白と華と魔王と神と
迎撃準備
「ハクヤ、今はどーなってる?」
アルフレッドを先頭に4人がこちらへ歩いてくる。
「とりあえず冒険者の緊急召集と緊急避難勧告を兼ねた1番高い音の鐘を鳴らして、拡声の魔道具で辺境伯が今から指示を出す手筈だよ」
アルフレッドの問いにメルクが答える。
「ギルドマスター。大丈夫なんですか?」
「まぁ今回はハクヤがいるから大丈夫だろうね」4人がバッとこちらを見る。
「俺を当てにすんなよ」
「殲滅、できるんだろう?」
「ここら一体この先数百年、焦土と化すがそれでもいいなら今からでもできるぞ」
「......それは遠慮したい」
おい、全員でうわぁ...みたいな目で見るなよ。とりあえず一番近くに居たアルフレッドにゲンコツを落とす。
「イタッ!」納得のいかない目で見られるがスルー。
「それが無理なら1人じゃ不可能だ。まぁ、4人が居れば大丈夫だろ」
お世辞抜きでこいつら強くなったからな。
「とりあえず算段は立ててある。冒険者が集まり次第俺に説明させろ」
「わかった」
丁度、俺らの会話が終わったと同時に辺境伯が拡声の魔道具で、街への放送を開始した。
「ローテルンの住民諸君、突然、警鐘が鳴り、驚いているとは思うが落ち着いて聞いてくれ。『死の行進』の発生が確認された。冒険者諸君は至急ギルドへ向かってくれ。迎撃予定地への到着は明日、開戦までにはまだ、猶予がある。ギルド職員、警邏隊、騎士団の指示に従い、ゆっくりと避難シェルターへの避難を開始してくれ。運の良いことに現在この街にはSランク冒険者にAランクパーティが2つも滞在している。戦力的にも安心できる。だから落ち着いて避難してくれ。私からは以上だ」そう言って辺境伯は話を終えた。
その後レヴィが引き継ぎ避難についての説明をしている。
ギルドには放送が終わる前から冒険者が続々と集まってきている。
「結構いるもんだな。冒険者」
「そりゃ辺境だしな。ここのギルドのBランクなんて他じゃ普通にAランクになれるレベルだったりするしな。基本、高水準で質のいい冒険者が集まるのが辺境だし、辺境だからこそ冒険者の数も多い」
ボソッと呟いたつぶやきにアルフレッドが返してくる。
1人、納得していると辺境伯が近ずいてきた。
「メルクリウス、終了したぞ」
「ありがとうございます。ハクヤ、頼めるかい?」
「りょーかい」
ギルドのカウンターの上に飛び乗り呼びかける。
「あー、ギルドに集まった冒険者諸君、俺はハクヤ、こう見えてSランク冒険者だ。今回、迎撃戦闘を行う部隊の指揮を行うことになった。これより行うことは3つ。まずは迎撃部隊として死の行進と直接戦闘を行う部隊の選定。主にBランク以上を選ぶ。次に魔法部隊。これは防壁の上から群れに魔法を撃ち込んでもらう。それと門の守護を騎士団などと協力して行う街の防衛部隊の選定。これにはD以上を。避難の手伝いや避難中によからぬ事を企む輩を取り締まる警邏部隊の編成を残りの冒険者達でやってもらう。もちろん俺らがそんなことを企むのは以ての外だしそんな奴がいたら俺が直々に裁く。いや捌いて食ってやろう。以上!これから名前を呼ばれた冒険者はカウンターへ向かい自分の所属を確認した後迎撃隊は2階へ、その他は各自待機しろ。所属が変わる可能性もあるから上手く対応してくれ。俺からは以上だ。あとはギルドマスターからの指示を仰ってくれ」
「と、言うわけだ。職員及び冒険者諸君。テキパキと動いてくれ。」
メルクの一声で一気にホールが騒がしくなった。
「華音、アルフレッド、アルグレス、エリス、お前らは上だ。付いてこい」
華音達へ声をかけ、2階へ上がる。
「うわ!こんなスペースあったっけ?」
「購買スペースを緊急用にぶち抜いてあるらしい。普段はそれらに魔法で壁作ってるんだと。今回は急ぎでそれをしまってもらった」
さて、こいつらには先に説明をしておこう。
「さて、今回の作戦だが...」
「バカなのか?」作戦を一通り聞き終わってアルフレッドがなかなかのことを言い出した。
「誰がバカだ」
「この作戦では俺たちは危険すぎるだろう!?」ふむ、そんな雑魚に育てたつもりは無いんだがな…
「雑魚!?死の行進だぞ!?魔の森からのスタンピードだぞ!?」
ん?口に出してしまっていたか?
「当たり前だ。たかが知性もろくにない獣どもになぜ負ける。俺が鍛えたんだぞ?」
「俺らはいまだハクが少しやる気出しただけで誰一人として一撃も入れられなくなってしまうじゃないか。僕やアルグレスなんかは魔法なし、ステータス封印にさらに手加減までして勝ち越されてる」
「当たり前だ。1億年はやい。むしろたった半年でいくら手加減してるとはいえ切り結ぶレベルまで到達してきたのは驚いてたぞ」
「なっ...」
「なんで驚いてるんだ?」
「まさかそんなこと言われるとは思いませんでしたよ、ハクさん」
「ハハハ、許してくれ、お前が1番伸びたよ。アルグレス。エリスも、華音も、アルフレッドもかなり強くなった。大丈夫さ。さぁ、準備をしてこい!」
「「「「はい!」」」」
少し間を置いて息の揃った返事が返ってきた。
うん。いい返事だ。
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