99回告白したけどダメでした

Joker0808

132話

「どうかした?」

「い、いや……なんでも…」

 誠実が沙耶香に見とれていると、視線に気がついた沙耶香が、誠実に尋ねてくる。
 誠実はごまかしながら、視線を前の方に戻す。
 少し歩いて、ファミレスに到着した誠実と美奈穂は無事に席に着く事が出来た。

「入れてよかったな、この人だから待つことになるかと思ったぜ」

「ギリギリだったよね~。さて、メニュー見ようか」

 料理を注文し、誠実と沙耶香は料理が来るのを待っていた。

「そういえば、海の近くでバイトだったんだよね? どうだった? もう海水浴してる人とか居た?」

「いや、撮影に使った場所は撮影用に許可取って、関係者以外入れないようにしてたから、ちょっとわからないな。あ、でも天気が良くてな~、足だけしか海に入れなかったのが残念だ」

「じゃあ、私と行くときは一杯泳げば良いよ」

「あ、海に行くの確定なのね……」
 
 そろそろ計画を立てなければ行けない時期だと、誠実も思っていたので、丁度良いと思い、誠実はメンバーや日時の話しを沙耶香にする。

「行くとしたら、武司と健。あと女子は……」

「え? 二人だけじゃないの?」

「い、いや…あの…皆居た方が楽しいし、それにみんなと夏の思い出作りもしたいだろ?」

「むぅ……私は二人でも良いのに……」

「そう言う事を言わない」

「イタッ。もぉ~やったなぁ~」

 誠実は沙耶香の頭に軽くチョップをする。
 全くと言っていいほど、力を入れて無かったので、痛いはずは無いが、沙耶香は誠実に笑いながらチョップを返す。

「イテ。まぁ、メンバーは大体勉強会の参加メンバーで良いだろ?」

「そうだね、今試しに皆にメッセージ送って聞いてみるよ」

「俺も馬鹿二人に聞いてみるわ」

 誠実と沙耶香はそれぞれの友人に、海にいかないかとメッセージを送る。
 そんな事をしている間に、料理が運ばれて来た。
 誠実はカツ丼、沙耶香はパエリアを注文した。

「パエリアか……懐かしいな」

「懐かしいって言っても数ヶ月前の話だよ?」

「あ、そっか…色々ありすぎて遠い昔に感じる」

 パエリアは、誠実が料理に自信がと実力が付いてきた頃に、自分で作り方を調べ、沙耶香に味を見てもらい、初めて沙耶香に美味しいと言われた、思い出深い料理だった。

「誠実君の方が美味しかったな」

「おだてても何も出ないぞ?」

「バレたか」

「え? 本当にただおだててただけ?」

「ウフフ、冗談だよ。味は本当に誠実君の作った方が美味しい」

「それはありがとう、そういえば俺って、ちゃんと沙耶香の作った料理食った事無いかも……」

「そうだね、教えるだけで、私の作った料理をちゃんと食べてもらってないかも」

「今度食わせてくれよ」

「ほっぺにチューしてくれたら良いよ」

「なっ!?」

 笑みを浮かべながら、誠実に言う沙耶香に、誠実は頬を赤く染めて沙耶香の頬を凝視する。 驚きで、なんと言って良いかわからずにいると、沙耶香が笑顔で言葉を続ける。

「あ、私にさせてくれてもいいよ? ほっぺかはわからないけどね~」

「ま、全く。最近の沙耶香は、俺をからかいすぎだぞ? 冗談もほどほどに……」

「冗談じゃないよ」

「え?」

「昨日言ったよね? 今日は私、誠実君に甘えるって」

 沙耶香のその言葉に、誠実は一体どんな風に沙耶香が甘えてくるかを想像してしまう。

「あ、甘えるって…具体的には?」

「そうだなぁ~、とりあえず、歩くときは手をつなぎます」

「あ、それくらいなら……」

「訂正します、腕を組みます」

「ちょっと待て。今俺の反応を見て、甘えのグレードを上げたよな?」

「ダメ?」

「首をかしげて、上目遣いで言ってもダメ! それは絶対に出来ません!」

 可愛らしくお願いする沙耶香に、誠実は首を縦に振らない。
 誠実が腕を組みたくない理由は、二つあった。
 一つは恥ずかしいから、そして二つ目は沙耶香の胸が、絶対に腕に当たるからだった。
 沙耶香の大きな胸が、一日中腕に当たっているなんて考えたら、まともに街など歩けないと誠実は思っていた。

「む~、じゃあ我慢するよ手で」

「そうしてくれ、俺の為にも…」

 話しをしながら、誠実と沙耶香は食事を終えて、店を出た。
 約束通り、手を繋いで近くのショッピングモールに向かう。
 このデートコースは、誠実が中村からのアドバイスを元に立てたデートコースだ。
 中村いわく、ショッピングモールの中ならば、色々な店もあるし、飲食店もあるので、行き先に困らないらしい。

「私、ちょっと洋服見たいんだけど、良いかな?」

「あぁ、別にいいよ、どこの店に行こうか」

 誠実と沙耶香は案内掲示板を見ながら、行く店を決め、目的地に向かって歩いて行く。

「せ、誠実君も選んでくれる?」

「まぁ、服買いたいって言われたときに、そんな予感はしてたよ……いいよ、俺あんまセンス無いけど」

「大丈夫! 誠実君の好みで良いから!!」

 二人は女性向けの洋服店に入って行く。
 すると、早速店員さんが声を掛けて来た。

「いらっしゃいませ~お客さ……」

「あ、あなたは……」

 偶然と言うのは恐ろしいと、誠実はこの時思った。
 話しを掛けて来た店員は、美奈穂と買い物に行った時に居た店員だったのだ。

「な、なんでここに……」

「あぁ、貴方は可愛らしい彼女さんと来店した彼氏さんじゃないですか~。私、今このお店で働いてるんですよ~。今日は………浮気ですか?」

「断じて違います!」

 店員のお姉さんはニコニコしながら、誠実の隣の沙耶香を見て誠実に言う。
 横で聞いていた沙耶香は、機嫌悪そうに誠実と店員のお姉さんの話しを聞いていた。

「あのですね、あれは妹でして……」

「あぁ~妹さんだったんですか! 私勘違いしてました、すいません」

「いえ、わかっていただければ……」

「シスコンなんですね~」

「どこを勘違いしてたんだよ!!」

 誠実は店員さんにツッコミながら、沙耶香に話しの説明をする。

「この前、この人が別の店で働いてて、そのときに美奈穂とその店に行ったんだよ。あの人は俺を美奈穂の彼氏だと勘違いしてるんだ」

「ふ~ん、兄妹仲いいね!」

「……なんで怒ってるの?」

「怒ってません!」

 そう言いながら、沙耶香は誠実の手を強く握る。
 力は弱いが、誠実は地味に痛かった。

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