SSSランクパーティーのおっさん剣士だけど、新人達に追い出されので亜人の国で魔王になります

ノベルバユーザー219564

おっさん、やられる

 ギン! ギン! ギン!
 剣のぶつかり合う音が響く。
「遅え!遅えよおっさん!」「ぐっ!」
 正直言って俺とレオンのステータスは倍近く差がある。 今年45歳を迎える俺の能力は衰えるばかりだ。 だが、
「はぁ、はぁ、しぶとさだけは一流だな」
 体は衰えても磨き上げた技術は衰えていない。 俺は最小限の力で攻撃をいなし、反撃のチャンスを伺っていた。
「クソがっ!! これで終わりにしてやる!!」
 スキだらけの大振りな一撃! 終わるのはお前だ!俺は迫り来る一撃を皮一枚で躱す!
「なっ……!!」「くらえ、熟練の一撃を!!」
 俺は剣を強く握り、振り下ろ……せなかった。
「え?」
 手が動かない。 なぜ?
 いや、少し考えれば分かる。これは魔法だ。
「フラン、貴様ぁ!!」「何のことかしら」
 奴を見やるとニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべている。
「勝負あったようだな、おっさん」「貴様ら!! 戦士としての誇りはないのか!!」
「悪い奴を倒すのに、誇りがいるのか?」


 俺は、立ち上がる事が出来なくなるまで嬲られ続けた。


「ハァ……ハァ……しぶと過ぎだぜおっさん。おかげで時間かかったじゃねえか」「だったら殴るんじゃなく斬り殺せばよかったじゃない」「殴った方がストレス発散になるかと思ったんだよ、それに殺したらこんなおっさんでもファンがいる。面倒ごとは勘弁だぜ」
 あいつらの忌々しい声が耳に入る。 クソが、もう意識を失いそうだ……
「そうだおっさん、あんたのはした金は残してやるよ。その代わりコレは貰うぜ」「それは……!!」
 奴が手に取ったのは俺の首にかかった金色のタグ。 それこそSSSランクパーティーの証。 俺が18歳の時に手にして以来、常に身につけている物だ。
「そ、それだけはダメだ。頼む、やめてくれ」
 それは苦しくも楽しかった冒険の日々の結晶。 今は離れているかつての仲間達との友情の証。
 俺の30年の冒険者人生、その全てが入っている。

 それを奴らは笑いながら奪い取った。

「なぜ!!なぜだぁ!!」「うるせえな、マニアに売れば金になるだろ。そんくらい役に立てよ」

 ビギギーーーー

 俺の中のナニカが壊れる音がした。
 心の奥底からマグマの様に熱くドロドロしたものが込み上げてくる。 こんなに怒りを感じた事はない。
 悪逆非道と言われたあの魔王にだってここまでの怒りは抱かなかった。 こいつらは……コイツらだけは許せない。
 俺は力を込めて立ち上がろうとするが、ステータスも低く、特殊能力も無い俺にはそれすら出来ない。
「ははっ!! こいつの顔、真っ赤になってやがるぜ!」「早く行こーぜ。こんなジジイいつまで相手にしてんだ」
「そうだな。じゃあなおっさん、もう会う事もないだろう」
 レオンの振り上げた足が下ろされると、俺の意識はそこで途切れた。

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