紅茶と供に福音を

海野水雲

懐かしい花の香り

 教室は綺麗に整えられ、美しいデザインもされていて、普通の学校に比べるとやはり差があった。 だが、それよりも外の景色の方がよほど綺麗であることに気が付ける者は少ない。 窓から眺める景色は、創られたものであるにも関わらず、何時見ても人の手の介入を感じさせない。無着色とでも呼ぶべき印象が素晴らしかった。 この時期は紫陽花の花が緑の合間にちらほら見える。 秋には紅葉が綺麗らしい。 藤宮東花はいつもの席、クラスの最後尾の窓側でいつも通りに風景鑑賞をしていた。 親しい友人はいないというより、持たないようにしている。知られたくない事があるのだ。そのために長かった髪は首の後ろで尻尾のようにまとめ、話し方も少し変えた。 本来は髪を切ろうかとも考えたが、主に止められた。 朝から若干クラスの雰囲気が違うのは、編入生が来るという噂からだろう。 皆直接は口にしないが、気にかけているのは確かだ。 ただ一人を除いては……。「藤宮君は、次の九条家の従者はどんな人だと思う?」 男しかいないクラスなのだが、こういう事を訊いてくる輩は性別に関係なくいるものだ。 美しい景色に別れを告げて、しぶしぶ振り返るとそこにいたのは住井雅だった。 建築関係のトップ企業の家に仕える家柄の少年。 東花が持つ彼の印象としては、情報網が広く、大抵の事は訊けば教えてくれる、いわゆる情報屋のような男。 自分の秘密もばれてしまうではないかと、そっけない対応をして早くも二か月。まだ付きまわれている。「どんな人でも関係ないよ」「でも、確定で藤宮君の隣だよ?」 そう言って、雅は東花の隣の席を手で示す。 東花の隣の席は九条家の従者が元々座っていた場所だ。だが、今は誰の席でもない。それから何度か編入生が来たが、例外なく東花の隣となった。 普通に考えると気の毒と思われそうだが、秘密の件もある東花にとっては好都合である。「問題は一週間以上いるかどうかさ。あとは常識人かどうか、九条家の従者はよくわからないからね」「あー、そうだね。上のクラスからの噂だと、お嬢様に手を出して辞めさせられた人も多いって聞いたよ」 上のクラスと呼ばれているのは、ジルのような息子娘の方のクラスのことだ。「あそこの雇い主は見る目がない」「藤宮君って顔の割に結構きつい事言うよね」「……」「あ、もしかして怒った? だったら謝るけど」「いや、別にそうじゃない。ただ、これ以上私に付きまとわないでほしい。このままだと、私からすれば君も九条家の従者も同レベルだとだけ言っておくよ」「辛辣だなー」 反省の色が見えない。雅はくえない性格をしていた。顔で何を考えているのか判断できない。いわゆるポーカーフェイスだ。 因みにこの会話。ほぼ毎週行われている。 雅の苦笑いを見届けて、景色に目を戻した。 こうして景色を眺めているのが、学園にいる間の東花の日課のようなものだ。「……まだ何か?」 眉を潜めて視線を戻すと、雅はまだそこに立っていた。「いや、どうにも皆九条家の従者に対して結構きついから、隣の席の藤宮君には教えておきたいことがあって」 少し薄気味悪く笑って、雅は告げた。「九条家のお嬢様。従者関連でちょっとトラウマがあるらしくてね。一週間以内に条件を満たせないとお役御免になるんだってさ」「……あのさ」「ん、なんだい?」「たまに君が怖くなるよ。情報をどこから仕入れているのか、とかね」 東花は呆れるようにため息をこぼした。 こうして雅を見ていると、執事よりもっと適した職業がありそうなものだ。だが、そう言ってみても彼は執事になりたいのだ。 結局のところ住井雅にとって、情報収集はただの趣味だ。 同時に、その趣味が大きな金の動く世界では力になるという事もわかっている。さらにいえば、発言が通るためには大きな金を動かす者の近くにいるのが手っ取り早い。そう考えると、ある意味利益第一に考えているとも思える。「情報の出どころはきっと永遠に内緒だねー」 雅に合わせて、東花は顔だけ緊張をほぐした。 よく話すせいで、表面だけの対応にも慣れてしまっていた。「まぁ、あまり卑下してやるなという事なら、心配ないよ。そろそろ朝礼だ、ほらいったいった」「それならいいんだけど。はいはい、じゃあ退散しますよーっと」 てとてとと雅は自分の席に歩いていく。背中だけ見ていると、小さくて男子にしては可愛らしい。童顔であるし、口さえ開けなければ可愛がられるタイプだろう。 東花はまた景色に視線を戻す。 今日から隣に来る男子の事はあまり気にならない。 言った通り、どうせ誰が来ても同じ事だった。 内側は見せず、外側だけの付きあいをするだけ。今までと何も変わりない。隣の席の人物がいくら代わろうが、東花はそうしていつも通りに振る舞っていた。 だが、その考えが甘かったことに、数十分もしないうちに思い知らされることとなる。
 クラスの扉の前で、幸助は呼ばれるのを待っていた。 朝礼の間、クラスの中は至って静か。以前の学校では、教員が話していてもある程度生徒の声が聞こえたものだが、一切聞こえない。ここでまず、軽く品位の差を感じる。「では、入ってきなさい」 老教師の声が聞こえた。深呼吸をしてから、足を踏み入れる。 つい先月まで通っていた学校と比べると、やはり教室は綺麗だった。だが、どこか懐かしい。黒板もおそらく一か月ぶりくらいに見る。何とも言えぬ、帰ってきたという感覚に襲われると、幸助は思っていた以上に自分が学生生活を満喫できていたことに気が付いた。 今日からクラスメイトの学生たちは、何も話さずに形式だけの拍手を送る。 視線はとても冷たかった。「九条家に仕えます、九条幸助と言います。宜しくお願いします」 簡素に言うと、幸助は教師を目で急かす。だが、肝心の教師の方は気が付いていない。 教師の指示があるまで少しクラスを見渡した。 男しかいない。バトラークラスのため当然なのだが、共学から男子校に送り込まれたような感覚で、幸助は少し寂しくなった。「えー、では、九条君は……藤宮君の隣、あそこの席に座るように」 そう言って、教師は最後列の席を指定した。 席に向かう途中にも、背中に冷たい視線を感じる。ただ、幸助がどうこうと言うよりは、九条の従者として見られている。そして、それを踏まえて、彼らの視線は矛のように幸助に突きたてられる。 隣の席の男子は長い髪を首の後ろでまとめ、尻尾のように垂らしていた。幸助が近くに来てもそっぽを向いて、何の反応もしない。 いくらなんでも失礼すぎないか?「宜しく」 軽く挨拶をする。 その時、懐かしい香りがした。幸助の知っている匂いだった。 もう一度隣席の人物を見る。「……東花姉?」 その時、藤宮東花は九条幸助の登場にかなり慌てていた。 何故一般の学校に通っているはずの知り合いがこの場にいるのかが理解できない。そうして、ふと先日、引っ越すという知らせを聞いて別れのメールを送ったことに気が付く。 確かに苗字は九条であったが、まさかその九条であるとは思ってもいなかった。 ひとまず必死に動揺を抑えつけ、平常心を保つことに努める。「……だ、誰の事かな?」 東花は振り返って引きつった笑顔を見せる。 男にしては少し整いすぎている中性的な顔。髪も元々長かったのか、後ろで尻尾のようにくくっている。 髪を下ろしたものを想像すると、幸助には見覚えがあった。ついでにいえば声は間違いなく旧知の人物。 篠田東花だ。別れ際にメールをくれた、友人の姉。 姉とはいうものの、双子であるため年は幸助と同じ。周りが東花姉と呼んでいたのが幸助に伝染したに過ぎない。だから同じ学年でも不思議ではない。 八割型間違いないと言いきれた。だが残りは二割だ。 何故彼女がこんなところにいるのか? ここは執事を志す者のクラスであり、男しかいないはずなのに。その疑問だけが確信を持つのを妨げて、幸助の頭の中をぐるぐるしていた。「いや、東花姉でしょ?」「だから違うって言っているじゃないか」 東花が今まで隠してきたことが明るみに出てしまう。それだけは避けねばならなかった。 にらみ合う二人を見て、クラスメイトが少しざわつき始める。知り合いか? とか、姉ってどういう意味なんだろう? といった言葉が飛び交い始めた。 それでも、幸助は席に着かずに続けた。「俺が東花姉の匂い間違えるわけないし」「なっ!」 幸助の一言でクラスのざわつきが一段と増す。 傍から見れば、男が男に向かってそう言っているのだから仕方ない。「九条君、立っていないで座りたまえ。あと雑談は休憩時間に頼みますよ」 教師がやや控えめに止めに入った。こう言われては、幸助も引き下がらないわけにもいかない。初日から厄介者に見られるような無理は避けるべきだろう。 東花は救われた気分だったが、幸助はどうにも納得がいかない。 だからといって、従わないわけにもいかなった。「……はい。すみません」 幸助はしぶしぶ席に着く。だが、クラスのざわめきは中々収まらない。 見かねた教師が付け足した。「皆さんも少し騒がしいです。執事たるもの、いかなる場合にもうろたえてはなりません。例えば、お仕えするご主人様がゲイであっても、驚いてはならないのです」「ゲイじゃありません!」「そういう趣味はありません!」 幸助と東花の反論虚しく、その後二人はじっとりとした視線を受け続けることとなる。
「九条君、お昼でも一緒にどうかな?」 少し引きつった顔の東花が、幸助にそう提案したのは四時間目の終わりだった。 勿論、幸助にはなんの用事もない。そして、疑惑を晴らすためにも東花からの提案を受けることにした。 幸助は中庭に出る。その前を東花が歩く。 中庭には芝生が綺麗に広がっていた。日当たりも良い。校舎で囲まれているものの、面積が広く、風も良く通る。 だが、ここで昼食をする人はほとんどいない。 校舎内にある学食が高級品を取り扱っている上に無料という、何とも素晴らしい環境が整っているからだ。お弁当を持参する人の方が少ない。「で、話があるんだろ?」 木でできた椅子と机があるスペースに着くなり、幸助は切り出した。「話が早くて助かる」「っていうかなんで東花姉がここにいんの?」「君は話を聞くは気あるのか?」 少し苛立った声で威嚇する。 東花からしても幸助は旧知であるし、性格はよく知っていた。冷静で賢そうに見えて割に合わない行動をしたり、自分を貶めてでも納得のいかない事を解消しようとする。 それが九条幸助という男だった。「私は君の言う東花姉とやらは知らない。変な誤解も早めに解きたいんだけど」 ずいっと顔を寄せて、東花は真剣な目で威圧気味に言う。「いやでも」「あのね、君がその人とどういう関係なのかは知らないけど、あまり私に悪い噂を付けないでくれないかな? 君もわかるだろ? 従者に何かあると、主の品格を下げてしまう事になりかねないんだ」 東花は幸助の肩をがっちり掴んで畳み掛ける。ややごり押しだった。 一方、幸助は東花が近づいた事をいいことに、匂いを嗅いでいた。 誤解を生みそうだが、疑惑を晴らすためであって、別に匂いフェチではない。「うん、そうだな。間違いない」「よかった! 分かってくれるか」「この匂いは間違いなく東花姉だ! 俺がこの匂いを忘れるわけがない!」「君は犬か!」 幸助は特別嗅覚がいいわけでもない。 単純な話、古い付き合いである篠田東花という女性の事を好いていて、その匂いを好いていて、それでよく覚えていただけのことだ。 初恋の女性、それが篠田東花だった。 ただ、初恋というのは叶わないもので、勇気を出そうと思った頃には何の連絡もなく彼女は学校を移ってしまっていた。 現在では既に恋愛感情はなく、そういう事も簡単に口に出せるわけで……。「いや、好きだった女の人の匂いだし、忘れないよ。うん」「……へ?」「いやだから、東花姉は俺の初恋の人だったから」 眉を八の字にして唸る幸助に対して、東花は顔を真っ赤にして大声で叫んだ。「だ、だから! 私はその人知らないんだってば!」「……そこまで言うなら、まぁ、違うのかな?」 まだ疑惑が取れ切っていない様子の幸助を、東花は何とか説得する。「同じ匂いなんて、同じ香水を使用していたら付くだろ?」「それもそうか。なんで男が香水をつけるのかは分からないけど」「執事たるもの、周りには配慮すべきだからね。それに、今なら一般の男性でもお洒落で使っている人もいるはずだよ!」「なるほど」 否定はできない。 だが、幸助自身納得はできていなかった。 ほぼ確定と言ってもいいのだが、本人の口から言わせるのが一番だろう。そう考えて攻めることを止めない。 まるで変態の様だが、この匂いに関して幸助は無駄な自信があったのだ。 そしてもう一つ。動かぬ証拠ともいえるものがあった。それは、クラスの生徒名簿だ。「でもなぁ、お前、下の名前東花だろ?」「ぐっ……」 東花はたじろいだ。だが、こちらも負けてはいない。 こうなると意地の張り合いに過ぎない。「べ、別に同じ名前の人がいてもおかしくは!」「偶然すぎるだろ」「偶然だってあり得なくはないでしょ!」「いやー、さすがに厳しいと思うけど」「あー、そうだ。今から東花姉に電話してみれば分かるか」 幸助が携帯を取り出すのを見て、思わず東花は身に着けていた携帯を服の上から抑える。 そして、その行動によって自分が幸助の言う東花だと認めてしまったことに気が付いた。「~~~~っ!」 溜まらず崩れ落ちる。 もうこれ以上嘘を通すのは無理だった。今回は予想外の出来事で、全く対策もできなかったから仕方がない。「お、おい」 驚いた声をよそに、東花はしゃがんだまま顔を半分うずめた。 目には涙を浮かべる。半泣き状態である。「なんでこうなるかな。っていうか、昔から君はしつこすぎるんだよ。違うって言ってるんだから放っておいてくれればいいのに、なんでこうして!」 幸助の視線に耐えられず素になってしまう。 声から張りが抜け、完全に女性の声だ。「大丈夫……じゃなさそうだな」「当たり前だ!」 東花にとって、性別を正確に認知されるのは問題がある事だった。 バトラークラスとは本来男性のみしかいないクラスなのだ。女性は普通メイドクラスに行くためである。 そもそも、執事というのは男がやるものであり、女性はメイドとなる。取り仕切り役になるとしてもメイド長だろう。そこに無理やり入っているようなものなのだ。 無理を押して学園に入った。ただし、無理にはなにか条件が付いて回るものだ。「本校の学生として過ごす上で性別を他者に見抜かれてはいけない」 それが理事の出した条件だった。 しかも、自分が退学になるだけではなく、主にも迷惑は掛かる。 家自体に実害は及ばないとしても、暇を持て余したお嬢様たちの噂話にはされる。そうなれば主に話が飛び火するのは避けられない事だ。「……頼みがある……んだけど」「申し訳ないけど、内容によるかな」「私の事はどうか藤宮東花という男として接してほしい。あと、馴れ馴れしいのも少しの間は止めてほしい」 難しい事ではなかった。しかし、ぽろっと口に出してしまう可能性を考慮すると、完璧にこなすことができるとは言えなかった。 だが、幸助は迷わなかった。「立てるか?」 考える様子も見せず、幸助は手を差し伸べる。東花は既に顔を上げていたが、手を取ろうとはしなかった。 その眼は確かに返事を待っている。「……あぁ、努力するよ」 それを聞いて東花は胸をなでおろした。 すぐに手を握ると、少しふらつきながらも立ち上がる。 起き上がって目線が同じ位置になる。東花は女子ながら背が高く、男子の平均には届かぬとも、女子の中では大きな方だ。 スタイルも良く、髪も垂れ流しておくよりも一点で一度縛っている方が似合う。「一つだけ、はっきりさせておきたい」 幸助は眉をひそめていたが、その顔から疑問は既に無い。形だけの疑問顔。「篠田東花……で、いいんだよな?」「……」 ここで東花は自分が一度も肯定していないことに気が付く。 明かすべきか否か。 どう見ても東花の事はばれていた。そして、その上で幸助が訊ねてきている。 東花は内心感謝しつつ、笑う。「いいや、私は藤宮。藤宮東花だ」 声には張りが戻っていた。「そうか、じゃあ、これ以上は訊かない」「ありがとう」 世の中には様々な事情が存在する。あまりにも激しい反応をする東花に対する、幸助なりの対処であった。「ところで東花姉。俺は弁当持ってきていないから食堂に行かないといけないんだけど、どうする?」 幸助は言い終えてからハッとした。さっそくやらかした。「姉は余計。あと、口調も馴れ馴れしい。私たちは今日あったばかりなんだし、もう少し崩さない形でいこうか」「うっ……、ごめん」「で、昼食だけど、もうあんまり時間ないし、私のお弁当を分けよう。呼び出したのはこっちだからね」 返事も待たずにお弁当は広げられていく。 から揚げ、卵焼き、サラダ……ごく一般的な弁当の具が並んでいく。量はそれほど多くないが、二人で下校まで腹を持たせるには十分なくらいだ。「これ、手作りだよね? うわー、久しぶりだなぁ」 くすっと笑って東花は幸助の言葉を訂正する。「久しぶり? 初めてでしょ? あ、箸がないか」「ぐっ……、ごめん。俺は、昼食は抜いても問題ないから」「さすがに、同じ箸はちょっと無理だしね……ごめんね。こうなったら私もお昼抜くよ」 東花は慌てて広げたお弁当を片付け始める。それを見ていると、幸助はなんだか申し訳なくなってきた。 その中でふと思い出す。「そういえばカフェがあったっけ」 食堂とは別に、軽い食事、談笑の場としてカフェが設けられているのをすっかり忘れていた。そこなら食事が出るまでに時間もかからず、中庭からも比較的近い。「急いで行ってくるよ。東花ね――藤宮君も午後には遅れないように気を付けて」 そうして幸助はそそくさとその場から立ち去った。「……相変わらずだなぁ」 中庭から出て行ったのを見届けて、東花は呟く。 幸助が従者になるまでに何らかのカリキュラムを受けたのは予想が出来た。自分もそうだったからだ。 そういった時間を過ごしていると、少しずつ何かが変わるものなのだが、幸助は何も変わっていなかった。良いところも、悪いところも。「にしても、面と向かって初恋って……」 顔がほんのり赤くなる。が、次の瞬間青ざめた。「ん? 初恋? 藤宮君の?」「ひっ!」 背筋が凍りつく。 少し高めの声、背後に立っているのは間違いなく住井雅である。 この時、東花は中庭の出入り口が二つあったことを失念していた事に気が付いた。「……ど、どこからいたの? どこからどこまで聞いた?」「え? なんのことかな? いやーまさかこんな展開が待っていようとは僕にも予想だにつかなかったよ!」「どこまで聞いたー!」「ハハハハハハー! どこまでだろうねー!」 肩を掴まれ雅は首が上下にがっくがっくと揺らされていたが、構わず高笑いをしていた。 目を回している東花をよそにひとしきり笑った後、素直に答える。 「いやー、今来たばっかりだよ。僕は九条君に言いたいことがあって探しててさ、さっき二階の窓から見かけたからここに来ただけだよ」 その瞬間、東花の腕がぴたりと止まる。「そ、そう」 ならいいんだけど。「あれ、何でちょっと目赤いの? っていうか、藤宮君と九条君ってどういう関係?」 その後、畳み掛けるように質問攻めを受け、東花は結局昼食を抜く羽目になった。 住井雅について一つだけわかったことがある。 それは情報を現地調達しているということだった。 あまりにもしつこすぎて、東花は核心に触れない程度に教えることになる。

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