99回告白したけどダメでした

Joker0808

136話

「おぉ、やっぱり元が良い子は何を着ても似合うね」

「本当ね~、若いって良いなぁ~」

 呼び込みをすることになり、綺凜は店のユニフォームを貸してもらい、それを着て呼び込みをすることになった。

「じゃあ、早速……と言いたいところだけど、呼び込みで配るビラの改良もしなくてはいけない」

「確かにあれじゃぁちょっと……もう少しカラフルにしてみましょうよ」

「よし! 早速パソコンで!」

 着々と喫茶店の経営回復作戦は進行していった。





「なぁ、誠実」

「なんだよ武司」

 誠実は今、武司と共にゲームセンターに来ていた。

「朝っぱらから呼び出して、男二人でゲーセンに二時間も……なんか現実に戻った気分」

「うるせーっての、お前は良いよな! 昨日はデートで、この前はバイトで海、もう既に夏を満喫しすぎだろ!」

 ゲームセンターのベンチに腰掛けながら、誠実と武司はジュースを飲みながら話していた。 ちなみに健はバイトで居ない、夏のライブのために資金を貯めているらしい。

「俺も女子と海行きてーよぉ~」

「だから、バイトしろって言ったじゃねーか、健は大丈夫そうだけど、お前はどうすんだよ!?」

「新聞配達のバイト短期バイト募集してたから、明日面接言ってくる。来週一週間やれば、旅行代になるだろ」

「以外と考えてたんだな……まぁ、それなら後は日程を決めるだけだな」

 海に行く計画は着々と進行していた。
 メンバーも大体決まって来ており、行く場所の目処も立て始めていた。
 皆の予定もあるので、行くのは8月に入ってからになるが、それでもまだ余裕だった。

「なぁ、そろそろ帰ろうぜ? 流石に飽きた」

「そうだな、俺もバイトしたとはいえ、あんまり無駄遣いはしたくない」

 開店時間から居たので、もう既に誠実と武司はゲームセンターに飽きており、家に帰る相談を始める。

「ん、おい誠実、この通りって近くじゃないか?」

「あぁ、それがどうかしたのか?」

「いや、可愛い子が喫茶店の呼び込みやってるらしくて、今SNSで流れて来てさ」

「へ~面白そうだな、見に行って見るか?」

「そうだな、折角だし見に行って見るか」

 武司が誠実に、見せたSNSの書き込みには「やばい! 可愛いウェイターの女の子が呼び込みやってる!! アイドルレベル!」と書いており、写真にはそのお店を含めた景色が写っていた。
 誠実と武司は面白半分で、その喫茶店に向かって自転車をこぎ始めた。





「よかったらお願いしまーす」

 綺凜と木崎は店の制服である、ワイシャツに黒いパンツ、そしてギャルソンエプロンを腰に巻きビラを配っていた。

「お願いします」

「あ、えっと…は、はい!」

 綺凜が笑顔でビラを渡すと、大抵の男はビラを受け取って店内に入って行った。
 綺凜の容姿につられて入っているのは目に見えてわかったが、それでもお客さんは店の売り上げに貢献してくれるので、今はそれでよかった。
 しかし、ビラを配り始めて数分、問題が発生してしまった。

「た、大変だ!」

「店長さん、どうかしたんですか?」

「実は、客が一気に来たから、私一人じゃ対応仕切れないんだ! 兎に角、一旦二人は中を手伝ってくれないか?」

「え! でも、私はお店の仕事全然わからないですよ?!」

「大丈夫! 注文を聞いてきてもらえればそれで良いから! 兎に角お願い!」

 そう言って、店長に連れられ綺凜は店内を手伝う事になった。
 店内は、ほぼ満席でお客さんがいっぱいだった。

「じゃあ、とりあえず私がメニューを聞いてくるから、綺凜ちゃんも同じようにやってみて」

「あ、わかりました」

 そう言って木崎は、テーブルのお客さんに注文を聞きに行く。
 流れはメニューを聞いて、メモを取り、その後に復唱して間違いないか尋ねて、それを店長に伝える。
 シンプルな流れだが、綺凜にとっては初の接客なので、少し不安だった。

「じゃ、ちょっとお願いね、私はあっちのお客さんの注文取ってくるから!」

「はい!」

 綺凜は緊張しながら、お客さんの元に行き、注文を聞く。

「い、いらっしゃいませ…ご注文はいかがなさいますか?」

「じゃあ、カフェオレとサンドイッチを」

「はい、カフェオレがお一つとサンドイッチがお一つで……」

「はい、それでお願いします」

「かしこまりました。それでは少々お待ちください」

 意外にも失敗せずに難無く注文を取ってくる事が出来た綺凜。
 注文を店長に伝えるために、厨房に向かった瞬間、またしても店長が慌ててやってきた。

「大変だぁ~」

「ど、どうしたんですか?」

「忙しすぎて厨房が回らない! しかも材料も足りない~」

「えぇ! ど、どうするんですか!?」

「どう…しよう……」

 今までここまで混んだ事がない店なので、急な大勢のお客さんに上手く対応出来ない。
 どうしたものかと考えていると、またしてもお客さんが入って来た。

「ここって、喫茶店だったんだな、武司知ってたか?」

「いや、俺は普通に民家だと思ってたからよ、でも可愛い子なんてどこにも居なかったな」

 入ってきたお客さんを見て、綺凜は驚いた。
 そこには、綺凜が良く知る学校の知り合い……いや、友人である伊敷誠実とその友人の武田武司が居たのだから。

「い、伊敷君?!」

「え……えぇぇぇ! や、山瀬さんがなんでここに?」

 驚く綺凜と誠実。
 しかし、今は店の緊急時。そんな事を気にしている場合ではなかった。

「伊敷君! 武田君! お願い! 力を貸して!!」

「「え?」」

 一体どうしたんだと、誠実と武司は二人で顔を合わせて首をかしげる。
 綺凜は二人を店の裏に引っ張り、今の状況を説明する。

「なるほど、この店は山瀬さんの行きつけで、潰れそうなところを山瀬さんがなんとかしようと手伝っていたと」

「そうなの……でも予想外に人が来たから、三人じゃとても対応出来なくて……」

「それで俺たちに協力を求めたって事か……どうする誠実?」

 誠実にどうするかを問う武司。
 しかし、武司は聞く必要が無かったと行った後で気がついた。
 誠実は既に制服を木崎から受け取り、手伝う気満々だった。

「よし! じゃあ俺は店長さんと厨房をする! 武司はチャリで買い出しだ!」

「だと思ったよ……バイト代出してくださいよ~、よし俺も行ってくる! 店長さん、何を買ってくれば良いかメモを書いてくれ、それと資金!」

 綺凜を手伝う事にした二人は、それぞれ行動を開始した。

「見ず知らずの少年達ありがとう! 早速準備をしよう!」

「綺凜ちゃん凄いね、流石可愛いとモテるんだね~」

「そう言うんじゃないです……彼らは……凄く優しいいい人なんです……」

 綺凜は店長と木崎さんに、寂しそうな表情でそう言った。 

コメント

コメントを書く

「恋愛」の人気作品

書籍化作品