紅茶と供に福音を

海野水雲

その口は堅く

 早朝から女子の部屋に突入するというのは、とても勇気が必要だと幸助は実感した。 本来なら、そんな事を実感するような状況に遭遇したくはなかったが、これも仕事である。だから、いつまでも部屋の前で硬直しているわけにもいかない。 佐奈に任せようと思っていた仕事を、何故二日目からいきなりしているのかと言えば、それは彼女がこの仕事を辞退したからだ。 幸助が朝一番で頼むと、とてもいい笑顔であっさり断られた。優しそうに見えて鬼畜だ ジルの部屋の扉がかなり大きく見える。実際他の部屋の物より少し大きい。 咳払いをして、ノックする。「お嬢様、失礼します」 反応はない。 仕方なく扉を開けると、幸助の鼻孔をいい匂いが通り抜けた。 昨日は緊張で気が付かなかったが、女の子の部屋がいい匂いがするというのは本当らしい。決して幸助にそう言う性癖があるわけではない。 晴れているからか、それともジルが未知の存在でなくなったからか、部屋の印象はまるで違った。 ベッドの方を見るとくーくーと寝息を立てて、ジルはまだ寝ていた。 こうして寝ていれば可愛らしい。威圧感があるのとないのとでは大きな差がある。 気持ちよさそうに寝ている姿を見ていると、ずっと寝させてやりたくなるがそういうわけにもいかない。今日は学園が始まる月曜日だ。「お嬢様、起きてください」「……もう朝なの」「はい、朝です。だから起きてください」「……」「早くしないと学園に遅れますよ!」「……」 少しすると、くー、と微かな寝息が聞こえてくる。どうやら起きる意志はないらしい。 目の前で爆睡する少女を見て、幸助はどうするべきか少し悩む。 人を起こすのなら、毛布を引っぺがすなり、強引に腕を引っ張るなりやりようがある。ただ、相手が相手だ。そんな手荒な真似はできない。 佐奈が一苦労しますと言っていたが、性別の壁が余計に難易度を上げていた。「おーい! 起きろ!」 昨日の段階で、言葉遣いはあまり気にするなと言われたものの、少しためらいがある。だが、何時までもこうしてはいられなかった。「う~……うるさい……」 彼女が話せるうちに畳み掛けて起こさないと、すぐに寝てしまう。「お嬢様がさっさと起きればうるさくしないですみますよ」「今日は休むから、もう少し寝かせて……」「駄目です。いい加減にしないと毛布引っぺがしますよ!」 幸助がもっと強くでないとダメかと言ってみたものの、そう簡単にはいかなかった。「やれるものならご勝手に~」 毛布の中から手をひらひらさせ、ジルは幸助を煽ってきた。幸助の顔が引きつる。 やってやろうじゃないか、早足にベッドへずかずかと足を進めて、毛布を掴む。「いい加減起きろ!」 思い切り引きはがした。 思ったより重かったので、半分めくる形になったが、起こすのには十分だろう。 問題があったとすれば、ジルが思ったよりも無防備であった事だ。 寝相が悪いのか、パジャマは少しずれていて肌が見えているし、胸元のボタンも何故かとまっていない。雨は降っていたが、昨晩はそんなに暑くはなかったはずだ。 ともあれ、服の合間から見えるへそやら、ふとももやらが艶かしい。 わざとやっているんじゃないかと疑いたい。というかさっさと起きてほしい。「聞こえてるか? 朝だぞー!」 視線をなるべくジルに向けないようにして、幸助は早く起きろと催促する。 ジルは観念したらしく、のそっと起き上がると今度はベッドの上に座り込む。 体は起こしたものの、頭は寝ているらしい。目がぼーっとしていて動かない。顔に髪が掛かっているのすら、気になっていないようだった。「お嬢様、取り敢えず立とうか」「……うん」 こうしていると印象が全く違う。 昨日は常にとげとげしい感じがあったのに対して、寝起きはかなり子供っぽい。ジル自体身長が少し低目であるのも相極まってか、幸助はかなり年下の世話をしている気分だ。 因みに、先ほど返事をしたのに関わらず、ジルは未だにベッドの上でぼーっとしている。「……あ」 段々目が覚めてきたのか、思い出したように声を上げる。「どうしまし――」 幸助が訊くよりも早く、ジルは服を脱ぎ始めた。「ちょっと待ったァ!!」 急いでジルの両手を捕まえて着替えをやめさせる。やや押し倒す形になったが、そんな事を気にしている場合でもなかった。「……着替えないと、学園にいけない」「せめて、俺が部屋から出てからでお願いします」「別にいいじゃない。別に見て減るようなものではないし」「そう言う問題じゃねぇ!」 ジルはまだ少し寝ぼけている様だったが、幸助が認識できていないわけではないらしい。 あまりにも人目を気にしすぎ無さ過ぎる。ジルはそういう人間なのだと悟ったが、だからといって、それを良しとするわけにはいかない。「次からは配慮して頂けると助かります」 朝からなぜこんなに焦らなければならないのだろうか。使用人は大変だなぁ。と他人事のように思う事で幸助は軽く現実逃避していた。 扉がノックされたのが聞こえる。「入ってもよろしいでしょうか?」 佐奈の声だ。 腕の時計は予定の時間より先を進んでいて、幸助は少々時間をかけすぎたことに気が付く。遅いので様子を見に来たのだろう。 ジルはこくりと頷いた。これは代わりに返事をしろという事らしい。「どうぞ」 佐奈は昨日と同じメイド服だった。ついでにいえば幸助も昨日と同じデザインの使用人服である。主が朝食をとるまでは、この服で仕事をするのが基本だ。 そして、主が朝食を終えて玄関に来るまでに制服に着替え、ともに登校する。 結構時間がとれない生活ではあるが、慣れるしかない。「朝食の準備は終わっていますので……」 佐奈は言葉を切って、咳払いを一つ。「九条様、これはどういう事でしょうか?」「待ってください。違います」 幸助は今の状況を完全に忘れていた。 佐奈から見るに、幸助は身を乗り出してジルの両腕を掴んでいて、その服は若干はだけ気味。見方によっては、いや、どう見ても襲っているように見える。「えぇ、大丈夫です。分かっていますよ」 佐奈は笑顔で返事をする。 そして、左手でメイド服のスカートの中に手を入れる。 ちらりと見えたガーターベルトに一瞬目が行くが、幸助はそんなところを凝視している場合ではない。「分かってません! それ分かってませんよ!」 ジルが何か唸っている気もするが、そちらも気にする余裕はない。「九条様が健全な男性であることは存じております」 ゆっくりと、標準をぴったりヘッドに合わさる。そして、何の躊躇もなくスライド。 あとは引くだけですね! なんで考えている場合でもない。「スタァァアアップ!!」「うるさぁぁああああああい!!!」「あだっ!」 放置していたジルが幸助の後ろで癇癪を起した。 そして、幸助の頭部右側面に拳がクリーヒット。ゴム弾でヘッドショットされるよりかは随分ましだろう。ゴム弾の場合なら、当たり所が悪ければ……。「佐奈! その物騒なのは私の部屋では抜かない! 腕は信用しているけど、いい気分ではないわ」「は、はい! 申し訳ありません」 運よくなのか、幸助は助かった。「何をしているのかしら?」 ゆっくり息を吐いて幸助が安堵していると、ジルが不機嫌な声で言った。 ジルは寝起きが最も機嫌の悪い時間帯なのだ。ただでさえ悪いのに、朝から大声でわめき散らかされて、相当きているらしい。 声に明らかな怒気がこもっていた。「は、や、く、出て行きなさい!」「は、はい!」 なんだろう。すごく理不尽な目にあっている気がする。 その通りなのだが、従者である以上主には逆らえない。幸助に反論は許されない。 足早に部屋を出て、扉を閉めて一呼吸。初めての朝だからとはいえ、どたばたしすぎである。しかし、時計を見てみると、何とか時間に間に合うようには起こせたようだ。「よかった……」 意図せずこぼれた言葉だが、おそらく正しい感想だ。 すぐにまた扉が空き、佐奈が出てきた。銃は既にしまってある。扉が閉まったのを確認して、幸助の方に向きなおした。「ところで、うやむやになってしまいましたが、先ほどの状況を説明して頂きたいです」 返答によってはただじゃおきませんよ。と、顔に書いてある。幸助はこの時気が付く。笑顔は武器と言うが、実際、脅迫道具にもなりうるのだと。「お嬢様がいきなり服を脱ぎ始めたので、止めたまでです」 少し頭が冷えたおかげで、冷静に返せた。話の通じない相手ではないのだから、落ち着いて話せばわかってくれるはずだった。多分。きっと。「……あぁ、なるほど。私と九条様を勘違いしたのでしょう」 普段は佐奈が起こすためか、ジルは着替えの世話もさせているらしい。その癖で、寝ぼけたまま服を脱ぎ始めたという事だった。「新人さんには毎回一日目の朝は任せているのですが、ジル様があまりにも起きないので、皆さん私に頼ってくるんですよ。毛布を剥ぐところまで行って無事で済んだのは九条様くらいです」「つまり、無事で済まなかった人は多かったと」「一番初めですし、私が見張っているんですよ。部屋の中までは見ませんが、少し遅いとああやって扉を開けて確認します。お嬢様をお守りするのもメイドの役目ですから」 鼻を鳴らして自慢げに佐奈は言う。「でも、あそこまでいって襲わなかったのは九条様が初めてですね」 全く下心がなかったわけではないが、幸助は素直に受け取ることにした。「なんだか褒められているようで、そんな気はしませんね」「褒めていませんからね」 すごく冷めた声で、早口に佐奈は流した。「……」 幸助は佐奈の見てはいけない一面を見た気がした。「それで、どこまで見たのですか?」「……は?」「ジル様は寝相があまり良いとは言えません。そのため、かなり服が乱れていたはずです。それでどこまでご覧になったのかと」「どこも見てませんよ」 正直色々見たけど。 起こしてこいと言われてこの扱い。やはり理不尽なのでは? 何故だ、どこで間違えた。どうすれば正解だったのだろうか。幸助は頭をひねったが、意味はなかった。「起きない時点で剰水さんを呼びに行くべきでしたか?」「……いえ、九条様の措置はそこまで悪くないかと思います」「じゃあなんで怒ってるんですか……」 佐奈は別にジルが関係している事で怒っているわけではなかった。ただ、発砲できなかったこと、反射的な行動が無理やり止められたことに対しての少しの不満があっただけ。 もっとも、一番の不満は幸助が助かったことだったのだが。 佐奈は天然のサディスト気質だった。 自分では意識していないせいで、何故自分が現在不満を持っているのか、佐奈には理解できずに口ごもる。「なんででしょうね」「こっちが訊きたいですよ」 被害をうける幸助の方はたまったものではない。「にしてもお嬢様はなんだか常に不機嫌ですね。というよりは、感情がゼロ以下と言いますか。プラスの表情を一日たっても見ないというのも珍しい気がします」 幸助は昨日の昼から夜ジルが寝るまで、明るく笑った顔を一度も見ていなかった。愛想笑いさえだ。最初に部屋で見せた薄い、含みのある、笑みとは言い難いそれ以外には、常に眉をひそめているか、口を尖らせているかであった。「それは仕方がない事なんです。私も少し辛いところではありますが、今は我慢ですよ」 仕方がないとはどういう意味なのか、幸助にはよくわからない。「あ、あともう一つ。昨日から訊きたかったんですが」 その時、幸助の言葉を扉が開くが遮る。 制服に着替えたジルが、やはり不機嫌な顔で立っていた。よく見ると首元が寂しい。本来ならばそこにあるはずのネクタイは、彼女の右手に握られている。「佐奈」「はい、ジル様」 一言で佐奈は少しかがんで、ジルからネクタイと受け取る。そして丁寧に形よくそれを巻いていく。どうやら一人で着用できないらしい。「ありがとう」 ジルが佐奈の頭をぽんぽんと撫でるようにすると、先ほどまでのどこか不満そうな気配が顔から消えた。 幸助からすればかなり不可解だ。厳格な主従関係というよりは、主とペットの様にも見える。いや、実際そういうものなのだろうか。「朝食はできております」「ん」 ジルの一歩後ろを佐奈が付いて歩き、その少し後ろに幸助はついていく。 部屋につくと、少し大きいテーブルの上に一人分の朝食が用意されている。幸助と佐奈は朝、キッチンで早く食事は済ませてあるのだ。 使用人が主と同じ机で食事を共にする。そんな事はあってはならない。だから、自分の身の回りの事は主が一人になるときや、寝ている時に済ませる。 食事を終えると二人は素早く着替えて玄関へ集合、ジルを待つ。「あの、剰水さんもしかして、あれ持っていくんですか?」「あれ? ……あぁ、拳銃ですか。それは勿論。いつ何が起きるかわかりませんからね」「そういうものですか」「そういうものです」 お嬢様お坊ちゃまが通う学園で、発砲なんてした日にはそれはそれで問題になるはずだ。佐奈であれば、発砲などせずとも事を片付けられそうだが、もしもに備えることはやはり大事なのだろう。「待たせたわね」 さすがに髪を整えたりは自分でするらしい。寝癖はちゃんとなくなっていた。まだ少し不機嫌そうなのは、やはり眠いからだろうか。 玄関の扉を開けると、一台の車が止まっていた。 車の内装は運転席と助手席、そして、後ろは二人ずつ座れるシートが向かい合って設置されている。ジルの隣には佐奈が座った。 リムジンではないのには理由がある。ジル自身がそう言う仰々しいのは苦手なのだ。 運転するのは佐奈でも幸助でもなく、専用のドライバー。村田さんという、お爺さんだった。もうこの道五十年だそうだ。「おはよう村田、今日も宜しく頼むわね」 村田は軽く頭を下げてエンジンを鳴らした。 現在はジルの登下校だけの運転手だが、古くから九条家に仕えている。顔にしわも多く、かなり穏和に見えるが、若い頃はかなりのやり手であったらしい。 どんな道を運転しながらでも、射撃の精度が高い。 佐奈が村田の話を幸助にするにあたって最も目を輝かせていた箇所である。 全員が乗り、車は足を進める。 幸助は庭から出るまで、景色を眺めていた。幸助のような一般人にとっては、少し広い自然公園のようなものだ。 そうしてずっと外を眺めていたかったのだが、佐奈から視線を感じる。「剰水さん、なんですか?」「すみません。今朝私に何かお訊きになろうとしませんでしたか?」「あー、そう言えば」「剰水さんは、俺の事を九条様って呼ぶじゃないですか。同じ使用人なのになんで様づけなのかなって」「それは……九条様は分家とはいえど、九条家の人間ですから。私はあくまで剰水家。九条家に仕える家柄です。なので、九条家の人であれば、だれでも主のようなものです」 正面に座るジルは目を瞑って、何も言わない。 不機嫌という感じではなかったが、あまり良くは思っていないらしい。ほぼ自分専属のメイドがそんな事を言うのは確かに嫌ではあるだろう。「勿論、今はジル様に仕えています。今後もそうしたいです。けれど、それは私が決める事ではありません」「そんな――」「やめなさい」 幸助の言葉をジルが遮った。「佐奈も、好きで従っているわけじゃないのよ。もっとも、私も佐奈を手放す気は毛頭ないけれど」 にやりと笑うジル。ようやく見た、まだましな笑み。だが、それもどこかぎこちない。 彼女自身、そう思っていることに変わりはない。だが、そうしなければならない事態に陥らないとは限らない。そのことをジルは理解していた。「ジル様が直々に言ってくだされば、私も無理な異動はないでしょう」「それもそうですね。すみませんでした」「いえいえ」 幸助はまたも外に視線を移す。門を出て、車は街中を進む。 空は雲ってはいなかったが、折角の朝日を薄い雲が隠してしまっていた。
 学園の前庭を歩く人たちは皆制服。だが、普通の学生とは明らかに雰囲気が違った。 生きる世界が違うと、何となくそれが外にも漏れていくものである。そしてそれは本人たちの自覚がなくとも、一般人には刺さるものがあったりするもので。 結論から言うと、幸助はかなり緊張していた。 クラスは違うと言われたものの、同じ校舎で授業を受ける以上、そういう気に当てられるのは避けられない。 目の前の校舎にすら威圧されている感覚があった。 その校舎は左右対称に伸び、かなり大きい。これで奥行の方があるというのだから、一体何でそんなに大きく作ったのだろうか、と疑問に思わざるを得ない。当然、必要な設備を詰め込んだ結果なのだろうが、それにしても幸助の常識とは認識がずれていた。 桜ヶ峰学園。付近に住む、いわゆる金持ちたちの跡継ぎが集まる学校だ。資金は全て親たちから流れる。そのため、大きな校舎、ある意味無駄なところまでの建造が可能となった、とはジルの言葉だ。無論、その出資会社の一つに九条グループも入っている。 周りにいる人物は皆何かしらの権力を持っている。そう思うと幸助はそわそわして落ち着かなかった。 佐奈が手を引こうかと提案してはくれたものの、それはそれで恥ずかしい。 ……もしかして辱めるのが目的だったのだろうか? いや、それはさすがに考えすぎだろう。 幸助はあまりに疑いすぎるのはよくないと、自分に言い聞かせる。 それでも若干の疑いが残るのは、きっと自分のせいではないと思いながら。 校舎の中央広場に入ったところで、三人は二手に分かれた。「ではお嬢様、また後ほど」「ん」 幸助と佐奈のお辞儀に対して、こくりと頷くと、ジルはすたすたと校舎の奥へ進んでいった。幸助は佐奈に半ば引きずりながら、反対側へと向かった。そして、職員室の前までやってくる。 この桜ヶ峰学園では、主と従者の校舎にそれぞれ職員室が付いていた。 さらに、クラスの方はさらにメイドとバトラーに別けられている。「名乗ればあとは誘導してもらえると思います。話は通してあるはずですし、編入試験もきちんと合格していますからね」「分かりました」 佐奈もここから下校時まではお別れだ。クラス自体は近いので、会おうと思えば会えるだろうが、そんな用事もほとんどないだろう。「あ、そうです。車の中で言えなかったので、ここで言いたい事が」「なんでしょうか?」「目標にしていただきたいのです。この一週間でジル様に、紅茶を淹れて差し上げられるようになってください」「紅茶、ですか」 先日、淹れると言ったら断られてしまった。 てっきり拘りがあるものだと思っていたが、どうやら違うらしい。「それができるかどうかが、一週間後に九条様がここにいられるかのカギになるかと」「……なるほど。要するにある程度心を許した人の紅茶は飲むんですか」「そう言う事になりますね」「因みに、剰水さんの紅茶は?」「頼まれれば淹れています。たまに別の人が淹れたものが飲みたくなるのだそうです」 佐奈は少し自慢げに答えた。現在ジルは佐奈と自分の淹れた紅茶しか飲まない様だ。「本家に招かれても、大抵私が入れさせていただいています」「では、剰水さんはジル様に信頼されているんですね」 この質問も、佐奈がはっきりと答えることはなかった。 ただ困ったように苦笑いして、時間だと言ってそそくさとその場を去っていく。 自信気に話していた割には、佐奈はそれ以上何も言わなかった。

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