99回告白したけどダメでした

Joker0808

101話




 あっという間にテストは終わり、放課後になった。
 テスト勉強したおかげか、誠実は手応えをつかむ事が出来た。

「ふぅ~後は明日だけだな……」

「なんだか、大丈夫そうだね」

「おう、赤点は回避できそうだぜ」

 帰りの支度をしていると、沙耶香が誠実の席に近づき、笑顔で話しかけてきた。
 誠実は沙耶香に笑顔で応える。

「明日でテストも終わりだね」

「あぁ、終わったら来週から夏休みだな……」

 高校生になって初めての夏休み、花火大会や夏祭り、海にも行きたいと考えていた。
 そのためには赤点を回避し、夏休みの補習から逃れなければならない。

「せ、誠実君は…夏休みはもう予定とかあるの?」

「ん? 予定は……あぁ、一つあるな……日程はまだ決まってないけど」

「じゃ、じゃあ……その……夏休み入って最初の日曜日なんだけどさ……わ、私とデートしない?」

「え! デ、デート?」

 沙耶香のいきなりの頼みに、誠実は驚く。
 生まれてこのかた、誠実は女性とデートというものをしたことが無い。
 確かに、美奈穂と買い物に行ったり、美沙と二人で勉強をしたりはしたが、それはデートという形式ではない。
 デートという名目が前提であるのとそう出ないのでは、全然違うと誠実は思っていた。

「だめ……かな?」

「あ、いや……全然良いけど……とりあえずは明日もテストだし……」

「そ、そうだね……焦らなくても良いよね? じゃあ、また今度詳しく」

 そう言って沙耶香は顔を真っ赤にして誠実の元を去って行った。
 なんだかテストを理由に、色々な物を後回しにしているようで、誠実はなんだかモヤモヤした。

「とりあえず、帰るか……しかも今日も一人かよ……」

 帰ろうと思い、健と武司を探すと、すでに二人は帰ってしまったようで、教室内には居ない。
 テストが終わったら、綺凜との関係やデタラメな噂を流した新聞部、それに武司と志保の関係、そして沙耶香とのデートと考える事は盛りだくさんだった。

「あぁ……なんかテスト終わった後の方が大変なんじゃ……」

 そんな事を考えながら、誠実は自宅へ帰って行く。





「ねぇ、いっちゃん」

「どうしたの? 和波(かずは)?」

 料理部のメンバーである、森山伊智(もりやま いち)と丘部和波(おかべ かずは)は、学校からの帰り道を二人で歩いていた。
 伊智は髪を後ろで縛ったポニーテールの女性で、和波は背の低いツインテールの女性とだ。 どちらも料理部の部員であり、沙耶香と仲も良い。

「最近さ、しーちゃん変じゃない?」

「え、志保が?」

 しーちゃんとは志保の事で、料理部での志保の愛称だ。
 和波と伊智は志保と同じクラスで、良く話しをする。

「うん、ぼーっとしてるって言うか? なんか最近変だよ」

「言われてみれば……最近は学校が終わるとさっさと帰っちゃうし、何かあったのかな?」

「沙耶ちゃんは何もなさ過ぎてつまんないし……」

「でも、旦那の方は最近一部の女子の間で有名だよ? 受けなのか攻めなのかって、私は絶対受けだと思うんだけど! か、和波はど、どう思う?!」

「えっと……とりあえず落ち着いて、いっちゃん……」

 興奮気味に話す伊智に和波が言う。
 伊智は和波の言葉で落ち着きを取り戻し、元に戻る。

「ご、ごめんね……でも、あの噂が本当だったらうちの部長には勝ち目は無いよ? 部長の武器は女の象徴そのものだし」

「だよね……私も少しは膨らまないかな……」

 そう言って和波は、自分のぺったんこな胸を触って絶望する。
 そんな和波をフォローしようと伊智は言葉を掛ける。

「だ、大丈夫だよ! まだ和波だってチャンスが……」

「伊智みたいにCも有る人にはわからないよ……ぺったんこの気持ち……」

「うっ……で、でも! 肩こるし! 走るとき邪魔なんだよ!」

「男子には最高だね……」

「和波みたいなのが好きな人も!」

「ロリコンだよね?」

 なんと言ってもマイナスに変換されてしまい、もうなんと言って励ましたら良いかわからなくなる伊智。
 そんな時、前を見るとそこにはなにやらキョロキョロしている志保が居た。

「ほ、ほら! あそこに志保が居るし、志保にも意見を聞いてみようよ!」

「……私なんてどうせ幼児体型ですよ………」

「もう! むくれてないで、さっそく……え?」

 伊智が、いじける和波を引っ張って再度志保の方を見ると、志保が男子生徒と一緒に歩いて行く様子が見えた。

「えっと……しーちゃんだよね? 隣の男子って……」

「ま、まさか……志保の彼氏?!」

 話しをしながら、伊智と和波は志保の後をつけて行く。
 顔が見えない為、志保が誰と歩いているのかはわからない。

「ま、まさか志保に彼氏が居るなんて……早速料理部みんなに!」

「ま、待ってよいっちゃん! まずは相手が誰なのか確認しないと!」

「そ、それもそうね!」

 明日もテストがあることなどすっかり忘れ、伊智と和波は志保の後をつけて行く。

「しかし……どこかで見たような後ろ姿だね」

「そうね……私もあの雰囲気に見覚えが……ってえぇぇ!!!」

 そんな話しをしていた時、男子生徒の方が志保の方に振り向いた為、顔を確認する事が出来た。
 そしてその人物の顔を見て、伊智は思わず大声をあげてしまった。

「ちょ! ちょっといっちゃん! バレちゃうよ!!」

「で、でも! 和波も見たでしょ!? あれって……」

「うん……武田君だったね……」

「確か、この前はなんか険悪っぽい感じだったはずじゃ……」

「一体何があったんだろ?」

 伊智と和波は、ファミレスに仲良く二人で入っていく、武司と志保を見送りその場を後にした。
 そして二人は早速、この情報を料理部部員達に流す。

「まさか、部長以外に志保まで面白そうな事になってるなんて!」

「これは沙耶ちゃんに報告しないと!! テストなんてもう知らない!」

「ちなみに、和波……この前のテストどうだったの?」

「ギリギリ赤点回避!」

「情報流す前に、勉強しよっか……」

「……うん…」

 冷静に考え、伊智と和波は明日もテストがある事を思い出し、家に帰って行った。
 しかし、伊智と和波は部長の沙耶香だけにはと、今さっき見た事実をメッセージで送信する。

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