99回告白したけどダメでした

Joker0808

11話




 誠実君に告白をした後の放課後。
 私は屋上で、料理部の部員たちに迫られていた。

「み、みんな……なんで……」

 私は顔を赤くしながら、みんなの方を見る。
 みんなは、ニヤニヤしながら私に視線を集めており、口々になにがあったのかを聞いてくる。

「で、なんであんな面白い……じゃなくて、あんな展開になってるのよ?」

「今面白いって言ったよね? 絶対言ったよね!!」

「いいから教えなさいよ~、なんであんな告白みたいな事を言ったのか」

「……じ、実は……」

 私は先ほどの出来事をみんなに話した。
 勢いあまってあんな事を言ってしまい、私はまだ後悔していた。
 絶対に変な子だと思われてしまった。

「へ~、弱弱しい伊敷君を見てたらつい言っちゃったんだ~、へぇ~」

「楽しそうね……志保……」

 他の皆も同じような反応だった。
 ついに部長が動き出した! やっと部長が行動に!!
 なんて言いながらみんなは騒いでいるが、私からしたらむしろすべてが終わってしまったと思っていた。

「全く、いつまであんたはしょぼくれてるのよ。まだ告白の返事も聞いてないのに」

「だって……絶対変な子だと思われたよぉ~。急に怒ったと思ったら、あんな事言って……」

「でも、よかったんじゃない? どっちにしろ、言うつもりだったんでしょ?」

「そんなのもっと先だと思ってたよぉ~、今日は多分振られるから、その後でもっと伊敷君と仲良くなって、それから少しづつ距離を詰めて、一気に行こうかと……」

「料理部だけに、おいしくいただこうとしたって事?」

「な、なに言ってるのよ! そんなのは更に先の話でしょ!?」

 志保の少々下品な発言に、私は声を上げる。
 他の部員はその様子を見て笑いながら「志保、オッサンっぽいよ~」とか言っている。
 みんな私の気持ちも知らないで、楽しんでいるのだ。

「いいもん、どうせ私の恋もここで……」

「何言ってんのよ、ようやく始まるんでしょうが?」

「でも……明日どんな顔で伊敷君と会えば良いか……」

「その為に私たちが来たんでしょ?」

「え?」

 みんなニヤニヤするのを止め、私に微笑みかける。

「同じ部の仲間じゃない、困ったときは頼ってよ」

「そうよ、まぁ、まだ創部して三カ月も経ってないけど……」

「部長! 頑張って伊敷君を物にしよう!」

 私はそこで気が付いた。
 みんなは、もしかしたら、本当は私の事を心配してきてくれたのかもしれない。
 どうしたら良いか分からなくて、困っていた私のために来てくれたのかもしれない。
 そう思うと、やっぱり仲間って良いなぁ~と思う。

「ありがとう……みんな……」

「気にしないでよ、取り合えずは伊敷君にさっきの事をどう説明するかよね…」

「そのまま明日にでも呼び出して、再告白っていうのはどう?」

「う~ん、それだと多分まだ山瀬さんの事を引きづってるだろうから、ちょっと厳しいわね……」

「面倒だし、体育館倉庫にでも呼び出して押し倒せばいいんじゃない? 部長は大きなミサイルを二つ持ってますし」

「「「「確かに」」」」

 みんなの視線が私の胸に集まるのを感じ、私はとっさに胸を隠した。
 良く大きいといわれるが、正直大きくて良かった試しがない。
 ブラのサイズは無いし、デザインも少ない。
 肩も凝って大変だ。

「伊敷君はきっとそういうとこで女の子を見てないわよ! 山瀬さん、小さいし……」

「そういえばそうだね、じゃあダメか~」

「「「う~ん」」」

 再び考え始める料理部一同。
 今日の出来事をどう説明するのが、今後の彼との付き合って行くうえで良いのか、私にもさっぱりわからない。
 そんな中、一人の部員が何かを閃き、声を上げる。

「じゃあ、こういうのどう? とりあえず告白して、返事を待ってもらうのよ!」

「え? 待ってもらうの? なんで?」

「そこで返事を貰ったら、ほとんどの確率で振られちゃうでしょ? なら、あっちにも考える時間を十分に与えるのよ!」

「わかったわ! 返事を待ってもらっている間に、部長は伊敷君にアピールしまくって、伊敷君を自分に振り向かせるって事ね!」

「そう! 流石に告白された女子を気にしない男子は居ないわ! 嫌でも部長に目が行くだろうし、意識する。あとは部長が、積極的アピールすれば、彼はもうメロメロよ!」

「「「「おぉ!!」」」

 確かに良い作戦だと思う。
 しかし、そんなにうまく行くものだろうかとも思う。
 でも今はその策が一番有効なのも確かなので、私はこの作戦に乗ってみることにした。

「志保、私……頑張ってみる!」

「お! 沙耶香がやる気だ!」

「みんなもありがとう。私、絶対……絶対……」

 私は伊敷君とずっと一緒に居たい。
 そのために何をするべきか、私は皆の意見を聞いて分かった。
 部の皆も応援してくれている。
 私は皆に宣言しなければいけない。

「伊敷君と既成事実を作るから!!」

「「「そっちぃーー!?」」」

 なぜか知らないが部のみんなは驚きそう叫んだ。
 みんななぜか驚いたような視線を私に向けてくる。
 彼とずっと一緒に居るためには、既成事実を作るしかない。
 そうすればずっと一緒にいられる。
 その為なら、ずっとコンプレックスだったこの胸だって、活かして見せる。

「あ、あの……ぶ、部長……」

「どうかした?」

「ちなみに既成事実っていうのは……?」

「そ、そんな事……恥ずかしくて言えないよ…」

「「「じゃあ、なんで宣言した!」」」

 みんなはなぜか、疲れたような表情でその場に崩れ、なぜか顔をひくひくさせている。

「ぶ、部長って……奥手なんだか…積極的なんだか……」

「なんか、心配しなくても伊敷君を落とせそうな勢いよね……」

「っていうか、私は部長の今後が心配になって来た……」

 先ほどの協力的な感じとは打って変わってやる気のないみんな。

「な、なんでみんなそんな呆れたような視線を私に向けるのよぉー!!」

 この日、私は決意した。
 彼を絶対にものにしてみせると。
 ライバルは強敵だが、一人だけ、しかも誠実君は振られている。
 頑張れば、私の事を見てくれるかもしれない。
 そう思うと、私は自分でも興奮して居ることが分かった。
 伊敷君との明るい将来を妄想すると、顔がニヤけてしまう。

「エヘ……エヘへへ……ウフフ」

「志保、なんか部長が怖い!」

「私ら、焚き付けすぎちゃったかも!!」

「ま、まずいわね……主に、伊敷君の貞操が……」

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