友達の友達という関係だった為、それほど絡む事が無かった二人だが、最近になって良く絡むようになってから、顔を合わせる度に喧嘩をしている事が多い。
 武司はそんな状況をなんとか変えたかった。

「んで、古賀はどんな奴なんだ?」

「はぁ? 最初の質問がそれ? 私に自分がどんな奴かって聞かれても、答えようが無いわよ」

「あぁ、そっか……ちなみに俺は、全くモテない奴だ」

「……自分で言ってて恥ずかしくならない?」

「いや、最早どうでも良くなった」 

「なんか、今ならアンタに優しく出来る気がする」

 武司に同情の視線を送りながら、志保は静かに言う。
 そんな志保に武司は、ふと質問する。

「お前って、好きな奴とかいる?」

「は、はぁ?!」

 武司の言葉に、志保は動揺を隠せず、顔を真っ赤にして声を上げる。

「な、何を言ってんのよ!! い、居るわけ無いでしょ!」

「ま、そうだよな~、居たら夏休みはデート三昧だろうし」

「それは偏見よ、付き合ってるからって、四六時中一緒って訳じゃないわよ」

「そうなのか? 古賀は付き合った事とかあんのか?」

「無いわよ、でも友達の話しとか聞いてると大体そんな感じよ」

 志保はペットボトルのお茶を飲み干し、息を吐く。
 武司はそんな志保を見ながら、続けて質問をする。

「じゃあ、好きな奴は?」

「な、なんでそんな質問してくるのよ! 気持ち悪いわね!」

「だから言ったろ? 俺はお前を良く知りたいだけだよ」

「は、はぁ?! な、なな何を言ってるのよ! そんなのま、まるで……」

 まるで自分を好きだと言っているようだと、志保は思った。
 自分を知りたいと望む目の前の武司。
 しかも、志保はそんな武司を最近は気になり始めていた。
 そんな時に武司からそんな事を言われ、志保は更に顔を赤く染める。

「昔……俺は良く知りもしない奴の事を信じて、痛い目を見たんだよ……だから、俺は基本
、仲の良くなりたいと思った奴とは、極力色々話す事にしてるんだよ」

「そ、そうなの……」

 がっかりしたような、安心したような、なんだか不思議な気持ちの志保だった。

「じゃあ、何よ。アンタは、私と仲良くなりたいの?」

「あぁ、俺は古賀のことは良い奴だと思ってる。だから、ちゃんとお前を知りたい」

 武司のいつもとは違う真剣な言葉に、志保は胸がドキドキと脈打つのを感じた。

「あ、あっそ! そ、そんなに私を狙ってるんだ?」

「狙う? ……まぁ、確かに狙ってるかもな」

「ふえぇぇ!?」

 武司の思いも掛けない言葉に、志保は顔をリンゴのように真っ赤にして、叫ぶ。

「あ、誤解するなよ、良き女友達としてお前を狙ってるって事だ」

 言われて志保は再び元の通りの顔色に戻る。
 ややこしい事を言われ、志保は少し不機嫌だった。

(なんで、私がこいつごときに、こんなにドキドキしてるのよ!!)

 志保はそんな事を思いながら、横で炭酸飲料を飲む武司を睨む。

「あぁ! 良いわよ! 正直に色々答えてあげるわよ! その代わり、アンタも私の質問には正直に全部答えて!」

「きゅ、急にやる気出したな……まぁ、元から俺の話もするつもりだったし、いいけどよ」

 武司と志保はそれから数分間、互いの事を話した。
 好きな食べ物、好きな教科などから、好みのタイプまで。

「古賀があのバンド好きだったなんて以外だぜ…」

「アンタこそ、以外に人脈あるのね……」

 互いの事を話し、武司も志保も相手も意外な部分に驚いていた。
 そんな時、志保はある疑問を武司に尋ねた。

「ねぇ、あんたら三人って仲良いけど、いつからあんな感じなの?」

「あぁ、誠実と健の事か、俺があいつらと仲良くなったのは、小五の時だったな」

「なんで仲良くなったの? あんたらいつも一緒よね?」

 聞かれた武司は、少し考えてから、志保に返答した。

「まぁ、色々あってな……」

「色々って何よ?」

 武司は志保の言葉に、昔を思い出した。
 誠実と出会い、健と出会った、あの日を思いだし、志保に返答する。

「ま、一言で言うなら、俺はあの二人に救われたんだよ」

「は? 何を言って……」

「そう言う古賀は、なんで沙耶香と仲良くなったんだよ?」

 急に話題を変えられ、志保は考えながら、武司に答える。

「え? 私と沙耶香? えっと……なんとなく話しが合って……それから流れで仲良くなっていったって言うか……」

「俺もそんな感じだよ、気がついたら、俺たち三人は、小学校の先生から馬鹿トリオって言われてた」

 そう説明され、志保はなんとなく納得する。
 確かに、誰とどうやって仲良くなったかなんて、良く覚えていない。
 しかもその記憶が古ければ、古いほど、良くは覚えていないものである。
 志保も武司に質問され、それに気がついた。

「う~ん……まぁやっぱりみんなそんな感じなのかな?」

「そうだよ、じゃあ俺そろそろ戻るわ、誠実帰って来る頃だし」

「え、もう行くの?」

「いや、結構話しちまったからな、お前の事が少しわかったよ。じゃあな」

 武司はそう言って自分の部屋に戻って行った。
 そんな武司の後ろ姿を見て、志保は名残惜しさを感じていた。

(もう少し……色々話したかったな……)

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