白と華と魔王と神と

アルマジロ@小説書いてます

迎撃開始

4人を引き連れ戦線予定地に着いた。
「遅かったな」
「まぁそれなりにのんびりと来たからな」
なんてくだらないことを交わしていると斥候役の冒険者が走り込んできた。
「少し予定より早いが来たぞ!準備しろ!」
「さぁ、来たぞ。頼むぜハクヤ」
「まぁ、任せろ」
さぁ、行くか。そう声をかけて歩き出す。


数百メートルほど先に広がる夥しい数の魔物達。
うん、滾るねぇ。懐かしい感覚だ。久々に本気が出せそうだ。
よし、枷を外そう。
1つ。2つ。3つ。4つ。5つ。6つ。7つ。8つ。9つ。
うん。久々だけどちゃんと動けそうだ。今日はあいつを使おうか。
『顕現せよ 天叢雲剣あまのむらくものつるぎ
「お前を使うのも久々だな。」
刀身がギチギチと嬉しそうに震える。
「ははっ、ちょっと待て、後で存分切れるんだから。全くお前宝刀だろう?これじゃ妖刀だぞ?」
煩い、とでも言うかのようにブルブルと震える。
「おいおい、そんな怒んなって。最初は魔法でドカンと行くから見ててくれよ?」
なんだか機嫌悪そうだな。
「さて、無詠唱で行けるけど格好つけて詠唱しちゃおうかな。威力は上がるし」
詠唱の言葉一つ一つに魔力を注ぎ込んでいく。火属性、光属性、聖属性。3つの魔力をひたすらに。惜しみなく。
やがて魔法は鳥から鳳凰へ。鳳凰から不死鳥へ。その姿を変える。
『源は炎  それは原初の炎を纏う不死鳥なり  それは聖なる光と共に舞い踊る  さぁ我が敵に滅びを齎せ 舞え 踊れ 白銀の不死鳥よ聖なる不死鳥ホーリーフェニックス
術名を唱えれば白い炎できた不死鳥それは一声、鳴き、目の前へ迫る魔物の大軍を滅ぼすためにその身を踊らせた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
師匠であり、友であるハクヤに無理を言いつけられてから5時間ほど。もう、視認できる距離に魔物の大軍、死の行進デスマーチと呼ばれる魔の森からのスタンピードは迫っていた。ハクヤから貰った新たなバスターソード、試し斬りをしたがあまりの切れ味と軽さに正直驚いている。何せ刃を当てるだけで試し斬り用の案山子にスッと刃が入っていくのだ。だが、それでも不安は拭えない。俺は確かに強くなった。一年半前とはそれはもう比べ物にならないほどに強くなった。それば自覚している。
ただ、それでも相手はあの『死の行進』なのだ。最凶の魔物達が蔓延る『魔の森』のスタンピードなのだ。不安など拭えるわけがない。
しかも今回、俺を含めたハクヤの弟子の4人、それとハクヤ本人は最も重要な役割を担うことになっているのだから。不安になるのも仕方ないと思う。どう考えても無茶振りとしか思えない。
ハクヤか俺らに与えた役割。それは「スタンピードを殲滅すること。」多少の撃ち漏らしは後ろに控えてる冒険者の皆が援護してくれるだろうがそれでもその量は多くないだろう。
ほかの3人もいざ、目の前にするとやはり不安なのだろう。あまり、明るい顔はしていない。そんな中、ハクヤが1人、前へ出ていく。
俺らも散開しなければな。
そう思いほかの3人にも声をかけようとしたところでギルドマスターから声をかけられた。
「やぁ、未来の英雄達。不安なのだろう?わかるよ。こんなものを前に不安を感じない一般人など居ないだろう。だからこそ彼をしかと目に焼き付けておくといい。あれが、君たちの師匠。世界最強の『鳳凰』だよ」
ギルドマスターの言葉がよく分からなかった。ほかの3人も同じなのか頭には?が浮かんでいる。
「はは、意味がわからなかったかな?まぁ、そのうち分かる時が来るさ。彼をしっかりと見ておきなさい。君たちはあれに師事していたんだ」
そう、ギルドマスターが言い終えた途端、凄まじいほどの圧力をハクヤが放ち始めた。
これがハクヤの全力なのか...
凄まじすぎる。
そう思ったところに追い打ちがくる。
さらに倍ほどの圧力をハクヤが放ち始めた。そして、まだまだハクヤの圧力は増し続ける。全部で9回。そう、9回もハクヤの圧力が増加した。
そして、思い出したかのようにフッと俺らにかかっていた重圧が消えた。
明らかに魔物達の進行速度が遅くなっている。と言うか八割は足を止めている。あの圧力を全部、向けられているのだから当たり前だろう。
すると、ハクヤがなにやらとんでもないオーラを放つ剣を取り出した。
明らかにヤバい。しかもなにやら楽しそうに話してるような...
剣を使ってなにかするのかと思ったら剣は腰に差し何かを始めた。
「魔法...?」
カノンが不意に呟いた。そしてその瞬間、あたりに莫大な魔力が漂い始めた。その魔力は全て、ハクヤの真上に集結していく。
それは徐々に炎となり鳥となっていく。そしてある突如、白い炎に変わる。そこに出現したのは白炎の鳥。そして一回り大きくなった。あれは...あの姿は...まるで...
ふと、後ろにいる冒険者の男が呟いた。
「白銀の...鳳凰...」
そう、鳳凰のようだ。
そして男の呟きに応えるかのように白い鳳凰はその身を大軍へと踊らせた。
そして、俺らの師匠は振り返り嬉しそうな顔でこう告げた。
「さぁ、始めよう。散れ!戦闘開始だ!」
『オォォォォォォォ!』
今ので士気が高まったのだろう。冒険者たちから凄まじい声が聞こえる。
「さぁ、私達も行きますわよ。遅れたら後日何があるかわかりませんもの」
エリスに、そう促されてしまった。兄失格だな。
「あぁ、俺らだって負けてられないからな。」
さぁ、やろうか。


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