99回告白したけどダメでした

Joker0808

46話




「お! やっと来たか誠実。もうゲーム初めてたぜ?」

「あ、あぁ…そうか」

「どうした? なにかあったのか?」

 誠実は美沙と分かれ、ボーリング場に来ていた。
 すぐさま健と武司を見つけ、2人の居るレーンに向かった誠実は、ボーリング用のシューズに履き替え始める。
 誠実のどこかおかしな様子に気が付いた健と武司は、美沙とやはり何かあったんだろうなと思い、気まずそうな表情で誠実に尋ねる。

「いや……俺も何が何だか……」

「まぁ、昨日も色々あったんだろうし、何かあったんなら言えよ、力になれるかもしれない」

「武司の言う通りだ、辛い時こそ俺たちを頼れ」

「お、お前ら……」

 今日の健と武司は本当に優しい、そう誠実は思いながら涙を浮かべる。
 友情って素晴らしいな、なんてことを思いながら、誠実は先ほど美沙と何があったのかを2人に伝えた。

「ふむふむ……つまりだ」

「告白っぽい事をされた上に、映画に誘われたと……」

「そうなんだよ……絶対に何か裏があると思うんだけど……」

 健と武司は2人とも、昨日の事を思い出していた。
 美沙が綺凛に誠実の事が好きだと言い、2人はその場面に立ち会っていた。
 誠実に話があると言って、美沙が近づいてきた時、2人は大体そんな話ではないのかと想像はしていた。
 健と武司の2人は、誠実に聞こえないようにコソコソ話をする

「なぁ、笹原まで参戦してきたぞ! どうなってんだよ! なんで誠実がこんなにモテるんだよ!」

「モテ期かもな……」

「ま、まさか……あの伝説の!!」

「人生で3回は来るらしいからな」

 コソコソ話す健と武司の様子が気になり、誠実は2人に近づく。

「なぁ、何を話してるんだよ?」

「おわ! びっくりするだろ!」

「あんまり俺を放置しないでくれよ、寂しい……」

「色々精神的ダメージが大きすぎて、素直になっているようだな」

 不安そうな表情の誠実に、健と武司は本当に誠実の事が心配になってきた。
 新しい恋をすれば良い、確かにそう言ったのだが、新しい恋がやたらと多すぎる。
 友人として、沙耶香辺りとくっついて、平和に3年間を終えて欲しいと願っていたのだが、誠実が色々なところでフラグを立てていた事を健と武司は知らなかった。

「まぁ、そうだな、俺らも付き合ったことないから、あんまり上手いことは言えないけどよ、ちゃんと一人一人と向き合う事が大事だと思うぜ?」

「一人一人? あぁ、沙耶香と笹原の事か……まぁ、そうなんだけど……」

 誠実はまだ、自分に好意を持っているのが沙耶香と美沙の2人だけだと思っていた。
 しかし、武司と健は知っている。
 その2人に、誠実の妹の美奈穂、二年生の先輩の栞が加わっている事を……。

「そんなの全員に良い友人でいようと、言って断れば良い。誠実、お前はこれからアイドルに目覚めろ、アイドルは良いぞ~、ステージとテレビの中では、綺麗で可愛い天使だ。まぁリアルで見てしまったら、色々と熱が冷めるが……」

「何お前はそっちの道に誠実を連れ込もうとしてるんだよ!! ていうか、おまえの過去に一体何があったんだよ!!」

 武司とは対照的に、すべて断る道を進める健。
 そんな健に武司は勢いよくツッコミを入れる。
 2人の対照的な意見を聞いた誠実は、なおさらどうしたものか、わからなくなってしまった。

「はぁ……告白されるって、案外つらいんだな」

「おい誠実、それはモテない俺に対する嫌味か?」

「武司落ち着け、確かにお前はモテないが……」

「良し健、歯を食いしばれ、ぶん殴ってやる」

 拳を振り上げる武司に、健は「冗談だ」と短く言って、武司を押さえる。
 そんな中、誠実は心の中でふと、綺凛の事を考える。

(山瀬さんも……こんな気持ちだったのかな?)

 告白する立場から、される側の立場になって、誠実は考える。
 相手から、こうやって好意を向けられる。
 誠実の場合はまだ良い、断る理由が無い。
 しかし、山瀬さんにはあった、それを考えると、誠実は自分のやっていた事が、どれだけ綺凛に迷惑を掛けていたのかを知った。
 たとえそれを綺凛が利用していたとしても、誠実はなんだか胸が痛くなった。

「あぁ! もう考えるのはやめた!! ボーリングしようぜ! 武司をボールにして!」

「どういう事だよ!! やっぱりお前、少し頭おかしくなってんじゃねーのか!?」

「誠実、それは名案だ、待ってろ滑りをよくするために、武司をボーズに……」

「おいこら健!! どっからバリカン出した! やめろ!」

 今は楽しもう、誠実はそう思い、いつも通り3人でバカ騒ぎをする。
 嫌な事や悩みがあっても、こうやって3人で騒いでいると忘れる事が出来た。
 それから3人でボーリングを3ゲームほど楽しみ、誠実達は解散する事になった。

「ま、まさか健があんなにボーリングが上手いとは……」

「驚きいたよ、顔も良くて運動も出来るって……」

「どやぁ」

「「口に出すな! 腹立つわ!!」」

 ドヤ顔しながら、効果音を口に出す健。
 そんな健に武司と誠実は文句を言い、ボーリング場の前で3人はがやがやと騒いでいた。

「お、もうこんな時間か、じゃあ俺はこっちだから」

「俺もそろそろ帰る、じゃあな」

「おう、2人ともじゃーなー」

 誠実は健と武司を見送る。
 ボーリングに夢中で、さっぱりスマホを見ていなかった誠実は、着信や通知が来ていないかを確認する。
 スマホを見ると、通知がたくさん入っていた。
 沙耶香から一件のメッセージ。
 美奈穂から一件のメッセージと着信一件。
 栞から一件のメッセージ。
 そして……。

「ん? 笹原からは……23件のメッセージ??? なんだ、何かあったのか?」

 なぜか美沙からは多くのメッセージが来ており、誠実は何か大切な連絡かと思い、美沙のメッセージから確認し始める。
 しかし、美沙のメッセージはそこまで重要なものでは無かった。
 内容も大した事は無く、好きな食べ物は何? とか、血液型は何型? とか、よくわからない質問ばかりだった。

「あいつ……なんのつもりだ……」

 美沙への返信はとりあえず後回しにしよう、そう考えていると、スマホの通知音が鳴った。
 
「ん? 武司から? なんだあいつ」

 通知内容は、武司からのメッセージだった。
 先ほどまで一緒にいたというのに、一体どうしたのだろう?
 誠実は不思議に思いながら、内容を確認する。

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